けものフレンズ2 リバース   作:てぃーえーけーえー

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大変お待たせしました!大ヴァンガ祭行ってたりしばらく死んでたりしてました。ちょっと難産ではありましたがなんとか更新です。
そしてまた増える文字数……


第6話 「がっこう」

 

 

「マモナク、サバクチホー、サバクチホー。テイシャジニ、コロバナイヨウ キヲツケテネ」

 

 淀みない動きでモノレールが停車すると、気の抜ける音と共に扉が開く。仕切られていた空気が混ざり合い、乾いた風が車内を席巻した。早朝の砂漠を包む冷えた空気は、まるで生き物を拒むかのようである。

 

 そんな空間にキュルルは迷いなく飛び込む。冷たい風を浴びるかのように全身を伸ばし、新鮮な空気をめいいっぱい吸い込んだ。

 

 ふと、自分を呼ぶ声が聞こえ、キュルルは振り返る。

 

「パイビーさん、どうしたの?」

 

 ポテポテと歩み寄るラッキービーストにキュルルは目線を合わせる。

 

「キュルル、コノサキノ センロガ イチブホウカイ シテイルミタイ。コレイジョウ サキハ モノレールデ イケナイヨ」

 

「え!? そうなの!?」

 

「どうしたっていうの……」

 

 キュルルの大声で目覚めたのであろう、カラカルが目をこすりながら近寄ってくる。キュルルから事情を説明されるとカラカルは少し考え込んだ。

 

「……キュルル、ジャパリまんってあとどれくらい残ってた?」

 

「え? あっ! もう少ないや!」

 

「じゃあ、ここで配ったらとしょかんに戻りましょ。ちょっと博士たちに聞きたいこともあるし」

 

「そうだね。パイビーさん、モノレールを反対に進ませることってできる?」

 

 パイビーの方を向き直ると、パイビーは頷くかのような動作をする。

 

「マカセテ」

 

 ピョッコン、ピョッコンと跳ね進むラッキービーストに安心したように頷くと、キュルルたちは駅から出るために歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 駅から出ると、一面に砂の海が広がっていた。太陽はすでにかなりの熱量を伝え、乾いた風が喉を干上がらせる。未だに周りの空気は冷えているのが比較的幸いといったところであろうか。

 

 そんな中をキュルルたちはタブレットの動物図鑑を頼りに歩いていた。

 

「キュルル、前見て歩かなくて大丈夫なの?」

 

「うーん、でも、こんなに暑いならフレンズさんも穴の中とかにいそうだから……って、うわわっ!」

 

 思わずつまづくキュルル。が、カラカルに支えてもらうことで事無きを得る。カラカルは言わんこっちゃない、と呆れ顔である。

 

「まったく、気をつけなさいよね」

 

「アハハ、カラカルありがとう」

 

 その時、ポーンとタブレットが反応し、光を放つ。すぐさまキュルルが確認すると、そこには『ミミナガバンディクート』と記されていた。

 

「何かいたの?」

 

「えっと、『ミミナガバンディクート』さんが近くにいるみたい。他に何か書かれてな……」

 

 ふっ、とキュルルに影が差す。反応する間もなく、影はキュルルにのしかかり、キュルルは顔面から砂山にダイブしてしまった。

 

「キ、キュルルーー!?」

 

 カラカルの目線の先には、灰色のオーバーオールを着た、大きなウサギを思わせる耳を持ったフレンズがいた。そのフレンズはキュルルを下敷きにしたままニヤリと笑う。

 

「ふっふっふー。不審者撃退なのです! やはり! 時は金なり! 速攻は正義なのです!」

 

 キュルルに手を出し、それを手柄のように誇る。そんな振る舞いがカラカルの堪忍袋の尾を音を立ててぶっちぎった。

 

「……アンタ、早くそこから退きなさい」

 

 顔を俯かせ、静かに怒りを滾らせながら警告する。そんな言葉への返答は、胡乱気な視線だった。

 

「なんなんなのですか? 不審者ごときが偉そうに。お前もこのミミナガバンディクートが成敗するのです!」

 

 警告終了とばかりにカラカルは顔を上げる。手を出したことを後悔させるため、全身に力を漲らせる。と、そこでカラカルの動きが止まった。

 

