ラブライブ!サンシャイン!! 小原家の使用人!!   作:ぱすえ

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お久しぶりです。
1年と半年ぶりに図々しくも帰ってきました。
最近になって創作に割ける時間とモチベーションが出来てきたので、今後ともよろしくお願いします。


覚悟と責任 前編

「なぁ、お前は将来何になりたい?」

 

 

あれは俺がまだ中坊の時だっただろうか。

 

将来という、ふわりとした疑問を考える余裕と時間がたっぷりとあったあの頃、俺は親友にこう聞いた。

 

 

 

「ん、そうやなぁ…僕はミュージシャンになりたい!」

 

「ミュージシャン?って、テカテカにライトアップされたステージで歌ったり踊ったりするアレか?」

 

「せや!僕はあの舞台で輝きたいんや。自分自身の力だけで!」

 

「なるほどなぁ…"望"のルックスとそのイケボがありゃ案外すんなりと行くかもな。」

 

「そんなおだてんといてって/// そういう君は何になりたいん?」

 

「俺か?俺は……」

 

 

 

 

 

嗚呼、あの頃は。

いつ叶うかもわからない夢に希望を抱き、自分達は何でもできると思い込んでいた。

何の力も無く頭だって良くはないのに…

てめぇだけの力だけで世の中好きなように生きていけるそう信じていた。

 

俺もアイツも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

夢って奴は、目指す者に平等に勇気と希望を与えてくれるとよく言われる。

だが、世の中には成功者と呼ばれる人々は数少ない。

 

当たり前だ。

現実はそんなに甘いもんじゃない。

 

今だから言える事だが、

人は成功者の美談や逆転劇ばかりに目が向いて、"夢という本質"から無意識に目を背ける傾向にあると思う。

 

夢は思うだけじゃ、目指しているだけじゃ決して叶わない。

目を背けたくなるような挫折や絶望の中で、足掻きに足掻き、惨めにのたうちまわりにまわった末、選ばれた者のみにしか得られない栄光なのだ。

 

そして、成功者以外の者は必ず、夢を諦めるか、夢という果てしなく続く地獄を歩むかの岐路に立たされる事になる。

 

 

 

 

 

「サトゥ…マリーの様子はどうデスか?」

 

「案の定、夜になっても部屋から一歩も出てきませんね。」

 

 

その選択を迫られた時、無力さや理不尽さに

耐えられない人は少なくない。中には心を壊されてしまう人だっている。

 

 

 

 

 

「そう……来週には日本から飛ばなければならないのに、このままの調子じゃBad!体調を崩して留学どころじゃなくなってしまいマース!!」

 

 

そしてお嬢様は今、岐路に立たされている。

 

 

 

 

 

「やはり、スクールアイドルなんてやらせるべきではアリマセンでした!!足まで怪我をして、あの子の為には何一つ良いは……」

 

「奥様!」

 

 

おおっと、柄にも無く大声上げちまった。考え事をしていたからだろうか?

 

 

 

「ど、どうしたのですかサトゥ?いきなり荒げた声を出して…」

 

「こんな事で狼狽えるなんて奥様らしくもない。いつも通りドッシリと構えていてください。」

 

「こんな事って…サトゥはマリーの事が心配じゃないんデスか?」

 

「心配ですよ。しかし感情が先走ってしまっては良い判断はできません。この一件、私に任せてくれませんか?ちゃんと説得してきますよ。」

 

「……OKアナタに任せたわ。」

 

 

 

 

そういうと、奥様は寝室へと向かい部屋の扉を閉めた。

歩く足がちょいとヨタついてたのは、ここ3日間寝つけていないからかもしれない。

 

奥様。今日はゆっくりとおやすみなさい。

 

静まり返った夜のホテルオハラで、誰も居ない部屋の中で俺はそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

まどろっこしいのは嫌いだ。

結論から言おう。

 

お嬢様が丸3日寝室から籠って出てこない。

 

こうなった事の次第は、スクールアイドルの活動中、お嬢様が怪我をしたことから始まった。

 

