五等分の花嫁 √中野三玖   作:おとぎの

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#2 財布の中身は二十三円

「·····どうした?食べないのか?」

 俺の目の前には焼肉定食焼肉抜き。対面の少女の前には紙コップ一杯の水のみ。昼時の食堂の中では一際異様な光景だ。

 傍から見れば、どんな貧困生活を送っているのだろうと思われても仕方がない。

 

「ほら、その鞄の中にサンドイッチでも·····」

「そんなものは無い」

「·····そうか」

 

 無いものは仕方が無いな。俺は出しかけていた日本史のノートを広げ、食事をしながら勉強を始める。

 ああ美味いな。このライス、一粒一粒が立ってるぜ。さらに味噌汁との相性も抜群だ。味噌汁によって口の中ではらりと解けるライス。前言撤回、やっぱ食堂は最高だぜ!

 なんか目の前の少女がこっちを睨んでる気がするがそんなものは知らない。

 

·····。

 

「何故、こっちを見る·····」

「より厳密には、口に運ばれていくたくあんを見ていた」

「なんでだよ!」

「美味しそう」

「美味いけど·····ってそうじゃねーよ。なんで昼飯無いんだよ!」

「お金、家に忘れて来ちゃったから·····。本当なら二乃に·····お姉ちゃんに借りればいいんだけど、今日この学校初めてで·····」

 

 なるほどな。道理で制服が違うわけだ。

 

「そういう事か。転校生なんだな。んで、姉とははぐれてしまったと」

「うん·····ここ、人が多いからいるかなと思ったんだけどね」

「で、俺と会ったと。·····探さなくて大丈夫なのか?」

「うん。お昼食べたら教室行くだけだから大丈夫」

 

 この会話中、少女の視線は一時足りとも俺のライスから離れない。

 

「そうか·····ならいいんだが·····それは無自覚でやってるのか?」

「? 何が?」

「いや、いい·····」

 

 こんなにずっと視線を俺の食べてるライスに向けられては気になって勉強に対する集中も途切れる。俺の顔にもチラチラと視線がいく始末。

 

 はぁ。と小さくため息を漏らし、テーブルの上に置いてある財布を開く。中身は·····一円玉が3枚と十円玉が二枚。俺はそっと財布を閉じ、鞄の中にしまった。別に金を貸してやろうとかそういうわけでわない。ただ·····そう。財布の中身を確認しただけだ。

 

 ? と首を傾げる少女の視線が俺に刺さる。ああ止めてくれ。恥ずかしいからこっちを見ないでくれ。

 

 そして少し悩み·····俺は少し迷ったが、焼肉定食焼肉抜きの乗ったトレイを無言で少女の前に押しやった。

 自分でもらしくはないとわかってはいたが、ハンカチを貸してもらった手前、少女の無言の要求を無視するのは少々心が痛んだ。

 

「まだ半分残ってるから、俺の食いかけでよけりゃ食え」

「…! いいの?」

「…ああ。丁度次の授業の予習の時間もとりたいところだったしな」

 

 適当な嘘を言い、食べていいと少女に促す。

 

「そう·····うん、分かった。なら貰うね」

「おう」

 

 いただきます。と手を合わせ小さな声で言い、少女は食事を始めた。それを確認し、風太郎も勉強を再開する。

 それを見た少女は、食事をしながら話しかけてきた。

 

 

「昼休みにも勉強してるんだ·····勉強出来るの?」

「ああ。趣味は勉強と言っても過言じゃないな」

 

特に謙遜はせずに答える。勉強は素晴らしいぞ。

 

「そうなんだ·····私は勉強全然だから、少し羨ましいかも」

「授業は聞いてないのか?」

 

ノートにペンを走らせながら答える。

 

「ううん。別に聞いてないわけじゃないんだけど·····何だか頭に入ってこなくて」

 

 少女は箸を置く。どうやら食べ終わったようだ。時計を確認すると授業まであ10分を切っている。もう少しで予鈴がなるはずだ。

 俺はノートを鞄にしまい、教室に戻る準備を始める。

 

「まぁ、そんなに気にしなくてもいいんじゃないか?」

「? なんで?」

「まぁ、ほらあれだ。授業を真面目に聞かずに、()()()()()()()()()()()()織田信長だって、最後には天下に王手をかけたんだ」

 

 皮肉を込めて言ってやったぜ!

たまたまさっき勉強してた範囲が戦国時代だったからか、自然とそんな言葉が出てきた

。今の返しは自分でも上手いと思う。まぁ、最後は裏切られるんだけどさ。

 

「じゃ俺は教室戻るから。転校初日から遅刻しない方が良いぞ」

 

 そう言って俺は席を立ち、教室へ向かった。

久しぶりに女子と·····いや生徒と深く関わったな。

 

 あ、そういや名前す聞いてなかったな。けどまぁ、もう話すこともないだろう。

 

 

 

 後ろから呼び止める声は食堂の喧騒に掻き消え、風太郎に届くことはなかった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「もう。すぐ行っちゃった·····」

 

 はぁ·····。と、少女、中野三玖はため息を吐く。

 

 目の前のテーブルに置いてあるのは、乾かすために開いて内側を下に向けている生徒手帳。

 

「あっ。名前、聞いてない·····」

 

 生徒手帳は私が持っているしかない。同じ学校なんだし、きっとまた会えるだろう。

 

 生徒手帳を保管しておこうと生徒手帳を手に取る。そこでカバンに入れる際、開いていた面が目に入り·····私は驚き目を見開いた。

 

 

 嘘·····。

 

 

 そこで見たのは生意気そうな金髪の男の子の写真。

 

 

 私が五年前に京都で出会った、男の子だった。

 

 

 上杉·····風太郎君·····?

 

 

 

 

 

 

 

 




 腹は減りすぎると逆に何も感じなくなりますよね。

漫画の10ページを4000文字かぁ。もう少し書くペースを上げなくては·····。

 次話も出来れば明日出しますので、よろしくお願いします(´・ω・`)
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