僕のヒーローアカデミア&BEYOND   作:K-ty

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間が空いてしまいました。


File.4

「何者だ、貴様」

 

エンデヴァーは、自分の炎をいとも簡単に防いだ氷の男に興味を示した。

 

「うーん何者か…ね。この二人の上司かな」

 

颯爽と現れたその男は、ライブラの構成員の一人であり、リーダーの副官的存在でもあるスティーブン・A・スターフェイズだった。

 

「いやーうちの部下が迷子になったと聞いてね、その迎えに」

 

そう言ってはいるが、隙など微塵も感じさせないその姿には強者特有のオーラが溢れている。

 

「させん。その男は傷害罪、不法侵入、強姦未遂、窃盗、その他諸々の罪で指名手配中だ」

 

「本当かい?ザップ」

 

スターフェイズはまたか、といった目でザップを見る。

 

「えっ…あー、いやーその…やってませんよ!いきなりこんなとこに飛ばされて。そんなことするわけないじゃないですか…!はははー」

 

「はぁ、やっぱり君はクズ人間だな(ザップがそう言うのなら信じることにしよう)」

 

「本音が出てますよ…」

 

「おっと、話は後だ。レオを連れてこの機械が示す場所へ向かってくれ」

 

そう言って投げてきた機械をキャッチしたが、ザップには使い方がよくわかっていないようだ。

 

「けど、レオの野郎が…」

 

「そこは問題ない。走れ、ザップ」

 

ザップの視界に入ってきたのは、氷漬けにされかけている樹木人間の姿と、「もう少し周りを見ろ」と言いたそうな顔をしたレオだ。

 

「ザップさん、急いでくださいよ!」

 

「うっせぇ!この陰毛クソ糸目が!何呑気に捕まってんだよ!」

 

「はいはい、後で聞きますから!スターフェイズさんも気をつけてください!!」

 

「任せろ」

 

 

 

他にもヒーローがいないか周囲を気にしながら二人は駆け出した。

 

 

 

「お前は俺を誰だか理解しているのか?」

 

「知らないな」

 

(見たところ外国人だが…そんな奴らが何のために雄英に…)

 

「あいつらの関係者ならお前も逮捕だ。覚悟しろ」

 

 

 

炎の拳と氷の足。相反する力を持つ二人がぶつかった。

 

 

 

次々に炎の塊が飛んでくるがそれを簡単に躱す。反撃に出ようと考えるも、相手の男は全身を炎で覆っているせいで不用意に近づけない。

 

 

 

『赫灼熱拳ジェットバーン!!』

 

 

絶対零度の剣(エスパーダデルセロアブソルート)

 

 

 

灼熱の拳と絶対零度の蹴りがぶつかり、辺りが水蒸気で白く染まった。それでも二人は止まらない。次々に繰り出される技に建物が耐えられなくなったのか、天井が崩れ始めている。

 

 

 

(今までの中でもトップクラスに強いヴィランかもしれないな…だが負けん)

 

 

 

「これで終わりだ…!!」

 

灼熱を推進力にし、全てを掛けた一撃がスターフェイズに迫る。しかし、その攻撃が届くことはなかった。

 

 

 

絶対零度の小針(アグハデルセロアブソルート)

 

 

 

「何ッ!?」

 

灼熱の炎を纏っていたエンデヴァーの体は一瞬で凍り付き、身動き一つ取れなくなった。

 

「まさかこの僕が何も考えずに君に攻撃を仕掛けていたと思うかい?さっきの殴り合いの時に仕掛けさせてもらったよ。おっと、動くと割れるから慎重に、少しずつ溶かせば死ぬことはないからそこの樹木っぽい人に頼むといい」

 

「貴様…何が目的だ!」

 

「目的?さっき言わなかったかな?迷子になった部下を探しに来た、って」

 

 

 

スターフェイズは凍り付いた男を残し、崩れかけの工場を出て行った。その後工場内に男の唸り声が響いたがそれを聞いていた者は誰もいない。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「その機械はどこを指してんだ?」

 

「見た感じだと…ここから3キロぐらい…ですね」

 

「じゃあ急ぐぞ」

 

二人は走る速度を上げようとした時だった。背後からの不気味な気配に足が止まる。振り返ると、大方予想通りの二人が立っていた。死柄木と黒霧だ。

 

「どうだった?エンデヴァーは殺れたか?」

 

「俺をなめんなよ?朝一のニュースを見れば分かるぜ」

 

その言葉に満足したのか、黒霧が頷く。

 

「ではお二人とも、一度アジトへ戻りましょう」

 

「あー、それがよぉ。少し用事が出来たんだ。後でいいか?」

 

レオは、その言葉を聞いた死柄木の表情が少し変わったような気がしたが、一瞬のことであまり気に留めなかった。

 

 

 

「駄目だ」

 

 

 

自分たちに不用意に動いてもらいたくないからなのか、それとも実際に別の用事があるからなのか、それを知るためにレオは問いかけた。

 

「何かあるんですか?」

 

