ラブライブ!サンシャイン!! 小原家の使用人!!   作:ぱすえ

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今回は、前回ほど進展がないからテンポは良くないかも…
なお、後半ちょっとだけシリアル配合。


小原家の使用人とお嬢様のお願い!

最近…お嬢様の様子がおかしい。

 

俺がそう感じたのは、あの波乱の入学式を経て、4月中頃に差し掛かった頃であった。

 

この頃、奥様は学校の業務(浦の星女学院統廃合計画)に、出突っ張りで俺も忙しい毎日を過ごしていた。

 

そんな中……

 

 

「ネーネーサトウ! コレあげるぅ!」ヒョイ!

 

「はい?……ペロペロキャンディーなんか差し出して一体どう言った事でしょうか?」

 

「何でもアリマセーン! 日頃の感謝を込めてマリーからのpresentよ!」

 

「……律儀すねぇ……」

 

 

……このように、最近、俺になにかと優しく(?)してくれるのだ。

しかし悲しいかなこんなペロキャン1個如きでは俺の心は1ミリたりとも動かない。

しかし、こう言ったこと以外にも、俺の姿を見ると何かと声をかけ肩叩き券やら家事のお手伝い券やらを渡してくる。

 

はたからみりゃ、微笑ましい光景かもしれないが当事者の俺からしてみれば逆に、

「何故に?」といった疑念が生まれる。

 

 

そういった事が続き迎えた今日という日。

疑念が「何か企んでいる」といった確信に変わる、ある事件が起きたのだ。

 

それは……

 

「ネェーママ! コレあげるわ!」

 

「oh!マリー……コレは……」

 

「手作りのお菓子!ママの為に作ったの!」

 

「マリィ……グスッ…貴方って娘はもうっ!アイッラァァァブゥユゥゥゥウ!!」ダキッ!! 

 

「……ママ…マリーもママの事大好き!」ニィタァァ

 

 

とりあえず、奥様のチョロさ加減は放っておいて、

 

……ありえねぇ…あのじゃじゃ馬が親、しかも奥様にプレゼントだとぉ!?

 

絶対何かある。

ここまで人に媚びを売るのは、何かきっと裏がある……

 

 

 

そういった事を考えながら気づけば、無事に本日の業務を全て終えていた。

 

……何かやらかされる前にお嬢様の企みを阻止しなくては……

 

心労は絶えないが、小原家の使用人としてやらねばならぬ業務がまた一つ増えてしまった。

 

……何故だろう。なんか胃が痛くなってきた。もういいや、寝よう。

 

そして、俺はもう住み慣れた硬く狭い給湯室に入り、敷いてある布団思い切りダイブすると深い眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

……サトウが寝静まり、数分後。

怪しい影が給湯室付近に現れる。その影はサトウが寝た事を確認すると、ガサゴソと、給湯室を物色する。

 

そして、あらかた作業が終わったのか、その影はニヤリと笑い、グゥーグゥーと寝ているサトウにこう囁いた。

 

 

「ヘーイ。サトゥ……これで、アナタにはこちら側についてもらいマース……」ムフフω

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

「ムニャ……うっうーーん もう朝かぁ」セノビ

 

規則正しい生活を厳守している俺は、己の体内時計が作動し朝5時にしゃんと起床する。

あたりはまだ少し薄暗いこの時間、30分後から早速本日の業務が始まる為、俺はその準備に追われていた。

 

 

「よっしゃぁ!! 今日も1日がんばルビィッッ!!……と、くだんねぇ事やってねぇで着替えっか……ん?」

 

 

黒澤家次女の名前を当てた叫びで、気合いを入れつつ、スーツに着替えようと給湯室の衣服箪笥に手をかけた時、何かの違和感を感じた。

 

……あれ? なんかこの箪笥、すげぇ引きづらいんだけど………なんか詰まるようなもんでも入れたっけ??

 

ガシガシと、箪笥の引き手を動かすが一向に開く気配がない。

 

 

「クソ……朝1発目からついてねぇーぜ。こうなりゃ力ずくだッ! せぇぇぇえのおおおお!!」ガコォンッッ!!

 

 

全体重をかけ思い切り箪笥を引っこ抜く。すると、箪笥の中箱ごと外れたような音が給湯室に響き、勢い余って俺は後ろにつんのめる。

 

ゴテンッ!

