「どーしてこんな事になったんだか・・・・いや、今更かぁ・・・」
モニターを見ながら、そう愚痴る恭平。
「良い機会じゃないか。お前も他の基地のアニマの実力を実際に知れるんだから」
「その理由があんな険悪なムードじゃなければ良かったんですけどね」
丁度、三機とも飛び立った事を確認して、恭平は傍らの八代通に聞く。
「それで、こりゃ一体どういう事なんだよ八代通」
恭平が示したのはグリペンの資料だ。
「鳴谷とグリペンの脳波が全く一緒のもので、さらにある程度離れると脳波が乱れるとか・・・こりゃ普通の事じゃあねえぞ」
「ああ、それについては未だ研究中だが、ただわかっている事は、鳴谷慧が一緒にいる事で、グリペンは飛べるっていう事だ」
「その割にはなんか酷いがな」
モニター越しに見るグリペンの機動は、慧というハンデがあるが故にどこかぎこちないものだ。
「それで、君からみて、鳴谷君はどう思うかね?」
「よく言って裏表がない。悪く言って嘘がつけない。とにかく感情が顔に出やすい」
「なるほど、まあそれについては俺も同意見だ」
「ただ、そんな彼だからこそ、グリペンのパートナー足りえるのかもしれない」
気付けば、演習は終わっていた。
結果はファントムの圧勝。
ただ、その結果に恭平は頭を抱えていた。
「やっぱこうなったか・・・」
ファントムのパートナーであるがゆえに、恭平はファントムの所業に気付いていた。
「うわぁあああん!!」
ファントムの元へいく道中で、泣き喚いて横を通り抜けていくイーグルに内心で土下座しつつ、恭平は何やら険悪なムードになっているファントムとグリペン・慧ペアの元へ向かった。
「よーお前ら、訓練お疲れさん。イーグルは何やらどっかの子供みたく走り去っていったな」
「あ、一尉」
「あら恭平さん」
その空気に迷わず足を踏み入れる恭平。
「ファントム」
「はい?」
そして、ファントムの頭を掴むなり、
「いたたたたたたッ!?!?」
「一発目早々反則行為どーもご苦労様でした」
「す、すみませんすみませんですからアイアンクローやめてくださいいたたたた!?」
全力で右手の握力を使ってファントムの頭を締め上げる恭平。
「悪いな鳴谷にグリペン」
「え!?ああっと、いえそんな事は・・・」
「あ、ファントムが死んだ」
「勝手に殺さないでください・・・」
恭平のアイアンクローを喰らって地面に倒れ伏すファントムを無視しつつ恭平は二人に謝る。
「こいつはこういう奴なんだ。だからといって許せとは言わないが、まあできれば仲良くしてやってくれ。そんじゃ」
そう言ってファントムを抱えて去ろうとする恭平。
「あ、そうだ」
しかし何かを思い出したのか振り返る恭平。
「そういや、こいつ、人種で特に有害なのは誰なのかっていう話をしてなかったか?」
「え?まあ、言ってましたけど・・・」
「俺の持論では、力を持たない奴が一番の害悪だと思っている」
「は?」
「もちろん、強きは弱きを助けよ、ていう言葉もあるがな、世の中成功する奴ってのは、人を動かす力を持つ奴だと思うんだ。その方法は様々だ。演説で人々を説得する、力で人々を魅せる、物で人々を釣る・・・とにかく、人を動かせる奴が、全ての物事において高い成功率を獲得できる。だけどな、そんな力も持ってないのにやれ正義だの悪だの言う奴が、一体何ができるっていうんだ?力が無ければ、己が達成したい目的を達成できない。ただ喚くだけで何もできない奴が、勝手にでしゃばる。これ以上に迷惑な事があるか?」
「それは・・・」
「その点、お前とグリペンは何かを成すための力を持っている。その心を持っている・・・・安心しろ鳴谷。お前は何かを成す為の力を持っている。問題なのは、それをいかに、どのように使うかだ。それさえ分かっていれば、お前はグリペンを乗りこなせるだろうよ」
