俺は、アリス・シンセシス・サーティを愛している!!! 作:アリスみたいなヒロイン好き
文章の内容とかちょくちょく変えたりしてますが見切り発車なのでお許しください。
それではどうぞ
「……うん、治った」
団長の部屋から退出し自室に戻った俺は、先ほど破裂した右目を治療し治ったことを鏡で確認していた。
幸いにもアリスから借りた手布で血を拭いたのと、道中誰とも会わなかった為、迅速に治療ができた。
貰っていなくても治療に問題はなかったけど、その優しさが嬉しい。
それにしても、人を愛すると右目が吹き飛ぶとか……平民の恋愛結婚って相当大変なのではないだろうか?
「まあ、傷は治っても痛みと疲労は残るか」
治療を行ったといっても、俺の場合武装完全支配術の
このアンダーワルドの人界では神聖術と呼ばれる空間リソースを消費することで発動できる魔法があるのだが、俺の場合そちらを使用せず、
ちなみに、神器とは整合騎士が誰もが持つ武具で、それぞれ元となった素材がある。
その素材の力を開放するのが、武装完全支配術である。
団長であれば時計の針とか、デュソルバートさんだと不死鳥とか。
俺の神器の素材はよくわからず、以前
うん、意味が分からん。
そのよくわからん素材のせいか使用しても天命が減らなかったりして、便利ではあるのだが。
「まあ、疲労といってもさして気にするほどでもないな」
正直、毎日のように襲ってきた暗黒界の連中を相手していた時に比べれば余裕がある。
ブラック業務に何十年も耐えた俺の精神力なめるなよ?
「とりあえず、団長の部屋に戻──」
「おォっと、その前によろいしいですかぁ0号?」
団長の部屋に戻るため、扉を開けてみようとした所、奇妙な声が扉の外から聞こえた。
その声に、聞き覚えがある俺はまたかと内心溜息を突きながら扉を開け返事をした。
「……元老長殿か如何様な用事で?」
扉の先には予想通りの肥満体質でピエロのような男──公理教会元老長チュデルキンがいた。
「最高司祭猊下ァがお呼びですよォー!!態々呼びに来てあげたのですからァとっときなさい0号!!」
「……わかりました」
このデブは正直いけ好かないのだが、一応俺の上司である団長の上司(公理教会No.2)に当たる為、最低限の礼儀は尽くさなければいけないのが本当に嫌だ。
何せこいつ、人の呼び方を番号で呼ぶのだ。
いくら名前に番号が付くとは言えイラつくなという方が無理である。
……それにしてもあの
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界の首都「央都セントリア」の中心に存在する、公理教会の本拠地セントラル=カセドラル。
その最上階にその女、アドミニストレータはいた。
見る物が見れば一瞬で魅了されるであろう魔性笑みを浮かべ、男であれば興奮せざるを得ない服を一糸まとわぬ姿で、目の前に騎士の礼をとって座すレイジに声をかける。
「ふふふ、来てくれてありがとう、レイジ」
「……いえ、
「ねえ、いつも思うのだけれどあなたに最高司祭って呼ばれるとイラっとくるのは何でかしら?」
「……さあ?」
流石の最高司祭であっても人の心のうちまでは読み通せないのでレイジの内心の呼び方までは知る由もないのだが、わずかにでも感ずくのは何百年も生きた経験か、女の感か……
「……まあ、いいわ。さて、今回呼び出した理由なのだけれど貴方、右目が吹き飛んだそうね。見たところもう治したようだけれど」
怪訝そうな顔をしながらアドミニストレータは目の前にいるレイジを見下ろす。
右目が吹き飛んだはずなのにもはや傷一つない顔を見れば異常がない様に思える。
だが、この女は知っていた。
自身が仕掛けた
「治療して上げようかと思ったのだけれど必要なさそうね……まあ、でも念のために見せてくれないかしら」
「……わかりました」
無論この女は本音では、そんなことをひとかけらも思っていない。