「“先生”がお前たちを呼んでる。だから行け」

 

死柄木の言う先生とは誰なのか。もしかすると死柄木や黒霧が所属している“ヴィラン連合”のリーダー的存在かもしれない。あくまで推測だが…

 

どうします?といった表情でザップの方を見るが、その表情から見るに「やめとけ」と言っているようだ。

 

「すみません、また今度…」

 

言葉を言い終わる前に黒霧が動いた。黒い霧が四方から迫ってくる。

 

「ザップさん!?」

 

「行くしかねぇみてぇだな」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

黒い霧を抜けると、謎の広い場所に出た。綺麗な立方体で、自分が箱の中に入れられたと錯覚するほどの空間だ。辺りを見回しても出口は見当たらない。完全な密室になっている。そんな空間に男が一人立っていた。この白い空間で異質ともとれる真っ黒な男だ。

 

「君たちが例の二人組か。会いたかったよ」

 

奇妙なドクロのマスクの下から声が聞こえてきた。

 

「あんたが“先生”か?」

 

「そうだね。裏では“オール・フォー・ワン”で通ってるよ。聞いたことはないかい?」

 

「ねぇな」

 

「そうか…」

 

先生と呼ばれる男と会話していたザップは、離れてはいるが後ろにいる死柄木と黒霧にも注意していた。

 

「じゃあもう一つ質問だよ。レオナルド君、君は個性を…いや、個性に似た何かを持っている。そうだろう?」

 

「…ッ!?」

 

「で、おっさんは俺らに何の用だ?」

 

「何の用?さっきも言ったじゃないか。一度会ってみたかったからだよ。それに君たち二人は連合に加入している。上司が部下の視察に来ることにおかしいところはあるかな?まさか君たちがどこかの『スパイ』なら話は別だけどね」

 

レオの全身を悪寒が駆け巡った。目の前の男から発せられるプレッシャーから逃げ出したいが、足が動かない。しかし、もう一人は違った。

 

「スパイ?んなわけねぇだろ。俺ら今から用事があんだよ。帰るぞ?」

 

帰ると言ったはいいものの出口も見当たらない。この空間から出るには入ってきたときのように黒霧に頼むしかないのだろう。

 

「黒霧、頼むわ」

 

「・・・・・」

 

一言も発さない黒霧を置いて、“先生”が口を開いた。

 

「ザップ君にレオナルド君、今から君たちを試す。無事に合格出来たら次の計画の重要な役を任せようと考えてるよ。いいかな?」

 

「拒否権は無いってことか?」

 

「信頼できる証を見せて欲しいんだ。分かるだろう?」

 

「確かに、こういった組織は互いの信頼が重要だな。ああ、いいぜ」

 

話を勝手に進めていくザップを横目に、レオはどうやってここを抜け出そうか考えていた。しかし、まったくいい案が浮かばない。やはり、今は目の前の男の言う試験のようなものをクリアしないといけないというわけだ。

 

「弔、黒霧。先に戻ってくれないかな?」

 

「分かった。行くぞ黒霧」

 

「そうですね」

 

二人はこの密室の空間から出て行った。そして残った三人。

 

 

 

「さて、ルールを説明するよ。とは言っても単純だからそう構えないで欲しい」

 

「早くしてくれ。俺も忙しいんだよ」

 

その言葉を聞くと同時に、男の背後の空間が揺らいだ。そしてそこから飛び出してきたものは…

 

「君たちの試験は簡単、この“脳無”を戦闘不能に出来るか否か。それと一応聞いておくけど、一人ずつ戦うか二人で共に戦うか、どちらがお好みかな?」

 

「二人でいいぜ。と言ってもどうせこいつに戦闘能力なんてないし実質一人なんだけどな」

 

「じゃあ始めようか」

 

先生の後ろから飛び出して来たのは、2メートルを超える筋骨隆々な男だった。いや、男なのだろうか。脳がむき出しになっており、気持ち悪いという感想しか出てこない。

 

「下がってろ、レオ。秒で片づけてやるぜ。お前は後ろで脱出の方法でも考えておけよ」

 

「わ、分かりました…」

 

 

 

レオは、過去に今の状況以上にヤバい事件に何度も巻き込まれている。他のメンバーのおかげでもあるのだが、レオのが活躍で解決した事件も少なくない。それも全てこの“義眼”のおかげだ。これがなければライブラの一員になることも無かったし、それどころか真っ先に命を落としていただろう。

 

しかし、この義眼がいくら神のような能力を持っていても全くの無意味になってしまう相手が存在する。それが目の前に立っているドクロのマスクをかぶった男だ。

 

ザップはそのマスクのせいで気づいていないだろうが、レオの眼にはマスクを透過し、男の顔がしっかりと視えている。

 

 

 

目が無い。

 

 

 

目どころか鼻もない。文字通り口から上が何もないのだ。髪もなくただの皮膚一枚。何かの後遺症、もしくはこの世界で言う“個性”の一つなのかもしれない。

 

