地霊殿の日常    作:Mt.Fuji

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前回までのあらすじ

紫の協力もあり、三途の川を渡る前にお燐の元へたどり着いた三月樹。そして、そこでお燐を説得することに成功する。
三月樹はこのままお燐を無事に地霊殿まで連れて帰ることができるのか!?


第十七話

 

 

三月樹side

 

 

「地霊殿に...帰りたいです...」

 

 

聞き間違いではない、お燐は確かにそう言った。

 

大量の涙のせいで顔がぐちゃぐちゃになっていた彼女が、そう言ったのだ。

だからこそ、俺はそれが彼女の本心だと分かって安心した。

 

 

「ふぅ...」

 

 

とりあえずは説得完了...だな。

あとは彼女を地霊殿に連れて帰るだけ。ま、ここからは俺の頑張りしだいだけど。

 

俺はこの会話に水を差すことなく聞いていてくれた彼女らに目を向けた。

 

何か木の板みたいな物を持ち、緑の帽子を被っている女性。種族は閻魔で、死者を裁いている。たまに幻想郷にきて会う人会う人に説教しているらしい。

頭固そうだ...

 

そしてその横にいるもう一人の女性。種族は死神でイメージ通りの物騒な鎌を持っている。

偽者であることを祈ろう。

 

一通り彼女らを見た後、俺は言った。

 

 

「お燐は連れて帰るよ。いろいろ迷惑かけて悪かったな。今度お礼に...」

 

「待ってください」

 

 

閻魔が俺の言葉を途中で遮った。

 

 

「お燐を帰すわけには行きません。彼女は私たちと共に暮らす約束をしたのです。それを破ることは許されません」

 

「どうしても...と言っても?」

 

「はい、どうしてもです」

 

 

...やっぱりそうなるか。

できれば温和に解決したいのだが...こうなってしまったら仕方ない。

 

俺はあらかじめ想定していた手段をとることにした。

 

 

「なら、力ずくにでも連れて帰らせてもらう!」

 

 

俺は周囲に魔力を放出し、戦闘態勢に入った。

 

まあ、お燐をただで帰してもらえるとは思ってなかったし、地霊殿を守っていくのならこれぐらいの壁は乗り越えなきゃいけないしな。

 

此方の魔力に臆することなく、閻魔は余裕の表情である。

 

 

「いいでしょう、その勝負受けて立ちます」

 

「いいんですか、四季さま!?」

 

 

死神は閻魔の言葉に驚きが隠せないようだ。

 

 

「ええ、何も問題はないですよ。

さあ、あなたも構えなさい小町。体、鈍ってなんかいませんよね?」

 

 

そう言って閻魔は構える。そんなに運動できるようには見えないが...

 

 

「...ふっ、別に鈍ってなんかいませんよ。

映姫さんこそ、体動くんですか?」

 

 

死神はその大きい鎌を自由に振り回して構えた。此方はかなり動けそうだ。

 

 

「最後に一つ、聞きたいことがあります」

 

 

閻魔は此方に目を向けた。

 

 

「なんだ?」

 

「私は地獄の最高裁判長、四季映姫です。そして彼女は私の部下、小野塚小町。

あなたの名は?」

 

 

何聞くかと思えば名前かよ...まあ向こうも名乗ってくれたんだし、言わない理由はないよな。

 

 

「俺は地霊殿の魔法使い、春夏秋冬三月樹だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現世とあの世を分ける境目、三途の川。普段は死神が死者の魂を運ぶだけの静かな場所。

だが今日は、いつもとは違う空気が流れていた。

 

その場に泣き崩れている赤い猫。

彼女を巡って、地獄の裁判長と地霊殿の魔法使いの決闘が始まろうとしていたからである。

 

 

「小町、頼みます!」

 

「はい!」

 

 

先に仕掛けたのは死神、もとい小町だ。

 

彼女の姿がその場から一瞬消えたかと思えば、俺の目の前にいきなり現れたのである。

そして、その大きな鎌を振り上げた。

 

ていうか説明してる暇ねえ...!

 

間一髪で後ろに飛び、避けることに成功した。俺はそのまま下がり、小町との距離をとる。

...どうやら偽者じゃないなあの鎌。地面にぶつかったときの音、どう考えても金属音にしか聞こえなかったし。

 

そんなことを考えてる間に再び小町が目の前に現れた。

さっきもだが、一瞬で移動している当たり何かの能力かもしれない。

 

小町はその物騒な鎌を勢いよく振り上げる。今度は避けずに、受け止めることにした。

 

 

「スペルカード、魔剣 アルザード!」

 

 

魔力で剣を作り出すスペカだ。まあ俺の修行が足りないから、ただの普通の剣しか作れないんだけどね!

 

 

キイィン!!

