そしてアニメ二期おめでとう!
「宿題終わるまで、花火大会にはいけません」
中野家にお邪魔して、家庭教師を始める前に俺は五つ子に告げる。
三玖から聞いた話によれば、毎年全員で見に行ってるらしいじゃないか。しかも母との思い出もあるときた。
ならばそれを遠慮なく利用させてもらおう。
中野家につくと、三玖の他に、一花、四葉、肉まんを持った五月(なんと肉まんは二つだけじゃなかったのだ!)はしぶしぶ集まってくれたのだが、二乃は早々に部屋に引きこもってしまった。
よって二乃をおびき出さなくてはならないんだが·····思いついたのが『宿題終わるまで花火大会にいけません』作戦だ。そのままだな。
「ちょっと! なに勝手に決めてんのよ!」
ほら。直ぐに部屋から出てきたぞ。
図書室での『抹茶ソーダ誘惑作戦』とは違い、上手くいったようだ。
「二乃ドアの前で聞いてたでしょ」
「んなわけないでしょ!」
一花のからかいに興奮したまま返す二乃。
「まあまあとりあえず聞け、二乃」
あのな。と一息置いてから話す。
「花火大会に行きたいんだろ?」
「ええ。でもアンタに行く行かないを指図される筋合いはないわ」
「まぁそうだわな。突然来て、行動を制限。何してんだって話だ」
分かってるじゃない。と二乃。
「だがな、深刻な事実があるんだよ。これはお前ら全員に言っておきたい事なんだが·····」
俺が神妙な顔つきになったのを見て、背筋を伸ばす四葉と五月。
「これは、俺が尊敬している先生から聞いた話だ」
「なによいきなり」
「まぁ聞けって」
一息つく。
「ある日本史の先生が言ってたことなんだが·····そうだな、S先生としよう。その先生は、その日キャバクラに行ったんだってよ」
「既に雲行きが怪しいんだけど·····」
「·····その先生がな、女の子と話してるうちに仕事の、日本史の話になったわけだ。そして発覚したんだが·····その女の子、豊臣秀吉を知らなかったんだとよ」
「ええっ!?」
と三玖。
「ありえないよな? その話をした上で先生はこう言ったんだ」
「なんて言ったのよ」
「どんな名言を·····」
「『豊臣秀吉すら知らねぇなとか、人間じゃねえ、猿だ』」
「私はちゃんと人間ですよ! 上杉さん!」
·····。
「どう? いい言葉だよな!?」
言いたいことはあるが·····。その前に、だ。
「ちょと分からないかなー」
「いや別に·····」
「·····」
「(もぐもぐ)」
えー。反応薄っ。
四葉は固まったまま動かない·····きっと感動して動けない? んだろう。
「ふふっ·····私は分かるよフータロー。豊臣秀吉と『猿』をかけてるんだよね?」
三玖以外にはどうやら不評の様子。
「ま、まぁつまりだ。お前らちゃんと勉強しろよなって言う
「なんでしょう上杉さん!」
何故か固まって動かなかった四葉がびくりと反応する。
「お前もしかして、豊臣秀吉知らない?」
「·····で、でも私は人間です!」
ま、マジか·····。
「す、スマン·····まさか豊臣秀吉すら知らないとは思って無かったんだ·····ホントにスマン」
「なんだか謝られてる気がしません!」
むー、と四葉がうなる。
「よかったじゃない五月」
「?
