ラブライブ!サンシャイン!! 小原家の使用人!! 作:ぱすえ
なお、物語の構成をなおしましたので、3話以降の話は新規に書き下ろしています。今回は改訂版の後編です。どうぞ。
秋葉原。
そこは、日本有数のサブカルチャー都市であり、毎年多くの観光客が訪れるオタクの聖地だ。
最近ではスクールアイドル発祥の地としても名高いこの街は、同時に俺の古巣でもある。
ああ、駅を降りて感じるこの人だかりの熱気と脂汗混じったり芳ばしい匂い。全てが懐かしい。やはり数年ぶりの里帰りというものは気分が躍る。
「ふわぁ…列車に揺られて1時間半。新幹線使うと沼津と秋葉って意外と近いもんなんすねぇ。」
「…」
「お!あの店まだやってんのかぁ。息が長いなぁ。」
「……なんで…」
「ん?」
懐かしい情景に感慨深く浸っている俺の傍で、終始無言だったお嬢様が口を開く。
「……なんで私達、東京なんかに居るのよ!!」
「ああ、それは。以前にお嬢様が、『死ぬまでに東京見物した〜い♪』とかなんとか言ったのを明朝、ふと思い出しましてね。」
「ついこの間来たばっかりよッ!!」
「いやでも大会の方が忙しくて、ロクに観光とかできなかったでしょう?」
「嫌味のつもり??だとしたらサイっっテーだわ!!」
うーん。昨日に負けず劣らず、今日もお嬢様は機嫌が悪い。
まーでも、昨日喧嘩別れした相手に朝っぱらからに叩き起こされ、半ば拉致るような形で東京まで連れてこられたら、そりゃ誰だってこうなるか。
「まぁまぁ、お嬢様。そうカリカリなさらずに、とりあえず腹減りませんか?近くにいい店知ってるんすよ。」グイグイ
「shit!! というかさりげなく手握らないでよ!!」
「じゃ、つべこべ言わずについてきてください。」
未だお嬢様との確執は取れてはいないが、そんなことは気にせず。
俺は久々の故郷の地を進んでいくのであった。
そんな訳で、ギャーギャー喚くお嬢様を引きずり歩き十数分。
ようやく目的の場所が見えてきた。
そこは昔。俺が中学〜大学まで長い間お世話になった甘味処「穂むら」である。
毎日死ぬほどしごかれボロボロになっていた中、高の部活の帰り道。
頭がパンクしそうな程のレポート課題を出され意気消沈していた大学の帰り道。
心身共に疲れ果てていた時に食べるぜんざいやあんみつは格別だった。
穂むらの味は我が青春と故郷の味。そう言っても過言ではない。
「うむ。このとろけるような白玉に、鮮度の良い果実、そして餡子の絶妙な舌触り。涙が出てくる程美味ですな。ね、お嬢様?」
「…」モグモグ パクパク
穂むらの看板メニューあんみつを2人で食べながら、俺がお嬢様に話しかけるもそんな事はどこ吹く風。
この金髪のじゃじゃ馬娘は、ヒョイヒョイとその可愛らしい口にあんみつを詰め込んでいる。
穂むらの甘味は、一度口に運ぶと器から無くなるまで手が止まらなくなってしまうものだ。こうなるのも無理も無い。
そんな彼女の姿を見ながら、ズズズっと呑気に茶を啜っていると、不意にお嬢様がボソリと呟いた。
「ねぇ、サトウ…」
「はい、なんでしょうか?」
「う…や、やっぱりなんでもない。」
あ?なんだよ。
そんな風に微妙に目を逸らしてそっぽ向くんじゃありません。
ラブコメじゃあるまいし…言いたいことがあるならはっきり言いなさいって。
まぁ…言いかけた言葉は大方予想はつくけど。
「カップの件ならお気になさらずとも大丈夫です。」
「ッ!?で、でも!」
「執拗にお嬢様を煽りああさせたのは私ですからね。傷ならご心配なく、この通りなんともありません。」
「違うわ…例え傷が無くたって貴方に酷いことをした事実には変わりない。だから…」
ごめんなさい。
そう言いながら頭を下げたお嬢様に、俺は終始無言を貫いた。
しばらくの沈黙の後、お嬢様が恐る恐る顔を上げる。
ガタッ!
