僕のヒーローアカデミア&BEYOND   作:K-ty

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男は一人、椅子に深く腰掛け考え込んでいる。そして目の前のモニターに向かって話し始めた。

 

「弔、ニュースは見たかい?」

 

「あぁ、しっかり見たよ。雄英に侵入してプロヒーロー一人を重症、その後追手のヒーロー八人を返り討ち。辺りは血の海になったとかなってないとかだろ?」

 

「次の計画の為にも今は組織の拡充が必要だよ。言いたいことは分かるかな?」

 

「仲間にしろ、ってことか」

 

「それもあるけどね。彼の“個性”が気になるんだ。雄英侵入時の映像は入手できなかったんだけど、追手のヒーローたちとの交戦時の映像はあるんだ。送るから黒霧たちと見てくれないかな?」

 

「わかった」

 

 

 

死柄木は黒霧と一緒に送られてきた映像を見た。

 

「凄い、の一言ですね。あの太刀のようなものが個性でしょうか?見たところ血液…で形作られてそうですが」

 

「血液操作系の個性か。にしても強い、ヒーロー共が手も足も出てないな。おい黒霧、こいつを連合に入れるかどうか考える前にどこにいるか突き止められるか?」

 

「雄英に侵入してからそれなりに時間が過ぎているのでヒーローたちから逃げるために遠くに移動している可能性もありますが、出来る限り探してみようと思います」

 

そう言って黒霧は個性を使い部屋を出て行った。そして死柄木はふと疑問に思ったことを聞いた。

 

「そういや先生、雄英に侵入したのは二人組なんだろ?もう一人は?」

 

「もう一人は全く情報が掴めていないんだよ。もしかするともう一人と同じように強い個性の持ち主なのかもしれない」

 

「じゃあ他の奴にも探すの手伝うように言っとくか…」

 

「よろしく頼むよ…」

 

男は口元に笑みを浮かべ、また椅子に深く腰掛けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

どうにか空き家を見つけることが出来た二人は、これからどうするかを話し合っていた。

 

「ひとまず場所は確保できたけど、どうします?これから」

 

「連絡が取れるといいんだけどな」

 

その一言でレオが思いだした。

 

「もしかして…」

 

ポケットから連絡用の電話を取り出した。色々と起きていたせいで、今の今までこれを持っていることをすっかり忘れていた。

 

「通じねぇだろ」

 

「試すだけですよ」

 

 

プルルルルルルルルルル…ガチャ

 

 

「レオか?今どこに…る?」

 

「スターフェイズさぁん!?助けてください!ピンチです。黒い渦に吸いこまれて日本に飛ばされて…」

 

「ザ…プが伝え…場…か?」

 

「え?もう一回言ってくれませんか?」

 

「何故…通…が安定…し……い…」

 

その言葉を最後に通信が切れてしまった。その後何回か掛けなおすが一向につながる気配がない。

 

「もしかすると僕たちが最初にいた森に行けば繋がるかも」

 

「んなこと言ってもよ、ほれ見てみろ、外」

 

レオは窓に近づき向かいの道路を見ると、ヒーローっぽい服装をした連中が行ったり来たりしている。どうやら自分たちを探しているらしい。

 

(やばっ…)

 

外にいた一人と目が合いそうになり、すぐにしゃがんだ。しかし、向こうに見られていたらしく、「ここ空き家だよな」や「人影が見えた気がする」といった話声が聞こえてきた。

 

「てめぇ何気付かれてんだよ!?」

 

「すみません…」

 

「下がってろ、俺がやる」

 

レオは近くの押し入れに隠れ、ザップは扉の裏に隠れた。すぐに足音が聞こえてくる。一部屋一部屋確認しているようだ。そして自分たちのいる部屋の前まで来た。

 

「おい!近くでヴィランが暴れてるらしい!俺らも行くぞ!」

 

「マジかよ!?例のあいつらか?急ぐぞ!」

 

騒がしかった足音は遠のき、静けさが戻った。

 

「助かった…んですかね?」

 

「んなことより聞いたか?さっきの会話。“ヴィラン”だってよ。ヒーローにヴィラン、マジでここ日本か?」

 

「何度も言いますけど日本ですよ、たぶん」

 

「自信なくなってんじゃねぇか。それとレオ、この家に変装できそうなものがないか探すぞ」

 

「えっ、ここを出るんスか?」

 

「いいから探すぞ」

 

「了解です…」

 

二人は空き家の中を物色し始めた。その結果見つかったものは衣服が二着と帽子だけだった。はたしてこれで変装が出来るのか…

 

 

 

「完璧だろ?」

 

(ただ服着て帽子被っただけじゃないっスか…)

 

「で、どうするんですか?」

 

「良い作戦があんだよ。俺に任せとけ。お前はここで待っとけよ。できるだろ?」

 

「それぐらい出来ますよ」

 

「もしものことがあったら“眼”でどうにかしろ。いいか?」

 

「え…あ…はい、分かりました…」

 

ザップは渾身の変装にドヤ顔で部屋を出て行った。

 

 

 

「暇…だな」

 

レオは辺りを見回すがこれと言って変わったものはない。ごくごく普通の部屋だ。家具もほとんど置かれていないせいで広く見える。相変わらず外は騒がしいが覗こうとは思わない。またさっきと同じことになったら面倒だからだ。

 

