浮き雲に成り代わった者   作:白炉丸

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浮雲 37

自身が戦ったフィールドに到着した。

フィールドには、ポールが設置されており、その頂上にはリングが置いてある。

 

 

 

「ただし、できればの話ですが。」

 

チェルベッロの意味深な言葉のすぐあとに、グサッ と、小さな音を立てて、装着していたリストバンドから毒を注入された。

 

注入された毒はデスヒーターと呼ばれ、この毒は瞬時に神経をマヒさせ、立つことすら困難にする。そして、全身を貫く燃えるような痛みは徐々に増してゆき、30分で絶命させる。

それを回避するには、装着しているリストバンドに、それぞれの守護者に合ったリングを差し込み、内蔵されたデスヒーターの解毒剤が投与しなければならない。

 

そして、重要な大空戦の勝利条件は、ボンゴレリング全てを手に入れること。

 

さあ、これより、大空戦の幕が上がる。

 

 

 

 

その頃、俺はというと、デスヒーターによる神経マヒでうつ伏せに倒れていた。

 

・・痛いよこれは……正直、ここまでとは思わなんだ… だけど、立てないほどじゃ〜ない。

どうせ助かると、気を抜きすぎていたな これは。・・・今まで通りに、原作力が働き続けるという保証はどこにもないのにな…

認識を改めないとダメだ。俺は今、ここで生きているんだから。俺が雲雀恭弥なんじゃない、この雲雀恭弥が今の俺なんだ。

だから・・・俺は俺として、今を生きる! 今更感があるけどね。

 

俺は、フラつきながらも起き上がる。そして、毒ニモマケズの意思で、!ドゴオッ!ガッ!ゴッ!と、ポールを倒す。 ポール自体は簡単に倒れ、リングが落ちる。

落ちたリングを拾い上げ リストバンドの凹みに差し込む。するとすぐに解毒剤が投与された。

 

・・まだ少しフラつくけど、これくらいなら全く問題ない。じゃあ、雨の所に向かおう、途中でベルフェゴールにあうことになるのか、ワイヤー避けて良いかな? ……ダメ?、ダメか〜・・・ちくせう!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

移動中、リストバンドのモニターを見ると XANXUSが、嵐と雷のポールに向かって銃を撃っている映像がちょうど流れた。

 

XANXUSが撃ち出した死ぬ気の炎を蓄積させた死ぬ気弾は、嵐と雷のポールを倒すこととなり、計算していたのか、嵐と雷のリングはどちらとも ヴァリアー側の守護者に渡ることとなった。そして、ヴァリアー側の守護者は、リングを使い解毒し、それぞれ行動を始めた。

雷の守護者 レヴィ・ア・タンは、沢田綱吉側の雷の守護者ランボを殺すために、嵐の守護者ベルフェゴールは、沢田綱吉側の嵐の守護者 獄寺隼人は、毒によってもがき苦しみ死ねと、自分からは手を出さず、リングを持って、校舎の3階から飛び降りた。

 

 

 

原作力が働いたからか、それともタイミングが良かったのか、すぐ目の前にベルフェゴールが降りてきた。

骨折してから5日目で その回復力は凄いと思うよ。俺も人のこと言えないけど…

 

 

「こっからだと雨が近いか」

 

そいつがそう口にした時、俺は攻撃をしかける。ベルフェゴールは事前に気がつき攻撃を避けるが、俺の目的は他にもあった。

ベルフェゴールが持っている嵐のリングを上に、3階の、獄寺隼人が居る場所に向かって弾き上げる。

 

「……! おまえは…」

「ふぅん よくかわしたね。 君……天才なんだって?(跳ね馬が争奪戦の説明をしてたときに口にしてたよ。)始めようか、天才君。」

 

雷のことは嵐に任せ、俺は俺の好きに戦う。跳ね馬が言っていた外の世界で、天才と言われている彼に興味がある。俺も存外、戦闘狂だからさ…

 

 

「オレもおまえ知ってるよ。エース君だろ?」

「 ちがう、一文字もあってないよ(確か、山本武が雲戦で言ってたんだったか…)」

「……しし、、変な奴…… でも何だか一気に、楽しくなってきちゃった。」

 

そう言い、ベルフェゴールは 数十本(すうじゅっぽん)のナイフを自分を囲うように、(ちゅう)に漂わせる。

 

「 ふうん…曲芸でもするのかい? 足ケガしてる分のハンデをあげようか 。」

「ごケッコーー、だっておまえも足ひきずってん…じゃん」

 

