あまりうまく書けませんでした。
東京都世田谷区にある明日奈の家は、大きな屋敷が連なる住宅街のなかでも一回り広い敷地であり、家自体もかなり大きい。結城家がいかに裕福かがわかるだろう。
「パパの家も大きかったですけどママの家も大きいですね! それに、かなり近代的です!」
ユイの言う通り、明日奈の家は最新技術を取り入れた家になっており、端末からの遠隔操作による玄関のロックや、部屋の照明やエアコン、クローゼットの扉の開閉が人を感知して自動的に作動するなどの便利さはもちろんのこと、セキュリティ面においても厳重な設備が整っている。
明日奈的には和人の家のような趣ある家が好きだが、明日奈の家はユイに高評のようだったので自分の家も思いの外悪くないと明日奈は思った。
家に入ってダイニングへ行くと、ハウスキーパーの佐田明恵が料理をしていた。
「佐田さん、ただいまかえりました」
「あら、おかえりなさいませ、お嬢様。……おや? もしかしてその子が?」
「はい。先日、泊まりに来る子がいると言っていた子で、ユイっていいます。ユイちゃん、こちらはハウスキーパーの佐田さんよ」
「はじめまして、ユイです。今晩、お世話になります」
ユイはペコリとお辞儀をして挨拶をした。
「これはこれはご丁寧に。初めまして、この家でハウスキーパーをしております佐田と申します」
ユイの丁寧な挨拶に、佐田も丁寧に返す。
「母さんはもう帰ってます?」
「いえ、奥様はまだおかえりになられていません。先ほど連絡があったのでもう少しでお帰りになられると思います。あと、今日は旦那様と浩一郎様も夕飯ご一緒するとの連絡がありました」
「そう、ありがとう。私たちは部屋に行ってますね」
「わかりました」
「じゃあ、私の部屋に行こっか!」
明日奈はユイを連れて部屋へと向かった。
明日奈の部屋は、白色を基調とした部屋に椅子やベッド、クッション、小物に収納箱などでピンク色や黄色などの暖色系が少し混じることで、清潔さの中に可愛らしさが混じった実に女の子らしい部屋になっている。
部屋には勉強机に化粧台、ベッド、収納棚、小さいデーブルがあり全体的に物が少ないが、最小限の小物が飾られているので和人の部屋ように殺風景ではない。
「ここがママのお部屋なんですね! すごく可愛い部屋です!!」
ユイのお気に召したのか、目を輝かせて部屋を見ていた。
「ありがとう! ユイちゃんが気に入ったみたいでよかった」
一通り明日奈の部屋を見終わると明日奈とユイは、明日奈の昔のアルバムなどを見ながらたわいない会話で夕飯までの時間を楽しく過ごした。
*
明日奈の家族が全員帰宅し、夕飯の時間になるとユイを連れてダイニングルームへ向かった。
夕飯の時間はいつも18時30分と決まっている。
なので、その10分前に着くようにと行動した。
ダイニングルームへ入ると、すでに母の京子が席に座っている。
佐田さんはすでに帰ったようだ。
「その子が紹介したいって言ってた子ね」
「ユイっていうの。ユイちゃん、私のお母さんよ」
「はじめまして! ユイです!」
「礼儀正しい子ね。席は明日奈の横に座るといいわ。浩一郎は私の席に座らせるから」
結城家では家族の席が決まっている。
12脚の椅子を備えた長いテーブルの北東の角から父・彰三、明日奈、兄・浩一郎と並び、彰三の正面向いが母・京子の席となっている。
明日奈から見たら、右隣に父・彰三、左隣に兄・浩一郎、右斜め向かいの椅子に母・京子となる。
しかし、今回はユイがいるので、変則的に浩一郎の席をユイに使わせ、京子の隣を浩一郎の席とした。
ユイは言われた通りに明日奈の隣に座ったが、身長ゆえに少し机が高い。
「少し食べにくそうかしら? 明日奈、自分の部屋からクッションか何かを持ってきてお尻の下に敷いてあげなさい」
普段の冷厳な様子とは違い、今日は少し優しい雰囲気がある。
いつもと違う京子の様子にやや戸惑う明日奈だが、ユイのためなので素直に従って丁度良さそうなクッションを探しに部屋へと戻った。