足部靭帯損傷 重症度Ⅱ。

平たく言うならば足の捻挫だが、無理をすれば確実に後遺症が残ると言う診断を受けた。

 

3ヶ月間絶対安静とドクターストップをうけ、そのことを耳にした奥様が、毎度の如くお嬢様を叱りつけ、スクールアイドルの活動を禁止するよう命じた。

 

 

この時、お嬢様が素直に奥様の言うことを聞いていれば…ここまで問題は大きくはならなかっただろう。

 

 

あろう事か、1週間後に大会があるからという理由で、黒澤と松浦と共に東京のスクールアイドルイベントに強行参加。

 

とても踊れるような状態ではないのに、足を引きずりながら、東京まで出かけたという事実はその日のうちに奥様と旦那様の耳に入った。

 

どうにか松浦の機転で、棄権という形を取り事なきを得たものの、奥様に加え普段はキレない旦那様もカンカン。

 

ヒートアップした親子喧嘩は、「浦の星を出て海外に留学し、もう一度自分を見つめ直す様に」という結論に至った。

 

 

で、

今日合わせて丸3日。お嬢様は寝室に籠り、一切出てこなくなってしまったのである。

 

 

嗚呼、思い出すだけで頭が痛くなってきた。

 

 

さっきの様子を見てわかる通り奥様自身、もう限界が来ている。

それに旦那様は、また都合悪く海外出張で国外に飛ばされるし…小原家は今、家族崩壊の危機を迎えていた。

 

 

いつも通り時間が解決するだろうとタカを括っていたが、このままじゃマズい。

 

突発的に襲ってくる頭痛を堪えながら、俺はカツ…カツ…とホテルの廊下を進み続ける。

 

馬鹿でかいキッチンや数多のドレスなどがある衣装部屋、そして、俺の牙城給湯室を抜けた先にある大きな部屋。

 

こここそ我が主、小原鞠莉の寝室だ。

 

 

 

コンコンッ!

 

 

 

ノックをするも返事は返ってこない。

 

当たり前だ。

へそを180°ひん曲げたお嬢様は、ちょっとやそっとの事じゃこのドアを開いてはくれない。

 

過去に逆ギレした時なんざ、ドア周辺にトラップ仕込んだり、隙を見ては、部屋から抜け出してお菓子という名の兵站確保するなど中々の知将ぶりを見せてくれた。

 

あー懐かしい。

 

 

まぁ今回の場合は、そのくらい気力があるかどうかすら怪しいが。

 

ギリギリ…パキン!

お嬢様の手によって鍵穴が接着剤で塞がれているのを確認した俺は、持ち前のピッキング術を用いて、鍵穴を破壊する。

 

 

 

「お嬢様、入りますよー。」

 

ギィィ…

俺の背丈の1.5倍はあるドアをゆっくりと開く。お!今回はトラップ無しか…一先ず安心。

ホッと一息つく中、前方を見ると、そこにはベットにうずくまるお嬢様が居た。

 

 

 

 

「………入るなって言ったじゃん。」

 

 

開幕早々、冷たい声で俺を拒絶する。

それにめっちゃ睨んできて普通に怖い。

だが、こんな事で怯む程伊達に使用人はやってない。

 

 

「いや、ノックした時に返事がありませんでしたので、ワンチャン死んでいたら困るなーと思って。」

 

「フンっ!どうせアナタもママやパパと同じで、小言を言いにきたんでしょ!!

 

「決めつけられるのは心外ですな。」

 

 

 

どうやら、俺のお嬢様からの信用度は0。もしくは−からのスタートらしい。俺の存在も地に落ちたもんだぜ。

 

 

 

「どーだか、私がママやパパに怒られてた時。何もしてくれなかったくせに……早く出てって!!」

 

「逆恨みも甚だしいっすねぇ…。まぁ、とりあえず、ご飯くらい食べて頂けませんか?お体を悪くなっさってしまいますよ。」

 

Shut up!(黙れ!) サトウは今の私の気持ちがわからないの!」

 

「お生憎様、私はエスパーではないので把握しかねます。」

 

「フン!そんなんだから、女の子にモテないのよ!!Get out here Cherry Boy!!(出て行け童貞野郎!!)

