五等分の花嫁 √中野三玖   作:おとぎの

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ギリギリ! セーフ!


#14 引きこもる五月

 五月が部屋に引きこもってから一時間がたった。もちろんその間は勉強である。

 案の定二乃が抜け出そうとしたが、五月のことに負い目でもあるのだろう。ドヤ顔張ってたのは五月がいなくなってから数分ほどだけで、だんだんとテンションが下がっていった。

 いつもいる五月がいないので、心なしか二乃以外の三人も元気が無いように見える。

 

 もうかれこれ20分ほど無言で、リビングに聞こえるのはシャーペンを走らせる音のみだった。

 

 まあ、二乃も言い方は悪かったとはいえ、五月を心配してのことだ。そこまでなら冗談で済んだ気がするんだが·····中野父(あの野郎)、とんでもない爆弾落として行きやがって。五月にも、俺にも。

 何が動脈硬化性疾患だよ。絶対に女子高生に話すことじゃない。一度ビシッと言ってやりたいものだったが·····。

 現状そんなことはできない。俺にとって中野父は雇い主であるのもそうだが·····その要求を達成できそうにないというのもある。

 

 テストは三週間後。普通なら直前の追い込みでも赤点回避くらいは余裕のはずだが、こいつらは今までろくな勉強もしてこなかった。積み重ね、というものが無い。

 

 あと三週間で集中して出来るのは一週間程度だろう。

 勉強してこなかった、または普段からしてないやつは大体二週間の時間をボーッとして過ごす。

 よくあるやつだ。机に向き合ったはいいが、ペンを取れず、ノートを開けず、結局娯楽物に時間をさいてしまう。ソースは小六の俺。

 

 つまり、赤点回避出来るか出来ないかは俺次第。ということだ。·····どれだけやる気を出してくれるか、もあるから五つ子次第でもあるが·····。

 

 とにかく一人でも赤点とったらアウトなのだから、五月を戻さなきゃダメだ。勉強の効率も悪い。

 

「ねぇ!」

「うおっ! なんだ?」

「なんだ? じゃないわよ。終わったら持ってこいって言ったのあんたでしょ」

「ああそうか·····すまん」

 

 俺は二乃から課題のプリントをもらい、採点を始める。あーあー、こりゃ酷い。先が思いやられるぜ·····。

 

「ねぇ」

「ん? 全然あってないぞ」

「そうじゃなくて! パパとなに話してたのよ」

 

 スッスッと流れるようにバツをつけていく。二乃の顔が微妙なのを見るに、自信のあった問題さえも間違っていたのだろう。

 

「だから、ただの世間話だって。昼間の井戸端会議並のな」

「(井戸端会議って何かしら)まぁいいけど。別にあんたのことなんて興味無いし」

「先に聞いてきたのお前だろ」

 

 採点が終わる。

 俺は二乃に課題プリントを差し出した。

 

「ほれ。英語50問中6問正解だ。最初よりはマシだな」

「うう·····」

 

 ちなみに三玖は既に終わっていて、二乃と同じ英語のテストを50問中10問正解。三玖が一番苦手なこの教科でこの点数なら、もしかするといけるかもしれない。

 

 一花と四葉も終わったようで、採点すると、一花は4問正解。四葉は2問正解。正直言うと全員カスみたいな点数だ。

 英語の伸びは他教科に比べてかなり遅い傾向にある。五人全員が赤点突破となると……なかなか難しいものだ。

 

 それはそうとして、だ。

 

「一度休憩にしよう。その間に、なんとか五月を引きずり出してくれ」

「わかったわよ……ずっとこのままじゃ行けないし……五月だけ花火大会行けないのも困るもの」

 

 やはり二乃は元気がないように見える。いつもなら、「はぁ? なんでアタシなわけ?」だ。……いやそれはないか?

 おそらく五月の立場にあるのが俺だったらそう言っただろう。

 ニ乃はそれほど妹のことが好きということ。なんとも分かりやすい。

 かなりの不器用だが、きっと大丈夫だろう。

 

 

 さて、俺もやるべきことがある。

 試験対策、考えなきゃな。

 

 

 一度頭をクリアにするために、俺は一度外に出た。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 タワーマンション三十階からの景色は圧巻だった。

 思わず自分が落下してしまう想像をし、身震いする。助かる余地のない確実な死が待っている。

 

 試験もそうだが、もう一つ考えなければならないことがあるのだが……優先順位は……いや、どっちだろうな。

 

「フータロー」

 

 考えがまとまらない内に三玖に声をかけられる。

 

「ん? 三玖はどっから来たんだ?」

 

 俺がベランダに出たのはキッチン横にある扉からだが、それは俺のすぐ後ろにある。三玖が入ってきたら気付くはずだ。

 

「このベランダ、みんなの部屋とも繋がってるから……私は自分の部屋から」

「ああ、そういうことか」

 

 そう言われ納得する。奥の角を曲がると五つ子の部屋があるということか……いや、直前の大窓は既に一花の部屋か。

 

 視線を戻すと、なにやら三玖は真剣な顔をしていた。

 

「フータロー、お父さんになんて言われたの?」

「だから他愛のない世間話だと……」

「それは、嘘」

 

 三玖の俺を見る目はいつもと違い、真剣そのものだった。

 これ以上の誤魔化しは、俺にはできなかった。

 

「本当のこと、言って」

「……赤点一つでもあったら、俺はクビだとよ」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、三玖は驚いたように目を見開き、口を手で覆った。

 再び俺が口を開く。

 

「全く、お前らには失礼かもしれないが、迷惑な親だぜ。五月の勉強の邪魔しやがって……なぁ?」

 

冗談めいた口調で言うと、三玖は固まった表情を崩す。

 

「ふふ……。五月はきっと大丈夫だよ。拗ねるのはよくあることだから」

「そうなのか?」

「うん、それと……」

「?」

 

「私は絶対に赤点取らないから、安心して」

 

 自信に満ちた顔で、胸の前で拳を握りしめて言う。

 思わず笑みがこぼれた。

 

「そうか……なら、楽しみにしてる」

 

 

 そう言い三玖から目を逸らし、再び眼下の町に目を向ける。もう少しで休憩も終わりだ。果たして二乃はうまくやっただろうか。

 

「この景色、凄いよね」

「ああ。骨まで粉々だろうな」

「えっ……そうじゃなくて!」

 

 ほら、と三玖がおもむろに空を指差す。

 

「よく見るんだけど……あっち……東に太陽が沈んでくでしょ? その夕焼けが綺麗で、そのあとに見えてくる星も凄くきれいなんだよ」

「そっか……じゃあいつか見てみたいな」

「……っ! うん!」

 

 とても良い笑顔で三玖は頷いた。

 普段の三玖からは全く想像がつかない表情。

 

 ……だが俺にはそんなことはどうでもよかった。

 

 

 

「小学生からの常識だ」

「?」

「太陽は東から昇って、西に沈むんだよ」

「えっ……」

 

 三玖が固まる。

 やる気と実力が伴わないのはよくあることだから、な。

 ……だが。

 

やっぱり先が思いやられるな……。

 

 

 

「とりあえず休憩終わりにして、理科から始めような? 科学とか物理じゃなくて、まずは理科」

 

「はい……」

 

 




私は、早死にしてしまうんでしょうか……。し、し、心臓病って死んじゃうやつですよね!?


どうも、フィヨルドです。

今ゴミ端末で書いたので、言いたいことは次回で!
ガクガクでやばい……。

評価、感想、ありがとう!
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