「パパ、明日は学校ですか?」
「そうだよ? あっ……!」
学校と言われて気がつく。俺たちが学校にいる間、ユイは家で一人になってしまう。
ユイとリアルで会えたことに浮かれて、この事態を考えていなかった。
「ユイはどうするつもりだ?」
「家でお留守番しててもいいんですけど、できれば外に出たいです」
「ユイ一人で大丈夫か? 危なくないか?」
「でも、私くらいの子供が外にいるのを見ました」
確かに、ユイくらいの子供なら一人で外に遊びに行くのも不自然ではない。それに、せっかく体があるのに外に出れないのは可哀想だ。
しかし、ユイ一人で外に行かせるのは心配だ。ユイは普通の体じゃない。何かあった時を考えてしまうと不安になる。
ユイの存在自体が特別だからという理由もあるが、世の中の親は、子供を一人で外に遊びに行かせる時はこんな気持ちなのだろうか?
「うーん……わかった、いいよ。ただし、約束してくれ。何かあったら必ず連絡すること、知らない人にはついていかないこと、学校が終わるのは16時くらいだから、その時間に一度連絡をすること。この三つを約束できるならいいよ」
「わかりました!」
正直、不安を消し去ることはできないが、あまり自由を奪うようなことはしたくない。
だが、SAOと違って圏内にいれば安全というわけではない。ユイにとってはリアルの方が危険かもしれない。
今後、俺たちが学校にいる間、ユイをどうするか、アスナと相談する必要があるな……。
そのあと、外にいるときには車に注意するなど、起こりうるトラブルに対しての対応をユイと話し合った。途中、スグに「過保護過ぎ!!」と言われたが、そんなことないと思う。
俺はこれからのユイのことを思いながらベッドに入った。
そして翌日。
「じゃあユイ、留守番頼んだぞ! 何かあったら、必ず連絡するんだぞ? 知らない人についていったらダメだからな?」
「わかったますよ、パパ」
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい、パパ」
俺はユイに見送られて学校へと向かった。
*
パパが学校へ行ってしまいました。
直葉さんは朝練があるとかでパパより少し早く学校へ行きましたので、家には誰もいません。
「さて、私もお出かけしましょう!」
私は、先日密かにおばあちゃんにもらったお小遣いと直葉さんにもらったバッグを肩にかけて外へ出ました。
今日はお買い物よりも、パパとママの世界をたくさん見て行くのが目的です!
「ここがパパ達の世界なのですねー」
パパの家に行く時や、ママとお買い物した時にも現実世界を見て回りましたが、改めて現実世界を体感しました。
ネットの情報から画像データで現実世界の町並みを見ることができましたが、やはり実際に見るのとは雰囲気が違いますし、人も多いです。
午前中は新宿に原宿、渋谷と探検しました。
まず驚いたのは人の多さです。
特にスクランブル交差点の人の多さは、SAOのサービス開始時に〈始まりの街〉に集められたプレイヤーの人口密度を軽く超えているのでは? と思うほど人がいたように思いました。
それと、現実世界の街はたくさんのお店があって楽しそうでした!
もしかしたら、パパとママがデートしに来るかもしれませんが、パパとママならもう少し静かな場所を選びそうですね。
今度は、渋谷から電車に乗って、秋葉原で降ります。
ここでは、電気屋にはいってパソコン部品を見たり、ゲームセンターに行きました。
プレイはしませんでしたが、クレーンゲームや音楽ゲーム、メダルゲームなど種類豊富でした。
「ちょっとキミ、ここでなにしてるの」
店内を見て回っていると、腕章をつけたおじさんに声をかけられました。
「キミ、学校はどうしたの? ほら、学校名と学年、それと名前言って」
学校……
腕章を見てみると、補導員と書いてあります。
しかし、私は慌てません。こういう状況も予想して昨夜、パパと対策していました!
「私は引っ越して来たばかりで、今は買い物と時間つぶしでここにいるだけです」
「(引っ越してきたばかりで、まだ転入先の学校には行ってないってことか……)そ、そうか」
元々、学校には通っていませんが、こう言うと相手が勝手に誤解をしてくれます。嘘は言ってません!
「保護者の人は今どこに?」
私の保護者というとパパ達のことになりますよね……?
「今は学校にいます」
「(親は教員なのかな?)一応、キミの名前教えてくれるかな?」
「ユイです」
「名字は?」
名字……
私に名字はありませんが、ママがパパのお嫁さんになるので、名字は桐ヶ谷でしょうか?