 カラカルの目線はミミナガバンディクートの奥、ドヤ顔する有袋類の背後に立つフレンズに向けられていた。そのフレンズは、としょかんで見る"ほん"と呼ばれるものを高々と上げると、迷いなくミミナガバンディクートに振り下ろした。

 

「ミミディさん! また言うこと聞かずに飛び出して! 危険なことはやめなさい!」

 

「え、えーと、あなたは……?」

 

 突然現れた眼鏡が特徴的なフレンズ。その存在に困惑したまま、カラカルは対話を試みる。が、

 

「不審者にする自己紹介などありませんわ。では、わたくしは授業がありますので」

 

 にべもなく断られ、ミミナガバンディクートを引きずってさっさと歩き出す。

 

「……キュルル、大丈夫?」

 

「う、うーん、なんとか。それにしても、残念だね。ジャパリまんもだし、いろいろ教えて欲しいし。どうしよっか?」

 

 その時、歩いていた眼鏡のフレンズが足を止める。凄まじい速さの早歩きでキュルルたちに接近すると、ガシッとキュルルの手を鷲掴みにする。

 

「今、わたくしに教えて欲しいと言いましたか?」

 

「え? えっと……」

 

「今、このミーアキャットに"教えて欲しい"と言いましたよね?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「うっふっふ、キマシタわーー!!」

 

 不気味な笑顔でテンションを上げる眼鏡のフレンズ。あまりの勢いにキュルルもタジタジである。

 

「え、えーっと……?」

 

「なんか怖いわよ……」

 

 ドン引きするキュルルとカラカル。しかしミーアキャットは意にも介さない。

 

「こうしてはいられませんわ! さぁ、すぐに授業ですわよ!」

 

 言うがいなや、握った手を引っ張りミーアキャットは歩き出す。目を回しているミミナガバンディクートと共にキュルルは引きずられていくのであった。

 

「……って、ちょっと待ちなさいよーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 キュルルたちが引っ張ってこられたのは一つの巣穴だった。入り口が複数あるためか、中にも明かりが差し込み見回すことができる。

 

「そういえば、何について教えて欲しいのか聞いていませんでしたわね。わたくしがなんでも教えて差し上げますわよ? 『砂漠の日向ぼっこ論』? 『穴掘り講座』? それとも、『サソリ食育学』?」

 

「えっと、僕たちミーアキャットさんのお家について知りたいんだ」

 

「あら、そんなことですの? まぁ、お安い御用ですわ。では、この後の授業は『ミーアキャットのお家論』にいたします。さぁ、あなたたちも席に着いて」

 

 案内されたのは机とイスがたくさんある部屋。カラカル、キュルル、ミミナガバンディクート、そして元から部屋にいた2つのシニヨンが特徴的なフレンズがそれぞれ座る。

 

「ではこれから、『ミーアキャットのお家論』について講義を始めます。ミミディさんもフタコブさんもたびたび迷子になるのですから、しっかりと聞くこと!」

 

 ミミナガバンディクートは不満気に、フタコブと呼ばれたフレンズは呑気な返事を返す。その反応を受けて、ミーアキャットは授業を開始した。

 

 

 

 ——30分後——

 

 

 

「と、いうわけで……」

 

 キュルルは必死になってスケッチブックにメモをとる。最初はミーアキャットのことをジッと見つめていたカラカルも、興味を失ったのか机で爪とぎを開始していた。ミミナガバンディクートは後ろ足で砂を掘り始め、フタコブにいたっては寝はじめている。

 

 

 

 ——60分後——

 

 

 

「それから……」

 

 ミーアキャットの止まることない話にキュルルもメモを諦めてとりあえず話だけでも聞く。他の3人はとっくに脱落してほとんど熟睡である。

 

 

 

 ——90分後——

 

 

 

「このようにして……ってみなさん! 何寝ているんですか!」

 

 遂にはキュルルまでも頭から煙を上げていた。その様子にミーアキャットは嘆息すると、休憩を言い渡す。

 

「〜〜、キュルル、大丈夫?」

 

 目覚めたカラカルがあくび混じりに聞くと、キュルルはフラフラと立ち上がる。

 

「うん……ちょっと、行ってくる……ね……」

 

