春の闇   作:カサブランカ

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0.2・灯火を胸に抱き

 

 

ちょっとしたことでぼうぼうと火が飛び出る体質だと理解するまで数週間はかかった。納得はまだしてない。全然納得なんてできるわけがない。

 

(火が出る体質って……人体自然発火現象って言うのか。へえ、プラズマ説…えっ、死体がロウソクになる?なにそれ謎すぎるんだけど…でも私生きてるし)

 

パソコンを触りつつ両手両足をぶらつかせた。くしゃみやため息で火を吹き、痒いと体を掻けば火を灯し、同年代らしい子どもたちと喋れば火ダルマ状態。周りもすっかり慣れてオモシロ人間扱いしてきてるってのがまた腹立たしい。

 

「燈ちゃーん、そろそろ幼稚園に行きま…きゃーっ!燈ちゃんパソコンはダメよっ!目が悪くなっちゃうわ!」

 

我が子が小さな手でマウスを操作している姿を見て、ヤベッと思う間も無く母親が放ったのがその一声。

 

(え、驚くところそこ?)

 

新しい親は何かズレてるよなぁ、としみじみと思う。だって父親は火ダルマな娘にやんややんやと声援を送るような人だし。母親は母親で一般常識が吹き飛んだような言動をするし。だがまあ、だからこそこんな体質の娘を受け入れているのだろうが。

 

(下手すりゃ人体実験されてただろうしなぁ…)

 

統治国家な日本じゃ大丈夫だろうが、海外のマニアックな研究者とかから誘拐とかされたらどうしよう。

 

「せっかく視力がいいんだから、こんな小さいうちからパソコンやテレビなんて見ちゃダメよ。どうせ大人になったら嫌ってほど見るかもしれないんだし」

 

(せやな)

 

元ブラック企業社員としても激しく同意である。あ、また発火現象が…!

 

「もー…嫌んなっちゃう」

 

ぞわりと震え上がりそうな体を気力で抑えつつ、心頭滅却を心がけて、引っ込め、消えろ、と胸の内で呟いた。じわじわと空気に溶けるように消えた火にほっと息を吐いた。長い時間火が出続けると、視覚的にイラッとするし、なんだか気疲れするのだ。

 

「でもお母さんもお父さんも燈ちゃんの火は好きよ。触っても熱くないし、面白いし。すごく素敵な個性だと思うわ」

 

「いや、個性ってレベルを超過してると思うんだけど」

 

「燈ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時にね、お母さんのお腹から火が出てたの。あれは楽しかったわぁ」

 

「うそだろおい」

 

うそじゃなかった。臨月の腹から黒い火をぼうぼうと燃え上がらせながら、テンションマックスの笑顔でピースサインをしている両親の写真を見て気が抜けた。

 

「おま…おかーさん、頭大丈夫?」

 

「え?今日はどこにもぶつけてないわよ?」

 

違う、そうじゃない。

 

 

 

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