「桐ヶ谷です」
「桐ヶ谷ユイね」
「では、私はこれで」
そう言って私は補導員の下を離れました。
平日は学校があるので、子供がこの時間に遊んでるのはおかしいことなのですね。
昨夜、パパと対策していなかったら危なかったかもしれません。
ユイは、もっと現実世界見て回るために次の場所へ向かった。
*
「えっ! ユイちゃん一人で外出してるの!?」
お昼頃、和人は明日奈と中庭で昼食を食べながら、和人と明日奈が学校にいる間、ユイをどうするかについて明日奈に相談していた。
「ユイちゃん一人で大丈夫なの? ユイちゃん賢いから問題はないだろうけど、やっぱり不安だわ」
「まぁ、心配ではあるけど、せっかく現実世界で体があるのに、ユイを一人で家に留守番させておくのは可哀想だし、一応、何かあったときの対策はしておいたよ」
「そっか……
75層の攻略後、ユイとSAO内で再開したものの、階層の攻略中は宿屋もしくは〈アンチクリミナルコード有効圏内〉通称〈圏内〉でのみしか行動を許していなかった。
現実世界での体を手に入れてもユイなら、和人達が帰ってくるまで家の中で留守番と和人と明日奈が言えば、素直に言うことを聞きいれ、従うだろう。
しかし、それではあまりにも可哀想だ。出来るだけ自由にさせてあげたい。
和人と明日奈はそう思っていた。
「けど、外出を許可しても結局は一人だろう? エギルのところに預けるってのも考えたけど、迷惑かけることにはかわりないし、向こうにも仕事があるからな……ユイの存在も事情もまだ説明してないし」
「そうね……私の家なら家政婦の佐田さんがいるけど、こっちもまだユイちゃんのこと話せてないからなぁ……」
「とにかく、明日奈の方でも何か良いアイディアがないか考えておいてくれ。せっかく
「わかった、考えてみる」
お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、和人と明日奈はそれぞれの教室へと戻っていった。
*
14時頃になると、ユイと同じ年頃の姿をしている小学生が友達と楽しそうに下校している姿を徐々に見かけるようになった。
ユイは、その様子を無意識に目で追っていた。
ナーブギアには建前的に年齢制限があり、13歳以下の子供の使用は禁じられていた。よってSAOでは〈はじまりの街〉の教会で比較的低年齢の子供達の姿を見かけたものの、低くても12歳くらいであり、必然的にユイより年下の姿もしくは同じ年の姿をしていたプレイヤーは存在しなかった。
そして75層以降では、周りは大人ばかりであり(といってもキリトくらいの年齢はいたかもしれない)、最年少のプレイヤーはシリカだっただろう。
つまり、ユイにとって自分と同じ年の子供の姿を見るのは初めてだったのだ。
ユイは、同年代の人間という物に心を惹かれた。
「学校……同い年の子供が集まっていろいろな知識を勉強する場所……そこに行けば私と同じくらいの子供が集まってるのでしょうか……?」
ユイの中で興味がどんどん膨らみ、自然と周辺の学校へと足を運んだ。
小学校につくと、校庭で遊んでいる児童を見つけた。
ここでも皆んなが自由に友達と遊んでる姿を見た。
和人と明日奈にも同年代の友達がいる。しかし、ユイにはそれがない。
ユイにとって和人と明日奈が全てであり、二人をサポートし、一緒にいることが最上の喜びである。
ユイは、和人と明日奈さえいれば同年代の友達は必要ないと思っているが、友達という未知の存在にユイの探求プログラムが働いた。
「この世界では、私くらいの子供が学校に通うのが当たり前……というより義務らしいですし、いい機会かもしれませんね」
時間を見ると、そろそろ和人達の下校時刻が迫っていた。
「ついでにパパとママの学校も見に行きましょう!」
ユイは、和人達の通う学校へと向かった。
*
今日の授業が全て終了し、和人は教室で携帯を眺めていた。
「一緒に帰ろ? なに見てるの?」
一緒に下校しようとした明日奈が和人の教室に来て訊ねた。
「いや、下校時刻くらいに一度連絡を入れるようにとユイに言ってあるんだが、連絡がこない」
と言っても、指定したのは16時頃であり、現在の時間は15時45分。
お昼休みでは明日奈を安心させるように言っていたものの、和人自身も相当心配していた。
「まだ少し時間あるんだし、そんなに焦らなくても───」
「来た!」
明日奈が言い切る直前で、ユイから連絡がきた。
「なんて?」
「えっと……『校門にいます』って……は?」