「すみませーん。お勘定お願いします。」
「はーい。」
「さ、サトウ…!」
「お嬢様。行きますよ。」
「……」
そろそろ頃合いか…
***
穂むらを出て、しばらく空いた場所にある繁華街。その片隅にポツンと立っている古びたライブハウスがある。
そこは、俺と望の思い出の場所であり、ここに来る事が今回の東京来訪の理由である。
ギギギ…っと相変わらず建て付けの悪いドアを開けるとブワッと埃が立ち上がり、煤けた臭いが俺たちを包んだ。
この様子を見る限り、最近でもほとんど使われてないことが窺える。まぁ、そりゃそうか。
「サトウ…ここは?」
「ここですか?私が今のお嬢様に見せたかった場所ですよ。」
そう言って、俺は近くに倒れているパイプ椅子を拾い、ガチャガチャと組み立てお嬢様を座らせる。
よし、今日のお客が席についたところで、そろそろ本題に入ろうか。
「お嬢様、地下アイドルって言葉聞いたことあります?」
「え、えぇ…確かメディア露出よりもライブ中心に活動してる人達の事よね。」
「まぁ、一般的な解釈としては正解ですね。しかし、ここで言う地下は、少し差別的なニュアンスを含んだものの事を指します。」
綿埃がこべりついたステージをなぞり、その手についた埃をふっ!と吹き飛ばす。
吹き飛ばされた塵屑は薄い照明に反射しキラキラとあたりを舞った。
「この塵屑の様に、芸能界のド底辺に位置する多くのミュージシャン、バンド、アイドル達が夢を追い求めて足掻き踠いている場所。それがこのライブハウスです。」
「今キラキラと舞っている埃の様に、運が良かった者達は地下から這い上がり、地上の世界で輝くことができます。でも、そうでない者たちは、この地下に埋もれてゆくのが現実。」
「……何が言いたいの?」
「前置きが長かったすね。では、簡潔に申しましょう。
もし、お嬢様達のスクールアイドル活動がこの地下で埋もれている様なアイドル達と同じ末路を辿ったとしても、やり抜く覚悟があるのかどうか?をお聞きしたかったんです。」
意地悪げにほくそ笑む俺の顔は、これ以上に無いほどに醜いだろう。そんな醜い笑顔を晒し、非情な現実な話を叩きつけるのには意味がある。
お嬢様が本当にそこまで覚悟して、スクールアイドル活動を行っていたか?
答えは言わずもがな…
「そんなの…やってみなきゃわからないじゃない!!」
「やはり…思った通りでしたね。これじゃダメなのも当たり前だ。」
「な、何よサトウ!何が気に食わないの!!」
呆れた様に吐き捨てる俺に目を剥き食ってかかるお嬢様。
思った通りだ。今のお嬢様には覚悟のかの字さえありゃしない。無垢で純粋すぎるその行動理念は、非常脆く儚いもの…それをまるで分かってないのだ。
「もっと噛み砕いて言いましょうか。お嬢様は自分がド底辺に突き落とされた時に、何がなんでも這いがる根性があるか?そして、足掻いたとしても必ず思った様な結果になる事は無いという認識を持っていらっしゃるのか?。という事です。」
「そんなの…っ!?」
「ようやく気づいた様ですね。ええそうです。ド底辺とはまさに今の状況。這い上がるのかと思えば、奥様や旦那様の言葉に臍を曲げて部屋に引きこもり、しまいには物に当たる始末。根性があるとは思えません。
そして、思った様な結果というのはスクールアイドル活動で成功し浦の星を廃校の危機から救うという事。ですが、お嬢様が足を負傷する程努力しても、満足する結果は得られなかったはずです。」
「……っぐ…う…」
「厳しいことを言いますが、泣いて物事が解決するなら誰だって泣き喚いてますよ。
それに、何でも謝罪すればやってしまった事が帳消しになると思っているのであれば見当違いも甚だしい!…そんな情けない貴女にスクールアイドルを続ける資格なんてありません!!」
「っ!?……っっ」
俺の怒鳴り声に、お嬢様の嗚咽混じりの声が止まり、そのまま俯いてしまう。
つい、感情的になり怒鳴ってしまった。
そんなつもりで、言おうと思ったわけじゃ無いのに…口から出るのはお嬢様の心を削る様な言葉ばかりだ。
ああ、そうか。
やっぱり俺は…
こうも冷静さを欠いてしまう程に"スクールアイドル"が嫌いなんだ。
***
翌週。
俺は、空港の送迎デッキからつい先程、飛び立った飛行機を見つめていた。
あの後、東京から沼津へと帰ったお嬢様は、黙って奥様と旦那様のいう事を聞き留学することに同意。
親子関係は若干改善した代わりに、俺とは一切口を聞いてくれなくなった。
完全にお嬢様に嫌われてしまいった事には心が痛むが、これでスクールアイドルを辞めさせる事ができたのなら万々歳だろう。
見つめる飛行機が放つエンジンの轟音が次第に小さくなっていく中、
ふと、背後から声をかけられた。
「サトゥ thank you very much.マリーを説得してくれて助かりマシター。」
「あんなの説得でも何でもありませんよ。俺もお嬢様と同じで、お互いに溜まりに溜まった鬱憤をぶつけ合っただけです。」
「"ケンカする程長い"という日本のコトワザがアリマース!それと同じデース!」
「ケンカする程仲が良いっすよ。おちょくってんですか?」
眉間に皺を寄せあからさまに嫌な顔をしながら奥様を睨みつけるも、動じる気配は一切見せない。
その肝の据わった態度を何故お嬢様の前では出来ないのか…と少々嫌味に思う。
「NO!そんなに熱い視線で見つめないで〜♪私は人の妻なのよーサトウ!」
「メンチ切ってんですよ。後、生憎年増には興味無いんで、ノーサンキューっす。」
「
うわぁ…マジかよこのBBA。
雇用主特有の金に物言わせたマウントとか、俺以外の社員にやったらパワハラで訴えられるぞ。
あーあ、今月もタダ働きか。とほほ。
「No problem.サトウ。ちゃんとピンハネした分ボーナスは弾んでおきマース。」
「へーへー。まぁ期待せずに待っときますよ。」
「Oh!そんな事ないデース。十分期待に添える物だと思いますヨ〜。なにせ…