ユイの学園生活   作:夏生

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世界初のVRMMORPGである《ソードアート・オンライン》。正式サービス開始時にログアウト不可となり、過酷なデスゲームとなった。

 俺は、約2年を経て第75層にたどり着き、第75層迷宮区のボスを倒した後、ヒースクリフの正体がこのデスゲームを始めた張本人、茅場晶彦だと突き止めた。

 ヒースクリフは、ここで1対1のデュエルをして、勝利することができたらすべてのプレイヤーをこのデス・ゲームから解放すると提案してきた。ヤツはこれを口実に俺を排除するつもりだったのだろう。そうと知っていながらも、ヒースクリフを許すことができず、俺は、ヒースクリフの提案にのった。

 そして、俺は、1対1のデュエルに勝利し、ヤツの約束どおりならば、すべてのプレイヤーはこのデス・ゲームから解放される──はずだったのだが、ここで事件が起こる。

 デュエルに勝利した直後、謎のシステムエラーが起こり、第75層以降もゲームが続行されることになってしまったのだ。

 システムエラーの正体すら分からず、クリアの保証もないままにモンスターやフロアボス健在の残り25層攻略を余儀なくされた。

 リーファやシノンなどのイレギュラーな参戦者や、アルベリヒと名乗っていたリアルネームを須郷という男などの問題プレイヤーもいたが、無事に100層にたどり着き、再びヒースクリフを倒したことで、生き残ったおよそ6000人のSAOプレイヤー達は、ようやく現実の世界へと帰ってくることができた。 

 現実に戻ってから、まず俺たちを待っていたのはリハビリの日々だった。

 低下してしまった筋力を元の生活ができるまで戻すのは、かなりの苦労があった。それでも、直接会いに行きたい。仲間たちのことを思うと、リハビリをがんばり続けることができた。

 おかげで、今は自宅に戻り、普通の生活を送ることができている。

 

「おーい、お兄ちゃん」

「なんだスグ、どうした?」

「あ、またコンピュータの勉強?」

「このナーブギアに保存されていたデータを展開するためのプログラムについてな」

 

 ナーブギアに保存されていたデータ、ユイを活動可能にするために勉強していたのだ。

 事件後当初、ナーブギアは政府によって回収、廃棄処分されるはずだったのだが、SAO対策チームの1人であった菊岡に無理を言って持ち出し許可を得た。

 またナーブギアを強制回収されて、ユイごと破棄処分されても困るので、その前にユイのデータは据え置きPCに移してある。

 

「ユイちゃん、また会いたいな……」

 

 データを展開するためのプログラムについては完成しているのだが、なぜかうまく起動しない。

 プログラムが間違っているのか、そもそも展開できないのか……。

 でも、諦めるわけにはいかない。

 

「絶対に会えるさ。そのためにも、もっとコンピュータに詳しくならないとな。それより、なんの用だ?」

「そうだった。もうすぐご飯だから下に降りてきて」

「もうそんな時間か」

 

 いつのまにか、かなりの時間が経っていたようだ。

 下へ降りて、リビングに向かう。

 すると、ピンポーンと呼び出しのチャイムが鳴った。

 

「こんな時間になんだ?」

「回覧板じゃないかな? 私、ご飯の準備しておくからお兄ちゃん受け取っておいてよ」

「わかった」

 

 俺は、リビングに向かう直葉を見送り、玄関を開けた。

 2年間も眠り続け、さらにその前は周囲との関係も避けていたため、御近所さんと関わった記憶は、本当に何も知らなかった幼い頃のときしかないが、機械的に回覧板を受け取るだけなので誰だろうと関係ない。

 そう思って玄関を開けたのだが、その先に立っていた人物は俺の想像もしなかった人物だった。

 長い艶やかな黒髪にアラバスターのようなきめの細かい純白の肌。卵型の小さな顔で異国風のくっきりした顔立ちに、妖精のような気配を漂わせる幼く美しい少女。

 この近所では見かけない──いや、この日本はおろか、この世界に存在しないハズの少女が今、目の前に立っている。

 

「いい子にお留守番するつもりでしたが、我慢できずに来ちゃいました。パパ!」

 

 そう言って、少女は俺に抱きついてきた。

 

「ユ、ユイ!? ほ、本当にユイなのか!!?」

「はい!」

 

 再びVR上や画面越し、もしくは音声のみでもいいから再会を望んだ愛娘が、まさか、現実世界(こっち)で会えるなんて夢にも思わなかった。

 俺は、予想外のユイとの再会に戸惑いながらも、会えた嬉しさにユイを抱きしめた。

 

 

 ユイをリビングに案内すると、やはり直葉にも驚かれた。

 

「え……ユイちゃん!?」

「パパ、この人は誰ですか?」

 

 そうか、ユイはリーファとは面識があるが、中身の直葉とは初対面だ。

 

