Another Sunshine 〜涙の痕〜   作:果樹 椿姫丸

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グループ名

「鞠莉ちゃんとルビィちゃんって知り合いだったの?」

「え?」

 

 その日の放課後、いつもの砂浜でダンスの練習をしていると、不意に曜ちゃんがそんなことを言ってきた。

 

「いや……ほら、ダイヤさんが帰った後、二人で何か話てたでしょ?」

「あー……うん。そうです……」

 

 私と鞠莉ちゃんが知り合い……というのは当たりだ。

 少し前に姉が組んでいたスクールアイドルユニットのメンバーの一人、それが彼女――小原鞠莉。つい最近まで海外に居たのだが、再び浦の星の生徒として学校生活を送ることになったらしい。

 

「やっぱり!ダイヤさんの友達なの?」

「はい……それで、知り合ったの、えへへ……」

 

 まぁ嘘は言っていない。

 ダンスなんかの練習をしなければいけない都合上あまり黒澤邸に遊びに来ることはなかったけれど、それでも何度か交流したこともあるし、少ない時間の中でもすぐに仲良くなれた、私にとって大切で、勿論お姉ちゃんにとっても大切な人物だ。……相変わらずのあのテンションの高さは少し苦手だけれど。

 

「へぇ~……なんか鞠莉ちゃんって、お嬢様?お金持ち?……なの?」

「うん……ほら、あの有名なホテル経営してるの、鞠莉ちゃん家なんですよ」

「住む世界が違うであります……」

「ほんとにそうですよね……」

 

 と、インパクト抜群なパツキンのちゃんねー(アルティメット死語)について二人で話していると、オレンジの髪を揺らし、人数分のスポーツドリンクを抱えた千歌ちゃんが駆けてきた。

 

「ただいまー。二人とも、話し合いは進んでる?」

 

 言って、千歌ちゃんは私と曜ちゃんの二人にその飲料を手渡す。まだ春だというのに今日も今日とて真夏日で、冷たいペットボトルの感触がとても心地よかった。

 

「ぜーんぜん!今鞠莉ちゃんの話してたところ」

「まぁ、簡単には思いつかないよねー……」

 

 苦笑いを浮かべながら、千歌ちゃんはペットボトルの蓋を開け、その中身を一口飲む。

 千歌ちゃんの言うところの"話し合い"とは、つまるところこの三人のアイドルユニットの名前についての事だ。

 

「よくよく考えてみれば一番最初に考えなきゃいけない事だった気がしますけどねー…」

「『まずはこの三人のグループ名をちゃちゃっと考えてきて下さ~い!』って、鞠莉ちゃんに言われちゃったし、とりあえずで良いから皆案出そうよ。……はい、千歌ちゃん!」

「うぇっ、私!?うーん……『かんかんみかん』とか、どうかな?」

「ないね」

「ないですね、どっかのコール&レスポンスみたいで違和感しかないです」

「ええー、良いと思ったのに。……曜ちゃんは?」

「制服少女隊!」

「ない」

「ないですね」

「くうぅ……ルビィちゃんは?」

「私ですか?えっと、実はもう考えてあって……」

 

 

///

 

 翌日の昼休み、一枚の紙を握りしめて、私と曜ちゃん千歌ちゃんの三人は再び理事長室を訪れた。

 

「ワオ!やっと決まったのね!グループ名は……何これ……なんで大文字と小文字ぐちゃぐちゃなの?」

「それ、シャロンって言うんです!ルビィちゃんが考えたんですよ!」

「ちょっ……千歌ちゃん!何度も言ってるけど元々は友達に手伝ってもらって出来た名前ですからー!」

「へぇ~……意味は?」

「あぁ、それ……私達の頭の文字が大文字なんですよ」

 

 言って、曜ちゃんはA4サイズの紙の真ん中に書かれた文字を、鞠莉ちゃんに伝わるようC、Y、Rの順に指さす。鞠莉ちゃんはそれに納得したようで、何度も頷くとまたいつもの調子で言葉を紡いだ。

