偽典・女神転生~マレット島編~   作:tomoko86355

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マレット島で起きている怪異の原因は、魔界の支配者、四大魔王の一人”ムンドゥス”であった。魔帝は、かつて自分の領地を荒らした人修羅ことライドウに人造の魔神『イフリート』を指し向ける。一方、ダンテ達は消えたエウリュディケーとペルセポネーを追っていた。


ミッション8 『クリフォトルーツ』

オルフェウス城、地下闘技場。

そこに目隠しをされ、手足を縛られた若い男達が数名、石畳に転がされていた。

皆一様に猿轡を噛まされ、周囲に彼等の呻き声が木霊している。

「め、メル・・・か、彼等は一体何処から連れて来たんだ・・・?ま、まさか・・・。」

顔面蒼白なオルフェウスが隣に立つ美しい甥を怯えた目で見つめる。

「ふふっ・・・安心して下さい。コイツ等は罪人ですよ。養父(ちちうえ)に頼んで牢獄に入れられている囚人達を連れて来たんです。」

メルリヌスの養父は、オルフェウスが宮廷魔術師として仕えている小国ダヴェドの王だ。

彼の養父は、とても寛容な人物で国民からの信頼も厚い。

またオルフェウスの祖父、大神・ゼウスを信奉しており、故に主の頼みでヘラの不義の子であるメルリヌスを快く実子として引き取り育てたのだ。

「い、いくら罪人とはいえ人の命だぞ?あのダヴェド王がそんな・・・・。」

「あの人も貴方と同類の腰抜けですよ?ゼウスの命令とは言え、実の子でもない私を引き取り、第三皇子として馬鹿みたいに愛情を注いだ・・・兄や姉達の怒りも知らずにね。」

ダヴェド王は、メルリヌスを神の子として敬い、王位継承権まで与えようとしている。

実の子二人が憎悪と嫉妬、そして神の血を引くが故に生まれながらにして膨大な魔力と優れた才能を持つメルリヌスに羨望の眼差しを向けるのは当然であった。

「だから、あの人は私のいう事なら何でも聞いてくれるんです。だって、あの人にとって私はゼウスの半神みたいなモノですからね。」

「め・・・メルリヌス・・・ダヴェド王は信仰心が厚く慈悲深いお方なのだ・・・これ以上の侮辱は・・・。」

この甥は本当に半分人間の血が流れているのであろうか?

立場は違えど、オルフェウスとメルリヌスは同じ半人半神だ。

卑屈で根暗な性格をしているオルフェウスだが、無慈悲に人の命を刈り取ろうとは思わない。

どちらかと言えば、争いを好まず、穏便に平和に暮らしたいと思っている。

なのに、この甥は―。

「あーあ、貴方と門頭するのは時間の無駄です。さっさとクリフォトの果実を手に入れないと叔母上が転生の循環に同化してしまいますよ?」

メルリヌスが指をパチンと鳴らす。

すると天井に吊るされている数体の操り人形の1体が、囚人達の前に降り立った。

鋭利なナイフを構え、囚人の一人を無造作に突き刺す。

地下闘技場に響く大絶叫。

血が噴き出し、石畳を鮮血が真っ赤に濡らす。

「さぁ、御飯の時間だよ?」

懐から小さな小瓶を取り出し、蓋を外す。

血の匂いを嗅ぎ付けたのか、中に入っていたクリフォトルーツがまるで蛭(ヒル)の様に瓶から飛び出した。

飢えを満たす為に、石畳に広がる血溜まりに吸い付く。

瞬く間に巨大化し、その醜悪な姿を曝け出すクリフォトの根をオルフェウスはブルブルと震えながら見ていた。

 

 

