一時間ほど説教が続き、ようやく映姫さんの気がおさまったので、あたいは本当の真意を彼女らに伝えることにした。
「...本当は匿まってほしいわけじゃないんです」
これを聞いた二人は不思議そうに首をかしげる。彼女らに分かるように、あたいは言った。
「あたいをペットにしてほしいんです!」
「ええっ!?」
小町は驚愕の声をあげた。まあそういう反応するよねやっぱり。しかもこの言い方だとただのドMの変態だと思われるかも...(笑)
「それって、どういうことですか?」
映姫さんが真剣な目つきであたいを見た。それを真っ直ぐ見つめ返し、あたいは再び口を開く。
「先ほども話した通り、あたいは地霊殿を家出してきました。もうあたいはあそこへ帰りたくないんです。だから、あたいをあなた達のところに住まわせてほしいんです」
地霊殿には自分の居場所がないから、と付け加えようとしたがやめた。今はその理由を言う必要はないはず。あたいはその言葉を胸の奥にしまい込んだ。
「でも、私らの住んでいる地獄に行くには三途の川を通らなきゃいけない。そこを渡ればお燐は死ぬことになる、一緒に住むのは無理だよ...」
小町は悲しい表情をして俯いた。
あたいはそんな彼女を見てはっきりと言った。
「その覚悟は出来てる」
小町は黙ったまま此方を見た。どうやらこの言葉の意味を理解したようだ。
「死ぬ気ですか?」
横にいる映姫さんが此方の意図を探るように聞いてくる。あたいは迷いなく言い切った。
「そのつもりです」
その後は互いの目を黙って見つめ合っていた。
あたいのこの決断に迷いはない。
この人達と一緒に暮らすためには、三途の川を渡り死を迎えることになる。でも、もうそれしかない。
どうせ地上に友達はこの人達しかいないし、あたいに家なんかない。
でも、地霊殿に二度といけなくなるのはちょっと寂しいかな...
しばらくして、ようやく映姫さんは口を開いた。
「...仕方ないですね。
分かりました、あなたを私たちの家族として迎え入れましょう」
「ありがとうございます!」
あたいは深々と頭を下げた。
「いいんですか!?四季さま!」
「はい、冥界に住む亡霊にいろいろと頼めば問題ないでしょう... お燐、それでもかまいませんか?」
「...はい、問題ないです」
亡霊なんているんだ...さすが幻想郷。
「ま、かなり突然だけど...
これからよろしくな、お燐」
小町が手を差し出してきた。
「うん!」
あたいは笑顔でそれを握り返した。
「お燐!」
突如自分の名前を呼ばれた気がした。
後ろを振り返ると、案の定見覚えのある人達がいた。
「さとり様...?」
やっぱりあたいの行き先はバレていたらしい。
あたいの見た先にはさとり様とこいし様、お空、三月樹さんがいた。
「なんで黙って出て行くのよ!私、凄く心配したのよ!」
あたいは何も答えなかった。
嘘に決まっている。心を読めるくせにあたいの行く場所が分からなかったわけがない。そこで何をするかすら分かってたくせに。
だから、さとり様に言ってやった。
「...そんな芝居はいいですよ」
「分かっていたんでしょ、あたいが何処に行こうとしてたのか、どんな目的があったのか。
心を読めるあなたには全てお見通しですよ...」
さとり様は表情ひとつ変えない。醒めたような目で此方を見つめるだけだった。あたいは無理やり笑顔を作って言った。
「あたいのことは放っておいてください」
「そういうわけにはいかない。あなたは地霊殿の大切な私の家族なのよ。
さ、一緒に帰りましょ」
彼女も笑顔でそう言った。
自然と拳に力が入ってしまった。あたいが家出した原因を知っているくせに、まだそんなことを言ってくることが許せなかった。
もう我慢の限界だった。あたいは叫んだ。
「あたいはあなたたちの家族なんかじゃありませんっっ!!」
周りの人たちは少し驚いたが、さとり様だけは黙って此方を見ていた。あたいはさらに続ける。
「地霊殿にはあたいなんか必要なかったんですよ!あなた達とすみれ様で楽しく暮らせば、それでいいじゃありませんか!何か問題でもあるんですか!」
「...さとり様はそのことを分かっているんでしょ?
だったら今すぐ帰ってください。あたいなんて捨てて帰ってください!!」
「.....」
ここにいる全員が黙り込む。すぐ横で小町が唾を飲み込んだのが分かった。
そして、さとり様は再び口を開く。
「...分かった。地霊殿に帰るわ」
そう言って、さとり様は後ろに振り返った。すぐに三月樹さんが彼女のもとに駆け寄り、何か話し出す
。なんと話しているのかは聞き取れなかった。
話が終わると三月樹さんは此方を何度か見た。だが、何も言うことなく帰っていった。
「.....」
急に足の力が抜け、あたいはその場に座り込んでしまった。すぐさま小町が近寄ってくる。
「大丈夫!?お燐!」
「う...ん...」
あたいはなんとか笑みを浮かべた。それを見て、小町はあたいの手を握った。
「無理しなくても、いいんだよ」
そのときの小町はまるで母親のようだった。あたいがずっと求めていた暖かさがそこにあった。
あたいはしばらくの間、小町の胸の中で泣き叫んだ。
こいしとお空は今回空気になっちゃいましたw