やはり俺が麻雀をするのはまちがっている。   作:至福のひと時

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やはり俺が麻雀をするのはまちがっている。2

前回のあらすじ

 

 

 

 

俺の夢だった帰宅部エースへの道が閉ざされた

 

はちまんはめのまえがまっくらになった

 

だがフェ二ッ◯スの尾よろしく、まさかのマッ缶で復活!

 

 

……違うだろって? 細かいことはいいんだよ、マッ缶があったことさえわかればいいんだ。千葉の、いや俺のソウルドリンクがあったという神からのプレゼントのことさえわかっていればな……。いや流石に気持ち悪いですねごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  結局、原村と片岡と俺の三人で部活見学回ることになった。案の定嫉妬の目線がグサグサと刺さる。片岡はアレでももう一人が原村だからな、こればかりは避けられないだろう。

 

 だからと言ってそれを回避するために一人で回れるかと言うと…これも遠慮したい。部活だぞ?この俺が一人で部活に入るんだぞ?……いくら考えても成功するヴィジョンが見えない、気づかれないか気持ち悪がられるかの未来しか見えない。だが、気づかれないとかならバスケットできるんじゃないか?ミスディレクションとかでパスを……無理です誰もパス回してくれませんねわかります。

 

 それを考えると1日くらいなら一緒に回った方がいいだろうというのが俺の結論だ。そこで適当に楽そうな所に入ってしまえばいい。幽霊部員させてもらえる部活ならなお良し。

 

 

 

優希「八幡は何か入りたい部活とかないのかー?」

 

 

比企谷「さっきも言っただろう、俺は帰宅部のエースになりたいんだ片おk」

 

 

優希「優希!」

 

 

比企谷「……ハァ、優希。」

 

 

 

名前で呼ばれる事すら抵抗感があるのに女子を名前呼びしなければいけないとはな……。ぼっちには辛いぜ。だが、片岡……優希が強情で譲らないのはさっきの昼食中によくわかったからな……。

 

 

 

優希「それでいいそれでいい、観念するんだじぇ八幡!」

 

 

比企谷「はいはい…」

 

 

和「まったく、優希ったら…」

 

 

 

困ったような口調でも、そう言う原村はどこか楽しそうだ。その前に片…優希を止めて欲しいものだが……まあ、原村が一番わかってるんだろうな、どうもできないと。

 

 

 

優希「それで!帰宅部は諦めてそれ以外で、だじぇ!」

 

 

比企谷「楽な部活、もしくは休める部活、それか幽霊部員させてくれる部活。」

 

 

優希「清々しいくらいにやる気0だじぇ!?」

 

 

比企谷「当たり前だろう、勉強と休息の為の時間を何が嬉しくて部活なんぞに使わなければいけないんだ。」

 

 

優希「べ、勉強……。は、八幡って真面目なんだな……?」

 

 

比企谷「そんな訳あるか、将来の夢の為、今からやっておいた方が楽なだけだ。」

 

 

和「将来の夢ですか……この時期にはっきりと持っているなんてすごいですね。よければ聞いても大丈夫ですか?」

 

 

比企谷「別に構わないぞ。俺の夢は……専業主夫だ。」

 

 

優希「せんぎょうしゅふ…?」

 

 

和「……今、聞き間違いでなければ専業主夫と聞こえたのですが?」

 

 

比企谷「原村の耳は正しいぞ、安心しろ。」

 

 

和「何故、専業主夫を……?誰か支えたい人でも……?」

 

 

比企谷「俺のようなぼっちにそんな相手居るわけないだろう。家から出たくないから、が理由だ。」

 

 

和「そんな理由で………そもそもそれでなんで勉強を頑張るんですか………はぁ……」

 

 

 

 原村が大きく溜息を吐いた。専業主夫に勉強が必要な理由や他に様々に語ろうかと思ったが、原村の様子を見てやめておいた。……なんかすまんな、原村。

 

 

 

優希「せんぎょうしゅふってなんだ?鮮魚を売る主婦か?」

 

 

 

お前はわかってなかったのかよ……。 主夫の字も主婦だし……、やはりアホの子か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  優希と原村は麻雀部に入るのはほぼ決定的ではあるが、他を見ないで決めるのはスッキリしないということでいくつか見回るつもりだったらしい。俺に気を使ってそう言ってる…気がしないでもないが、言っていることもおそらく本心だったのだろう。説明をしっかりと聞いている2人を見ると、そう思えた。

