ユイの学園生活   作:夏生

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転校生

「今日は新しいクラスの仲間を紹介します。桐ヶ谷ユイちゃんです」

「今日からこの学校に通うことになった”桐ヶ谷ユイ”です。よろしくお願いします」

 

 ユイのお願いから数日後、ユイは小学校へと入学を果たした。一応、転校生扱いで学年は2年生である。

 どうやってお願いを叶えたのかというと、一番実現可能な人物である政府関係者の菊岡に依頼した。

 SAOの情報と貸し一つを条件に、依頼をすることになったが、教科書などの必要な物も全て準備してくれた。

 菊岡に、どうしてそこまでしてくれたのか聞くと、「将来のキリト君への投資だ」とか言われた。後が怖い。

 正直、この手段は使いたくなかったものの、愛娘のお願いとなれば安いものだろう。

 小学校に入学するには、ユイのいろいろな情報が必要なはずだが、どうやって入学させたのか怖くてあまり聞きたくない。

 

 

 

  学校に行きたいと言われたとき、初めは和人達の学校でお留守番をしたいのだと思った。もし、学校側が許可してくれるなら、和人と明日奈もユイと一緒にいられる時間も増える。そう思った二人だが、どうやら違うらしい。ユイは小学校に通いたいのだとか。

 ユイに、学校に行きたい理由を聞いたところ、「友達を作りたい」「もっと人間の子供のらしい仕草や立ち振る舞いを身に付けたい」「現実世界でパパとママの娘になるために、小学校に通うのが現実世界での普通なのです」とのことだった。

 ユイとしては、VRの世界では自信をもってキリトとアスナの娘だと言えるのだが、現実世界においては、和人と明日奈の娘だと自信をもって言いきれなかったのだ。

 現実世界では子供が外にいるのはおかしいことではない。しかし、平日の昼間にユイくらいの子供が街にいるのかと言えば、世間的に見ればおかしいことだった。事実、補導されそうになったことが証拠と言えるだろう。想定していたとは言え、周りとズレているのはユイにとって問題だった。

 そこで、現実世界に来たからには、キリトとアスナの子供としてではなく、和人と明日奈の子供として、現実世界の子供と同じように過ごすべきだと考えたのだ。

 郷に入っては郷に従えということなのだろう。

 正直、子供らしい仕草や立ち振る舞いについては、和人と明日奈にとって今のユイのままで十分なのだが、そこはユイの意思を尊重した。  

 それに、友達を作りたいと言われて、ダメだなんて言えない。

 ユイが小学校で学ぶのは学問というよりも、情操教育や道徳などだろう。メンタルヘルスカウンセリングプログラムであるユイにとっては情操教育や道徳を学ぶことは本分のようなものである。

 また、ユイに「もっとふさわしいパパとママの子供になるのです!」と、可愛らしく宣言されては和人と明日奈に止める術はなかった。

 しかし、和人と明日奈が学校にいる間、ユイをどうするかという問題が解決したのも事実だった。

 

 

 

「みんな仲良くしてあげるように! ではユイちゃん、空いてる席に座ってね」

「はい」

 

 クラスの席は男女がペアとなり、机がくっつけられている。

 窓側の席は全員が男子で窓側から2列目は女子。3列目は少し通路をあけて男子の列で、4列目は女子と男女交互に並び、それが8列だ。

 空いてる席は、窓側から2列目の席で、やや後ろの方。ユイは、その席へと座った。

 前後が女子であり、隣は男子という状況。

 今まで年上ばかりと接してきたユイにとって同年代は初めてだったが、隣の席に座る男子にしっかりと挨拶した。

 

「よろしくお願いします」

「あ……うん」

 

 ユイの丁寧な挨拶に対して、まともに返事を返すことができない男子。

 

「どうかしましたか?」

 

 様子がおかしい男子に疑問をもったユイが首を傾げながら訊ねたが、

 

「い、いや……なんでもない」

 

 と返されてしまう。

 男子はただ、ユイに照れて緊張しているだけだったのだが、ユイは気づかない。

 

「そうですか……」

 

 なんでもないと言われ、初対面の相手にそれ以上深くは追求できないため、ユイは担任の先生の方を向いた。

 隣に座る男子はもちろん、クラス全体から視線を感じる。ユイは先生からの連絡事項を聞くのに徹した。

 ショートホームルーム、通称「朝の会」が終わるとすぐにユイの下にクラスの女子が集まった。

 

「ねぇねぇ、どこからきたの?」

「髪、綺麗……いいなぁ……」

「ユイちゃんって呼んでいい?」

 

