Another Sunshine 〜涙の痕〜   作:果樹 椿姫丸

8 / 8
本当の気持ち

 ついに本格的なダンスレッスンがスタートしました。

 自分たちのオリジナル楽曲を使用したその練習(振り付けは三人で考えました)は、以前までとは違いかなり実践的で、自然と全員やる気が強まりました。……ですが、このオリジナル楽曲が少し問題で――

 

「少しダンサブルすぎじゃないこの曲……ッ!?」

 

 はぁ、はぁと肩で呼吸をしつつ、額の汗を手の甲で拭い、千歌ちゃんは隣に佇む曜ちゃんに抗議する。本当に息切れ寸前まで追い込まれているように思えるオレンジ髪の先輩千歌ちゃんとは対照的に、グレージュのくせっ毛が印象的な先輩曜ちゃんはまだ少し体力に余裕がありそうだった。

 ……もっとも、体力が限界近いのは私も同じで、たまらず持参していたスポーツドリンクをガブ飲みした。

 

「あっはっは、流石にキツいねー。……飲む?」

 

 言って、曜ちゃんはペットボトル入りのスポーツドリンクを千歌ちゃんに手渡す。

 

「ありがと」

「結局この楽曲って、誰がくれたんでしょうか?」

 

 と、私――ルビィの言葉に、スポーツドリンクを一口飲んだ千歌ちゃんが「むー」と声を出し思案する。

 

「実は一人……心当たりがあるんだよね」

 

 なんて言って、彼女はふふん、と笑った。……一瞬曜ちゃんにアイコンタクトをしたように見えたのは気のせいだろうか。

 

///

 

 結局、あの元気いっぱいの曲の作曲をしてくれたのが誰なのかは、分からないままだった。……なんでも、千歌ちゃんが心当たりのあった人物に聞いてみたけれど、きっぱりと否定されてしまったらしい。

 まぁ、何はともあれ。

 自分たちの曲さえあれば、後は歌詞を作成したり、振り付けを考えたり……とにかく努力次第でどうとでもなる。……そのはずだったんだ。

 

 

「ルビィちゃん。……そこ、昨日もミスしてたけど、大丈夫?」

「大丈夫です。ルビィは大丈夫だから、だからもう一回……!」

 

 今日は、いつもの砂浜でダンスの練習をしていた。

 メンバーは、私と曜ちゃんの二人きり。……実は今日は休日で、何度やっても出来ない箇所があるから、と私から頭を下げて練習に付き合ってもらっているのだ(千歌ちゃんは今日実家のお仕事の手伝いらしい)。

 ……でも。

 ……何度やっても、おかしなミスが連続する。

 きっと、練習量が不足しているとか、そんな単純な話じゃない。……何か、私と心と体が離れていく感じで、踊っている最中にどうしても集中が途切れてしまうのだ。

 情けない……っ!

 

「……いや。今日はここまでにしようよ、もう遅いし」

「そんな……」

 

 ……嫌だ。

 こんな気持ちで終わってしまったら、私――

 

「あ、責めてるんじゃないよ?……ルビィちゃん、こっち見て!」

 

 と、そう言って、曜ちゃんは私の顔を両手に挟み、強制的に自分のほうに視線を向けさせる。

 ……その顔は、私が思っていたような冷たい表情ではなく、〝あの子〟みたいに、そこに花が咲いたような笑顔で……。

 

「ごめんなさい……」

 

 自然と出た言葉は、謝罪だった。

 

「……やっとこっち見てくれたね。……ルビィちゃん気づいてた?今日一度もまともに私の顔見てなかったって」

「え?」

「やっぱり気づいてなかったんだ。アイドルが下ばっかり見てちゃダメでありますよ!……それにルビィちゃんはこんなに可愛い!」

 

 もみもみもみもみ。

 いつもの如く私の顔をおもちゃにして、曜ちゃんは私を真剣な目で見つめる。……そういう先輩だって、可愛いじゃないですか……。

 

「……ルビィちゃん最近元気なかったよね。……って、この話もう千歌ちゃんにされてるんだっけ、はは。……私たちには、話せないこと?」

「曜ちゃん……。ごめんなさい……ルビィがもっとしっかりしていれば、」

 

 余計な気を遣わせることもなかったのに、と続けようとしていたところ。

 

「――私たち、仲間だから!頼られたりしても全然平気だよ!」

 

 先ほどまで頬を挟んでいた両手で私の手を強く握り、彼女は叫んだ。二人きりのオレンジの砂浜に、その声が響き渡る。……曜ちゃん、泣いてる?

 

「私たちも自分の恥ずかしいところルビィちゃんにどんどん見せるし!甘えたりもするし!だから――一人きりで悩むのは、やめてよ……」

 

 彼女の言葉に、私は海の向こうの夕日を見つめる。視線の先では、二羽の海鳥が羽ばたいているところだった。

 

「……たいした話じゃないですよ」

「たいした話じゃなくて良いんだよ」

「途中でルビィ、泣いちゃうかも」

「――もうルビィちゃん泣いてるじゃん」

「……え?」

 

 そう言われて、私は自分の頬に指先を当てる。確かに、僅かに湿った感触がした。

 

――そうか、私は……。

 

「――花丸ちゃん達と、もっと一緒にいたい……!」

 

 答えは、あまりにシンプルで。

 隠し続けたそれを口にした瞬間、堰を切ったように涙があふれ出した。




あ、お久しぶりです生きてますよ私です。
久々の投稿楽しいんじゃ~。
ルビィちゃん問題は次回までは続くので、ヨロシャス!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。