「リーファだよ、ユイ。俺の妹でリーファの中身、直葉だ」

「リーファさん! また会えて嬉しいです!」

「うん、私もまた会えて嬉しいよ、ユイちゃん。……でも待って……ユイちゃんってAIじゃなかったの!?」

「私はAIですよ?」

 

ユイとの再会で忘れていたが、ユイはAIだ。こっちの世界に存在するためには体が必要なハズ……。

 

「ユイ、その体はどうしたんだ?」

「パパが私をPCに移してくれたおかげで、ネットに接続することができました。それで、ネット回線を経由してヒースクリフさんが接触してきたんです」

「いや、待て。ヒースクリフだと!? いろいろ突っ込みたいところだが、ヤツに会ったのか?!!」

「はい。そして、ヒースクリフさんからパパへ伝言を預かっています」

 

『キリトくん、改めてSAOクリアおめでとう。いろいろ言いたいことはあるだろうが、今、戸惑っているであろうユイくんについてだ。これは、ボスのLAボーナスとSAOクリアの報酬、そしてシステム障害についてのお詫びのしるしだ。本来、75層で私を倒した時点で解放される約束だったが、その約束を違えたお詫びだとおもってくれればいい』

 

「だそうです」

「えっ! それだけ!?」

「はい」

 

 なるほど……システム障害、約束を違えたお詫びはあっても、SAOに閉じ込めたことへの謝罪は無しか。

 まぁわかってはいたけど……。それよりも……

 

「ユイの体の扱いについての説明とか一切ないのか?」

「それについては、私自身で把握しているので大丈夫です! 書類もあります! メンテナンスでパパの力を借りることもありますが、そのときはお願いします」

「あ、ああ……わかった。ユイのためならなんだってするさ」

「ありがとうございます、パパ!」

「ユイちゃんに会えたことは私も嬉しいけどさ……とりあえず、ご飯にしない?」

 

 ユイの再会が衝撃的過ぎてご飯を食べるところだったのを忘れてた。

 ユイは、テーブルに座りつつも「食べ終わるまで待ってます」と言って俺たちがご飯を食べ終わるまで待っていた。

 やはり、体は機械だから、食事はしないのだろうか?

 でも、待っている間、普通に牛乳とか水とか飲んでいたし……いったいどうなっているんだ?

 

 ご飯を食べ終わり、片付けを済ませると改めてユイについていろいろ聞いた。

 SAOから解放されて以来の親子の時間。楽しい話ばかりではないが、また一緒に居られるというのはやはり嬉しかった。

 

「一つ確認したいんだけど、ユイの本体はその体なのか? それともまだPCの中なのか?」

「私の本体は今でもパパが与えてくれたPCの中です」

「そうなのか? でも……じゃあ、ユイを展開するプログラムは機能してないのか?」

「いえ、プログラム自体は機能しています。おかげでパパのPCで自由に”生活”することができます」

「ってことは、PCにユイが展開しなかったのは、プログラムが間違っていたからじゃなくて……」

「はい、私がこの体で活動していたからです。パパのところまで行くのにすごく時間かかりました」

「1人で来たのか!?」

「いえ、菊岡さんという人に途中まで送ってもらいました」

「えっ……あの人も関わってるのかよ」

 

 しかし、考えてみれば当然だ。SAO関係を担当している菊岡さんなら関わっていても不思議ではない。

 

「ところで、明日奈はユイのことを知っているのか?」

「いえ、ママにはまだ連絡していません」

 

 まぁ、予想はしていた。もし、明日奈がユイのことを知っているのなら、必ず明日奈から連絡が来ている。

 

「どうする? 今から電話して知らせることもできるけど、もう夜も遅いし、知らせるのは明日にするか? 明日なら会うこともできるぞ」

 

すると、ユイは両手を祈るようにして握り、目を輝かせて俺に迫ってきた。

 

「ほんとですか!? でしたら、ママと直接会いたいです!」

「じゃあ、明日奈を驚かせよう」

 

 驚くことは間違いないだろう。

 俺だって、いずれユイをこの世界で活動可能にするつもりではいたが、こんなに早く再会し、現実になるとは思わなかった。

 結局、明日奈に連絡を取り、ユイについては何も話さずに、待ち合わせの約束だけをした。

 

 

 翌朝、出かける準備を整え、ユイと一緒に家を出た。

 電車に乗り、明日奈との待ち合わせの駅まで向かう。

 やはり、現実世界の景色が新鮮なのか、ユイは目を輝かせてキョロキョロと辺りを見回していた。

 ユイの容姿が可愛らしく美しい少女という評価は、周囲の目から見ても同じらしい。

 その容姿ゆえか、ユイがすごく目立っている。だが、ユイは全く気にしていない。

 周りの声を聞いてみると、年の離れた兄妹にみられてるみたいだ。俺もユイも黒髪だからだろうか。

 まさか親子だとは思わないだろう。ユイの見た目の年齢と俺の歳からはさすがに想像はできまい。

 