その言葉とともに、両者とも戦いを開始する。

 

最初に動いたのはベルフェゴール、自身を囲っていたワイヤー(ナイフ)を操り、360°全方位にナイフを飛ばす。そのいくつかが俺のもとへも飛んでくるが、それは全て叩き落とす。

 

数を撃っても意味ないよ と、ナイフでキズつけようと思って行った行動ではなく、、それは、攻撃するための下準備としての行動。ナイフの動きも直線的で、簡単に叩き落とせた。

俺はこの行動の意味を知っているので、自分が動きたいときに 思うように動けなくなる原作力はとても厄介だと、改めて思った。俺も何かに縛られる事は嫌いだ。行動を制限され、一方的にキズつけられると分かっているところに行く事も嫌いだ。俺はキズつけられて喜びを感じる人間じゃないもんでね。そういう人間がいる事は知っている。俺的には、いてもいなくてもどっちでも良い、というかどうでもいい。俺の害にならないなら、という言葉はつくけども。

 

話が逸れた・・・俺が叩き落とした以外のナイフは、俺の後ろ側に建っている校舎に突き刺さった。ベルフェゴールは笑う。

 

ブシャッ と、俺の左頬と左肩から血が吹き出る。ナイフには当たっていない。

ベルフェゴールは追加のナイフを俺の左右に投げる。俺は移動するために右方向に動くが、そこにもすでにワイヤーが張ってあり、右側の頬と腕の数カ所から勢いよく血が吹き出てしまう。

流れ出た血で滑り、持っていたトンファーを手放してしまった。そして、足のケガと出血によりバランスが崩れ、後ろに倒れるように座ってしまった。

 

「ししし、天才の勝ちー つーかオレ負けなし? そりゃ王子だもんな。 バイバイ」

 

そう言い、ベルフェゴールはトドメのナイフを投げてくるが、俺はその数本のナイフを指で挟むように全て受け止める。

 

「!」

「 へえ、なるほど、ナイフに糸がついていたんだ。 まるで弱い動物が生き延びるための知恵だね。 そういうことなら・・一本残らず撃ち落とせばいいね。 」

 

俺は立ち上がり、トンファーの仕込みを発動させる。

 

トンファーの持ち手とは離れている方の先から出たのは、先端に尖っている重りが付いている(くさり)

トンファーを回すことで鎖も回る。遠心力で強化されたそれは、いとも簡単に壁をも砕くことのできる武器となった。

 

や……やっべ……

「 覚悟はいいかい 」

 

今度はこちらの番という意味を込めて攻撃をするが、

 

「っと… パース!!」

 

ベルフェゴールは後ろに下がることでそれを回避する。躱された攻撃は校舎に当たってしまい、ドゴオッ!と、音を立てて、校舎の壁の一部が壊れてしまった。

 

「パスいち! 自分の血ー見て(ちぃーみて)本気になんのも悪くないけど、今は記憶飛ばしてる場合じゃないからさ。だってこれ、集団戦だぜ? 他のリング取り行こっと。 それにそれだけダメージ与えれば勝ちみたいなもんだしな、 バイビ 」

 

そう言い、ベルフェゴールは最後に俺にナイフを投げつけて、その場から離れた。

投げつけられたナイフは弾いておく。

 

「 口程にもないな。 」

 

まあ、彼もまだ本気じゃなかったみたいだけどさ……

 

腕を振って、邪魔な血を落とす。意外と右腕のキズが深く、出血が多い。

貧血になったのか、体がフラついてしまう。倒れてしまわないよう、壁におっかかる。

 

・・血が止まらない……これは、早く止血しないとな。 ん? あぁ、空中で沢田綱吉とXANXUSが戦ってるのが見えるな。

俺も空中戦してみたいな・・・いずれ、ロールを足場にして空中移動できるようになるか?まだまだ先は長いな……

そうだ、さっさと止血しないと、確かポケットに入れといたはず・・・お、あったあった。これを腕に巻いて、結んでっと・・・

 

 

 

 

止血が終わった時、!!!ドドドン!!!! と、とても大きな音が連続して聞こえた。音のした方向を見ると、夜にはふさわしくないほどに明るくなっていた。

 

XANXUSの技だったよな…… 上手くいってれば、沢田綱吉が死ぬ気の零地点を突破できたことになるか。

なら俺は、そろそろ雨戦のフィールドに向かうとするか。


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