人造の魔神―イフリートが地を揺るがす程の咆哮を上げる。

核熱系高位魔法『フレイダイン』が発動。

周囲を全て焼き尽くす核の炎が、情け容赦無く悪魔使いとその従者に襲い掛かった。

「ウォンディーネ!俺達を護れ!」

素早くGUMPを引き抜き、蝶の羽の如くパネルを展開させると、水の精霊―ウォンディーネを召喚。

あらゆる高熱系の魔法を防ぐ『水の壁』を張り巡らせる。

「ちっ、流石上位級魔神は厄介だぜ。」

『フレイダイン』の脅威から何とか逃れられたが、そう何度も『水の壁』で防ぎきれるものではない。

相手が本気を出す前に一気に叩き潰す。

「志郎、ヴィシュヌを喚ぶぞ?」

「イエスマスター。」

主の命令に深紅の魔槍―”ゲイ・ボルグ”を構える白銀の魔槍士。

二人の立っている地面に巨大な魔法陣が出現する。

『召喚(コール)!!』

悪魔召喚術師の躰に浮かび上がる蒼い文様。

それと同じくして背後から巨大な影が現れる。

ヒンドゥー教の最高神―魔神・ヴィシュヌだ。

角の様なポールドロンに拘束具を思わせる漆黒の衣装。

銀の冠を被り、黄金の眼をした仮面を被っているその魔神は、ライドウが所持する三体の最上位悪魔(グレーター・デーモン)の一つである。

「マハ・ブフダイン!」

氷結系最上位魔法『マハ・ブフダイン』を唱える。

ヴィシュヌの前方に展開される無数の魔法陣。

そこから氷結の巨大なドラゴン達が現れ、人造の魔神・イフリートに襲い掛かった。

しかし、黙ってやられてしまう程、イフリートも甘くはない。

火炎系最上位魔法―『マハ・ラギダイン』で対抗する。

空中でぶつかり合う氷の龍と炎の龍。

大量の水蒸気が発生し、辺りを白い霧で覆い隠す。

「マスター!!」

蒸気の爆風に吹き飛ばされそうになる主の前に白銀の魔槍士が、己の躰を盾にした。

高温の水蒸気が魔槍士の躰を焼く。

「志郎!!」

自分を庇ったせいで真っ赤に腫れあがる魔槍士の肌。

ライドウが慌てて、醜く焼け爛れた肌に回復魔法を施す。

「馬鹿!無茶しやがって!」

「貴方が怪我をするよりはマシです。」

眉間に皺を寄せ、回復系中位魔法『ディアラマ』を唱える主を優しく見つめる。

命に代えてもこの主は護り抜く。

それが人間を捨て、純粋な悪魔となった己に架した揺るぎない信念なのだから。

「ぐおぉおおおおおおお!!」

その時、魔神・イフリートの咆哮が周囲に轟いた。

みると蒸気の煙を突き破って、炎の鬣(たてがみ)を振り乱した魔神が襲い掛かって来る。

ライドウ達同様、高熱の蒸気をモロに被ったのか、身体の表皮が焼け爛れていた。

しかし、かなりの深手を負っている筈だが、そんな事おくびにも出さずに、炎の魔神は、その剛腕で華奢な悪魔使いを叩き潰そうとする。

それを右に跳んで躱す隻眼の悪魔使い。

右眼を覆っている眼帯を乱暴に外す。

「絶対零度!!」

普段、呪術帯によって封印されている蒼い魔眼が開かれた。

魔眼から蒼い炎が噴き出す。

それと同じくして、魔神・ヴィシュヌの翳す(かざす)右掌から巨大な魔法陣が展開。

氷の大津波がイフリートを呑み込む。

成す術も無く氷の棺に閉じ込められる炎の魔神。

ライドウが開いていた右掌を握ると、巨大な氷の棺が魔神ごと粉々に砕け散り、後には悪魔の核である心臓だけが残された。

「あれは・・・・?」

宙に浮遊する光るイフリートの心臓。

ヴィシュヌを己の体内に戻し、近づいてみるとそれは、炎を纏う籠手であった。