 

「なるほど!Cは千歌っち、Yは曜、Rはルビィってワケね!キュートで良いじゃない!それじゃ、今日からあなた達三人は、『CYaRon!』ね!」

「よし、これで本格的に活動スタート出来るね!ありがとう、ルビィちゃん!」

 

 言って、千歌ちゃんは私を強く抱きしめる。……千歌ちゃんって結構、その、花丸ちゃんほどでないにしても中々良い感触ががが。

 

「部としても認めてもらえたし、一安心です。あ……あと何度も言ってますが名前は……まぁ、良いか」

 

 一応補足しておくとこのグループ名は私一人で考えたものではない。私の数少ない友達……善子ちゃんの『日本語だとインパクトに欠けるかも』という意見と、花丸ちゃんの『だとしたら今の三人を表せる言葉にすべきずら』という意見を参考に作ったもので、合作のようなものだ。

 二人には今度何かお礼をすべきだろう……。

 

「あ、そういえば三人とも!グループ名も決まったところで私から重大発表がありまーす!」

 

 高級感溢れるティーカップに注がれたコーヒーを一気に飲み干すと、鞠莉ちゃんは勢いよく椅子から立ち上がる。

 

「一ヶ月後あたりに部の設立を祝ってここの体育館でライブをしてもらうので、そのつもりでお願いします!」

「ええええええ!?」

「ピギイイイイィィ!?」

「ヨーソロオオオオオオオ!?」

 

 

 改めて、我々の現状をおさらいします。

 グループ名はCYaRon!、今日決まりました。グループには私、曜ちゃん、千歌ちゃんの三人がいて、誰も作曲が出来ません。

 作曲が、誰も、出来ません……。何故か衣装作成出来る人が私を合わせて二人もいるのですが、作曲が誰も出来ません……。

 

「作曲、誰がやるのぉ……??」

 

 作詞……は、まぁ……その気になれば出来なくはないと思いますが、作曲となるとそうはいきません。一朝一夕で出来るようになるものじゃないのです。

 

「よ、曜ちゃんとかその気になれば出来たりー…」

「無理ムリムリムリ!千歌ちゃん、作曲はいくらなんでも無理だYO!…あっそうだ!鞠莉ちゃん、他のアイドルの曲とか」

「ダメです!新規の、オリジナルの曲でお願いします!ちなみに曲を準備出来ないようなら部は廃部になりまーす」

「そんなー!」

「……鞠莉ちゃん、なんでいきなりライブなんかやろうと思ったの?」

 

 当たり前の疑問をぶつけながら、千歌ちゃんは鞠莉ちゃんの目を見据える。遅れて鞠莉ちゃんの金眼と視線が交差し、室内は数秒沈黙した。

 

「この間の書類にも書いてあったでしょ?『部に関することは最終決定権を理事長が持つ』って。私は権利を行使しただけ。……それに、スクールアイドルをやってるのに曲の一つもないなんて、格好つかないでしょ?」

「それは、そうだけど……」

「それに、ちゃんと曲を準備してもらえれば、当日は"楽しいこと"が待ってるわ!だから諦めて作曲出来る人でも探してきなさーい!ほら!早く三人とも教室に戻って!」

「分かりました……」

 

 納得出来ていない様子の千歌ちゃんは、しかしそう返事をし、私と曜ちゃんの手を取る。

 ……きっとそれは私も曜ちゃんも同じで、納得出来ないことだらけだったけれど……けれどその日はそこで理事長室を後にした。

 とにかく今は、作曲が出来る人物を探さなくてはならない。焦る気持ちも私達三人は同じで、結局その日は誰も練習に身が入らず解散となってしまうのだった。




まぁ、この三人ですからそうなりますわなっていうアレ。今回台詞分多めですた。
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