(CV:中田譲治)
21世紀、世界の麻雀競技人口は1億人の大台を突破。
日本でも大規模な全国大会が毎年開催され、プロに直結する成績を残すべく高校麻雀部員達が覇を競っていた。
これはその頂点を目指す少女達……を支える一人の男の間違ったラブコメの軌跡……。
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〈比企谷side〉
比企谷「マッ缶……飲みてぇな……」
春先にしては少々寒い風が体に染み、ふとそんな本音がぽろっと漏れる。だったら買えばいいだろ!とどこかの元コマンドーなら言うのかもしれないがそうはいかない事情がある。
何しろここは魔境、長野だからな。
なぜ魔境かというと、どうやら女子高生の麻雀選手でとびっきり強いのが居るから、と小町が言っていたがよくわからん。女子の話など俺が知るはずがない。俺レベルのプロぼっちになると女子と関わろうものなら、引かれるどころかむしろ気づかれないまである。プロぼっちは高いステルス性能も身に付けているわけだ…、いや存在感薄いだけだな、うん間違いない。それに……
……それに、もう麻雀は辞めたしな。
千葉から長野への引っ越しについて俺に知らされたのは、高校受験も近い1月頃だった。親父の仕事の都合らしいが、俺に伝えるのは忘れていたらしい。まあ、俺に別れを伝える友達はいないからな、問題ない。いや受験校とかどうするんだよ、公立しか受けれねえじゃねえか、大問題だ。
そこからなんやかんやあって、結局登下校の楽な住む予定の場所から近い高校に合格した。なんやかんやはなんやかんやだ、それ以上でもそれ以下でもない。
中学の卒業式を終えたらすぐ移住した。亡くなった母方の祖父母の家を譲り受ける形とはいえ変わらず一軒家に住めたのは運が良かった、気兼ねなく家でダラダラできる。
そして、入学式のための登校している今に至る。誰に説明しているかって?気にするな、ぼっち特有の脳内自分語りだ。にしても早く家を出過ぎたな、学校に着いたら読みかけのラノベでも……とぼーっと考えていると向かい側の歩道の犬の首輪が外れた。 ………何か嫌な予感がした。
案の定その犬は道路に飛び出し、車に轢かれそうになる。
???「ピリカが……!!」
飼い主らしき人が動き出す前に勝手に身体が動いて……犬を助けようと飛び出した。
???「本当にありがとうございました!」
飼い主らしき女子高生が深々と頭を下げる。犬を庇って入院……などにはならず、無傷で犬を助けることはできた。入院するかと思った?それで学校のグループ形成に遅れるかと思った?残念、そんな事関係なしに俺はぼっちになる。これが運命石の扉の選択か。
比企谷「気にすんな、体が勝手に動いただけだ」
???「いえ、気にします。私の大事な家族を助けてもらえたんですから!」
比企谷「お、おう…、しかしだな……」
真面目な顔で寄るな、近い近い近い。匂いもいい匂いするから。しかも大きい2つのメロンが揺れて……っ。必死に顔を逸らしながら後ろに下がる。
???「制服を見るに同じ高校のようですし、今度お礼を学校でさせてください。……迷惑でしたら、しませんが……」
飼い主がしょぼんとした表情をする。そんな顔されたら断るに断れないだろ…。
比企谷「……まあ、別に構わないぞ。特に迷惑な事なんて、ないからな」
???「…! ありがとうございます! あ、まだ名前を名乗ってませんでしたね。
私は原村和と言います。あなたのお名前は?」
犬の飼い主は、麻雀の中学大会ことインターミドルの全国チャンピオンだった。
???「ーーーーきがやくん、比企谷くん、起きてください。」
体を揺さぶられ、机にもたれかかっていた身体を起こし浅い眠りから覚めた。
和「もうすぐ入学式の時間ですよ?」
前の席に座っている原村からそう声をかけられる。
朝会ったあのインターミドルチャンピオン原村は同じ学年の上に同じクラス、1-2組だった。その上名字が「は」と「ひ」で並んでしまっているので席まで前後になってしまったわけだ。全国的にもアイドル的な人気を誇る原村と知り合った上に席が前後、普通の男子なら泣いて喜ぶような展開だろうがぼっちの俺には非常に辛い状況だ。むしろこの状況に勘違いして原村に告白してフられるまである。フられちゃうのかよ。
目が覚めてきてよく見回すと、原村席の前に居た両側に髪を軽く束ねた小さい女子がじっとこちらを見ていた。おおよそ俺のような目が腐っている男が原村と居るもんだから俺を警戒してる原村の友人…といったところか?