そう言って、恭平はまた歩き出す。
「じゃ、また明日」
片手をあげて、そう告げて、恭平は去っていく。
その様子を、慧はグリペンと二人でただ見続けた。
「・・・・そろそろ降ろしていただけませんか?」
「ん?」
肩に担いだファントムがそういうので、降ろす恭平。
「ふう・・・何かを成すための力・・・ですか。驚きました。貴方が自惚れをしているなんて」
「失望したか?」
「いいえ。何せ貴方はイーグルブレイカー。常識を壊す存在です。ですから、それくらいの自惚れは、私の許容範囲ですよ?」
「ソイツはどうも。ただま、お前、何事にも全力でいるとそのうちこと切れるぞ?」
「その時は貴方が看病してくださいな」
うふふ、と笑うファントムに、恭平はやはり苦笑を浮かべる。
やはり、この少女は油断ならない。そう思いつつ、恭平は先を歩くファントムの後を追った。
数日後―――
「ふあ、あぁあ・・・」
眠いのを我慢して、恭平は食堂に出ていた。
今ファントムは検査に出ているために一緒にはいない。
ふと、気付くと目の前にグリペンがいた。
「よおグリペン」
「一尉」
声をかければ、機械のような声でペールピンクの髪をなびかせてこちらに振り向いてくれるグリペン。
「今日はファントムと一緒じゃないの?」
「ああ、アイツは検査だ。今から飯か?」
「うん」
「だったら一緒に食おうぜ。今日は鳴谷の奴もいねえからな」
今日は慧は休みだった。
ただ学校の補講にくわえて基地でのバイトという名目上のグリペンとの訓練も入っているうえにトレーニングもやっているそうなのだ。
(考えてみるとすげえハードスケジュールだな)
恭平も、その忙しさには恐れ入ってしまう。あれでよく気疲れしないものだ。
(まあ、こんな可愛い女の子と一緒にいられるんだからな)
グリペンはファントムとは違い、幼いが故の可愛さというものがある。ファントムはどっちかというと綺麗系。しかしからかえばそれなりの可愛さを見せてくれる。いわゆる面倒くさいツンデレタイプだ。
一方のグリペンは、その幼さからくる可愛さと、無表情さから醸し出される人形のような可憐さを秘めている。そして、何事にも素直なので絡め手が通用しない上に直球でくる為に、かなりの頑張り屋な面が見て取れる。いわゆる、努力っ子って奴だ。
ただし――――
「お前その体で結構食うのな」
「うん」
小松限定日替わりBセット。Aセットより一品多い定食である。ちなみに恭平も同じもの。
「そういえば、一尉に聞きたい事があった」
「なんだ?」
「どうして一尉はファントムに乗ってるの?」
素朴な疑問、というのは目を見るだけですぐに分かった。
真っ直ぐな目だ。ガラスのような瞳に映る真っ直ぐな心が、見て取れるほど、率直に、真面目に聞いてきている。
その問いに、恭平は数秒間をおいて、
「それは俺がファントムと一緒に乗ってる、という意味か?それとも、ドーターに乗っているという意味か?」
「どっちも」
「どっちもかい・・・こほん」
一度咳払いして、恭平は語り出す。
「まず前者だが、アイツ、実は結構寂しがり屋だからだ」
「寂しがり屋?」
「おうよ。アイツ、三沢に初めて来た時に何したと思う?情報という情報を片っ端から集めて、それを基地内に流して自分に敵意が向かないようにしてたんだよ」
「ふーん・・・」
「それで俺が見破ってやったらアイツなんて言ったと思う?何で身を守ればいいんですか?だってよ。だから俺は言ってやった。俺が守ってやるってな」
「それは、何故?」
グリペンが、興味ありげの瞳で恭平を見る。
「単純な話、俺がアイツを守ってやりたいって思っただけだよ。確かにアイツ一人で機体を操縦しても、この間のように、仮令、クラッキングしてもお前らを簡単にノせるほどの実力を持ってる。でも、アイツはいつだって自分の身を守る事に精一杯なんだ。だから、俺はアイツがそんな事に気を配らなくていいように、守ってやってるんだよ。その代わり、俺はアイツを操縦して、それをアイツが手伝うっていうギブアンドテイクな関係でやってんのさ」