 

 

「痛えっ……ったくなにが詰まってやが………なッ!?!?」

 

 

俺は箪笥の中身を見て絶句し固まった。

何故なら、その中には俺のスーツ以外に"男"の俺には"必要ないもの"がぎっしりと詰まっていたからだ。

 

そしてそのものとは……

 

「な、なんで、"ブラジャー"や"女物のパンツ"が俺の箪笥の中に……」

 

当然の事だがひとつ言っておく。

俺は下着泥棒じゃない。そんな事は断じてしない。

 

つまり、ある一部の人間からしてみれば天国のようかもしれないこの状況。

……生憎俺には非人道的行いにしか見えないが……こんな事したのは俺以外の誰かと言うことになる。

というか絶対そうだ!!

しかし、これらは完全なる物的証拠……裁判にかけられたら俺の真実の言葉も単なる虚言に過ぎず、1発で有罪判決確定だろう。

 

なら、今やるべき事はただ一つ。

この給湯室中に散乱してしまった下着を可及的速やかにかつ誰にも気づかれないよう元あった場所に返却しなければならない。

……犯人を取っ捕まえ、ぶっ殺すのはその後だ。

 

そうとなれば、早速行動だ。

飛び散った下着を片っ端からかき集め、1箇所にまとめ始める。

 

マジで、速く片付けないと……人に見られたら終わりだ……小原家で仕事出来なくなる……いや、それよりも社会的に殺されるッッ!!

 

 

 

 

瞬間

 

 

 

 

パシャッ!

 

焦りに焦り片付ける俺は再び固まる。

 

シャッター音……だと……???

 

ギ…ギ…ギ…

油が切れた機械人形の如く、後ろを振り返るとそこには、精巧な一眼レフを構え氷のように凍てついた表情を浮かべる、お嬢様の姿があった………

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「うわぁ……アンタそんな趣味してたの………気持ち悪い……」

 

人のものは思えないほど凍ったお嬢様の声が、俺の耳に響く。

いつもは英語訛りの入った日本語を言うお嬢様が、流暢な日本語で喋るあたり発言のガチ度が伺える。

 

 

「お、お嬢様!? ち、ちがががッッ 違うん…んぐッです!! こ、これは!!」

 

「……何?」パシャッ! 

 

「お、俺じゃ無いです!だ、誰かの陰謀だ!俺を陥れようとしやがった性根の腐ったクソ野郎が……」

 

「へー…言い逃れするんだ。こんな決定的な証拠があるのに。」パシャッ! 

 

 

片手の一眼レフで、固まる俺を容赦なく取り続けるお嬢様。

必死の弁明はむしろ逆効果のようで、どんどんあたりの空気が冷え切っていくのがわかる。

……お嬢様の凍てつく眼差しと抑揚のない軽蔑する声に、俺の精神は次第に限界を迎えていった。

 

 

「お、お嬢様!本当に本当なんです!!俺は……」

 

「はぁ……もういいわよ。」

 

「へ?」

 

「アンタが気持ち悪い社会不適合者なのはよく分かったから、だから、もうこれ以上近づくな。fuck off pig face(消え失せろこの豚面野郎) !!」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

流暢な日本語から突然英語での罵倒。

しかもそれを、侮蔑の念がたぁぁっぷりこもっているお嬢様のソプラノボイスで言われ、極め付けに中指まで立てたれの3連コンボの炸裂だ。

 

当然の如く俺は発狂し、目の前が真っ暗になる。

 

 

 

 

……こうして俺の小原家の使用人としての人生、いや、俺の今後の人生は終わったのであった………

 

 

 

 

 

 

ー 鞠莉視点 ー

 

 

 

ムフフ………全ては計画通り!

まさか、ここまで上手くいくとは自分でも思っていなかったデース!

 

それにしても、

給湯室に散乱したブラジャーやパンツ(全てママの私物)にまみれ、絶望し目が虚ろになっている顔をしているサトゥを見ていると

何かこう加虐的な興奮が……

 

んんっ!(咳払い)

そんな事はどーでもいいーの!

これでもうサトゥは私には逆らえませ〜ん。

 

え?なんでこんなことをしたのかって?