???「こいつがのどちゃんの言ってた王子様か!」
和「優希!? そんな事言ってませんよ!?」
原村が顔を赤くしながら急いで訂正している。顔が赤くなるほど怒っているのか、まあ相手が俺だから仕方ない。そしてこの原村の友人「優希」と呼ばれていた女は指をぴしっと立てて俺を指差していた。おそらく、朝の出来事を原村から聞いたのだろう。…どうでもいいがこいつの声、典型的なアニメボイスだな…。この声でツンデレでもすれば相当ヒットしそうなものだが。
???「そこの腐った目ののどちゃんの王子様!名前は何だじぇ!」
比企谷「腐った目は余計だ……。それと、名前を聞くときは自分から名乗れと教わらなかったか?」
???「ぐぬぬ……腐った目のくせにやり手だじぇ…!」
優希とかいう女は拳を握って悔しそうなポーズを取っている。もしかしてこいつ…アホの子か?もしかしなくてもアホの子かもしれん。というか「じぇ」って何だ?海女さんから理由あってアイドルになるの?あ◯ちゃんなの?じぇじぇじぇなの?いや、声的にツンデレお嬢様アイドルとかしてそうではあるけど。
和「こら、優希?そんな事言ったらダメですよ?それと名前をちゃんと名乗ってください。」
???「うっ…わかったじぇ、のどちゃん……
私は片岡優希!のどちゃんとは中学からの親友で、一緒に麻雀部に入ってたじぇ!クラスは1-1!好きなものはタコス!タコスのことならなんでもおまかせあれ、だじぇ!」
タコスっていうとあれか、メキシコ料理のやつか。しかしなんでタコス?ヤシの実頭に当たったらタコス!って言うためなのん?そして、やはりというかこいつも麻雀はするのか……。
比企谷「片岡か、俺は比企谷八幡だ。」
優希「……それだけか?」
比企谷「それだけだ、むしろこれ以上必要なことはないだろう?」
優希「いや、ある!ありありありまくりだじぇ!例えばそう、タコスは好きかLIKEか愛しているか?とか!」
比企谷「肯定の意見しかねえじゃねえか、嫌いだったらどうすればいいんだよ…というかタコス食ったこと無いから好きも嫌いもな…」
優希「な、なにーー!!?? タコスを食べたことないじぇーー!!??」
比企谷「声がでかいうるさい目立つだからやめろボリューム下げろ、むしろタコスを食べる機会って普通は無くないか…?」
優希「むむ……そこまで言うなら今日にでも」
和「優希?そろそろ教室に戻らないと入学式早々遅刻扱いになっちゃいますよ?」
原村が時計をちらと見ながら片岡に急かした。俺が起こされたのもそもそも入学式の時間に近いからだったしな。
優希「それはまずいじぇ!! よし、じゃあ……えっと、名前……思い出した、八幡!入学式が終わったら私たちと一緒に昼ごはんを食べることを許可するじぇ!そこで八幡にもタコスの美味しさを思い知らせてやるじぇー! ではのどちゃん、八幡、さらばっ!」
比企谷「おいまだ行くとは言ってないし、名前も………行っちまった、なんでいきなり名前呼びなんだよ……」
和「優希がすみません…いつもあんな調子なので… ただでさえ朝ご迷惑をかけてしまったのに、また…」
比企谷「いや、原村が謝ることじゃないだろ、気にするな。 それに別にあいつと話すのも嫌なわけじゃなかったしな」
和「ありがとうございます、比企谷くん」
原村がにこと笑顔をこちらに向けた。いや何ちょっと可愛すぎません?何その笑顔反則じゃないですか?さすが全国でアイドル並みの人気の原村だ、そんな笑顔されたらプロぼっちの俺でも勘違いして(ry
比企谷「しょんなことより、なんで昼にタコスなんだ? あいちゅは弁当代わりにタコスでも持ってきてるのか?貰うのは申し訳にゃいが……」
噛んだ……噛みまくった………、恥ずかしすぎる。原村も笑ってるし…穴がなくても掘って入りたい。
和「ふふっ……す、すみません。えっと、確かに優希は無類のタコス好きなのでお弁当にタコスを持ってきてるというのもあります。でも、それとは別の理由があるんです。ここの食堂ではタコスが頼めるんですよ。」
比企谷「…マジで?」
和「マジです。」
マジかー…そんな学校があるんだな、しかも公立なのに…。この分だともしかするとマッ缶とか売店にあるのではないだろうか?流石にないか?……ん、食堂にタコス…?
比企谷「……まさか、片岡がこの学校入ったのは食堂にタコスにあったから、とかじゃないよな……?」
和「……そのまさかです」
比企谷「Oh……」
まさか食べ物で進学先を選ぶ人がいるとはな……いや、俺ももしマッ缶があればそれで選んだかもしれん。人のこと言えないな……。
和「えっと…それで、食堂の件はどうしますか?無理にとは言いませんが…私も比企谷くんとお昼ご飯は、食べたいです。」
また笑顔だ。小町に聞いた限りでは原村はテレビ前であまり笑顔を見せない…どちらかと言うとクールなタイプだと言ってた気がするんだが……そんなことはないのかもしれんな。
比企谷「どちらにせよ、今日は食堂か売店で昼御飯済ませるつもりだったしな……。味も見ておきたいし、まあその言葉に甘えておく。」
和「ありがとうございます。よかったらその後も一緒にどうですか? 優希と部活見学周りをする予定なのですが…」
比企谷「あー…誘いは嬉しいが、俺は帰宅部のエースを目指していてだな…」
和「あれ、ここの学校は部活は2年になるまで強制ではありませんか?」
比企谷「なん……だと……!?」
俺の帰宅部の夢が……自宅で悠々とする夢が……素敵なぼっちライフ計画が……
はちまんはめのまえがまっくらになった
結局、俺は麻雀部に入ることになってしまうのだが、それは次の話で。
あ、タコスは普通にうまかったぞ、びっくりした。しかも売店には何故かマッ缶もがあった。ここは天国か………。
続く?