 

 

 体育会系から文化系までいくつもの部活の説明を見て回ったが、1年の強制入部というシステムがあるせいかなまじ人数が居て、俺の望んだ環境の部活は中々見つからなかった。私立なら案外すぐ見つかったかもしれないが、やはり公立ということもあり部活の設立や維持については厳しいのだろう、ある程度活発さのある部活ばかりだ。

 

 これ以上回っても成果は得られなさそうという優希の提案(飽きただけではないのか)により、俺たちは麻雀部に向うことになった。だが、俺としては麻雀部への入部はなるべく避けたい所だ。……俺は麻雀をやめたのだから。

 

 

 麻雀部があるという旧校舎に来たが、想像以上に静かで驚いた。どうやら、こちらの校舎には比較的静かな文化系の部活での使用か、倉庫代わりとしての使用しかないらしい(部活紹介パンフレットを読んだ原村談)。環境としては素晴らしいな、ぼっちには快適な空間だ。だからと言って麻雀部に入るわけではないが。

 

 

優希「ここ……なのか?」

 

 

比企谷「ここだろうな、あそこのボロボロの看板札にも麻雀部って書いてあるしな」

 

 

和「そのようですね………、扉自体は豪華な物ですが……」

 

 

 原村が言い淀んでるのは無理もない、昔は豪勢な作りだったのかもしれないが……一言で言うとボロい、それに尽きる。看板札も年季が入ってる上に微妙に傾いている。もちろん使えないほど劣化しているわけではないが……どうしても本校舎と比べてしまい、使われていないのではないかと言う疑念が浮かんでしまう。

 

 

 

比企谷「もしかして、もう廃部にでもなってるんじゃないか…?」

 

 

和「部活紹介パンフレットには載っていたので、それは無いと思いますが…」

 

 

優希「えーい、めんどくさい!突撃だじぇ!」

 

 

和「ちょっと、優希!?」

 

 

 

 原村の制止も虚しく空振り、優希は作法など知るかと言わんばかりにノックもせずに麻雀部と思わしき部屋のドアを勢いよく開けた。お前は道場破りか何かなのかと問い質したい。だが、それ以上にこいつと同類と思われたくない。後ろの方に居てやり過ごそう、それがいい。

 

ドアの向こうには、自動雀卓を挟んで向かい合っている2人の女子が見えた。1人は眼鏡をかけていて、緑色のウェーブがかかった髪をしている。いや、天然のウェーブか…?もう1人は赤い髪を肩にかかるほど伸ばしている。あれ、こっちの人どこかで見たような……?

 

 

 

???「あら、もしかして入部希望者かしら?」

 

 

和「なんで生徒会長がいらっしゃるんですか!?」

 

 

???「生徒会長じゃなくて学生議会長よ、この学校ではね?」

 

 

 

 そうウインクしながら赤髪の女子……学生議会長は答えた。そうか、入学式で見たから見覚えがあったのか。というより俺も忘れるなよ、つい数時間前に見たばっかりだろう。まあ入学式はほとんど寝てたから仕方ないね、うん。それにしても変な役職名だな、学生議会長。初めて聞いたぞ。

 

 

学生議会長「ところで……結局どうなの?あなた達3人は入部希望者?冷やかし?それとも…道場破りかしら?」

 

 

和「い、いいえそんな!入部希望と見学希望です、ごめんなさい!ほら、優希も謝ってください!」

 

 

優希「ご、ごめんなさいだじぇ……」

 

 

 

 ペコペコと謝る原村と優希の様子を見て、くすといたずらが成功した子供のような顔で学生議会長が笑っていた。あ、この人絶対性格悪い。

 

 

 

学生議会長「今何か失礼なこと思われた気がするんだけれどー?」

 

 

比企谷「キノセイデハナイデショウカ」

 

 

 

何この人エスパーか何か?さらっと俺の心読まれたんだけど?……そういえば今、原村が入部希望と見学希望って分けて言ってくれたな。すまんな原村、気遣い感謝する。

 

 

 

???「そこらへんにしときんさい、また久の悪い癖が出とるけぇ」

 

 

