組織『クズノハ』最強の悪魔召喚術師、葛葉ライドウは、目付け役の銀子の命令でイギリスの諜報員、トリッシュの依頼を受ける。
一方、ライドウへの想いを捨てきれない荒事師、ダンテは馴染みの情報屋、モリソンからとある仕事を請け負うのであった。
「はぁ・・・・何を好き好んでこんなやばそうな所に来なきゃいけないんだか・・・。」
プレジャーボートを島に設置されてある波止場に泊めたカジュアルジャケットにビンテージジーンズを着た小柄な少年は、口から盛大に溜息を吐き出した。
「もー、せーっかく、箱根の温泉でゆっくりお風呂に入れると思ったのにぃ―。」
少年の肩に座る小さな妖精が主の慨嘆(がいたん)に激しく同調する。
少年の名は、葛葉・ライドウ。
日本を拠点とする魔導組織『クズノハ』に在籍する悪魔召喚術師である。
組織最強と謳われる彼は、今現在、とある依頼を受けてこの絶海の孤島―マレット島を訪れていた。
「本当なら、この仕事13代目に依頼される筈だったんでしょ?」
「仕方ないさ・・・そのキョウジさんがここ半年以上も連絡が取れない状態らしいからね。」
肩に座る仲魔―マベルの不満をライドウが苦笑いで応える。
事の起こりは、今から一週間以上前、例の如くお目付け役兼元締めのマダム・銀子からの電話であった。
”飛び込みの依頼が入ったから、『ビーシンフル号』のラウンジで依頼人と会って欲しい。”
一方的にそれだけ伝え、勝手に電話が切れてしまう。
此方の都合など一切お構いなしである。
最近、内壁の様子が騒がしいと報告があったので、その調査をしていた矢先の出来事であった。
「大体何で、あの馬鹿親父がいないのよ?てか、全然”クズノハ”の仕事してないでしょ?ライドウばっかに押し付けてこんなの不公平よ!」
長い内壁調査の任務を終えて、さて久しぶりに長期休暇でも取って、のんびり温泉でも浸かろうかと相談していた。
それがおじゃんになってしまった為、当然、マベルのご機嫌は大変悪い。
「あの人は、あの人なりの理由があるんだろ。」
13代目、葛葉・キョウジは、組織の中でも扱いが大変難しい人物で有名だ。
本来、自分達”クズノハ”に所属する悪魔召喚術師は、元締めであるマダム・銀子の依頼を受けて仕事をする。
しかし、13代目の場合、勝手に闇の情報屋(ダーク・ブローカー)で悪名高い『如月・マリー』と情報交換を行い、何の申告もせず、依頼を受けてしまう。
一部では「横紙破り」だと批判する連中もいるが、キョウジは何故か組織に属する召喚術師の信頼が厚い。
特に若手からの人気が高く、彼を慕って”クズノハ”の門徒を潜る者が後を絶たなかった。
(トリッシュか・・・・。)
豪華客船『ビーシンフル号』で出会った美しい依頼人の女性を思い出す。
金の髪に人気モデルも素足で逃げ出す程の見事なプロポーション。
そして彫の深い整った顔立ち。
一目で彼女が自分と同じ、裏の世界に生きている人間である事が分かった。
「貴方がミスター・ライドウ?組織『クズノハ』でも最強と謳われる悪魔召喚術師として有名な・・・。」
濃いサングラス越しの視線が、目の前に座る小柄な少年に注がれた。
長い黒髪を三つ編みで一つに纏め、10代半ばと思われる中性的な美貌、華奢な体躯、そして左目を覆う大きな黒い眼帯。
とても、SSクラスの召喚術師には見えない。
「とてもそうは見えないって言うんだろ?こんなちんまい餓鬼に任せて大丈夫なんだろうか?てね。」
初めて自分に会った依頼人は、まず間違いなく第一印象がソレであった。
当然だろ?だって延暦13年に設立され、今の時代まで続く魔導組織『クズノハ』最強の召喚術師がこんな貧相な餓鬼なんだから。
