「アンタのせいで三玖が逃げちゃったじゃない」
「だから俺のせい·····いやタイミング的に俺か·····」
「なら迷う前に追うの! アンタ男でしょ!?」
「男なのは関係ないが·····まぁ行ってくる」
仕方がない。どういうわけか知らないが、どうやら俺は三玖に避けられているようだ。
でもさっき別の場所で昼食取ろうとした俺に対して、『行っちゃうの·····』って引き留めようとしてたはず·····。もうどういうことかわけがわからん。
二乃の言葉に対し三玖を探すことを決めたのはいいが·····一体どこへ行ったんだ? まだ出会ってから二日目になのだ。
よく行く場所やら性格やらを俺が知っているはずもなく、食堂を出たところで足を止めてしまっていた。
手当り次第探していくしかないか·····。
◆◆◆
思わず飛び出してきてしまった。
けれどあの場に残っていたら、普段少ない私の表情の変化を、二乃達は指摘してきただろう。
こんな表情は、たとえ十年一緒にいた姉妹だとしても見られたくはなかった。
彼が風太郎君だったなんて·····。顔の面影は確かにあった。性格は大分変わってたみたいだけど·····それでもやっぱり嬉しい。
私のことは覚えていなかったみたいだけど·····無理もない。
風太郎君は落ち着いて、真面目になった。まだ少し周りが見えてないみたいだけど、勉強もできて·····良い方向に、変わったんだ。
私とは、違って。
でも五年前のことは覚えていてくれた。写真も大切にしてくれていた。
風太郎君が今の私を、昔の私だと認識していないのならそれでいい。
やることは変わらない。
『私』が私自身を認められるようになった時には、その時には。
私から告げよう。
5年前のことと·····今の私の気持ちを。
でも今は再会出来たことを素直に喜ぶとしよう。
突然逃げ出して悪いことしちゃったな·····。
二乃達には適当に言い訳しとかなきゃ·····。
◆◆◆
「スマン·····一階から·····屋上まで、見てきたんだが·····どこにもいなかった·····」
俺は膝に手を当て、息を整えながら二乃達に報告した。
しかしそれに対しての二乃の返答は·····。
「大丈夫よ。もう戻ってきてるから」
衝撃的なものだった。
「はぁ!? なんで·····俺を避けてどっか行ったんじゃ無かったのか? 何してたんだよ·····」
「何してたって·····アンタねぇ·····」
「上杉君、女の子にはね、聞いちゃいけないこともあるんだよ?」
「ホント男ってデリカシーがないんだから·····」
と、一花と二乃。
「そうですよ上杉さん! 三玖はトイレに行ってただけです! 心配いりませんよ!」
「四葉、アンタねぇ·····」
「四葉も十分デリカシーがないですね·····」
「なんだよそれ·····」
どうやら俺の知らないところで勝手に解決していたらしい·····。
「大丈夫。別にフータローを避けてたわけじゃない」
「そうなのか·····なら良かった·····のか?」
しっくり来ないが·····まぁいいか。
「今日からフータローが私たちに勉強教えてくれるんでしょ·····?」
「お、おう。そうだな。三玖は勉強出来るのか·····?」
「全然出来ないよ·····だから必要なんだよ」
「? 何がだ?」
「私たちには、フータローが必要だから。」
一瞬、五年前のあの子の言葉と重なった。
『お互い一人で寂しい者同士仲良くしようよ。私には·····君が必要だから』
もう一度、会えるだろうか。
不要なものは捨てていけ。
自分が要らないものだと気付いてしまったあの日。
暗いなにかに沈んでしまいそうだった俺を、照らしてくれたあの子に。
「どうしたの·····? フータロー?」
「·····っ。ああ·····スマン。考え事してたんだよ」
京都でたまたま出会っただけ。
どこに住んでるのかなんて知らないし、名前すら聞くことができなかった。
半日あの子に連れ回されただけの思い出·····だが、五年経った今でも昨日のことのように覚えている。
腕時計を見ると、もう授業まで五分と少しだった。もうすぐ予鈴が鳴るだろう。
俺は目の前の弁当箱を持って立ち上がろうとした·····が、昼食後に関わらず、弁当箱が妙に重たいことに気付く。
そして、俺は重大なミスに気が付いた。
俺、らいはの手作り弁当食べてねぇ·····と。
元凶の三玖は、こちらを見て不思議そうに首を傾げているだけだった。
◆◆◆
「デカイな·····」
俺は目の前にそびえ立つタワーマンションを見て圧倒されていた。さすが金持ち。
昼休みが終わり5,6時限目が過ぎると、俺がいる教室、三玖の元に五つ子が集まった。そのまま案内に着いてきた訳だが·····他の生徒の視線が痛かった。
俺が転校生の女子五人と一緒にいるんだ。見られてしまってもおかしくない。
五月は帰り道に肉まんを二つ食べていた。昼にあれだけ食ってたのにまだ食うのか。と思ったが言ったら恐らく怒られていただろう。
近くのラーメン屋を食い入るように見つめていたのは黙って置いてやる。
「何ぼさっとしてるのよ。置いてくわよ?」
「ああ、悪い」
俺は五つ子に連れられオートロックなるものを抜け、エレベーターで上の階に上がる。随分長いなと感じていると、やっと止まったのは30階。道理で長いわけだ。
このタワーマンションは高層階のいくつかは、一室に階が丸ごと使われているらしい。エレベーターを出た直後に中野家の表札があったのはさすがに驚いた。
部屋も広い。最新のキッチン設備まで整ってるし·····らいはが喜びそうだ。
リビングに向かい、長方形のテーブルを半分囲むように置かれたソファーの前に立つ。ソファーには五つ子が全員座っている。
始めようかと思ったところで、突然二乃が口を開いた。
「あのさぁ、私は三玖にお昼分けてくれたことも、今日三玖をすぐに探しに行ってくれたことにも一応感謝してる·····けどさ·····」
足を組み直して、俺の目を見て二乃は言った。
「家庭教師、別に要らないんだよね」
ほう。そう来たか。
いいだろう。受けて立とうじゃないか。
「そうか·····二乃は勉強に関して自信アリ·····と。ちなみになんの科目が得意なんだ?」
五月の視線の先には二郎系ラーメン
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