狂気が、狂気が足りないんじゃあっ!
儂が!平成最後の暴徒になるんじゃあっ!
ある所に一人の男が居た。男にはこれといった才能は無く強いて言えばルーチンワークが得意なくらいであった。
男はそこそこの高校を卒業しそこそこの大学を卒業しそしてそこそこのブラック企業に入社した。
上司に頻繁に大量の仕事を押し付けられその手柄のみを奪われることばかりであったが得意のルーチンワークが多かったのでなんとか男は仕事をこなしていた。だが別に得意なだけでそれを延々とやっていられるほど男の精神力は強くなかった。仕事に辟易した男はある日一人の先輩に声をかけられた。先輩はこう言った。
「なあいいエナドリがあるんだけど要らない?」
男は仕事で疲れていたこともありロクにラベルも確認せずそのエナドリを飲みほした。
そして世界が変わった。
身体中を駆け巡る圧倒的な量のカフェイン、吹き飛ぶ溜まりまくったストレス、男は即座にラベルを確認した。
「ライオットブラッド」
男は胸の奥底に深くその名を刻み込んだ。
「先輩!
「あっわかるか?これすげぇんだけどみんな気味悪がって誰も飲まねぇんだよ。あとこれにはいくつか注意点があって──」
「自分用に買ってきます!!」
「あっおい…行っちまったよ。まあ流石にエナドリを1日に4本も飲む奴はそうそういないから大丈夫か。」
5種纏めて一気飲みした。
序でに勢い付いて酒とスポドリも立て続けに飲んでこの男なんと闇の服用法フルコンプを1日目にして果たしたのである。
「おお、神よ!このエナドリを地上に授けてくれた事に心より感謝を捧げる!」
そしてここで男の内に秘められし禁忌の才能が覚醒した。既に3回は合法堕ちする分量を摂取しておきながらなんとこの男は理性を有していたのである。
ガトリングドラム社ですら想定外と言っていい存在がここに誕生した。
合法の深淵に潜り狂気の海を越え遂に極点に辿り着いたのだ。
そして男は変わった。
仕事効率が数倍に上昇しクズな上司を追い払い部署内営業成績一位を獲得するまでに至った。
その過程でライオットブラッドの危険性を知ったが、男は自分の内に感じる狂気の渦を完全に抑え込むことで合法堕ちを克服しているため何のためらいもなく1日に何本もライオットブラッドを飲んだ。
多少人格が変化した気はするがそれも些細な事だ。
ある時街中で一人の老人が信じられないものを見る目で男を凝視していたが男は些細なことなので直ぐに忘れた。
そして時は経ち現在、ガトリングドラム社より発売された【ライオットブラッドオンライン】のチュートリアルに男は来ていた。
《初期設定を開始します。》
《身体データの測定完了。》
《仮想体構築完了。》
《脳波認証完了。》
《カフェインレベル測定………》
《カフェインレベル10と判定。》
《特別事項に該当したためLLの測定を行います。》
《LL5と判定。》
《特定条件をクリアしました。》
《称号【カフェインの寵愛】を獲得しました。》
《称号【超越者】を獲得しました。》
《チュートリアルを開始します。》
《貴方は幻のライオットブラッドを追い求めてこの地に降り立った一人の暴徒。時に他者と協力し時に競い合いながら破城槌と共に伝説のライオットブラッドを手に入れてください。》
《このゲームにおける基本武器は破城槌のみです。破城槌にはランクがあり《
《また、ゲーム内でレベルを上げることにより魔法やスキルを習得することが可能です。魔法には数多くの種類があり中には攻略の重要な鍵となる物もあります。》
《以上でチュートリアルを終了します。》
《貴方にカフェインの加護があらんことを》
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「ここが始まりの街か。」
先ずはアイテムを揃えてレベル上げだな。
【薬屋】
「いらっしゃい。」
薬屋には如何にもといった風貌のお婆さんがポーションを売っていた。
「一番安いのはどれだ?」
「それならこれだね。」
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【ライオットブラッド(日本版)】
レア度1
HPを30回復する。カフェインのキマリが悪い。
1本100ラム
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初期金額は一万なことを考えると手頃だな。
「10本買おう。おまけしてくれるか?」
「20本買ってくれたら1900ラムでいいよ。」
「では20本買おう。」
「毎度。」
【武器屋】
「この店で一番いい破城槌をくれ。」
「それならこいつだな。」
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【亡者の破城槌・改】
レア度3
緑と紫に彩られたゾンビを彷彿とさせる破城槌。ミノタウロスの角を素材に強化されている。
1本8000ラム
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「買った。」
「まいどっ!!」
【ガトリング平原】
始まりの街に程近いガトリング平原には低レベルプレイヤー向けの雑魚モンスター【ミノタウロス】とそれを狩るために大量のライオットブラッドユーザーが跋扈していた。
