Another Sunshine 〜涙の痕〜   作:果樹 椿姫丸

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小さな勇気

 黒澤ルビィという一年生が、一体どのような女子なのか。

 間違いなく言えるのは、私が今スクールアイドルがどうこう以前の問題を抱えているという事で……。

 

「はい、早速ですがお昼休みです!なるべく皆仲良くたべてね~!」

 

 時計の針は十二時を指し、クラスメイトの誰もが元気が有り余っている様子の、そんな教室。しかし私には一緒にご飯を食べる友達などいるはずもなく……。

 

「うゆゆ……」

 

 こうして景色に溶け込むくらいしか出来ないのであった。……そう。今の私には、共にスクールアイドルをやる仲間はおろか友達すらいない状況なのだ。こんなとき、幼馴染の一人でもいれば気が楽なんだろうけれど。

 ……なんて、絶望に打ちひしがれていたところ、

 

「……あ、今朝の一年生ずら?」

 

 栗色の髪の女の子が、横から私に声をかけてきた。

 

「ずら……って?」

「あっ……あぁっ、気にしないで!オラの悪いクセだよ~」

「お、オラ……?」

「ああぁ、気にしないで気にしないで!」

 

 両手をぶんぶんと縦に振り、彼女はふわふわとしたロングの髪を揺らす。それに合わせ、それに合わせ……ふむ、中々のものをお持ちで。

 

「んー……それじゃあ、〝今朝の〟って……?ルビィと貴女、別に知り合いじゃないよね?」

 

 言って、私は眼前のおっぱ――少女を見据える。小柄ながらも彼女の長い髪とふくよかな胸部は大人びた雰囲気で、ルビィなんかよりもかなり落ち着いた印象だった。手元に一冊の文庫本があり、彼女が眼鏡をかけているから余計にそう感じるのかもしれないけれど。

 

「あぁ、ほら!今朝教室飛び出した女の子……覚えてる?」

「あぁ、ヨハネちゃん」

「んっふw オr……私、あの子の知り合いなんだけど。あの子が今朝生徒会長からゲーム機没収されたの見てて」

「朝から何持ってきてんのさ――って、あぁ、そういう事?」

「うん、生徒会長と貴女、その時一緒にいたから、どんな子か気になって」

 

 姉の黒澤ダイヤは現在、浦の星女学院の生徒会長を務めている。どうやら姉妹で一緒にいるところを見られていたようだ。

 

「なるほどね。……机、くっつけて良い?」

「うん!オラとお話しようずら!」

 

 こうして、私は高校生として初の友達、花丸ちゃんと知り合った。彼女の笑顔は本当にその場に花が咲いたかのように眩しくて、一緒に時間を過ごす私の顔も自然とほころんだ。

 ……さて、私と彼女をくっつけたキューピット――もとい堕天使ヨハネちゃんとは、一体どんな女の子なのか。せっかくの機会なのだから、彼女とも友達になれれば良いが。

 

 

///

 

 ……と、そんな事を考えていたのだけれど。

 

「来ないね」

「うん……」

 

 翌日も、そのまた翌日も、堕天使ヨハネ――もとい、クラスメイトの津島善子ちゃんが学校へ来ることはなく、友人の花丸ちゃんは教室で見かける度にどこか心配そうな表情をしていた。

 

「……善子ちゃんと連絡とったりはしてないの?」

「ううん、全然。……知り合いって言っても、幼稚園の時の幼馴染ってだけで、長い付き合いがあるワケでもないから」

「そっか……」

 

 言って、彼女は手元の文庫本に再び視線を戻す。短い付き合いではあるけれど、彼女に元気がないのは明白だった。

 

―――この子も、ルビィと同じで勇気がないのかな……。

 

 知らず、私はあの日の姉の姿を今の彼女に重ねていた。もしあの時、私が……ルビィが変えようとする努力をしていれば、勇気があれば――運命は変わったのだろうか。

 何か出来る事はなかったのだろうか。

 後悔は今でも私の中に残留していて、ソレは胸を強く締め付ける。……が、それは私が行動を起こさなかったのがそもそもの原因だ。

 

――一番大切なのは出来るかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ。

 

 私の大好きなスクールアイドルグループのリーダーの言葉だ。

 なる程確かに、今のこの状況はまさしくそれじゃないか。私はもう、何もしないで後悔するのなんか御免だ。ならばこれからする行動なんて、決まっているだろう。

 

「花丸ちゃん、今度の土曜日空いてる?」

 

 私の小さな勇気は、何も変えることが出来ないのかもしれない。それでも今の私には、進む事以外考えられないのだった。

 




一年生組がどんな感じで知り合ったのか想像力をはたらかせて楽しく書かせてもらいましたw
まぁお察しの通りいよいよ満を持して例の彼女か堕天降臨です。お楽しみに!(文字数少ないのは愛嬌)
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