「そう・・・」
いつの間にか、グリペンのBセットの皿の上の料理は無くなってきた。
「なんとなく、貴方という人が分かった気がする」
「そうか、そりゃよかった」
にっしっしと笑う恭平に、グリペンは思わず、こんな事を呟いた。
「・・・・誰とでも、打ち解けられそうな人・・・」
「ん?なんか言ったか?」
「・・・・何も」
立ち上がるグリペン。
「それじゃあ、私は検査があるから」
「おう、いってらっしゃい」
そう言って、グリペンはおそらく、技本棟の方へ戻っていく。
グリペンを見送り、特に予定もなく小松基地内を歩いていると、
「ん?」
不意に気配を感じて視線を向ければ、そこには見覚えのあるブロンドの髪を持った少女が、なぜか物陰からこちらをじっと睨みつけていた。
「うー・・・」
そしてなぜか唸っている。
「・・・隠れきれてないぞ?」
ちなみに彼女が隠れているのはフラッグポーンである。
「ッ・・・~~!!」
「あ!?ちょっと待て!!」
声をかけられたからか、いきなり逃走を始めるイーグルに対して、恭平も追いかける。
「いーやー!!犯されるぅぅぅう!!」
「待てゴラ!!勝手に俺を犯罪者にすんな!!あ、おい!!待てー!!!」
いきなり自身の名誉を懸けた鬼ごっこに変わった追いかけっこを初めて数分後。
「いい加減にしろぉおお!!」
「うわ!?」
どうにかその背中にダイブして抱き着く事で捕まえる事に成功する恭平。
「いーやー!離してー!!壊さないでぇ!!」
「待て待て待て!!落ち着け落ち着け!!俺はお前を壊す気は無いし何か変な事をする気は無い!!!どっちかっていうと話がしたいだけだ!」
「嘘だー!!」
「嘘じゃねえよ!?って、あ、ちょ、ちょっとまて、頼む待て、爪を立てるのはアーッ!!」
数分後。
「いってぇ・・・おま、引っ掻く奴があるか・・・・」
「急に抱き着いてくるのが悪いもん」
「返す言葉もございません・・・」
顔に赤い線を何本も作りながら、顔をさする恭平に対して、背中を向けてふくれっ面で座り込んでいるイーグル。
「・・・なあイーグル」
「ッ!」
びくり、と体が跳ねる。
「・・・そんなに俺が怖いか?」
「・・・」
その問いに、イーグルはびくりと体を震わせる。
その様子に、恭平は頭を掻く。が、
「・・・・もん」
「ん?」
「別に怖くなんてないもん!!」
イーグルが立ち上がって恭平に指を指しながらそんな事を叫ぶ。
「お、おう・・・?」
「貴方なんて、全然怖くなんてないもん!!そ、その気になれば、貴方なんて、コテンパンだもん!!」
「う、うーん・・・」
そのイーグルの言い様に、恭平は首を傾けて・・・
「いや、ファントムに勝てなかっただろ?」
「うぐ・・・・」
ぐっさりとイーグルの心に突き刺さる言葉が恭平から飛び出て突き刺さる。
「つ、次は勝つもん!」
「まあ、その意気やよしだけどさ」
恐る恐る、恭平はイーグルの頭に手を乗せる。
「!?」
それによって、イーグルの体が凍ったかのように固まる。
「あんま、自分の実力を見誤るなよ。自信があるのは良い事だが、それで墜ちたら悲しむ奴が多い。特に、お前の大好きなお父様だとかな」
「・・・・」
そのまま、ゆっくりと頭を撫でていき、微笑みながら言葉を紡いでいく。
「だからま、俺が隊長を務めている間は、ちゃんという事聞いてくれよ?戦いになれば我儘なんてどれほど通せるか分かったもんじゃないからな」
「・・・・・分かった」
何か悔しいのか、ふくれっ面で視線を逸らして膝を抱えるイーグル。
「・・・・」
(一応、信頼は勝ち取れたって所かな・・・?)