 

それはデスねー!

私が"やりたい事をする為"に、サトゥの協力を得るためなの。

もちろん、最初からこんな強引すぎる方法で協力してもらおうとは思ってなかった。

 

……でも、この鈍感使用人!!

私がどれだけキュートでベリーグッド!なプレゼント(注:例の肩叩き券やペロキャンなどの事)あげても、全部仏頂面で受け取るんだもん!!

それに、プレゼントの回数を増やす度に私のことを疑わしい目で見てくるし……

お願いしようにも、そんな態度じゃ頼みようにも頼めないじゃない!!

(※お嬢様は、何か企んでいるということをサトウに見透かされているのが分かってません!しかし、本人は至って真剣にこう考えています。みんな!温かい目で見守ってあげよう!by小原家の使用人S)

 

 

と、言うことで、ちょっとばかりの意地悪な今回の計画を実行したわけ!

 

うーん、でも、ちょっとやり過ぎちゃったかな……流石にブタ面野郎は酷かったわね……ごめん。

 

さて、そろそろ本題を切り出すわよ〜

 

 

「ねぇ?サトウ、コレ。ばら撒かれたくはないでしょう?なら、私のお願い1つ聞いてくれるかしら?そしたらこの件はなかった事にしてあげる!」ムフω

 

「……お嬢様……わかりました。しかし、その前に1つ私もしなければならないことがあります。」スッ 

 

あ、あれ!?なんかおかしいな……

さっきまで目が死んでたのに、今じゃなんかそれを通り越して目がすわってる……

 

ま、まぁ気のせいよね!

 

そんな風に私が思っている間に、サトウは立ち上がると給湯室のキッチンに向かい、あるものを取ってきた

……それは……怪しく光る銀色の物すなわち…包丁ッ!?

 

 

「お嬢様、長い間お世話になりました。このサトウ、やっていないことで辱めを受け生きるよりも、この場でスッパリと死んだの方が世のため人のためです。では……」ギランッ!

 

「ちょ!?ま、待って!!早まるのは早いわサトォォォ!!!」

 

 

サトウの私の予想の斜めをいく行動に、思わず止めに入る。素早く、彼の両手を抑え下手なことをしないようにグゥゥッと強く抱きしめる。

 

やはり、やり過ぎてしまった……

うぅ…悔しいけどネタばらししなきゃ……

 

 

「さ、サトゥ、ごめんなさい。流石にやり過ぎたわ……まさかあなたをこんなにも思い詰めるまで追い込んでしまうとは思わなかったの……ちょっとした悪戯心だったの」ウルウル

 

 

明確に何をやり過ぎたのか言わずに、目元を潤ませる。コレは昔ママに教わった、やらかした事を帳消しにできる女の子の必殺技をらしい……

そんでもって、肝心のサトウの方を見ると……

 

 

「お、お嬢様……」カンッ! カラララン

 

 

すげぇ……目に生気が戻った。

それに危なっかしい包丁も彼の手からするりと抜け床に落ちる。

よし!このままゴリ押ししよう!!

 

 

「うぅ……あのね、サトウにお願い聞いてもらいたくて……グスッ…それで……こんな事しちゃったの……ごめん。」

 

「そう……でしたか……お嬢様。」アタマ ナデナデ

 

 

しゃあ!!もうコレで完全に堕ちたわね!

少し思ってた感じとは違ったけど、結果的にサトウをこちらに引き込むことができたわ!

さぁて、あともうひと押し!!

 

 

「それでね……あの……「てことは、このブラやらパンツやら仕込んだのはお嬢様だと……やっと自白したなぁ?」……へ?」ガシッ

 

 

突然の口調の変わりように私は動揺した。

何故なら先程までは従順な犬の顔をしていたサトウが、今は獲物を捕らえたハイエナのような表情を浮かべていたからだ。

さらに、さっきまで私の頭を撫でていたサトウ手が、いつのまにか無い。それどころか、その手は私の腰あたりをがっしりと抱え込み、私の後ろにサトウが回り込む。

げ……この体勢はまさか……

 

 

「朝っぱらから人様に迷惑かけやがって!!」グググッ!!

