彼女の莫大な妖力で地霊殿全体が揺れていた。この異変に気付いたのか、こいし、お燐、お空が駆け込んできた。
「どうしたのおねえちゃん!?いまドオーンって音が・・・」
「もしかして・・・あれはすみれ様!?」
お燐は空中に浮かぶすみれの姿を捉えた。
「ああ・・・そうだよ」
だが、そこにいるのは俺達の知っているすみれでは無い。今の彼女は狂気で満ち溢れていた。
「久しぶりですね地霊殿のみなさん。何年ぶりですか?元気そうでなによりです」
再開を喜んでいる顔には見えなかった。
「感動の再会なんだ、とりあえず降りよう。そこで冷静に話を---」
「うそつきっっ!!」
彼女はこれ以上無いくらいの大声で叫んだ。この地霊殿が揺れるくらいの大声で。
「・・・あなたはうそつきです。私が嫌われない?そんなわけないじゃないですか。
現におねえちゃんだって、地上どころか地底の妖怪達にも嫌われているじゃないですか」
「でも・・・私には信頼できる家族が・・・」
さとり様は反論する。
「家族って言ったって、いるのはペットと実の妹だけでしょう?」
この一言で、さとり様は口を噤んでしまった。
「心を読める人物となんて会いたくない。それが正論です。そんな能力を持っているのに嫌われたくないなんて、ただのわがままなんですよ。
だから、思いついたんです。みんなから嫌われないようにするには・・・
みんな殺してしまえば、いいんだって」
すみれは、全方向に大量の弾幕を展開した。その弾幕は壁に衝突し、爆発する。
「やめて!このままじゃ地霊殿が崩壊するわ!」
「いいじゃないですか・・・みんな一緒に逝ければ、本望でしょう?」
このままでは、地霊殿が崩壊するのも時間の問題である。しかし、すみれは弾幕を打つのをやめなかった。
「お前は・・・何も分かっていない」
俺はここで口を開く。
「は?」
「本当にこの地霊殿の連中がお前のことを嫌うと思うのか」
「・・・」
「ここの連中は、今まで一度でもお前を嫌いになったことがあるか?」
「・・・一度くらいは・・・嫌いになったことぐらい・・・」
「記憶が読めるくせにほざいてんじゃねえよ!!」
俺は叫んだ。ありったけの声で。
「ここの連中はお前を嫌ったりなんかしない。俺を含めてだ。
なのに、お前はそんな人たちをぶっ殺そうとしている。本当にそれでいいと思ってるのか?」
「この地霊殿の奴らは、お前のことをずっと愛していた。さとり様も、こいしも、お燐も、お空も。
その優しさを裏切って・・・」
「うるさいっっ!!」
彼女は再び大声をあげた。
「・・・そこまでいうなら、私を力づくで止めてくださいよ。あいにく、もう自身の力を押さえ込むことができないんです。
私程度を止められなければ、この先地霊殿を守ってはいけませんよ。魔法使いさん?」
すみれは弾幕をさらに増殖させた。
「だめよ!争いではなにも解決しないわ、三月樹!」
「さとり様」
さとり様は俺を止めようとした。しかし、お燐が彼女の腕を掴んだ。
「三月樹さんは本気です。これも地霊殿とすみれ様のため、邪魔をしてはいけないのでは?」
「・・・」
ありがとうお燐。助かった。
俺はアイコンタクトでお燐に感謝を伝え、もう一度すみれを見る。
すみれは、此方を見て笑っていた。
俺は一枚のスペルカードを取り出す。
これは俺の三枚目のスペカで、自分の能力を最大限に生かすために創り出したものだ。
それは光を放ち始め、魔方陣を作り出す。
「・・・なにこの光?」
こいしは疑問を口にする。
「これは・・・空気中の妖力が集まっているんだわ」
そう、さとり様の言う通りだ。
この魔方陣には空気中の妖力が集まっている。これらをすべて自身の魔力として使用し、元々の自分の魔力も足せば、強力な魔砲を撃つことができる。
自分で言うのもなんだが、霊力、魔力、妖力を集める程度の能力を生かした一番出来の良いスペカだと思っている。
もちろん、連発なんてできないし、周りから集めてるとはいえ自分もかなりの魔力を使ってしまう。
だが、これは今ある俺のスペカの中で一番強力であり、俺の全力全開だった。
そして、俺はそのスペカ名を口にした。
「月符 ルナティックブレイカー」
超極太レーザーが魔方陣より放たれ、すみれの弾幕を呑み込んでいく。
そしてすみれは、赤い光に包まれた。
「ん・・・」
しばらくして、ベットで眠っていたすみれが目を覚ました。
「大丈夫か?すみれ」
「・・・ごめんなさい。私、みなさんに迷惑かけてしまいましたね」
「いいんだよ。別に」
すみれはまた目に涙を溜めていた。
「やっぱり、あなたたちとは一緒にいられません。今回みたいにまた暴走することも・・・」
「そのときは、また俺が止めてやる」
「でも・・・」
「いっただろう、お前は家族なんだ。迷惑をかけるなんて当たり前。そんなこと気にすんな」
俺はベットの隣の椅子から立ち上がった。
「腹減っただろ?飯取ってくる」
俺は扉に向かって歩き出す。すみれは、そんな俺の後ろ姿に声をかけた。
「本当に、私を助けてくれてありがとう。おにいちゃん」
「・・・お前もこいしと同じように呼ぶんだな」
「まあ、姉妹ですから」
おにいちゃんか・・・そう呼ばれても不思議と嫌な感じはしないんだよな。
そんなことを考えながら、俺は部屋を後にした。
もちろん三月樹のスペカは、本家全力全開には遠く及びません。