そう思って安心した所、
「キョウヘイサァン」
「――――ッ!?!?」
突如として体中に蛇が這うかのような気持ち悪さに、というか、悪寒に襲われる恭平。
ゆっくりと、ブリキ人形のように振り返れば、そこには、何故か虚ろな目を全開にして口角を怖いぐらいに吊り上げてこちらを見るファントムの姿があった。
「ふぁ、ファントム!?」
「ナァニシテルンデスカァ?」
「な、何って・・・イーグルとただ話してただけだぞ?」
「ジャアナンデイーグルハアカクナッテルンデショウネェ?」
「ん?ああ、子供なりに恥ずかしいんじゃね?ほら、イーグル精神年齢子供でも、体格的には大人な訳だし」
「ん!?ねえ!それってイーグルが子供っぽいって事!?」
恭平の言い訳を聞いたイーグルがなぜか突っかかる。
「ソレッテ、ワタシハコドモッポイッテイミデショウカァ?」
「いやお前、どっちかっていう着痩せする方で実際はかなりグラマラス――――」
「見たんですか!?」
突如として顔を赤くして体のある部分を腕で隠すファントム。
「え?図星なの?」
「な・・・・ッ!?」
そしてまさかのお世辞。
「貴方は・・・本当の事しか言えないんですか!?」
「いや俺も狙ってるわけじゃ・・・」
「~~~~!!!」
スパァンッ!!!
乾いた爽快な音が響き渡り、ファントムが荒い足取りで去っていく。
「理不尽・・・」
そして恭平は地面に沈んだ。
その頬には、くっきりと赤い手形が出来ていた。
また、別の日。
「ん?おお慧」
例にもよらず、今日も慧が基地にやってくる。
「あ、恭平さん」
「今日もグリペンの所にか?」
「ええ、まあ・・・」
グリペンは、少々特殊な事情を抱えている。
グリペンは、どういう訳か慧がいなければ三時間しか覚醒していられず、逆に慧が傍にいると十時間以上、即ち普通の人間と同じ時間帯、活動が出来るのだ。
原理は分からないが、理由としては、慧とグリペンの脳波は全くの同じだという事であり、それのお陰で、グリペンの覚醒時間が変わるという事だった。
だから、慧はなるべくグリペンと行動をともにする必要があるのだ。
まあそれはともかく、
(慧の奴、たぶんそれを口実にしてグリペンに会いに来てるんだろうなァ)
内心、ゲスい顔をしていた恭平であった。
「あ」
「ん?」
そこで、恭平はある事を思いだす。
「そうだ慧、お前に言わなくちゃならない事があったわ」
「え?言わなくちゃならない事?」
いつになく真剣な顔の恭平に、慧は、なんとも言えない感覚を覚えた。
「終末派・・・ザイの事を神の使いと称し、ザイの行動を肯定して、世界各国でテロ活動をする過激派集団」
「そんな奴らがいるんですか・・・!?」
グリペンを迎えに行き、グリペンの秘密基地にて、恭平が言った言葉に思わず怒鳴り気味に聞き返してしまう慧。
「いるんだよ。世界の終わりを望んじまうふざけた連中が。教祖と名乗る女を筆頭に、世界中で破壊工作やら人質やら、とにかく軍の動きを抑制するように動いている。だが、最近になって奴らは航空施設と戦力を手に入れた」
「航空施設を・・・?」
「この意味が分かるか?」
恭平が慧に聞く。だが、慧にはいささか難しい話らしく、代わりにグリペンが答える。
「ザイの迎撃戦に介入できるようになった」
「な・・・!?」
その言葉に、慧は驚愕する。
「世界各国で、妨害してくるようでな。初めはロシア、次にフランス、アメリカと出現場所はバラバラ。後で分かった事なんだが、奴ら、世界中の一部の基地を占領してその航空戦力をぶんどって、さらには基地を私物化してたらしい。当然、世界はその基地を占領しかえすなり破棄して爆破しようとした。だが、それらすべてが悉く失敗した・・・・」
「それは、何故・・・・?」
「・・・ドーターだ」
恭平の言葉が、慧に理解されるまでに、時間がかかる。
「奴ら、どういう訳かドーターを所持していやがった。それも一機だけじゃねえ。確認されているだけでも七機」
