「ーーっ!!」
俺は思わずすみれから離れてしまった。
「うふっ、やっぱり事実みたいですね」
すみれはにこっと笑う。
「ああ・・・最悪だ・・・」
俺はおもわず頭をかかえる。
なにしろ、姉のことが好きだと妹にバレてしまったのだ。もう恥ずかしくてたまらなかった。
きっと俺の顔は真っ赤なっていることだろう。
「顔、真っ赤ですよ?」
そんな俺の姿を見て、すみれはまた笑った。
「・・・笑わないでくれないか」
「ごめんなさい・・・でもおにいちゃんの真っ赤な顔、凄く可愛いなと思いまして」
こいつ・・・どれだけ俺を侮辱したら気が済むんだ。
「侮辱なんかじゃありませんよー。ほんの冗談ですから、ねっ?」
まあ、別にいいけどさ。
とりあえず、俺はベットに倒れこんだ。これが夢なら、早く覚めてほしい。
そんな俺の姿をすみれは上から覗き込んできた。
「嫌なのでしたら、記憶から消してあげることもできますけど?」
「・・・それは困る」
もうこいつには知られてるんだし、そんなことをしても無駄だ。それよりも・・・
「なあ、このことは---」
「もちろん内緒にしておきます。でもそのかわり、私の話を最後まで聞いてくれますか?」
話?一体なんだろう・・・
でもまあ、話を聞くだけで済むならそれに越したことはないし、今のすみれに逆らうわけにはいかない。
「ああ、わかったよ」
俺は寝ている体を起こす。すみれは、俺の横にちょこんと座った。
「単刀直入にいいますね・・・」
「あ、ああ」
すみれは深呼吸をして息を整える。そして、俺の目を真っ直ぐ見つめた。
「私、おにいちゃんのことが好きです」
「・・・・・は?」
今、こいつ何いった?
「もう一度いいます。私はおにいちゃんのことが好きです」
「お、おまえなに考えて--」
「黙って!」
強めの口調で言われたので、さすがに黙るしかなかった。
「私はおにいちゃんに助けてもらった時から、ずっとあなたのことが好きでした。だってあなたは私を救ってくれたヒーローなんですよ?好きになるなって方が、無理があります・・・
その気持ちは今も変わりません」
「でも、さっき心を読んで気づきました。
おにいちゃんは、おねえちゃんを好きだってこと」
「・・・」
俺は黙ってすみれの話を聞いていた。
「だから・・・」
「だから・・・?」
すみれは此方を見つめ、再び小悪魔的な笑みをこぼした。嫌な予感はしたのだが、少し遅かった。
彼女は俺をベッドの上に押し倒し、俺の体に跨った。
「お前っ!何を・・・!」
俺はすみれを押しのけようとする。が、彼女の体は動かない。
「無駄ですよ。こんな見た目ですけど、私だって立派な妖怪なんです。
おにいちゃんを押さえつけるぐらいの力は持っているつもりです」
「ぐっ・・・」
すみれをなんとかどかせようと力を込めるが、彼女はびくともしない。
俺は両腕を押さえ込まれ、身動きがとれなくなっていた。
そして、すみれは互いの息がかかるぐらいの距離まで顔を近づけてきた。
「ドキドキしてますねおにいちゃん・・・」
「あ、当たり前だろ、こんなに近いんだから・・・」
すみれと俺は無言で見つめ合う。そして、再びすみれは口を開けた。
「私、おにいちゃんの恋の邪魔をする気はありません。むしろ、私はその恋を応援いたします。
だから、そのへんに関しては心配しないでください。
・・・そのかわり」
「おねえちゃんの次でも、三番目でも四番目でもいいんです。ほんのちょっとだけでもいいんです。
私を・・・愛してくださいませんか?」
すみれはちょっと顔を赤らめて言った。なるほど、さっき言おうとしてたのはこれか。
当然、俺の答えは・・・。
「そ、そんなことできるわけないだろ!」
「じゃあ・・・」
すみれは、本日三回目の悪魔の微笑みを浮かべた。
俺は内心とても焦っていた。なぜなら、次こいつは「じゃあ私のことは好きか、嫌いか?」と言うに違いないからだ。
俺はすみれのことは「好き」だ。これは紛れも無い事実であり、否定はできない。
正直、すみれを愛したっていいとさえ思っているぐらいだ。
もしすみれにこの質問をされてしまれば、心が読めるすみれ相手では、好きと伝えてしまうようだものだ。
そうなれば、俺の逃げ道は無くなる。こいつの思うがままになってしまう。
これを防ぐためには、こいつを黙らせるしかない。
何か黙らせる方法は・・・!
ふと、俺は目を閉じた。そして、あることに頭をフル回転させた。
しばらく沈黙が続いた。
すみれの声は一向に聞こえなかった。俺はおそるおそる目を開ける。
「・・・」
すみれは顔を真っ赤にしていた。彼女は俺と目が合うと、即座に飛びのき急いで扉から出て行った。
「成功・・・したのか?」
まあ、黙らせることはできたから一応成功と言えるだろう。
でも・・・
「もうあいつとは顔合わせられねえな・・・」
それからの俺はすみれと極力顔を合わせないよう努力してきたのだが、それも一緒に住んでいては長く続かない。
俺は廊下で部屋から出てきたすみれとバッタリ出合ってしまった。
「「あ・・・」」
俺は彼女にかける言葉を必死に考える。何とかその言葉を搾り出し声に出そうとしたとき、すみれが先に口を開いた。
「ごめんなさいっ!」
「・・・え?」
唐突にすみれが謝ってきたので俺は動揺を隠せない。
「あのときはまだ覚悟が足りませんでした。
まさか、おにいちゃんが脳内で私の体であんなことしてるなんて思いもしなくて・・・」
「あ、あれはわけがあってだな!
・・・とりあえず、ごめん」
「いえ、覚悟が足らなかった私が悪かったんです。
でも・・・もう大丈夫です!」
そう言って、すみれは着ているものを全て脱ぎ捨てた。
「いつでもこの体にしてください・・・ってどうしたんですか!しっかりしてくださいおにいちゃん!!」
そのとき、俺が鼻血を出してぶっ倒れたことはいうまでもない。
「なあすみれ、ひとつ聞きたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」
「お前が顔真っ赤にして出て行ったとき、俺はそうなるような方法を必死になって考えていたんだが・・・もしかしてそれも筒抜けだった?」
「もちろん、全て筒抜けでした♪」
「うそーーーん!」
「うふふ、もう逃げ場はありませんよ。おにいちゃん」
そして彼女は、再び悪魔の微笑みを浮かべたのだった。
次回からは本編にもどります。