「フフッ、私個人の意見としてはとても好みなんだけど・・・。」
性的な匂いをプンプンとさせる依頼人の言葉に、ライドウの背筋を形容し難い寒気が走った。
「まず自己紹介が先ね・・・私の名前は”トリッシュ”本名は・・・流石に控えさせて貰うわ。」
彼女―トリッシュ曰く、イギリスの秘密情報部・・・Secret Intelligence Service、通称sisに所属する諜報員だ。
M16の略称で広く知られるこの組織は、国外の政治、経済及びその他秘密情報収集など、あらゆる情報工作を行っている。
当然、悪魔が起こす超常的事件も担当していた。
「貴方方、日本人の言葉を借りると”竜脈”というのかしら?その気の流れがオークニー諸島のある孤島で乱れているのを発見したのよ。」
此処、最近イギリス諸島を中心に原因不明の地震が度々発生していた。
調査員の報告によるとオークニー諸島にある『マレット島』を中心に地脈が異常な程活発になっている事が分かった。
「現地に何人か調査団を送り込んだわ・・・でも、何故か誰一人として帰って来る事が無かった・・・・。」
そう言って、トリッシュは一枚の写真をテーブルに置く。
現地調査に使用したと思われるクルーザーの室内を撮影されたと思われる写真だ。
そこには、室内のあちこちに飛び散ったどす黒い血潮と引き千切られた手足、そして内蔵の一部が惨たらしく映し出されていた。
「悪魔の仕業か・・・・。」
大型の肉食獣でも、こんなやり方で人は殺さない。
鋭利な刃物で切断された胴体、無理矢理手でねじ切ったと思われる頭部。
十中八九、悪魔が絡んでいると思った方が良い。
「でもどうして俺達”クズノハ”に?てか、君達の国はカトリック教圏なんだから、ヴァチカンに依頼するのが筋なんじゃないの?」
「そのヴァチカンに断られたからコッチに来たのよ。」
ライドウの当然とも取れる質問に、トリッシュは苛々とした様子で応えた。
「彼等の言い分だと、新しい教皇猊下が就任して忙しいから、人手不足でとても人員を回せない、日本と言う国に優秀な悪魔召喚術師が多数所属してるからそっちに頼んでくれ・・・・だそうよ。」
「なんだそりゃ・・・・・。」
アイツ等・・・うちの組織を一体何だと思っているんだ?
完全な下請け会社か何かと勘違いしているに違いない。
「本当なら、13代目・葛葉キョウジという人物に依頼する予定だったんだけど、何故か彼に連絡が取れない・・・マダム・銀子に再三要請を促したところ、代わりに貴方を紹介されたという訳。」
「はぁ・・・・そりゃご愁傷様で・・・。」
内心の怒りを隠そうともしないトリッシュの様子にライドウは肩を竦める。
いくらイギリスが誇る諜報部とはいえ、悪魔を討伐する専門の軍隊は持っていない。
それは諸外国にも言える事で、その殆どの国々が国連を通してヴァチカンに駆逐依頼をしているのだ。
「大昔にEUを離脱したからその嫌がらせでも受けてるのかしら・・・・?」
「否・・・多分それは無いと思うよ・・・?」
けんもほろろにヴァチカンに断られた事を未だに根に持っているのか、トリッシュは、繊細な指先でテーブルをトントンと叩いた。
「うちの国には多くの日本企業が進出している・・・色々と恩恵は受けてる筈よね?HEC社のCEO様?」
濃いサングラスの下の双眸が怪しく目の前の悪魔使いを見つめた。
「え?何の事だか分かんねぇーんだけど・・・。」
あからさまにすっとぼけるライドウを美貌の諜報員が鼻で笑う。
この目の前の美少年が、日本が誇る大企業―Human electronics Companyの若き会長である事は調査済みである。