どうやらあの魔神は、魔具を動力源として創造されていたらしい。

「ふん・・・流石は人修羅・・・良い余興であったぞ?」

自慢の造魔を破壊されたにも拘わらず、魔帝の言葉には何処か余裕があった。

異空間が元に戻り、禍々しく深紅に輝く三つの眼が消える。

「ちっ・・・そこで眺めてないで降りて来いってんだ。」

舌打ちし、中指を突き立て悪態を吐く。

四大魔王の中でも、ムンドゥスはかなり警戒心が強い悪魔だ。

人修羅・・・17代目・葛葉ライドウの実力は熟知している。

下手に手を出すより、配下である悪魔や造魔を使って長期戦を狙い、此方の体力を削る算段なのかもしれない。

「まぁ、良いさ。そっちが引き籠るんだったら、コッチが出向いてやるまでだ。」

態々、ムンドゥスが此方に現れたという事は、悪魔使いが睨んだ通り、この付近に地獄門があるのだろう。

「志郎・・・コイツ使えそうか?」

「使えとご命令とあらば使いますが・・・生憎体術は得意な方ではありません。」

炎の籠手―魔具・イフリートを指差し、悪魔使いが従者の方を振り向く。

「んじゃ、使え・・・・短時間でモノに出来たらご褒美あげちゃうからな。」

「全く・・・貴方という人は・・・。」

主の無理難題にやれやれと肩を竦める。

このイフリートという魔具は、どう見ても近接戦闘向きの武器である。

スピードは、愛用している魔具―”ゲイ・ボルグ”やテメンニグルで手に入れた”ネヴァン”と比べたら遥かに落ちるだろう。

しかし、破壊力は両者を上回り、火炎系最上位魔法と同じ威力の火球を放つ事も可能だ。

白銀の魔槍士は、炎の籠手に手を翳す(かざす)。

すると籠手が左右に分かれ、クー・フーリンの周囲を飛び回ると、主と認めたのか、その腕に無理矢理装着した。

「ぐぅうううう!!」

躰中を駆け巡る力の波動。

鎧が魔具と同調し、白銀の甲冑が深紅の禍々しい形状へと変形する。

「へぇ・・・魔具の属性によって鎧も変わるなんて知らなかったな?」

真紅の外装に黒いラインが走る甲冑を物珍しそうに眺める。

こうして見るとまるで西洋の絵画などに登場するデーモンと似ている様な気がした。

ついつい触ってみたくて手を伸ばした主の華奢な腕を魔槍士が突然掴む。

余りの出来事に固まるライドウ。

そんな主の様子などお構いなしに、黒髪の美丈夫は懐深くに引きずり込むと、その唇を強引に塞いだ。

口内に無理矢理入って来る舌を半ば諦めて受け入れる。

暫く従者の好きにさせた後、漸く傍若無人な従者の唇から解放された。

「お、お前なぁ・・・・(# ゚Д゚)」

「貴方の言いつけ通り、短時間でモノにしました・・・ご褒美くれるんでしょ?」

何ら悪びれもせず、悪戯っぽく微笑む仲魔をライドウは悔しそうに睨むしか無かった。

 

未だ駆け出しではあるが、医師としてそれなりに有名なロバート・ウォルトンは、勤めているダルムシュタットの街から師の居る”マレット島”に向かって、召喚したピポグリフを駆っていた。

目的は、勿論師であるオルフェウスの見舞いである。

愛する妻を失い失意のドン底である恩師は、未だ立ち直れず、宮廷魔術師の資格を自ら返上すると別宅である”マレット島”の居城に引き籠ってしまった。

何度か面会を試みたものの、全く上手くいかず、かと言って放っておく訳にもいかない。

職業病だと揶揄されればそれまでだが、医者としての本能が、師の健康面での安否を気遣っていた。

 