学生議会長「あら、ごめんなさいね? ん、こほん。麻雀部へようこそ!私は学生議会長で、この麻雀部の部長の竹井久よ、よろしく!」

 

 

???「それで、わしが染谷まこで2年じゃ。家は麻雀カフェしとるから、よかったら遊びにきんしゃい」

 

 

久「まこの営業も終わったところで…今のところ、麻雀部は私とまこの2人よ。あぁ、驚くのもわかるけど、今はまず自己紹介をお願いしてもいいかしら?」

 

 

 

 学生議会長…もとい竹井先輩は驚く原村達に自己紹介を促していた。驚くのも無理はない……2人だぞ? それで部として…そもそも麻雀が成立するのか…?……これ以上は考えない方がいい気がする。よし、触れないでおこう、それがいい。

 

 原村と優希の自己紹介が終わった。名前、麻雀歴、クラス、出身校、あとは好きなものとか些細なことを聞かれていた。まあ前半は麻雀部にとって大事なことだからな。そして俺の番が来たわけだが……

 

 

 

久「でー?その特徴的な目の男の子はどっちの彼氏さんなのかしらー?」

 

 

 

 これである。他の見学では担当が男子部長だったため原村が説明すればカタはついていたが……、やはり女子はこういう話題には興味津々ということだろうか?

 

 

 

比企谷「いや、さっきも言いましたけど違いますって」

 

 

久「またまたー、入学初日に一緒に部活見学なんてしてるんだからそうなんでしょ?恥ずかしがらなくてもいいわよーっ」

 

 

比企谷「いえ、本当に。原村と片おk「優希!」…優希と知り合ったのは今日の朝のことですし。」

 

 

久「まったまたー……えっ、マジ?」

 

 

和「マジです」

 

 

 

 原村が俺のことと今日あったことを一通り説明してくれた。先輩方がほーとかへーとか言いながらチラチラ見てくるのが非常に居心地が悪い……。

 

 

 

まこ「ほうほう、今みたいな世の中で漢気のある珍しい男じゃのー!」

 

 

比企谷「はぁ、どうも…。」

 

 

久「うん、そうね。確かにすごいわ、誰にもできることじゃない……。でも、考えもなしに動いたのはよくないわね。死んでたかもしれないのよ?」

 

 

比企谷「いや、まあ俺は自分が大好きなので自分を何よりも大切にしてます。だから大丈夫です。」

 

 

久「見ず知らずの犬のために身体が勝手に動いたのに?」

 

 

比企谷「そ、それは……」

 

 

 

 急にこんなことを指摘されるとは思わなかった。しかも、先生ではなく学生に。俺としたことが不意を突かれて言葉に詰まってしまう。

 

 

 

久「誰かのために何かできるっていうのは素晴らしいことよ?でもね、それは自分が一番大切っていう前提条件があるからこそ成り立っているものなの。……なんとなく、君はこの事素直に受け取ってくれそうにないけど………どうかこの事を覚えてて?そしていつか理解して頂戴ね?私の学校の生徒が死んじゃうなんて嫌よ?」

 

 

比企谷「………うす」

 

 

 

 それしか言えなかった。このやり方しか思いつかないとか、色々言いたいことはあった。でもこの人のまっすぐな目をみると、どうしても言えなかった。この言葉を受け取らないと、ガラにもなくそんな気持ちにさせられた。

 

 そして、部室がしんと静まりかえった。

 

 

 

久「あ、え、えっといきなりお説教なんてしちゃってごめんね?こ、こほん。仕切り直して……原村さんと片岡さんが入部希望、それで話にあった通りやる気のない比企谷くんが見学希望でいいのよね?」

 

 

比企谷「そうですね、とりあえず見学させてもらいます。麻雀はなんか頭使って楽できないと思うんで、とりあえずは。」

 

 

優希「むー?その言い方だとなんか麻雀をわかってるみたいな言い方だじぇ?」

 

 

比企谷「まあ、少しなら知ってるからな。でも、お前とかは頭使わずやってそうだよな。直感だけとかで牌を捨てたり。」

 

 

優希「なっ!なぜわかっ……ぶ、無礼だじぇ八幡!」

 

 

比企谷「今のもうほぼ認めてたよな?なぜわかったって言いかけてたよな?」

 

 