一体何故、巨大コングマリット企業の会長様が殺伐とした世界に生きる悪魔召喚術師(デビルサマナー)をしているかは知らない。
何かしらの理由があるとは思うが、彼女自身どうでも良かった。
早速、島に上陸し、廃城へと続く海岸沿いの道を歩く。
今の所、悪魔の気配は全くと言っていい程感じない。
(あのトリッシュとか言う女諜報員、エヴァに良く似てたな・・・。)
豪華客船『ビーシンフル号』のラウンジで出会ったSISのエージェント。
濃いサングラスで双眸は隠されていたが、顔立ちは驚く程、例の双子の兄弟・・・ダンテとバージルの母親、エヴァに瓜二つな容姿をしていた。
ライドウの心の中でも、レッドグレイブ市を襲った未曽有の大事件は嫌な記憶として残っている。
結局、あの事件で無事に生きて還れたのが、自分と銀髪の大男だけであった。
首謀者のシド・デイビスもソレに操られていた双子の兄、バージルも死亡。
魔界から帰還した悪魔使い達を待っていたのは、ヴァチカンの悪魔殲滅部隊『ドミニオンズ』の手厚い歓迎であった。
自分達の意見など一切無視され、無理矢理拘束された挙句、1週間以上も、サン・ピエトロ大聖堂に無理矢理収監された。
名目上は、客人扱いであるが、外に一歩も出る事が叶わなかった為、まるで囚人と同じである。
「そんなに膨れないでよ?ライドウ君。僕だって辛いんだよ?」
ヴァチカン科学技術開発部総責任者、射場・流がヘラヘラと笑って言った。
「君のお陰でコッチも余計な負傷者が出なかったし、本当感謝してるんだからさぁ。」
ライドウが寝ているダブルベッドの横に置いた椅子に座ったヴァチカン最高の頭脳は、呑気にカフェオレの甘い香りを楽しんでいる。
「・・・・お前は、本気でこの事件が解決したと思っているのか?」
「んー?思っている訳がないじゃない・・・首謀者は君と君の剣聖殿が殺しちゃったんだからさぁー。」
流の言う通り、首謀者のシドとバージルを殺害したのは他でもないライドウ自身だ。
しかし、それについてとやかく言う気は微塵も無い。
今は、スパーダとそれに協力したウル・ナンムの遺産をどう有効活用するかで頭がいっぱいだ。
「・・・ダンテは・・・どうなるんだ?」
唯一気掛かりなのが、魔界帰還直後に拘束された双子の弟、ダンテの処遇についてであった。
あの便利屋は只、何も知らずに事件に巻き込まれただけだ。
いくら首謀者の一人であるバージルの双子の弟とはいえ、彼は完全な被害者である。
「上級悪魔と人間の交配したハーフってのには、興味をそそるよねぇ?良質な検体になれるし、一度解剖してみたいなぁー。」
子供の様な無邪気な言葉でとんでもない事を平然とほざく瓶底眼鏡の科学者にライドウは鋭い視線を向けた。
「アハハッ!冗談だって、ダンテ君って言うんだっけ?彼の身柄は州警察に預けたって、マウアから報告を受けてるよ。」
そのうち、警察が身元引受人を探して、ダンテを引き取りに来させるらしい。
一応、無事だと聞いて悪魔使いの少年は安堵の溜息を吐いた。
「それより自分の身を心配した方が良いと思うけどなぁ?まだ治らないの?その自傷癖。」
「・・・・・?」
「君の戦い方は余りにも無謀過ぎる・・・まるで死に場所を求めている様だね。」
「お前には関係ない。」
相変わらずこの瓶底眼鏡のマッドサイエンティストは鋭い。
痛い所を突かれ、ライドウは視線を包帯が巻かれた自分の右腕へと向けた。
任務終了後、悪魔使いは疲労とダメージにより、その場で意識を失った。
右腕靭帯損傷、肋骨も4本ぐらい罅が入っていた。
早急にヴァチカンの医療チームに収容され、そこで適切な治療を受けた。
そして現在に至る。
「ヨハン君の事は同情するよ?でも過ぎた事を何時までもくよくよ考えても何の解決にもならない・・・今をしっかりと生きないと・・・。」