「オルフェウス先生・・・・・?」

早速、島に到着したロバートは、庭園に生えているマルバノキの前に一人の小太りな男性が立っているのを見つけた。

この城の主、オルフェウスである。

「う・・・・ウォルトン君・・・・?」

ロクに睡眠が取れていないのか、両目の下に隈(くま)が色濃く出ている。

無精髭が生えたその顔は蒼白で、大分やつれていた。

「きょ・・・今日はお仕事お休みなのかい?」

愛弟子の来訪を歓迎しているかの様に見えるが、かなり無理をしているのが痛い程分かる。

その顔は不自然な程、引き攣り、声にも生気がまるでない。

「いいえ・・・午後から患者の往診予定が入ってます。」

腕の良い医者として名が知れているロバートは、当然、患者達からも人気が高い。

それ故、勤めている病院の中でも抱えている患者数が多く、滅多に休みも取れない状況である。

「ハハッ‥‥君は、とても優秀な医者だからね・・・毎日大変だろ?」

「オルフェウス先生・・・。」

この師匠もかつて宮廷魔術師を務めていた時は、王族お抱えの医者もしていた。

しかも、自分等よりも遥かに腕が良く、彼の噂を聞き付けた近隣諸国の貴族達が態々師が居る小国ダヴェドに足を運んだ程である。

「先生・・・何かあったんですか?」

医者としての観察眼が、師の異変を敏感に察知する。

いつも温厚で人当たりが良い師匠ではあるが、その笑顔に何処か影がある様に見えた。

「どんな悩みでも構いません。先生、どうか私に相談してはくれませんか?」

「・・・・ウォルトン君・・・わ・・・・私に拘わらない方が良い・・・君を不幸にしてしまう・・・・もう二度とこの城には来てはいけないよ?」

真摯な眼差しで自分を見る優しく誠実な弟子に、オルフェウスは疲れた様な笑みを口元に浮かべてそう言った。

この青年には、まだまだ希望と無限の可能性がある。

それに医師として多くの患者達から慕われているのだ。

自分の様な疫病神に拘わらせてはならない。

「それは一体どういう意味なんですか?先生、お願いです。どうか話して下さい。」

恩師にそんな事を言われて黙って引き下がる訳にはいかない。

この師と回り逢わなかったならば、自分は一生貧民街でゴミ箱を漁る生活を今も続けていたのだ。

人並みの教育を受け、医者にもして貰えた。

どうにかして恩返しをしたい。

「何をしているんですか?先生。」

その時、声高い少年の声が二人の間を引き裂いた。

ロバートの兄弟子―アンブロシウス・メルリヌスである。

「もー、やっと見つけましたよ?私と一緒に新しい魔具の開発をするって約束だったじゃないですか。」

メルリヌスは、オルフェウスの腕にしなだれかかると、まるで初めて気が付いたかの様にロバートを見つめた。

「おや?ロバート・・・今日は仕事の筈じゃなかったのかい?」

女神アフロディテに愛されたアドニスの様に美しい少年。

しかし、そのペリドットの双眸は氷の如く凍てついており、医師の心を竦み(すくみ)上がらせるには十分な効果があった。

「悪いな?ロバート・・・・先生はこれから大事な研究があるんだ・・・今日の所は大人しく帰ってくれ。」

眼力で何も言えず、その場に固まっている医師の若者を鼻で笑うと、メルリヌスは恩師の腕を引いて居城へと戻って行った。

 