 フラフラと歩き出すキュルルを見かねて、カラカルも付いて来る。その先では、気落ちしたように俯くミーアキャットの姿があった。

 

「ミーアキャットさん」

 

「えっと、キュルルさん、とカラカルさんでしたか? なんでしょう?」

 

「えっと、話だけだと分からなかったから、直接案内して欲しいんだ」

 

「……分かりましたわ」

 

 爆睡している2人のフレンズをチラリと見ると、ミーアキャットはキュルルたちを伴って部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミーアキャットに案内してもらったことにより、キュルルのスケッチブックにはみるみる絵が描かれていっていた。

 

「ミーアキャットさんのお家ってすごく広いんだね。いろんなお部屋かあるし。前に同じようなお家にモグラさんのがあったけど、それよりも大きいや」

 

「ここはわたくしのお家ですが、同時にみんなの学校としても使っておりますので」

 

「"がっこう"?」

 

「ヒトが昔営んでいた、子どもに何かを教える機関ですわ。わたくしも真似したい、と。けど、もしかしたら向いてないのかもしれませんね」

 

 落ち込むミーアキャットにより、辺りに沈痛とした空気が流れる。そんな空気を断ち切らんと、キュルルは別の質問を投げかけた。

 

「ねぇ、ミーアキャットさん。ミーアキャットさんはミミディさんと、えっと……」

 

「フタコブラクダさん……ですか?」

 

「そう! フタコブさん。その2人とどう会ったの?」

 

「まず会ったのはフタコブラクダさんでしたわ。あの子、身体は丈夫なのですが、すぐに寝てしまって。こんなご時世だと危ないから、身を守れるようになって欲しくて」

 

 昔の心情を思い出したのか、ミーアキャットの顔がだんだんと穏やかなものになる。

 

「ミミディさんは直接わたくしの元を訪ねてきましたわ。あなたたちは"ミミナガバンディクート"についてどれくらい知ってますの?」

 

「ずかんでは、たしか"絶滅危惧種だ"って……」

 

「そうですわ。そのせいか、わたくしの元に来たときも、"何があっても生き残れる方法が知りたいのです! "って」

 

「そんなこと……」

 

「ええ、誰にもわかるわけないですわ。でも、わたくしは応援したくなった。わたくしの持っているものをできる限りあの子に伝えて、あの子が生きる力になれれば、と。けど……」

 

 少し物悲しい雰囲気があたりに漂う。うまくいかない、そんなミーアキャットの気持ちがキュルルには伝わったのだ。言葉を見つけられないキュルル。しかし、

 

「なら、"向いてない"っていうのは違うんじゃないかしら?」

 

 カラカルは違った。唖然としたミーアキャットにカラカルはさらに言葉を重ねる。

 

「わたしは正直キュルルを誘拐したアンタのこと警戒してたけど、アンタがあの2人のことを大切に思っているのは伝わったわ。教えたい、伝えたいって気持ちは確かなんじゃないの?」

 

「それは……。いえ、そうですわね。お二人とも、感謝しますわ」

 

 ミーアキャットの眼鏡の奥の瞳に力が戻る。その様子にキュルルとカラカルは微笑みを浮かべた。

 

「ねぇねぇ、ミーアキャットさんはいつも何教えているの?」

 

「とりあえず文字を。文字が読めないと授業がしにくいので。でも、一通り読み上げますとフタコブさんは寝てしまって、ミミディさんは待っていられなくて」

 

「もっと動けたらいいんじゃない?」

 

 カラカルの言葉にキュルルは少し思案する。なんとなく目を落とすと、そこには先程まで自分が描いていた絵があった。その時、キュルルの頭の中で急速にアイデアが固まる。

 

「そうだ! ミーアキャットさん。これ使おうよ!」

 

 キュルルが掲げたスケッチブックを見て、ミーアキャットは訝しげな目を向ける。

 

「それは……?」

 

「キュルル、その絵をどうする気?」

 

「エッヘヘ、これ、やぶいちゃおーって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「では次! "食事をするときに使う部屋"!」

 

 カラカル、ミミナガバンディクート、フタコブラクダの3人が床に散らばった紙片に目を凝らす。瞬間、目的のものを見つけたフタコブラクダがその紙片を取った。

 

「うふふ〜、これですね〜」

 

「その通り! その部屋を、"しょくどう"と言います。言ってみて」

 