「客人がいるというのに待たせるなんて……お父さんと浩一郎は何をしているのかしら。ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です! 夕飯は18時半と聞いていましたし、まだ時間になってないですから」
「言葉使いもしっかりしていて偉いわね」
京子は優しくユイに微笑んだ。
すると、明日奈が戻ってくるのと同時に彰三と浩一郎も部屋に入ってきた。
「遅いわよあなたたち」
「いや、すまん。作業の区切りがなかなかつかなくてな」
「その子が明日奈が紹介したいって言ってた子かい? 女の子としか聞いていなかったからてっきり同い年の娘かと思っていたよ」
明日奈の父、彰三と兄、浩一郎が席に着きながら言った。
明日奈もユイの座る椅子にクッションを敷いてから自分の席に着いた。
「食べられない物とかあるかしら?」
京子がユイに聞いた。
「ありませんよ」
(えっ!? そういえば、何も考えずに夕飯に誘ったけど、ユイちゃん、
「そう、好き嫌いしないなんて偉いわね。明日奈なんて小さいころは野菜を残していたのに」
「か、母さん!」
明日奈が慌てて暴露話を止めに入った。
さすがに、娘の前で自分の恥を晒したくはない。
「もう! みんな揃ったんだから早く食べましょう!」
「それもそうね」
明日奈の言葉をきっかけに「いただきます」と言って食事が始まった。
少しだけ無言で食事をしていたが、兄の浩一郎が先に会話を切りだした。
「まずは自己紹介をしておこうか。明日奈の兄の浩一郎だ。よろしくね」
「父親の彰三だ」
「ユイといいます。よろしくお願いします」
「それで明日奈、この子を紹介したいということだったけれど、この子はどこの子なの?」
「うん。それについてなんだけどね……実はユイちゃんは私とキリ……和人君の子なの」
「……」
「……」
「……」
明日奈の単刀直入で説明足らずの言葉に、全員が一度言葉を失った。
「あ、明日奈? 明日奈の子とはどういうことだ? まさか桐ヶ谷君と……」
「お父さん落ち着きなさい。ついこの前まで眠りっぱなしで、明日奈が出産してないことくら少し考えればわかるでしょう」
狼狽える彰三を京子が嗜める。
「明日奈、どういうことかちゃんと説明しなさい」
「ユイちゃんとは向こうの世界で……SAOの中で会った子で、森の中で彷徨っていたユイちゃんを私とキ……和人君が保護したの」
「なるほど。しかし、こちらの世界に生還しているのならこちらに親がいるはずだろう? 親はどうしたんだい?」
「まさか、施設から引き取ってきたとか言いませんよね?」
「ここからは私が説明します、ママ」
ユイが自分で説明すると言い出すと、明日奈以外の視線がユイに集まった。
「私は、SAOのときに設計されたメンタルヘルス・カウンセリングプログラムです。ソードアート・オンラインでは、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計された巨大な制御システム『カーディナル』が運営を行なっていました。二つのコアプログラムが相互にエラー修正を行い、更に無数の部下プログラムによって世界の全てを調整していました。しかし、プレイヤーの精神性によるトラブルだけは同じ人間でないと解決できない。そのために、本来であれば人間のスタッフが用意されるはずでしたが、カーディナルと開発者たちは、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです」
「それが、君だっていうのかい?」
「はい。なので私は人間ではなくAIということになります」
「驚いた。ここまで高性能なAIは初めて見た!」
「人間といわれても全く違和感がない。すごいな……」
興奮したように彰三と浩一郎が感想を言う。
その後もユイは、自分が崩壊していった経緯やキリトとアスナと出会った時のこと、二人との関係を説明していった。
「パパがSAOをクリアしてプレイヤーの皆さんを解放してからは、ネット回線を経由して電脳世界で接触してきたヒースクリフ……茅場晶彦さんがパパへのSAOクリア報酬として私を与えられました。そして現在に至ります」
ユイが話し終え、少しの沈黙のあと京子が喋り出した。