地下水路内に吹き荒れる暴風雨。

容赦無く襲い来る二本の大鎌を常人を遥かに超えた膂力を持つダンテが、大剣―アラストルを巧みに操り悉く防いでいく。

「ひゅー♪やるじゃねぇの?若いの。」

未熟者と最初は馬鹿にしていたが、中々どうして。

結構やる方ではないか。

これ程、卓越した技術で自分を駆ったのは、アラストルを魔具に変えたあの忌々しい天ノ津神以来だ。

「ち、気が散って仕方がねぇ、剣がペラペラ喋るんじゃねぇっての!」

大鎌の刃を弾き飛ばし、大きな隙を作るとその仮面に向かって必殺の一撃を繰り出す。

しかし、相手は上級悪魔。

そう簡単に留めを刺せる程、易い相手ではない。

転送魔法(トラポート)を使い、銀髪の魔狩人の放つ斬撃から逸早く逃れた。

「ジオ!」

仮面の死神が転送した場所を読んでの妖精の電撃下位魔法。

数万ボルトの電撃の鞭を浴びた死神が動きを止める。

「ナイスだ!チビ!」

ダンテが背負ったもう一つの大剣―『フォース・エッジ』を投擲する。

黄金の剣は、寸分の狂いも無く死神の仮面に突き刺さり、粉々に破壊した。

断末魔の不気味な笑い声を地下水路内に響かせ、塵と化すデス・サイズ。

ハイ・ピクシーのマベルがほっと安堵の吐息を吐いた。

「ねぇ?何かあそこにあるよ?」

マベルが何かを見つけたのか、水路の突き当りを指差した。

そこには、石で出来た台座があり、大きな鍵が置かれている。

どうやら、これが次のエリアに進む為のキーアイテム”陽光の導き”らしい。

壁に突き刺さっている大剣『フォース・エッジ』を引き抜き、背に収めたダンテが台座に近づく。

「その鍵はこの城の主、オルフェウスの書斎のやつだ。あそこに行けば、デブ・・・じゃなかった・・・主人の手掛かりが分かるかもしれない。」

太陽の紋章が施された金色の鍵は、オルフェウスが今まで研究していた書物が置かれている書斎の鍵だとアラストルは説明した。

これを使って彼の書斎を調べれば、城主がどんな人物であったのか、又、彼が冥府に行ったその後の足取りが掴めるかもしれない。

 

オルフェウスの頬を弟子のメルリヌスがいきなり平手で殴った。

強かに身体を書斎の壁に打ち付け、ずるずると豪奢な絨毯の上に座り込む。

「本当に愚かな人ですね?叔父上・・・私が居なかったら、ロバートに全て知られてしまう所だったじゃないですか。」

師を無理矢理書斎に連れ込んだ美貌の弟子は、床の上で頬を押さえる小男を睨み付ける。

「め・・・メル・・・もう止めよう・・・僕は・・・僕はもう耐えられないよ。」

自分が本当に愚かだった。

若くして死んだ最愛の妻に一目でも良いから会いたいなんて思わなければ良かった。

まさかこんな恐ろしい事態になってしまうなんて・・・全て自分のせいだ。

「何を言っているのですか?後もう少しで”クリフォトの果実”は実るんですよ?それを使えば、叔母上を死の女王から救い出せるというのに・・・・まさか、叔父上は叔母上を見捨てるつもりですか?」

「ば、馬鹿な!僕がエウリュディケーを見捨てる筈がないだろ!」

甥の言葉に激怒したオルフェウスが胸倉を掴み上げる。

普段は、温厚で人を傷つける事を極度に嫌うオルフェウスとは思えない暴挙であった。

「なら・・・最後までやり遂げないと・・・”クリフォトの果実”の可能性は無限です。もしかしたら、叔母上を我々と同じ身体に出来るかもしれない。」

天使の様な微笑みを浮かべた美しい少年が、自分の胸倉を掴む恩師の両手を優しく握る。

「お、同じってどういう事なんだ・・・・?」

メルリヌスが言わんとしている言葉の意味を頭では理解しつつも、魔術師はオウム返しに聞いてしまう。

「不老長寿ですよ・・・我々は例え半分人間の血が流れていても、寿命は神族と同じ・・・おまけに中々死ねません。しかも、伯母上は純粋な人間ですよ?我々と同じ時を生きる事が出来ない。」

だから”クリフォトの果実”の力を使って、永遠に生きよう・・・そう美しい甥は言っているのだ。

「そ、それはつまり・・・エウリュディケーを創りかえるって事なのか・・・・?そ、そんな・・・神へのぼ・・・・。」

冒涜だと言い掛けたオルフェウスの前髪を掴み、壁に叩き付ける。

額が切れ、血を流すオルフェウス。

倒れる彼の上にメルリヌスが馬乗りになる。

「まだそんな事言ってるの?馬鹿じゃないの?それとも自分だけ善人だと思いたいの?いい加減、現実から逃げるのは止めて下さいよ?アンタみたいな人種見てると本当に虫唾が走る。」

自分は手を汚さず、いかにも被害者面して・・・本当は力づくで愛する妻を現世に連れ戻したい筈なのに・・・。

「ねぇ?叔父上・・・俺達は共犯なんですよ?あの”クリフォトの血溜まり”を育てるのに何十人犠牲にしたか分かってるんですか?最初は罪人を生贄に使っていましたが、今じゃ女子供すらもアレに喰わせたじゃないですか。」

「め・・・・メル・・・・。」

「今日か明日・・・否もっと早いかもしれない。もう少しで果実が熟す・・・それまでの辛抱なんだ・・・アンタもいい加減覚悟を決めろ。」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった叔父の顔を満足そうに眺め、メルリヌスは小男の躰の上から漸く離れた。

 




魔法使いの嫁に登場するカルタフィルスが結構好きです。
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