F-16 ファイティングファルコン。
F-14 トムキャット。
YF-23 ノースロップ。
AV-8B ハリアーⅡ。
ダッソー ミラージュ2000。
MIG-31 フォックスハウンド。
F-35 ライトニングⅡ。
「そんなにいるんですか!?」
「ああ、数的に考えてこちらが完全に不利。世界中のドーターかき集めれば、数の不利は覆せるが、特に、ファイティングファルコンはこの中で断トツの戦闘能力を有している為に、並みのドーターじゃ敵わないとされている。正直言うと、俺も実際に対峙してみない事にはなんとも言えないが、油断はできない」
「なんでドーターがそんな奴らの味方に・・・」
「それは俺が知りたいよ。初期の段階で人類を守る、という価値観があるはずなのに、なんでアイツらは世界をぶっ壊すぞーなんて言っている奴らに味方してんだよ?」
手をひらひらと振ってそう言い返す恭平であったが、やがて俯いて、静かに話を再開する。
「いいか、慧。俺たちの相手は、これからはザイだけじゃない。これからは、イカれた人間どもさえも相手にしなくちゃいけない」
「待ってくださいよ・・・・なんて人間同士で殺し合わなければならないんですか!?今、世界はザイの所為で・・・」
「それが理由だろうな・・・アイツらは、抗う事をやめた連中だ。そして、その諦めを他人に押し付けてくるような奴らだ。だからこそ、俺たちはその悪意と・・・いや、アイツらなりの『正義』と戦わなくちゃいけない。俺たちが世界を守ろうとしているのと同じように、アイツらは、それほど世界を壊したい程の想いがあるんだろう・・・・」
「・・・理解、できません・・・」
「それでいい。いっぱい悩め。そして、悩んだ先にある答えを見つけろ。ただな、いつか、お前の手の中の引き金に、敵の命がかけられる時が来る。その時の判断は、全てお前に委ねられる。お前も、戦う以上は、それは覚悟しておけ」
「・・・」
慧は、自分の手を見る。それは、いつも操縦桿を握る方の手だ。
その様子に、グリペンは心配そうに慧を見ていて、恭平は黙って真っ直ぐにその様子を見据え、やがて微笑み、慧に向かって歩み寄る。
そして、その肩に手を置いて、
「まあ、そんな事が起きないように、俺が隊長として努力するさ。
そう言い残して、恭平は慧の横を抜ける。
「伝えたい事は伝えた。後はお前次第だ。じゃあな」
手を振って、恭平は去っていく。
一方の慧は、その場に立ち尽くし、自分の手を見ていた。
「・・・・慧」
グリペンが、心配そうに慧の顔を覗き込む。
それに気付いた慧は、グリペンを見て、何かを思って、見ていた掌を握りしめる。
「・・・・敵の命」
目の前に、高く固い壁があるように感じた。
秘密基地から、基地への帰り道。恭平の足は、いつもより荒く速かった。
「・・・・絶対にそんな場面には合わせねえよ」
もし、次のザイが現れるというのなら、奴らは必ず出てくる。
奴らは、ザイの行動の為なら、容赦なく敵を撃ち、落とす。
であるならば、慧もグリペンと共に必ず撃ち落とされるだろう。
(何があっても、そんな事にはさせねえ。お前らが俺たちを撃ち落としに来るっていうなら、俺はそうなる前にお前らを撃ち落とす・・・!!)
以前に一度、彼らと戦ったことがあった。
黒い月と剣、そして彼岸花のエンブレムを翼に描いた機体が、基地を襲撃してきた。
奴らの目的は、滑走路の破壊、及び、ファントムの破壊だった。
その事を察知した八代通が、ファントムを一早く飛ばし、そのまま恭平とファントムは戦いを始めた。
だが奴らは、己の命を犠牲にしてでも、こちらを撃ち落とす気だった。
だから、恭平は彼らを撃ち落とした。
完膚なきまでに、全滅させて。
「恭平さん」
ふと、ファントムがそこに立っていた。
その眼差しに、恭平は、ある予感がした。
「・・・・ザイか?」
「はい。すぐに慧さんたちを集めてください」
戦いが始まる――――
次回『リコーナセンス・イン・フォース』