そう言いかけた流の胸倉をライドウがいきなり掴んだ。
余りな出来事に、飲み終えた陶器のコーヒーカップが手から離れてしまう。
「誰のせいだと思ってる・・・・。」
腹腔から噴き出す怒りの炎。
今、胸倉を掴んでいるこの瓶底眼鏡の優男は、11年前の出来事を事故として処理したいのだ。
それが激しく許せない。
「君は・・・・僕達が何も失っていないと本当に思っているのかい?」
「何・・・・?」
掴まれた胸倉はそのままに、流は何時も着用している白い手袋をゆっくりと外す。
親指と中指が欠損し、代わりに義手の指が装着されている。
人工関節が剥き出しのそれを見た瞬間、悪魔使いは掴んでいた手を離した。
「瘴気をモロに当てられちゃってね?左脚も切断する羽目になっちゃったよ。」
「・・・・・っ。」
対価を支払ったのは、ライドウだけではない。
自分達もそれ相応のモノを失っている。
流は無言でそう言っているのだ。
「何時までも部屋に閉じこもってばかりじゃ、気が滅入る一方だよね?僕がジョンにお願いして、君の外出許可を取ってあげよう。」
床に転がっている陶器のマグカップを拾い上げ、瓶底眼鏡の科学者は、カップの受け皿と一緒にサイドテーブルに置いた。
「怪我が良くなったら、サン・ピエトロ広場を歩こうじゃないか?昔に戻って一緒に買い物でも楽しもうよ。」
嫌味の無い爽やかな笑顔。
そこに過去への怒りも悲しみも微塵も現れてはいなかった。
ダンテがその依頼を受けたのは、何時も馴染みにしているボビーの穴倉で、これも習慣となっている特盛のストロベリーサンデーを突いている時であった。
初老を差し掛かった男が店を訪れたのだ。
男の名前はJ・D・モリソン。
荒事師の界隈では、少しは名の知れたやり手の仲介屋である。
「朝っぱらから、良くそんな甘いモンが喰えるなぁ。」
隣のカウンター席に座った黒人の情報屋は、ダンテの目の前にあるコレステロールの塊みたいなデザートを少々、うんざりとした様子で眺める。
時刻は丁度早朝の2時を指していた。
普通の生活を送っている一般市民なら、まだベッドの中で熟睡している時間帯だ。
「アンタこそ、朝っぱらから下らねぇ説教は止めてくれ。」
不貞腐れた様に応えると、たっぷりと生クリームが付いた苺を口の中へと運ぶ。
その時、バーカウンターで片付け物をしていた店主のボビーが、上部に取り付けられている少々型が古い42インチの液晶テレビを操作した。
暗闇に包まれる舞台会場。
眩い照明が、ステージに立つ一人の美少女を照らし出す。
肌が際どく露出した深紅の衣装。
しかし、そこに下品な色香は微塵も感じられず、逆に神々しい何かに見える。
銀糸の長い髪に白い新雪の如き肌。
人形の様に整った顔立ちは、無表情で、何処か現実離れをしている。
「ほぅ・・・・日本の電脳アイドル”ネミッサ”か・・・。」
感嘆の溜息と共に初老の情報屋がボソリと呟く。
彼女は、日本のクリエーターが生み出したコンピューター・プログラミングであった。
しかし、その歌唱力は各国のメディアに絶賛されており、『電脳空間の歌姫』として広く知られている。
酒場に居る荒くれ共の客達が、一斉に黙り込んで少女の唄声を聞いている。
人の心を鷲掴み、魅了するその声は、日々の生活で荒んだ彼等の心を癒していった。
「ううっ・・・何時聞いてもこの子の唄声は最高なんだね。」
肥満体の店主は、目の淵に溜まった涙の雫を手で拭い、感じ入った様子で”ネミッサ”の唱を聞いている。
それは店内にいる荒くれ者達も同じで、あちこちですすり泣く声が聞こえた。
(・・・・ライドウ・・・?)