ニヤリとしながら二乃は五月に告げた。
「人間じゃない人が他にもいて、よ! 肉まんおばけ!」
「·····」
恐ろしいことを言いやがった。
図書室での三玖のように瞳から光が失われた五月。動揺が体をビクリと震わせ、俯いた顔に前髪がかかる。
そう、そんなことは女性関係に疎い俺でも知っている。『女子に対して』体重の話は厳禁、と。
いつだったか、らいはをおんぶした時だ。
「よっと·····」
「わーお兄ちゃんたかーい」
「そうだろう? それにしても·····らいはは成長したなぁ」
「·····」
蹴られた。
直接的でないにしろ女子の体重を刺激してはならない。俺は学んだ。
あの時のらいはは若干理不尽だった気がするが·····。
ともかく、二乃は定期的に·····特に最近五月の体重いじりが酷かったらしい。それがついに·····爆発した。
「ええどうせ私は肉まんおばけですよ! ·····グスッ·····お父さんに……お父さんに言いつけてやるんだから!」
五月がポケットからスマホを取り出し、少し操作してから耳にあてた。どうやら本当に父親に電話をかけているようだ。
「ちょっと……!」
さすがのニ乃も焦り始める。何とか五月のスマホを奪おうと試みるが、「まあまあ」とニヤニヤしている一花が二乃を止める。完全に楽しんでるな、一花。
プルルルル……プルルルル……。と何回かコール音が鳴った後、
『今は仕事中なのだが……どうしたんだい、五月君』
中野父が電話に出た。全員に会話が聞こえるスピーカーモードだ。
五月の奴……マジで電話しやがった……。興奮して後先考えてないな……。
「お父さん聞いて下さい!」
『なんだ』
「二乃が、二乃が……」
「……」
心を落ち着かせるように、すう……と息を吸い……二乃の非常識を訴える。
「二乃が私をふ……ふとっ……太ってるって言うんです! 肉まんお化けって!」
『そうか。楽しそうでなにより』
「なんでそんなに冷静なんですか!?」
『僕からしてみれば、五月君が何故そんなに興奮しているのかさっぱりだが……』
突然娘から電話がかかってきたかと思えば普段見せない五月の異常な興奮。わけが分からないだろう。
『さっき言った通り僕は今仕事中だ。だから……父親としてではなく、一医者としての意見を伝えようと思う』
「·····」
父親の意見を固唾を飲んで待つ五月。中野家のリビングに何故か緊張が走る。
『メタボリックシンドローム。誰しもが一度は聞いたことのあるものだろう·····勘違いが多いのが、単に腹囲が大きいだけでは、それには当てはまらないという点だ』
中野父は続ける。
『メタボリックシンドロームとは·····内臓脂肪型肥満をきっかけに脂質異常、高血糖、高血圧となる状態のことを指す。原因は、 運動不足、食べすぎなどの積み重ねが原因である場合いが多いのだが·····問題はそこじゃない』
父親による容赦のない連続攻撃。
『重要なのは、動脈硬化性疾患·····つまり脳卒中や心臓病にかかる確率が跳ね上がるという点だ。五月君も気をつけなさい。以じ·····』
目を見開き口を閉じることのできない五月。
そして……完全勝利した二乃。意図せずに父親すら味方にしたニ乃に、何も出来なかった五月。
机の上にある食べかけのデラックス肉まんが、五月の虚しさを物語っていた。
「うわああぁん!」
うお! 危ねぇ! 五月のやつ、俺にスマホぶん投げやがった·····これ七万とかするんだろ? 壊れたらどうする気だよ。
スマホを投げたまま、五月は自室に閉じこもってしまった。おいおいどうすんだよ、勉強。
二乃はドヤ顔でガッツポーズしてないで五月を追え。
「ふん。私は今気分がいいから、勉強してあげなくもないわ!」
「それはありがてえこった。だが二乃のせいで五月が消えたんだが?」
「あの子が食べ過ぎなのが悪いでしょ。そろそろ止めないと本格的にまずいわ」
それは否定出来ねぇ·····。なにせ会って二日目で分かってしまうヤバさだ。
『上杉君、今そこにいるのかい?』
「は? は、はいいます!」
急に五月のスマホから声が。まだ通話は終わってなかったみたいだ。耳に当てると音が大きいので、スピーカーモードを切る。
……ていうか、相手俺の雇い主なんだが!?
『どうだい? 家庭教師は順調かな?』
「は、はい。·····そりゃもう!」
雰囲気ぶち壊しておいてよく言えるなぁおい。とは言わず。雰囲気が伝わらないように誤魔化す。
順調なわけがない。
『そうか。それはいいことだ……なら、次の期末試験、全員の赤点を回避してもらおう。それが出来ないのなら、見込み無しとして家庭教師をやめてもらう』
「は? え、ちょっと待ってください……」
『待たない。私は今仕事中だ……健闘を祈るよ』
「あっ……」
電話が切れてしまった。
つか五月の機嫌くらいとってくれよ中野父。五月のみ赤点とかだったら覚悟しろよ。
いやいや五月だけ? 今のままじゃ全員赤点は間違いない。どうする……。このままだと俺の生活が!
何か無いのか……?この絶望的状況を打破するような奇跡のような一手が·····。
……っ! そうか!
勢いよく顔を上げると、残った五月以外の四人が俺を見ていた。
「フータロー……?」
そして、俺は告げる。
これなら、行けるかも知れない!
「花火大会は、行けなくなりました。家で補習を受けてもらいます」
「「「「却下」」」」
ええ·····。
どうもフィヨルドです(´・ω・`)
投稿頻度が圧倒的に落ちてますね·····申し訳ない。
二日日後宣言して六日後はないわ。うん。
書きづらいのは何故か·····いっその事ギャグ回はしんみり抜きにしてはっちゃけてみるか·····。
ていうか。連載開始の時と大分方向性が変わったなぁと。これじゃあ80話とかいっちゃうぜ·····?
というわけで次回は
次は三玖回となるのでお楽しみに。
お気に入り500、高評価ありがとうございます。
是非、評価と感想で作者にやる気を下さい。
ではまた。