「おらぁ!!破城槌持ってないミノタウロスなんざ怖くねぇんだよ!」
「おめぇの角を砕いて白い粉末にして配合すると(日本版)が(海外版)になることは割れたんだ!さっさと死ねぇ!」
「ふう、ここで一服ライオットブラッド。」
「ぐぇっ!?」
「あっお前大丈夫か!ほれ、このライオットブラッドを飲め!4本も飲めば全快するぞ!」
「んがっ!?ちょっまっ今俺《イマジナリ…」
「ライオットブラッドの滝は何処だあっ!!」
大量の男達が破城槌を片手で持ってミノタウロスに殴りかかるのは大変シュールなのだが誰も人の事を言えないのでその混沌とした状態が続いている。
「Bumoooooooooooo!!!」
「ふん、高々ミノタウロス如きに俺の暴血道を止められる道理なぞないわ!」
【亡者の破城槌・改】を装備、狙うはその心臓一点。
「その心臓貰い受ける!」
「Bumooon!?」
破城槌を心臓に撃ち込みその勢いのまま飛び上がってその角をへし折る。
《ミノタウロスを倒しました。》
《バトルリザルト:ミノタウロスの皮×5、ミノタウロスの角×2》
「初期武器より強力とはいえ最初の雑魚モンスターか。相手にならんな。」
手に入れたミノタウロスの角を砕き先程買ったライオットブラッドに混ぜてみる。
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【ライオットブラッド(アメリカ版)】
レア度2
HPを60回復する。カフェインのキマリが良い。
1本200ラム
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早速一本空けて飲んだ。
「おおっ!この身体中をカフェインが駆け巡る感覚!間違いなく海外版のライオットブラッドだ!…だが流石に完全再現は無理か。精々6割程のカフェインだな。」
「おいそこのイカした兄ちゃん!!」
「ん?それは俺のことか?」
ライオットブラッドを味わっていたらスキンヘッドの男が話しかけてきた。
「おうよ!兄ちゃんがライオットブラッド飲んでるから一応忠告にな。」
「忠告?」
「ああ。《メニュー》の《設定》の奥の方にある《イマジナリーカフェイン》の項目についてだ。」
「《イマジナリーカフェイン》?」
「そいつを弄ると現実と一切変わらないレベルでカフェインが決まるんだが同時に《合法制限》が解除されてゲーム内で合法墜ちするようになるからそいつをオンにしたままでライオットブラッドを飲みすぎんなよ?じゃないとああなる。」
そしてスキンヘッドの男が示した先には先程大ダメージを食らってライオットブラッドを4本まとめて飲まされた男が居た。
「ライオットブラッドおいちい!ライオットブラッドおいちい!ライオットブラッドおいちい!」
「みろ。ああなりたくなけりゃ用法用量はよく守ってライオットブラッドを飲むんだな。」
「ふむ。なるほど。感謝する。」
「いいってことよ!」
そう言ってスキンヘッドの男は去っていった。
「さてと。」
《メニュー》→《設定》→《その他》→《各種感度設定》→《カフェイン》→《イマジナリーカフェイン》
「設定値を60%から300%に変更」
《イマジナリーカフェインが100%を超えると現実の身体にも影響が出ますがよろしいですか?》
「かまわん」
《イマジナリーカフェインの設定値を300%に変更しました。》
試しにもう一本ライオットブラッドを飲んでみる。
「!!!!???」
ガンギマる!!
身体中を駆け巡って行くカフェインを感じ取れる!以前3種混ぜ合わせて飲んだ時と同等の感覚!これが300%か!
だがこんな物では足りない。
幻のRB-Ⅶを手に入れレインボーライオットブラッド一気飲みをするのだ!!
その為にも今は装備を整え多くの敵を打ち破る力を手に入れなければ…
「俺の暴血道はここからだ!!」
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〜1ヶ月後〜
「お前ら準備はいいか?」
「おうっ!!」×49
あれから俺は他のプレイヤー達と協力し各地に眠るレイドボス達を倒しこの世界のラスボスが眠る地へとたどり着いた。
「始祖暴血」「不死詐尸」「火砕龍神」「夜光童子」「連徹夢王」「短決南瓜」
どいつもこいつも途轍もなく手強かったがライオットブラッドの女神に微笑まれた俺たちを止めるには至らなかった。
そして俺たちはついにここ【
まさかライオットブラッドの滝の源泉から行ける隠しエリアが目的地とは思いもせず攻略に行き詰まって何度滝から飛び降りたことか。まさに灯台下暗し。
「今日ここに至るまでに幾人もの同胞が合法の海に沈んだ!だが俺達は諦めなかった!合法の深淵に首まで浸かろうが溺れ死のうが関係なく突き進みここまできた!今日をもって俺達はこのゲームを完全攻略する!!」
「おおおおお!!!」×49
俺は右手に掲げた破城槌を高く掲げた。
「おお!」
「あれが神に選ばれた暴徒の証…」
「ライオットブラッドの泉の乙女に祝福されし聖槌」
「ライオットカリバー」
「進軍せよっ!!!」
そして俺たちの最終決戦が始まった。
まだちょっとだけ続くんじゃ。
次話は令和を迎えたら。