 ユイは、一斉に話しかけられて戸惑った。

 どんな言葉も聞き逃さないユイだが、誰から返答しようか迷ってしまって処理が追いつかない。

 一方で、新しく転校してきたユイを離れた場所から見ていた集団あった。もちろん、クラスの男子達である。

 男子達は、ユイに話しかけたいが、集まった女子達が邪魔で話かけられずにいた。

 そうこうしている内に一時限目の予鈴が鳴った。

 

 授業が始まると、ユイはクラスの様子を観察していた。

 授業の科目は算数。AIであるユイにとって最も必要のない科目だが、ユイは人がどうやって計算方法を学ぶのかを学んでいた。

 先生の教え方を学び、クラスの様子から子供らしい仕草を学ぶ。

 時折、問題を先生に当てられて答えるも、悩むそぶりもなく答えるユイの姿は、密かに周囲の好感度を高めていた。

 

 

 授業が終わると、ユイ前の席に座る女子生徒が話しかけてきた。

 

「ユイちゃん、頭いいんだね! あっ、前の学校ではもうやった内容だったの?」

「元々計算は得意なんです」

 

 さっきの算数の授業では、筆算のやり方を学んでいたが、演算の塊であるAIのユイにとっては、計算など人が呼吸するのに等しい。

 

「いいなぁ。私、計算苦手なんだー」

「そうなんですね。えっと……お名前を聞いてもいいですか?」

鈴川 早希(すずかわ さき)よ。ユイちゃんはこのあとどうするの?」

 

 小学校の時間割りは、1限目と2限目、3限目と4限目は10分ほどの休憩だが、2限目と3限目の間に20分〜30分くらいの長い休み時間がある。 

 その時間は、体育館や校庭に行って遊んだり、本を読みに図書室に行くなど過ごし方は様々だ。

 ユイは、この休み時間を利用して校内を見て回ることに決めていた。

 

「私は、この休み時間に校内を見て回ろうかと」

「じゃあ私が案内してあげる!」

「ほんとですか!? お願いします!」

 

 キリトやアスナ達のサポートやお手伝いが全てだったユイにとって、同級生と一緒に居ることや遊ぶということ自体が初体験だ。

 それに、もともと友達作りも学校に通う目的の一つだ。なので、この申し出はユイにとってもありがたかった。

 ユイは早希と教室を出て校内の探検(マッピング)へと向かった。

 

 校舎は3階建で、コの字の形をしていて、階段が角の4ヶ所にある。1階は1年生と2年生、2階が3年生と4年生、3階が5年生と6年生だ。

 ユイが廊下を歩けば、母であるアスナがSAOで男性プレイヤーの視線を集めていた時と同じように、ユイも周囲の生徒の視線を集めていた。それは、好意の視線であったり、転校生という好奇の視線だったり様々だ。

 特に同じ学年である2年生の教室がある廊下では……

 

───あんなヤツいたっけ?

───あの子、誰だろう?

───見たことない……転校生?

 

 などなど、ユイを見た同級生から反応があった。

 そして、今視線を集めているのは、ユイの容姿によるところも大きい。

 ユイは、学年…いや、学校や地域においても群を抜いて可愛らしく、幼いながらも美しい容姿をしている。

 それは、まだ異性に関心が少ない男子小学生が、ユイを見て姿を目で追ってしまう者もいるほどだった。

 母の明日奈と同じように、可愛らしい容姿で周囲の視線を集めるユイだが、視線が集まっているのを知っていながらも、父の和人と同じく、好意の視線だとは気づいていない。

 ユイは、ただただ転校生という物珍しさや、今まで校内で見たことない生徒だからという好奇の視線だと思っている。

 ユイは、第一印象を良くしようと笑顔を見せるが、その行為は印象を良くするどころか男子達を一目惚れさせてしまう。

 その鈍感さとフラグ建築の才能は父譲りであった。

 

 校内を案内するといっても、案内するのは、特別教室である理科室や音楽室、図書室などだ。

 

「学校って意外と広いんですね」

「そうかな? すぐ慣れるよ」

 

 会話をしながら校内を歩いて回る。

 ちなみに、ユイが興味を示したのはコンピュータ室と家庭調理室だ。コンピュータ室に興味を示すのは、ユイがAIである特性から考えて当然なのだが、父である和人の影響も含まれている。そして、家庭調理室に興味を示したのは明日奈の影響といっていいだろう。

 なにかと両親の影響を色濃く受けているユイなのであった。

学校でのユイの服装

  • ロストソングで登場したお嬢様風のブレザー
  • メモデフで登場したセーラー服
  • 私服
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