むしろその治療のどさくさに紛れてもう一度仕掛けようとさえ思っていた。
何せ目の前の男は、ある意味アドミニストレータが生み出した整合騎士の最高傑作にして、現状この世界唯一のイレギュラー。
アドミニストレータの切り札であると同時に、自身を滅ぼしうる数少ない存在である。
そんな者を首輪もつけずに放置なんてマネは危なっかしくてできるわけがない。
その為、どうにかもう一度首輪をつけようとするが───
「……チィ」
「……?どうかされましたか」
「………なんでもないわ」
できなかった。
そして、こんなことは初めてではなかった。
どう言うわけか、目の前の男にはアドミニストレータの術式を刻むということができなかった。
無論最初からこうだった訳ではない。
最初からそうであれば、右目の封印はおろか儀式も成功しなかったはずだ。
そして、その理由もおおよそ予想がついている。
アドミニストレータはチラリとレイジの腰に携えられている神器の剣を見る。
レイジ以外は扱えず、アリスの手にした神器「金木犀の剣」よりもはるかに貴重で強力な──最強の神器。
その力が何らかの形でレイジに干渉しているせいでアドミニストレータの術式を阻害しているのではないかと予想していた。
とはいえ、その神器を取り上げて術式を刻もうとしても同じようにはじかれてしまう為、アドミニストレータも確信を持てずにいる。
「……まあ、いいわ。それで何があったのかしら?右目が吹き飛ぶなんて普通起きないでしょう?」
アドミニストレータは一先ず、レイジに術式を刻むのを一旦保留にし自身の仕掛けた右目の封印を破った原因を探ることにした。
その原因が分かれば、そちらに何らかの形で束縛すれば目の前の男も従えると考えて。
「一目惚れをしました」
「…………うん?ごめんなさい。もう一度言ってもらえるかしら」
「だから、アリスに一目惚れをしました」
「───えっ?」
アドミニストレータは絶句せざるを得なかった。
別に目の前の存在が、人形に一目惚れするのは良い。
それ自体は滑稽なことだと笑え、酒のつまみの一つにでもできる。
けれどそれが理由で封印が破れるとかいうのは意味が分からなかった。
「……他には?」
「他にですか?……気持ちが抑えられず告白したぐらいでしょうか?」
「貴方バカね」
アドミニストレータは思わず反射的に突っ込んでしまった。
少なくとも一目惚れをして気持ちが抑えられず告白するなんて真似そうそうしない。
少なくとも自分が貴族だったころそんなことしてくる奴いなかったと。
「……まあ、いいわ。傷も問題がないようだしこのまま持ち場に戻りなさい」
馬鹿さ加減に呆れ半分、その理由であれば
だが───
「ああ、それですがお断りします」
「──はぁ!?」
断れた。
今まで自分が命じれば淡々と命令をこなしてきたというのに。
そのことにアドミニストレータは警戒を露わにする。
今までは、危険であったものの自分に従順だった故に見逃していたが、そうでないなら話は別だ。
すぐにでも消すか、何らかの対処をしなければならない。
「……理由を聞いてもいいかしら?」
アドミニストレータは会話の引き延ばしによる時間稼ぎで、目の前の男に不意打ちを仕掛ける準備をしようとする。
だが、続いてレイジの口から出てきた言葉でその行動を止めざるを得なかった。
「アリスの傍に出来るだけ居たいからですが?」
レイジは、何を変なことを聞くのだといわんばかりの表情をしているが、変なことを言っているのはお前だと内心アドミニストレータは突っ込む。
Q:「なんで仕事に戻らないの?」
A:「東の大門勤務に戻るとアリスの傍に入れないので嫌です」
つまりこう言っているのだ。
──アホかと思った、アドミニストレータを攻める者はいないだろう。
「……貴方、あそこが抜かれたら暗黒界から攻め込まれるのわかってるわよね?」