「しょくどう……。分かったもん!」

 

「はい! それでは、フタコブさんに+1ポイントですわ」

 

 キュルルが提案したことはカルタ取りのようなものだった。キュルルは自身の絵を部屋ごとにバラバラにし、それぞれに部屋の名前を書き添えたのだ。それらを取り合い、書かれた文字を読む練習をするわけである。

 

「むぅ、負けたくないのです!」

 

 残った枚数も僅かで、勝負はドンドン白熱する。そして、

 

「今回の勝者は、フタコブラクダさんです!」

 

「エヘヘ〜、フタコブラクダが1番だもん!」

 

「むぅ、届かなかったわね〜」

 

 ほんわかと喜ぶフタコブラクダに、多少の悔しさを滲ませるカラカル。一方、ミミナガバンディクートはというと、

 

「〜〜、悔しいのです! もう一回! もう一回なのです!」

 

 ふくれっ面で再戦を挑んでいた。そんな様子にミーアキャットは微笑む。

 

「もちろんですわ。さぁ、みなさん持ってる絵をバラバラに置きましょう」

 

 そうして第2回戦が決定した。準備ができたのを確認するとミーアキャットは張り切って問題を出し始める。

 

「それでは! "エサを捕まえるため……」

 

「これなのです!」

 

 ミーアキャットが読み終わるのを待たずにミミナガバンディクートは絵を拾い、自慢気にミーアキャットへ見せる。

 

「そうです! その部屋は……」

 

「"くんれんじょ"なのです! さっき覚えたですよ!」

 

 被せるように発せられたミミナガバンディクートの言葉に、ミーアキャットはハッとする。その他の3人がミミナガバンディクートを褒め称える中、ミーアキャットは感動のあまり涙を零した。やっとちゃんと教えることができたのだ、と。そんな想いでミーアキャットの胸はいっぱいになる。

 

「先生〜、大丈夫〜?」

 

 動かないミーアキャットにフタコブラクダが声をかける。ミミナガバンディクートにいたっては次の問題を急かしてさえいた。

 

 笑顔で学ぼうとする生徒たちの姿に、ミーアキャットは涙を拭いて、満面の笑顔になる。

 

「はい! では次ですわ! ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュルルさん、カラカルさん、お手伝いいただきありがとうございましたわ。そして、出会った当初のご無礼、謝罪申し上げます」

 

 ミミナガバンディクートとフタコブラクダがそれぞれ"がっこう"内の自室に帰った後、ミーアキャットはキュルルたちに頭を下げていた。

 

「謝らなくてもいいわよ。今更気にしてないし」

 

「しかし……」

 

 カラカルの言葉にも、ミーアキャットは渋る。どうやら、どうしても罪悪感が消せないようだ。その様子にキュルルは少し考えると、バッグからあるものを取り出した。

 

「じゃあ、これ受け取って。僕たちが持ってても邪魔だから」

 

 キュルルが差し出したものは授業で使用したカルタだった。ミーアキャットはしばらく呆然と見つめると、ゆったりとした動作でカルタを受け取る。屈託無く笑うキュルルを見て意図を察し、ミーアキャットは泣きそうな笑顔で胸ポケットにカルタをしまった。

 

 その時、手に引っかかったのか一枚の紙が落ちる。キュルルが拾うと、それはカルタの一枚ではなく、黒い髪に白衣を着た女性の写真だった。

 

「これは……?」

 

「"しゃしん"。カコ博士の写真ですわ。わたくしのお守りですの。キュルルさんと同じヒトで、わたくしが最も尊敬する科学者ですわ」

 

「カコ……博士……」

 

「気になりますの?」

 

 カコ博士の写真から目が離せなくなるキュルル。そんな様子にミーアキャットはあることを閃く。

 

「そうですわ! その写真、キュルルさんに差し上げますわ」

 

「えっ? でも……」

 

「構いませんわ。是非もらってください。よければ、わたくしのカコ博士グッズの部屋も見ていきますか?」

 

 その問いにキュルルはチラリとカラカルの反応を伺うと、大きく首肯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 通された部屋には白衣やガラスの筒など様々なものがごっちゃに飾られていた。

 

「事実かはわかりませんが、全てカコ博士が使っていたとされるものですわ」

 