電脳の歌姫を見たダンテは、彼女が自分の想い人と何処か面影が似ている事に気が付いた。
呪われし塔―テメンニグルで出会った悪魔使いの少年。
濡れ羽根色の長い黒髪を三つ編みで一つに纏め、ビスクドールの様に整った顔立ちをしていた。
美しい容姿には不釣り合いな黒い眼帯。
だが、その奥には恐ろしい魔眼が封印されている。
「おっといけねぇ、実はお前さんに頼みたい依頼があるんだ。」
”ネミッサ”の唄を聞き終わったモリソンが、まるで白昼夢から覚めたかの様に正気に戻る。
「依頼・・・・?」
胡乱気に聞き返す。
「人探しだ・・・・しかも悪魔絡みのな。」
そう言って、初老の情報屋は、胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
『オルフェウス城』へと続く海岸沿いの岩場の道。
組織『クズノハ』に所属する悪魔召喚術師―17代目・葛葉ライドウは、腰に吊るしたガンホルダーから、愛用のGUMPを取り出した。
トリガーを引くと蝶の羽の様にディスプレイが展開。
キーボードをピアノの鍵盤の様に叩き、忠実なる僕―白銀の魔槍士、クー・フーリンを召喚する。
「今回も宜しく頼むな?クー。」
「イエス・マイマスター。」
恭しく片膝を付き、敬愛する主に頭を垂れる。
その姿はまるで絵本に登場する騎士そのままであった。
この絶海の孤島―マレット島に建設された城『オルフェウス』。
その持ち主は、12世紀に宮廷魔術師として活躍した人物であった。
音楽家としても名高く、彼の奏でる竪琴は、気性の荒いレッドドラゴンすら鎮めたという。
「それが突然この島に閉じ籠り、まるで何かに憑りつかれたかの様にある研究に没頭したそうだ。」
GUMPのホログラム機能を使い、USBメモリーに収まっている情報を空中に浮かび上がらせる。
繊細な指先で文字の羅列を弾きながら、悪魔使いは城へと続く岩場の道を歩いて行った。
「何の研究をしてたの?」
主の肩に座った妖精が、青白く光る文字の列を興味無さ気に見つめた。
「オルフェウスに関する文献が少なすぎるからなぁ・・・詳しい事は分からないが、人体蘇生に関する研究らしい。」
後の考古学者曰く、オルフェウスは人体構造に関する考究を行っていた様だ。
理由は、諸説色々とあるが、一番の動機は若くして病死した妻のエウリュディケーを蘇生させる為っという説がある。
「死者を甦らせるのは、禁忌とされる行為ですよ。」
魔導師間の戒律の中で、一度死んだ人間を現世に引き戻すのは、因果律を捻じ曲げる重罪とされている。
「確かにな・・・オルフェウス程の魔術師なら、それぐらいは知っていた筈だ。」
それでも、禁忌を犯してしまうのが人間。
彼にとって妻のエウリュディケーは、彼の順風満帆な人生をぶち壊してしまう程、大きな存在であったのだ。
「ねぇ?人体蘇生って成功した人がいるの?」
妖精の至極当然な質問。
魔導師の長い歴史の中、誰かは必ずこの禁忌の秘法を行った筈だ。
「・・・・・俺が知っている中では、人体蘇生に成功した魔導師は一人もいない。まぁ、成功したとしても所詮は禁忌の御業・・・自ら咎人になりたい変わり者以外に態々申告する奴はいねぇよ。」
「そーだよねぇー。」
ホログラム機能を停止し、開いていたGUMPを閉じて、腰のガンホルスターに仕舞う。
此処でグダグダ考察を垂れていても仕方がない。
早く城内に入って、探索と地脈が乱れた原因を調べる方が先決だ。
フランス西海岸、サン・マロ湾上に浮かぶモンサンミシェルを彷彿とさせるその居城は、朱に沈む夕陽を浴びて佇んでいた。
美しく且つ、威圧感を与える白亜の城。
普段侵入者を阻む城壁は、一部が崩れ落ちており、悪魔使い達はそこから城内へと入って行く。
今の所、一度も悪魔と遭遇していない。
GUMPのエネミーソナーも全く反応してはいなかった。
悪魔使い達が入り込んだのは、1階の大広間らしい。
室内中央には、大きな槍を持ち、馬に乗った騎士の石像が安置されていた。
「誰だ!」
何かの気配を察知した白銀の魔槍士が、真紅の魔槍―”ゲイ・ボルグ”を構える。
耳が痛い程の静寂。
暫くして、巨大な騎士の石像の背後から、一つの影が現れる。
真紅のロングコートに身の丈程の大剣を背に下げた銀髪の大男。
数年前、共に生死を分けて戦った荒事を生業とする便利屋―ダンテがそこに居た。
何とかかき上げたので投稿。