 

「な、アンタ謀ったわねぇぇぇぇぇぇサトウ!!」

 

 

私は足をばたつかせながら抵抗するが、体は段々と上に持ち上がっていく。

 

ダメだ……もう終わった……

 

 

「ハハハ!!生まれの不幸とその足りねぇ頭を呪うがいい……くたばれぇぇぇぇぇぇえ!!」ハイメンブリッジ!!

 

 

体が後ろに倒れていくのを感じながら私は、思い出していた。

ああ、そういえば私、昔っからサトウに悪戯仕掛けては返り討ちにあうのが関の山だったわね……

 

ま、まぁ 今回も私の負けにしといてあげるわサトウ。だけどコレだけは言わせなさい!!

 

 

「覚えてなさい!!いつか必ずギャフンって言わせてやるんだからね!!サトo……ゲゴフゥッ!!」

 

 

 

 

 

 

こうして、この「小原家の使用人下着ドロ騒動」は、鞠莉が最後の最後に墓穴を掘り、その鉄槌としてサトウのジャーマンスープレックスが炸裂したことで幕を閉じた。

……なお、鞠莉が落下した場所は、サトウがあらかじめまとめて置いてあったブラとパンツであった為、大事には至らなかったらしい。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

「ムグゥーー」

 

「ほぉ……人を陥れておいて、そのムクれ面出来るってことはまだ反省してねぇようだな」ポキポキ 

 

「なっ!違うわよ!!……というかそもそも!私のお願いを聞こうとしないアナタが悪いのよ!!」

 

「あ?自分に都合が悪くなるとすぐそう言いだす。これだから上流階級のお嬢様は……」

 

「アンタ……こっちにはまだ撮った写真があるんだからね……」

 

「それならば、こちらにも考えはある。先程の自白はこのボイスレコーダーに保存させてもらった。」スッ

 

「い、いつの間に……」

 

「テメェの言質撮るためにいつも常備してるんだよ。」

 

 

俺は、ポケットから小型のボイレコを取り出し目の前でプラプラと見せびらかす。

……実際のところ、常備してたのは事実だが、コイツを押す暇なんでなかった。

まぁしかし、一応あっちが脅してくるならこちらも脅して返しておかないと、あの写真をバラまかれちまう。そいつだけはどうにかしたいため、苦し紛れのハッタリだったが……

意外といけたな。

 

さて……今回の騒動の目的、つまりこのバカが何故こんな事をしたのか?話の焦点は必然的にそうなる。

 

確か、お願いとか言ってたな……

 

「ハァ……さてお嬢様。今回のことはお嬢様が奥様にこの下着一式を返却する事を条件に水に流してあげますから、いい加減そのお願いとやらを教えてください。」

 

「…フン!」ソッポムキ 

 

「(このガキ……)教えて下さらなければ、聞けるものも聞けませんよ。お嬢様…」

 

「やーだー!」

 

「じゃあ、もう聞かねぇからな!!」

 

「……ポトリ…………ぅぐ……サトウがいじめたぁ……」

 

「……目薬入れたの見えましたよ、お嬢様。さぁ、もうそろそろ学校の支度もしなくちゃ行けないんですから!早くお教えください!!」

 

「ちぇーつまんないのー。わかったわよ。いえばいいんでしょ!言えば!」

 

 

最初からそうしろよ……茶番がクソ長すぎるんだよ………

 

そんな風に、思ったのもつかの間。お嬢様はそのまま続けこう言った。

 

 

 

 

「私、スクゥーアイドルになりたいの!だからお願い!サトウ!!ちょっと力を貸して!!」

 

 

 

 

 

 

 

………まさか……な…….

お嬢様の口からスクールアイドル……という言葉を聞くとは思ってもなかった。

 

……みんなには悪いが、次回までにこの言葉を溜めてく必要では無いと思うので、先に言っておく。

それほどまでに、このスクールアイドルって言葉は俺に因縁深いものである。

 

 

 

悪いなお嬢様、俺は、スクールアイドル…いや、アイドルというそのものが嫌いなんだ。この世の中の何よりも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……なお、給湯室に散乱した奥様の下着は後日、鞠莉が責任を持って片付けた模様。
良い子のみんなは、人にジャーマンスープレックスなんて大技かけたりするなよ!!危険だからね!



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