「うわぁ〜、こんなにたくさん」

 

「すごいわね……」

 

 2人であちこち見回っていると、一つの直方体の機械と、それと繋がったモニターを発見する。

 

「これは……?」

 

「これは、カコ博士の研究所にあったとされる"ぱそこん"というものですわ。一説によると、これに自身の研究を記録していたとか」

 

 その時、キュルルの右腕のラッキービーストが発光する。

 

「キュルル。コノパソコン、キドウデキルヨ。ドウスル?」

 

「本当!? ラッキーさん、お願い!」

 

「あの……。それは……?」

 

「うん? ラッキービーストっていうんだよ」

 

「ラッキービースト、わたくしの記憶にあるものとは違う形をしておりますが……」

 

 困惑するミーアキャットだが、注意を起動したパソコンの方に戻す。

 

 そこには、何かの文章を記したページが表示されていた。

 

 

『5/26

目覚めてから6ヶ月弱、ようやくわたしの研究が前進した。新しいタイプのフレンズを生むことに成功。まだまだ不安定であるため、これから経過観察と研究の発展をしなくてはいけない。

 

 5/27

わたしの仮説が正しければ、このフレンズは個体によって姿形が異なったものが生まれる可能性がある。被検体を増やすかはまだ未定だが、いつまでも被検体1と呼ぶのも薄情である。便宜上、この被検体の名前を[クキ]と名付ける。

 

 5/28

クキを研究所から出して観察していくことにする。何が影響しているのか、クキは遊びに対しての適正がかなり高い。周りの遊びをみるみる吸収していく様子が見られる。特に、フリスビー遊びが気に入ったのか、何度もせがまれることとなった。暇な時にでも遊んでやろうと……』

 

 そこまで読んだ時だった。

 

 

 プツンッ

 

 

 突然画面が暗転してしまう。途中で遮られてしまったことに驚き、キュルルはラッキービーストに声をかける。

 

「デンチギレダヨ。ボクモソロソロ アブナイカラ、スリープモードニハイルヨ」

 

「そっか、ありがとう。お疲れ様、ラッキーさん」

 

 ラッキービーストをねぎらうと、キュルルは先程まで光を灯していたモニターを見つめる。

 

「ミーアキャットさん、さっきのって……」

 

「おそらく、カコ博士の研究日誌、ですわね。『クキ』というのは初めて聞きましたが……」

 

「ミーアキャットさんでも知らないの?」

 

「ええ。カコ博士は助手にイヌのフレンズを連れていたそうなので、もしかしたらその子でしょうか?」

 

 議論する2人だが、当然答えが出るはずがない。そんな様子を見て、カラカルが声をかける。

 

「キュルル、そろそろ日も暮れるし、行きましょう」

 

「あっ、うん。そうだね。じゃあ、ミーアキャットさん、ありがとね。バイバイ!」

 

「ええ、こちらこそ感謝申し上げますわ! またいつでもいらしてください!」

 

 胸ポケットに入れたカルタに温かみを感じながら、ミーアキャットは去っていくキュルルたちに手を振り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっけよーい、のこった!」

 

「「ふぅん!!」」

 

「2人とも、今日もいい勝負ですね」

 

「あの〜」

 

「どうしました?」

 

「私たちは"ダブルスフィア"と言います。制服を着て、トラ柄の髪をおさげにしたフレンズについてもし知っているならば、お伺いしたいのですが」

 

「トラ柄? なんじゃワレ。あん敵んこと知っとるのか?」

 

「センちゃん!」

 

「ええ、知っているみたいですね。ちなみに、そのトラ柄のフレンズが現れる前後に大型セルリアンは見ませんでしたか?」

 

「見たわよ。ちょうどそのフレンズが現れる直前に。あなたたち、一体何を知ってるのかしら?」

 

「やっぱり見たんですね! 初めてしんりんちほー以外で目撃情報が。いったいなぜ……。それに、側で見つけたこの機械も……」

 

「ごめんなぁ、センちゃん思考タイム入っちゃったから、私から話すわ。あなたたちが見た、『ビースト』について」

 

 




そろそろ自分のやりたいことがだいぶバレてるんじゃないかと本気で心配になってきてる。自然な伏線の張り方ってやっぱり難しいですね。

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