「校門にいます? えっ? 来てるの!?」
「そうみたいだ。すぐ行こう!」
和人と明日奈は慌てて教室を飛び出し、すぐに校門へと向かった。
昇降口で靴を履き替えていると、
「何急いでんのよ、キリト」
「お二人とも今帰りですか?」
と声がかかった。
「リズにシリカか。ちょっとな……別にたいしたことじゃないんだ」
「たいした事ないのに急ぐなんて変でしょ」
「リ、リズ、あのね、本当になんでもないの」
「怪しいですね……」
変に挙動不審な明日奈をシリカが怪しむ。
「てか、何あれ」
リズが校門に小さな人集りが出来ているのを発見した。
和人と明日奈は、その理由が予想できているだけに、一刻も早く駆けつけたかった。
「説明は後だ。明日奈、先にユイの方をなんとかしよう」
「そうね」
「え、ユイちゃん?」
「どういうことですか?」
和人と明日奈はリズ達の疑問には答えず、校門にいるであろうユイの下へと駆けつけた。
「かわいい! どこの子?」
「誰かの先生の子供じゃない?」
校門に集まっていたのは主に女子であり、その中心には少女がいた。
「誰か待ってるの?」
「はい! パパとママを待ってます」
「呼んできてあげようか? お父さんとお母さんの名前は?」
「いえ、すぐに来ると思うので大丈夫です!」
「ユイ!!」
「あ! パパとママが来ました!」
ユイの言葉に、集まっていた全員が振り向いた。
「「「……え?」」」
この学校でも1、2を争うほど有名な2人をパパ、ママと慕う少女。
「ユイちゃん!?」
「なんでここに……!?」
SAOでユイの存在を知っていたが、現実世界にいるという事実に驚きを隠せないリズとシリカ。
「「「ええぇぇーーーーっ!!」」」
「どういうこと? 今、桐ヶ谷君と結城さんをパパ、ママって……」
「二人が
「じゃあ本当に桐ヶ谷君と結城さんの子供……?」
「いや待って、私たちは約2年もSAOの中にいたのよ? それにあの子の大きさ……現実世界で子供なんて年齢的にありえないよ」
「でも確か、
事態を収拾できないことに頭を悩ませるが、とりあえずユイに話しかけた。
「ユイ、ウチの学校に?」
「現実世界の街を探検していたついでにパパとママが通う学校を見て、一緒に帰ろうと思いまして」
いい笑顔で答えるユイ。
「そ、そうか……でも来る前に先に教えてほしかったかな……」
「ちょっと、キリト! どういうことよ!」
「どうしてユイちゃんがここにいるんですか!?」
「それは後で説明するから、とりあえずこの場を離れたい」
「そうね……明日、みんなにする説明が怖いけど、今はこの場を離れましょう」
和人と明日奈はユイを回収して強引にこの騒ぎから離れた。
「それにしても、驚いたな……ユイがAIだったとは」
和人達は、エギルが運営する〈Dicey Cafe〉に来ていた。
店内に入った時、リズやシリカと同じように驚いたエギルだが、すぐに冷静さを取り戻した。
SAOの中でユイの存在は知っていたエギル達だが、ユイのことはキリトとアスナに保護されていた子供であり、キリトとアスナをパパ、ママと慕っていたということしか知らない。
なので、改めてユイを紹介し、ユイの正体を明かした。
「なるほどね……ユイちゃんがアスナとキリトを親と慕ってるのも納得だわ」
「でも、なら何でユイちゃんは
「簡単に言うと、茅場からのSAOのクリア報酬らしい」
「まさか、本当にその歳にして子持ちになるとはね……」
ユイの体の仕組みとかいろいろ気にはなるだろうが、とりあえず納得してくれたようだ。
「それで、アンタ達が学校にいる間、ユイちゃんが街を見て周り、帰りにウチの学校に寄ったと……」
「まぁそんなところだ。そうだエギル、俺たちが学校に行ってる間、ユイを預かっててくれないか?」
「そりゃ、別に構わないが……」
「あ、パパ! そのことについてですが、私からお願いがあります!」
「なんだ?」
「私、学校に行きたいです!」
ようやく学園に通う流れになりました!
学校でのユイの服装
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ロストソングで登場したお嬢様風のブレザー
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メモデフで登場したセーラー服
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私服