 電車を降りると、待ち合わせ場所に向かう。

 明日奈を驚かせるため、ユイは、待ち合わせ場所からは少し離れたところに待機させた。

 こっちからはっきりとユイを確認できるが、見つけようとしない限り、明日奈がユイに気づくことはないだろう。

 

「おっす、明日奈。待ったか?」

 

 軽く手を挙げて挨拶を交わす。

 

「おはよう、キリトくん。さっき来たところだよ。今日はどこ行くの?」

「ああ、すこし買い物に行こうかと」

 

 ユイの日用品などを買うためだ。

 

「珍しいね、キリトくんが買い物なんて」

「そうかな? それはそうと、明日奈、少し目を閉じててくれるか?」

「え、どうして?」

「いいからいいから」

「なんか、怪しいんだけど?」

 

 明日奈がジト目で俺を睨む。

 

「大丈夫だって。ほら、早く閉じて!」

 

 明日奈は、納得してない様子だったが、言うとおりに目を閉じた。

 俺はその隙に、こちらに来るようにユイを手招きする。

 ユイは明日奈の目の前に立つと、明日奈に抱きついて明日奈を顔を見つめた。

 

「きゃあ! ちょっと! いきなりなにするの、キリトく……ん───!?」

 

 明日奈は、突然キリトに抱きしめられたと思って目を開けた。

 

「ママ! お久しぶりです!」

「えっ……どうして!? ほ、本当にユイちゃんなの!? でも、なんでユイちゃんがこっちに? まさか、実はまだ私、VRの中からログアウトしてないんじゃ……」

 

 明日奈は、ユイとの再会の嬉しさと、なぜユイが現実にいるのかという謎でパニックになっている。

 右手を上下に動かして必死にメニューウィンドウを出そうとしているが、身体は正直なようで、しっかりとユイを抱きしめていた。

 

「おちつけ、明日奈」

「ママ、落ち着いてください。ちゃんと現実ですよ! また会えて嬉しいです!」

「ユイちゃん! 私もずっと会いたかったよ!」

 

 明日奈の目にすこし涙がみえる。感動の再会なので無理もない。

 

「あっ! じゃあ、もしかしてキリトくんは、昨日からユイちゃんがいることを知ってたのね?!」

「まぁな。昨日の夜、ユイが俺の家に訪ねてきたんだ。俺たちがユイを迎えるハズが、まさかユイの方から来るとは思わなかったよ」

「なんで、昨日の電話で教えてくれなかったのよ!」

「ユイが直接会いたいって言ったから、じゃあ驚かせようってなったんだ」

「本当に驚いたよ!」

 

 明日奈とユイが抱き合っているのは微笑ましい光景だが、周囲からの注目を集めていて目立っている。

 感動で興奮が収まらない明日奈を落ち着かせるためにも、近くのカフェに入った。

 そこで、ユイについて昨日知った内容をすべて話した。

 

「そう、団長が……じゃあ、ユイちゃんはこれからキリトくんのお家に住むのね?」

「はい! 私の本体もパパのPCの中にあるので、パパの家で生活します」

「まだ、母さんにユイのことを説明してないからな。まぁ、反対はされないだろうけど……ってかむしろ歓迎されるだろうな」

「私の家は、お母さんが何て言うかわからないし、それがいいよ」

 

 そう納得した明日奈だが、顔は不満そうだ。

 

「どうした?」

「だって、ずるいよキリトくん! 私もユイちゃんと一緒にいたいのに!」

「ああ、そういうことか! もちろん、ユイが俺の家に住むことは”表向きは”って話だぞ」

「表向き?」

「そう。明日奈も言ってたように、ユイだって一緒にいたいだろ? ユイが自由にどちらの家でも生活できるようにすればいいとおもってるよ。それに、ユイは明日奈の家にも行く気だとおもうぞ? なぁ?」

「はい! もちろん行きたいです! 私も、ママと一緒にいたいです!」

 

 表向きは俺の家に住むとしても、実際には俺か明日奈か好きな方に泊まればいいと思う。

 

「さて、今日の目的なんだけど」

「そういえば、買い物するって言ってたね。何買うの?」

「ユイの日用品とか買い揃えようかと思ってね。明日奈、選びたいだろ?」

「当然よ!」

 

 俺たちはカフェを出ると、大きなショッピングモールへと向かった。




ゲーム版SAOを舞台としてるので、ストレアやフィリアなども登場も可能です。
小学生であるユイを姉と呼ぶ高校生のストレアが出てくるかは、まだ検討中です……

学校でのユイの服装

  • ロストソングで登場したお嬢様風のブレザー
  • メモデフで登場したセーラー服
  • 私服
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