 

 

小町の鎌と俺の剣がぶつかり、頭に響くような金属音が周囲に響き渡る。彼女は別の角度から何度も鎌を振り下ろすが、俺はそれを全て受け止める。

 

 

「いい加減その物騒な鎌、しまってくれないかなぁ?」

 

 

しばらく小町とのつばせり合いをしていると、後方から閻魔、もとい映姫の叫び声が聞こえた。

 

 

「小町!」

 

 

その声と同時に小町が俺から離れた。後ろを振り返ると、映姫が空中でスペカを構えていた。

 

 

「嘘言 タン・オブ・ウルフ!」

 

 

規則正しく並んだ大量の弾幕が飛んできた。避けるには間に合わなかったため、俺は自身の能力で弾幕を吸収する。

だが映姫の弾幕は一つ一つの質量が大きく、全部を吸収することはできない。その一部が俺の腕に直撃した。

 

 

「ぐああっ!」

 

 

思わず声が出てしまう。なんせ弾幕が腕に直撃したのだ。服は破れ、皮膚は赤く腫れ上がっていた。

 

俺はここで、これが遊びではないことに気づく。

 

弾幕ごっことは違いスペカの使用枚数の制限もない、弾幕に非殺傷設定もない。

そう、これは闘いなのだ。たとえ死人が出ても仕方ない、本気の勝負。

 

躊躇している場合ではないのだ。本気でやらなきゃ、死ぬことだってありうるのだから。

 

俺はギリリと奥歯を噛み締めた。

相手を気遣う余裕はない。全力でやらないと、此方がやられる。

 

 

「上等じゃねえか、ちくしょう...」

 

 

覚悟を決めた。気合を入れ直し、拳に強く力を込める。

俺は魔剣アルザードを握り締め、映姫に向かって突進した。

 

 

「いくぜえぇっ!映姫!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は自分の出せる限界の速度で映姫に接近する。そして、魔剣アルザードを力いっぱい振り下ろした。

 

 

「四季さま!!」

 

 

映姫を守るように小町が鎌で剣を受け止めた。

その隙に再び映姫が俺の後ろに回り込む。

 

 

「二度も同じ手をくらうかよ!!」

 

 

すぐさま小町とのつばぜり合いをやめ、後ろに下がる。そして振り返って右腕を大きく振りかぶり、魔剣アルザードを投げつけた。

 

渾身の不意打ちだと思ったのだが、映姫はぎりぎりの所でこれを避けた。彼女の頬を剣が掠ったらしく、顔に擦り傷ができている。

 

そして俺は、ここで大きなミスを侵したことに気づいた。剣を投げてしまったことで、自分を守るべきものが無くなってしまったのだ。これでは小町の鎌を受け止めることができない。

 

案の定、すでに小町は俺の後ろで鎌を振り上げていた。もうこれを防ぐものは無い。強引にも鎌を白刃取りしようとしていた、そのときだった。

 

 

「呪精 ゾンビフェアリー!」

 

 

その声と同時に青白い妖精が小町に突撃した。それは小町に触れると爆発し、彼女を吹き飛ばす。

 

そしてゾンビフェアリーを召還した張本人は、俺の後ろに着地し背中合わせに立った。

 

 

「...で、なんでここに来たんだよ。お燐」

 

「じゃあ逆に、なんで来ちゃいけないんですか?」

 

 

そう言って、お燐は自分の背中をぴったりくっつけてくる。背中越しだから見えないが、きっと彼女は笑っているだろう。この行動も、彼女なりの決意表明なのかもしれない。

 

 

「イタタタタ...」

 

 

吹き飛ばされた小町が戻ってきた。彼女はお燐の姿を見ると、少し苦笑いした。

 

 

「私らはあんたのために戦ってるのに、あんたがそっち側に付いてどうするんだよ...お燐」

 

「ごめんね、小町。

でも、あたいはなんとしても地霊殿に帰らなきゃいけない。だから三月樹さんに負けてもらうわけにはいかないの」

 

 

これにはさすがの映姫も苦笑いしていた。まあ仕方ないだろう。自分を居候にしてくれと頼んでおきながら途中でそれを拒み、挙げ句の果てには彼女らの敵になってしまったのだから。

というか今回のお燐は周りに迷惑かけ過ぎだな。こんなことは二度としないよう後で叱っておかないと。

 

小町はお燐の言葉に思わずため息をついた。しかし、すぐに笑顔になり言った。

 

 

「仕方ないなぁまったく...

でもたとえお燐が相手でも、私は手加減しないからね!」

 

 

小町は鎌を両手で持って構えた。まるでデ〇ティニーがアロンダイトを構えたときのような、そんなポーズである。

 

俺とお燐も気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し冷静になれましたか、三月樹さん」

 

 

互いに出方を伺って膠着状態が続く中、お燐が背中越しに小声で話しかけてきた。

 

 

「?...ああ」

 

 

「確かにこの勝負は弾幕ごっこではありません、誰かが死ぬことだってありえます。

でも、だからといってわざわざ敵を殺す必要はないんですよ。敵を無力化すれば、それでいいんです」

 

 

俺はここでお燐の言葉の意味を理解した。確かにさっきの俺は自分が死ぬと思っていたせいで冷静さを欠いていたからな。これで随分気が楽になる。

 

 

「...その言葉で随分闘いやすくなったよ。ありがとうな、お燐」

 

「.....いえ」

 

 

俺は現状を確認した。

お燐と俺が背中合わせになっており、それを挟むように映姫と小町がいる。

 

 

「2対2か...これならなんとかなるな」

 

「はい。あたいらが息を合わせれば、勝てない相手ではないはずです。

いきますよね?三月樹さん」

 

「もちろんだ...いくぞお燐!」

 

 

こうして三途の川の戦い、第2ラウンドが始まった。

 

 




まず始めに一言。

遅れてしまってすみませんでしたああぁぁ!

いろいろテストやらなんやらあってですね、この投稿までに二週間以上かかってしまいました。ほんとすみません。

これを取り戻す勢いでがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします。
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