和「まあまあ比企谷くん、いくら事実でもさすがにそこらへんにしてあげてください。」

 

 

優希「さらっとのどちゃんがひどいじぇ!?」

 

 

ワーワーガヤガヤ……

 

 

まこ「…久しぶりに麻雀部が騒がしくなりそうじゃな、『部長』?」

 

 

久「…えぇ、そうね。とっても賑やかになりそう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久「さて、早速打ってみて……って言いたいところだけれど、多分あなた達も今日は疲れてるでしょうから、今日は紹介だけで終えておきましょ?また改めて明日、部活体験会としゃれこむわよー!」

 

 

優希「おー!」

 

 

和「優希はまだ元気そうですね………」

 

 

 

 こうして部活周りは終わり、門に向かっている。旧校舎は出口が遠いのは少々難点だな…。行き来が面倒そうだ。

 

 

 

和「比企谷くん、今日はピリカを助けてくださって……部活見学にも付き合ってくださって、本当にありがとうございました。」

 

 

 

 そう言いながら原村が朝のように深々と頭を下げた。気にしなくていいと言ったのに…

 

 

 

比企谷「真面目なんだな、原村は」

 

 

和「えっ?」

 

 

優希「そうだじぇ、のどちゃんは超まじめだじぇ!おっぱいはでかいのに!」

 

 

和「も、もう優希まで!それに、胸は関係ないでしょう!」

 

 

 

 2人が楽しそうに話している。本当に仲がいいんだな、この2人は。この2人の間には虚偽とか、上辺だけとか、そういうのが全くないように見える。

 

 

 

 

 

 

……こいつらは「本物」なのだろうか……?そうだとしたら羨ましくもあり……眩しくもあるな。

 

 

 

 全く、何を考えてるのだろうか俺は…らしくもない。もっと気ままにぼっちを決め込んでおけばいいのに。本当にらしくない。慣れない空気で少し歯車が狂ったのかもしれんな。直しておかないとな……

 

 

比企谷「俺、こっちだから…」

 

 

和「あ、はい、わかりました。比企谷くん、今日はお疲れ様でした。……また明日。」

 

 

優希「まった明日、だじぇ!」

 

 

比企谷「……あぁ、『また』な」

 

 

 

このままこの空気を味わっていると『また』がずっと続いてしまいそうな、そんな気がして。俺は歯車を直すために早くこの空気から離れようと、家に向かって自転車を漕ぎ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈久side〉

 

 

 家のアルバイトで先にまこが帰った後も、椅子に座ったままずっと考え事を続けていた。

 

 私の夢は団体戦で全国出場……1年の時は私1人で……2年になってまこが入ってくれて……。ちょっと諦めかけたりした時もあったけど、まさか3年になった初日で2人も来てくれるなんて。しかも男子も1人入るかもしれない。待ち続けた甲斐があった……嬉しい、とても。………『悪い待ち』に賭けて良かった。

 

 まぁ、説教をしちゃうっていう予想外の事態もあったけれど、てへっ。でも、仕方ないのよ、うん。だって学生議会長だものね……。……彼も入部してくれると嬉しいんだけどね。

 

 

 

「さって、現実的になってきたならプランも色々考えないとねー」

 

 

 そう、愚痴を溢した私の声色はいつも以上に上機嫌なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈和side〉

 

 

 ピリカを寝かしつけて、寝支度を整えてごろっとベッドに寝転がる。今日は色々あり過ぎて、少し頭が追いつくのが大変です。ピリカを助けてくれたあの人……比企谷くん、男の子といきなりこんなに一緒に居たのは久しぶりかもしれません。それこそ、あの麻雀クラブに居た頃以来……。

 

 ピリカを助けてもらったのにはとても感謝しています。でもだからと言ってそれで急に好きになる、なんて少女マンガみたいなことはありません。……私が多少少女趣味なのは認めますが、それでもあるのは感謝だけです。なら、どうして今日はこんなにも居心地が良かったのでしょうか……。今はまだ、わからないのでしょう。もっと時間をかけて互いを知って仲良くなれれば、きっとこの理由もわかるはずですよね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………よし、悩んでも仕方ないですから、寝る前に日課のネト麻だけでもしておきましょう。

 

ユーザーネーム、〈のどっち〉……っと

 

 

 

 

 

 

 

続く


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