己の能力を過信しているわけでは無いが、目の前の圧倒的な存在感に対して少しの対抗手段は欲しかった。しかし、目を持たない相手にレオの義眼は通用しないだろう。

 

 

 

レオの傍を白いものが横切った。すぐに振り返るとザップが壁に埋まっている。

 

「ザップさん!!」

 

「チッ、油断したぜ。切って終わりと思ったら再生しやがった」

 

すぐに立ち上がり、口元の血を手で拭いながらレオの横に来た。

 

「驚きの一言だね、今の一撃で死なないなんて。オールマイトを想定して作られた脳無なんだけど調整を間違えたかな?」

 

「ンなもん旦那の拳に比べりゃ笑いが出るぜ。つうか試験なのに殺すつもりなのかよ」

 

「簡単な試験だとつまらないだろう?それと君の言う『旦那』という人は実に興味深いね。是非とも会ってみたいよ」

 

マスク越しにもその男が笑っているのがわかる。

 

「そうか」

 

「じゃあ試験再開だ」

 

その言葉と共に脳無が突っ込んできた。レオの頭ほどの大きさの拳が迫ってくるが、ザップが太刀でそれを受け止める。

 

「中々のパワーに再生力。けどよ、そんなんじゃ生き残れねぇぜ。俺らの街ではなぁ!!!」

 

ザップの腕が何重にも見えるほどの高速の斬撃。脳無が細切れになっていく。だが、それでも再生力が勝っているようだ。少しずつだが脳無が元の形に戻りつつある。

 

「最高傑作の一つだよ。試験の難易度を上げすぎたかな?」

 

「笑わせんな」

 

ザップの動きが止まった。脳無はザップの血液から作り出された糸で縛られ動きが制限されている。だが、すぐにでも抜け出しそうだ。

 

「レオ、もっと下がれ」

 

「はい!」

 

十分に離れたのを確認したザップは脳無に視界を移した。

 

「レオ、一瞬だぜ」

 

「勝てるんですか?」

 

「ああ、さっきので分かった」

 

 

 

(こんなとこで躓いてたら師匠に殺されるな…確実に)

 

 

 

ザップは立ったまま動かなかった。そして、脳無を縛る糸を解除した。人間を簡単に肉塊変えてしまうほどの力を持った拳がザップに迫る。だが、その拳がザップに届くことはなかった。

 

ザップは全く動いていない。さっきと変わらずその場に立ったままだ。そして、変化があったのは脳無の方だ。拳から腕、肩から胴体へとまるで砂のようにその体が崩れていった。

 

「一体何が…」

 

驚く男と対照的に、レオは何が起きたかを把握していた。ザップが何をしたのか、答えはシンプル。

 

 

 

「俺が持てる限りの力で細切れにしてやったぜ。細胞レベルで切っちまったら再生できねぇだろ?」

 

 

 

ほとんどの人間が知覚すら出来ないほどに超人的な速度の斬撃。レオは、久々にこの男がバケモノだと実感した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「すまないクラウス。ザップとレオを見失った。黒い霧のようなものに包まれるのを遠目に見たが間に合わなかった」

 

『私の方の機器で二人の座標を確認できた。君より私の方が近い。私が向かう」

 

「じゃあこっちはあの場所に戻るよ。固定は出来たのかな?」

 

『K・Kとツェッドに頑張ってもらっている。二人の回収までは間に合う計算だ』

 

「実に頼もしいね。じゃあ今から戻ると伝えておいてくれないか?」

 

『了解した』

 

通話を終了したクラウスは、他のメンバーにレオとザップを回収してくると伝え、駆け出した。

 

(二人とも…無事でいてくれ!)

 

 

 

 

 

「座標はではこの辺りのはずだが…」

 

住宅街から少し外れた場所に出た。住宅もまばらだ。

 

「むっ、丁度いいところに」

 

クラウスはこちら側に歩いてくる男を見つけた。服装が少しおかしいが、ヘルサレムズ・ロットではこれ以上におかしい見た目の生き物が跋扈しているのでさほど気にならない。

 

「一つ訪ねたいことがあるのですがいいでしょうか?」

 

「困りごとですか?私がすぐに解決しますよ」

 

男は白く輝く歯を見せながらとびっきりのスマイルでこちらを見てきた。

 

「この二人を探しているのですが、見かけなかったでしょうか?」

 

クラウスは、ザップとレオの写真を見せた。

 

「…ッ!?おっと失礼。この二人とはどのような関係ですか?」

 

「関係…と言われますと、『大切な仲間』ですかね」

 

「なるほど、私もあまり私情を挟みたくはないのだが…」

 

クラウスは相手の威圧感にすぐさま距離を取った。何故敵意を向けられているのか頭を回転させるが、思い当たるものはない。

 

「ま、待つのだ!私は貴殿と戦うつもりなどない!」

 

 

 

 

 

「よくも私の同僚を…!話を聞かせてもらうぞ!!ヴィランッ!!」

 

 

 

 

 




クラウスさん、とばっちりを受ける。
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