(それにしてもザップさんのいい作戦って何だろう…あまり期待は出来ないけど今はザップさんにかかってるからなぁ)

 

信用したくても信用できない味方の帰還を待ちながら考えていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

会議室は重苦しい空気に包まれていた。誰も口を開かない。その理由は自分たちの同僚がヴィランとの戦闘で重傷を負ってしまったからだ。

 

「俺がもう少し早く着いていたら…クソッ!」

 

机を力任せに叩き、怒りの表情を浮かべたブラドキングをミッドナイトが宥める。

 

「それより校長、二人組はどうやって雄英に侵入出来たんですか?」

 

「セキュリティは万全だったはずさ。でもこうなってしまった。ここの敷地内は多くのカメラがセットされてるけど、その二人組はそのカメラの死角をついて侵入してきたようだね。それに他のカメラに写ってないということはワープ系の個性が考えられる。つまり…」

 

「ヴィラン連合が関わっている可能性がある…と」

 

「ですがワープ系の個性なら二人組は何故走って逃げたのでしょうか?逃げるのもワープなら楽なのに」

 

「まだ情報が少ないからね。けど一人の個性は推測できるよ。これを見てくれるかい?」

 

校長がボタンを押すと天井からスクリーンが出てきた。そしてそこに映像が映し出される。

 

「これは二人組の片方が別のプロヒーローたちが接触した時の映像さ」

 

その映像には追いかけてくるヒーローをいとも簡単に切り伏せる褐色の肌をした青年が映っていた。その手には真っ赤な太刀が握られていたが、急に手元に現れたところを見るに、この太刀がこの男の個性だろう。

 

「血液操作系…ですかね?」

 

「ブラドキングはどう見る?」

 

「俺の個性に似ているがこの映像だけでの判断は早計だろう。しかしこの男…」

 

 

 

「強い…」

 

 

 

全員の視線が一か所に集まる。その中心には最高のヒーローとして名高い男が険しい顔をして座っていた。

 

「動きに無駄がない、それでいて本人は余裕の表情で八人のプロヒーローとの同時戦闘。捕まえるのにはトップヒーロー達の力が必要かもしれない」

 

(オールマイトにここまで言わせるとはね…一体何者なのだろうか)

 

 

 

会議も終わり、部屋の中には校長とオールマイトの二人が残った。

 

「もう少しで林間合宿も始まる、それまでにはこの件を解決できるといいんだけどね」

 

「えぇ、私もそう考えています」

 

「ところでオールマイト、君はさっきの映像の青年を捕まえるには誰が適任だと考えているのかな?」

 

「イレイザーヘッド、シンリンカムイ、エンデヴァーなどを考えています」

 

「なるほど、個性を消して拘束というわけだね。じゃあ私からエンデヴァー伝えておこう」

 

「では」

 

「最後にいいかな?」

 

校長はオールマイトを呼び止めた。

 

「何でしょうか?」

 

「止めても君は行くんだろ?」

 

 

 

「・・・もちろんです」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ザップが戻ってきたのは、出て行ってから三時間後だった。すでに窓の外は真っ暗だ。

 

「遅い!おっそいよ!!あんたどこ歩いてたんだよ!!」

 

「おうおう耳元で叫ぶんじゃねぇ糸目男。ちゃんと戻ってきてやったからいいだろ」

 

「はぁ、で、何か分かりました?」

 

「聞いて驚くなよ?この世界どうやら俺たちがいた世界じゃないみたいだぜ?」

 

「は?どーゆーことですかぁ?」

 

「おい信じてねぇな、俺もまだしっくりきてねぇけどよ」

 

 

 

そこからのザップの話は突拍子もないものだった。この世界は“個性”という名の超能力を持っている人間が世界人口の8割を占め、その個性というものを悪用する人間、つまり『ヴィラン』を取り締まるために『ヒーロー』という職業が実際に存在しているらしい。

 

 

 

「よくそこまで分かりましたね」

 

「見直したか?見直したよな?」

 

「少しだけですけどね。どうやってその情報を?」

 

「ちょちょいと女をナンパして…「もういいです」聞けよ」

 

「あとほら」

 

そう言って投げてきたものは財布だった。

 

「もしかして…あんた」

 

「ちげーよ、借りてきただけだ」

 

「どーせ盗む(かりる)でしょ?」

 

「おいおい俺らは道すら分かんねぇ場所で困ってんだぜ?少しぐらい俺らに協力してもらおうとな」

 

「見直すって言いましたけど撤回で。やっぱりあんた駄目だ」

 

「さて、これからどうすっかだな。こんななにもねぇ部屋に食料もなしに引きこもっても意味ねェし」

 

二人がいる部屋は空き家なので当然真っ暗だ。レオは眼のおかげで問題ないがザップはそんな便利なものを持ってないので、窓から差し込む月明かりと近くの街灯が頼りだ。

 

「暗くなった今のうちに移動する方が良いですかね」

 

「なら食糧調達といこうぜ。お前も腹減っただろ?」

 

「バレずに手に入りますかねぇ…」

 

「任せろ、俺を誰だと思ってんだ?」

 

「クズ」

 

「殺すぞ」

 

 

 

そして二人は空き家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その二人の様子を観察する三つの影。

 

「ようやく見つけましたよ」

 

「白い髪の人、好みです!」

 

「おうおう、弱そうじゃねえか!」

 

 

 

 

 

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