「……事情はわかったわ。改めて確認するけど、あなたは人間ではなく機械ということなのね?」
「はい」
「母さん! 機械なんて酷いわ!」
「酷いものですか! あなたにとって、とても重要なことです! もしこの子が人だったなら簡単に「娘にする」なんて出来るわけないでしょう!」
京子はため息をついて、再びユイに質問する。
「今は彼があなたの保護者なのね?」
「はい!」
「そして明日奈の娘であると」
「はい!」
「なら私はあなたのおばあちゃんということになるのかしら? ……まさか、こんなに早く孫ができるとは思わなかったわ」
「母さん……ユイちゃんのこと認めてくれるの?」
「認めるもなにも、あなたがこの子の母親なのでしょう? まだいろいろと理解が追いついていないところもあるし、一部認めていないところもあるのは事実ですけどね」
一部認めていないというのは、おそらく和人とお付き合いしていることだろう。
ユイの存在は認めても、和人と明日奈の関係はまだ容認されていないのだ。
「ママのママ……京子さんはパ…和人さんを認めていないのですか?」
「呼びにくそうね? 遠慮しないでパパで構わないわよ? ついでに、私のことはおばあちゃんで構わないわ」
「「「えっ……!」」」
京子の予想外な発言に、明日奈、彰三、浩一郎の3人は驚いて京子を見た。
「なんですか? 明日奈はママと呼ばせているのですから問題ないでしょう」
(ユイちゃんを気に入ってくれるのは嬉しいけど、デレすぎじゃない!?)
明日奈は気に入ってくれた嬉しさ反面、いつもと違う態度になんだか納得いかない気持ちだった。
京子はユイに向き直り話し続ける。
「あなたのパパのことは……正直認めていないわ。明日奈にはもっとふさわしい人がいると思ってまいす」
「母さん! そんな人、キ……和人君以外いるわけないじゃない!」
「京子さん、私のパパは和人さんだけです」
もちろん、ユイにとってのママは明日奈だけである。ユイは和人と明日奈以外を親と認める気は無いのだ。
しかし先ほど、ユイの保護者であり所有者は和人だと告げている。これは、明日奈と和人が一緒にならなかった場合、ユイは和人に付いていくということでもある。ユイが人間だったとして言い換えるなら、ユイは”和人の連れ子”ということだ。
つまりユイは、暗に「パパのことを認めなければ、あなたの孫にならない」と言っているのだ。
しばらく、ユイと京子が見つめ合う。
すると、京子はため息をついてユイに告げた。
「はぁ……わかったわ。明日奈、今度彼をここに連れてきなさい」
京子の方が先に折れた。
ユイという孫が手に入らないことを避けたことが、すでにユイの存在が京子の中で大きくなっていることを表していた。
「……! うん! 絶対連れてくるわ!」
「ありがおうございます! おばあちゃん!」
おばあちゃんと呼ばれた京子の様子は、満更でもない様子であり、どこか嬉しそうでもあった。
その後、彰三のことも「おじいちゃん」と呼ぶことになり、浩一郎は「おじさん」呼びを回避し「お兄さん」という呼び方に落ち着いた。
また、高性能のAIを目の前にした男二人がユイを研究したいと言いだし、それを聞いた京子と明日奈が男二人からユイを遠ざけるなど一悶着があっが、明日奈としては、無事に両親への紹介が成功し、和人のことを認めてもらえるかもしれない機会を得られて満足な結果だった。
「ところでユイちゃん、次はいつ泊まりにくるのですか?」
「……え?」
今から次のお泊まりの約束を取り付けようとする京子の姿に、やはり釈然としない気持ちになった明日奈だった。
学校でのユイの服装
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ロストソングで登場したお嬢様風のブレザー
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メモデフで登場したセーラー服
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私服