 

 

 

キレッキレの罵倒が俺の心を抉っていく。

 

ひどくないっすか皆さん?

お嬢様の身を案じてこうしてやってきたのに、慰めるどころか、信用は失うわ恨まれるわ挙げ句の果てには全国の貞操を守っている方々を敵に回す発言までなされる始末。

 

まぁ、だいたい察するに、今回の一件で奥様や俺に対する日頃の鬱憤が爆発したんだろう。

 

別にその吐口に俺を使うのは構わないが、それでは根本的な解決にはならない。

 

それにはまず、彼女の湯だった頭を冷やしていただかないとダメだ。

 

 

 

「まあまあ、とりあえず"このチェリーティー"でも飲んで落ち着きましょう。あ、コレおろしたての茶葉なんで、お嬢様と同じく"手付かず(処女)"ですよ。」

 

「なっ!?この無礼者!!」ブチッ!

 

 

 

(わざと)お嬢様の神経を逆撫でする様な皮肉たっぷりと込めた紅茶を振る舞う。

予想通り、堪忍袋の緒がブチ切れた彼女はティーカップを掴むと思い切りこちらに投げ飛ばしてきた。

 

多分、お嬢様は俺が避けると思って投げたんだろう。速度も若干遅かったし。

でも俺はあえてそれを避けなかった。

 

 

バリンッ!!

 

 

陶器の割れる音と共に額に鋭い痛みが走り、飛び散った紅茶が俺の服を濡らす。

やっべ、ちょっと破片刺さったかも。顔から何か温い液体が垂れてるのがわかる。

 

 

 

「あっ……」

 

 

どうやらお嬢様も我に返ったらしい。

短く詰まるような声をあげて、軽く口元を抑えている。

やはり人間血を見ると怒りが一気に冷めるというのは本当らしいな。

 

 

 

「痛ぇ…酷いっすねぇお嬢様。自分が気に入らなければ、何やっても許されると。別に私は構わないですが、大切なティーカップに八つ当たりは良くないんじゃないですか?」

 

 

 

飛び散った破片は危ないので一つ残らず拾っておこう。万が一踏んで刺さったりでもしたら大変だ。

粉々に砕けたわけじゃないので、細かい破片が無いのは不幸中の幸いかな?

 

 

そんな事を思い、俺がそそくさとカップの残骸を拾う傍、お嬢様はただその場に立ち俯いている。

 

 

 

「(大方拾い終わったな…よし!)こんな夜遅くつまらないお節介焼いて申し訳ありませんでした。では、おやすみなさい。」

 

「………あ、ちょ、ま…」

 

 

 

部屋を出ようとした瞬間、さっきまで威勢の良かったお嬢様の口から、震えた声が聞こえる。

だが、俺はその声に構わずドアを開き部屋の外へ足を進めた。すると、今度はしっかりとした声で彼女は叫んだ。

 

 

 

「ち、ちょっと待って!サトウ!!」

 

「なんです?」

 

「…ご、ご…めんな…さい。」

 

 

 

目を逸らし途切れ途切れになりながらもお嬢様はそう言った。

が、俺はそれを無情にそれを突っぱねる。

 

 

 

「割れたティーカップは元には戻りませんよ。」

 

「……っぐ…」

 

「そういうことです。では、今度こそ、おやすみなさいお嬢様。」

 

「ま、まって!サt」

 

 

 

バタン。

俺は静かに寝室のドアを閉じた。

 

 

 

…お嬢様。貴方は気づかなければならない。

いつまでも甘えていてはダメなんすよ。

 

確かに、今はそんなことすら考えられないくらい心も頭もぐちゃぐちゃになっているのだろう。

 

たが、自分が選んだ道を進む上で払う代償はしっかりと精算しなければならない。

 

 

俺もまだその返済する途中にある事を、改めて認識しながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回もシリアスが続きます。
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