アドミニストレータとしては色々と準備が整うまでは東の大門を抜けられるのは困るのだ。
だが──
「ええ。で、それが?ま、受け入れてくれないなら仕方ありません。受け入れてくれるまでストライキします。一切仕事しないのでそのおつもりでいてください」
「………」
レイジの発言に、アドミニストレータは無言で頭を抱えた。
惚れた人の傍にいる理由よりも優先する理由があるのかと遠回しにいているのだが、そこまで入れ込むか普通と思う。
だが、同時に内心安堵する。
目の前のバカは自分に反逆の意思を固めたりした訳ではないことがわかったからだ。
その為、アドミニストレータは思考する。
目の前のバカが妥協するラインで東の大門に向かわせるラインを。
「……なら、定期的に東の大門に行って暗黒界の連中を間引きなさい」
「………………………………まあ、それなら」
大分悩んだが一応了承したらしい。
なんで一人の人形が増えただけでここまで苦労しないといけないのか、と内心アドミニストレータは愚痴る。
が、そもそも、整合騎士が少ないのは選定理由が四帝国統一大会に優勝した貴族の子弟と、禁忌目録に違反して連行された罪人である為だ。
そして、禁忌目録自体はアドミニストレータが自分と同等の権限を持つ者の存在を嫌がり制定した法なのだ。
完全に自業自得である。
「……なら、もう行っていいわ。あと、分かってるでしょうけど、くれぐれもセントラル・カセドラルにいる間は、貴方は武装完全支配術を使うのは禁止よ」
「ええ、分かっています。それでは」
そう言って、レイジは退出する。
その様子を見届け、アドミニストレータは──
「……もう寝る」
ふて寝した。
**************
俺は、
というか本来、傷を治してすぐに行く予定だったのに余計な邪魔が入ったわ。
……アリスには本当に申し訳ないことをしたよ。
団長は別にいいや。
というか、(剣の神器の方の)武装完全支配術を使うなって当たり前だろ。
物騒すぎる。
「まさか、前にやらかして以来ずっと根に持ってるのか?どんだけだよ」
……まあ、思考を切り替えよう。
あんな婆に思考を割くなんて嫌だし。
これから、アリスに会うわけなのでもう少しちゃんとした挨拶とかお詫びとか考えないと。
そうやって考えながら歩いているとそう時間がかからずに団長の部屋にたどり着く。
最上階である100階の最高司祭の部屋からある程度階をショートカットできる階段が作られたおかげで俺は、ピエロ野郎とは会わずに済む。
正直、あんまり会いたくないのでうれしい配慮だ。
「団長、レイジ・シンセシス・ゼロ戻りました」
「おお、遅かったな。何かあったのか?」
戻て来た事を告げ、扉を開けると若干心配そうな顔をした団長と若干こちらを見る目が厳しいアリスがいる。
うん、治療になんでこんなに時間かけるとか思われてそう。
アリスの目線で胸が痛いが、心配してくれた団長の疑念を晴らすほうが大事だ。
「いえ、
「なっ!?」
うん、なんでアリスはそんなに驚いてるの?
団長も団長で心配そうな顔から怪訝そうにしてるし。
「あー……それで?」
「いえ、東の大門に今すぐ戻れと言われたので丁重にお断りしてきました」
「「はぁっ!?」」
なんで、そんなにころころと表情変えるの二人とも?
アリスのハトが豆鉄砲を食らったかのような表情はかわいいけどさ。
「まあ、最終的に定期的に行ってくるってことで妥協しましたが」
「………そ、そうか」
うん、ちゃんとブラック業務からホワイト業務に転属できましたよ!!
……二人ともだからなんで何やってるんだコイツ的な目で見てくるの?
「まあ、そういうことで団長。軽い仕事ください」
まあ、これでホワイト業務して合間にアリスをデートに誘ったりができるぜ!!
ちなみにピエロはレイジが謁見している間は退出させられてます。
理由は下手にあおってレイジが切れたら面倒という露出狂の判断で。
次回ようやくアリスと本格的に絡めそう……