地霊殿の日常    作:Mt.Fuji

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生活リズム崩れてきた...


第十八話

 

 

「魔砲 アクセルシューター!」

「贖罪 旧地獄の針山!」

 

 

俺とお燐は同時にスペカ名を宣言した。

追尾式の弾幕と回転した針弾幕が映姫と小町に向かっていく。

 

だが、彼女らはそれを難無くとかわす。

 

 

「小町!」

 

 

映姫の声と共に小町が頭上に現れた。背中合わせになっている俺とお燐を裂くかのように、彼女は鎌を振り下ろす。

 

 

「お燐!」

 

「はい!」

 

 

俺達は息を合わせて同時に互いの背中から離れ、小町の鎌をかわす。そうして、小町を二人で挟み込む状態になった。

 

これなら...!

 

俺は弾幕を小町に叩き込む。向こうでは、お燐も同じように弾幕を打ち込んでいた。

二方向からの攻撃、さすがに避けられないだろうと思った。が、それは所詮憶測に過ぎなかった。

 

ふと見てみれば小町は映姫の隣に移動しており、危なかったぁ...と一息ついていたのだ。

これにはさすがに少しイラッとした。

 

 

「お燐!小町の能力ってなんだ!?」

 

「距離を操る程度の能力です!自身の居る地点と目的地との距離を自由に制御することができるんです!!」

 

 

なるほど、さっきからの瞬間移動はこれが原因か。

だが、あくまで瞬間移動ではない。自身の居場所と目的地との距離を変化させて、そのように見えるだけ...なら!

 

 

「なあお燐!小町の周囲を弾幕で囲めるか!?」

 

「...はい!任せてください!」

 

 

どうやらお燐は俺の意図を理解してくれたらしい。

彼女は小町に向かって走り出した。

 

 

「猫符 キャッツウォーク!」

 

 

お燐は小町の周囲を走りながら弾幕を撒き散らす。たちまち小町の周囲は弾幕で埋め尽くされた。

 

しかし、小町は余裕の表情を浮かべていた。なぜなら前後左右が弾幕で埋め尽くされたとしても、空中へ移動すれば避けることができたからだ。彼女は何の危機感も感じないまま、自分の逃げ場である空へと視線を上げた。

 

 

「.....あっ」

 

 

だからこそだろう。小町は空中に浮かんでいる俺の姿を捉えたとき、愕然とした。

 

 

「これでもうお前の逃げ場はない、さあどうする?」

 

 

俺はドヤ顔で小町に言ってやった。さっきの分の仕返しができてすこし嬉しい。

 

 

「くっ!」

 

 

だが小町はまだ諦めなかった。彼女は此方に向かって一直線に突っ込んできたのだ。どうやら俺を強行突破するらしい。 

しかし残念だったな...その行動は読めていた!

 

俺は予め握っておいたスペカを発動した。

 

 

「魔砲 エターナルディザスター!」

 

 

それにしても...なんと中二な言葉だろうか。毎回言っているが、少し恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔力で形成されたレーザー砲が魔法陣から放出される。

それは逃げ場を失った小町に直撃し、彼女を地面に叩き付けた。

 

 

「がはっ...!」

 

 

うわっ痛そう...

ごめんな小町。こんな荒々しい手を使ってしまって...

 

 

「さすがです、三月樹さん」

 

 

地面に降り立った俺をお燐が褒め称えてくれた。小町には悪いけど、確かに厄介なやつを無力化できた。

あとは映姫だけ...っ!?

 

 

ここで俺は自分の失態に気づいた。小町の相手だけで手一杯で、映姫の存在をすっかり忘れていたのだ。

俺は思わず後ろに振り返る。しかし、気づくのが一歩遅かった。

 

映姫は俺の不意をつくタイミングをずっと狙っていたらしかった。だから俺の背後を取った彼女は、ここぞとばかりにスペカ名を宣言したのだ。

 

 

「覚悟はいいですか...?罪符 彷徨える大罪!」

 

 

弾丸のような形をした大量の弾幕は、すでに俺の目の前に迫っていた。もう避けるのは間に合わない。

直撃を覚悟した、そのときだった。

 

 

「三月樹さん!!」

 

 

お燐が俺の前に現れ、両手を広げたのだ。

あまりの急な出来事に、俺は呆然とお燐を眺めることしかできない。

 

 

「...あなたはほんと、油断しすぎです」

 

 

弾幕が当たる寸前、彼女は此方に振り返りニコッと笑う。そこでようやく、俺は状況を理解した。

 

 

「おりぃぃぃん!!」

 

 

映姫の弾幕は全て、お燐に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発の煙のせいで、周囲の状況が飲み込めない。でも俺は、自分を庇ってくれた少女をしっかりと抱きかかえていた。

 

 

「お燐!しっかりしろ、お燐!」

 

「.....んっ」

 

 

よかった、まだ意識はあるみたいだ。

しかし、彼女の体はそこらじゅうが焼け焦げていた。早く治療してやらないと...

 

 

「待ってろ、すぐ直してやるから」

 

 

とは言っても、俺は回復系の魔法が使えるわけじゃない。どうすれば...

 

 

「私は...大丈夫ですから...」

 

「大丈夫なわけないだろ!早く治療を...」

 

「三月樹さん!!」

 

 

この一言に俺は黙るしかなかった。

声を出すことすらままならないお燐が、大声で叫んだのだ。さすがに彼女の話を聞かないわけにはいかなかった。

 

 

「...周囲の煙のおかげで小町たちには此方の行動が読めません。今なら撃てます。ルナティックブレイカーを撃ってください」

 

 

このお燐の言葉には驚いた。こんなにも体がボロボロなのに、彼女はまだ勝利を諦めていないのだ。

自分の体の心配を少しはしやがれってんだ...

 

確かあれを使えば、映姫たちを一撃で戦闘不能にできるだろう。でも...

 

 

「それはダメだ。あれを撃つためには周囲の魔力を集める必要がある。それにはかなりの時間がかかってしまうんだ...」

 

 

しかも魔力を溜めてる間は身動きがとれない。その間にスペカを使われたら終わりだ。

 

 

「お願いです。私を信じて...撃ってください」

 

 

そう言って、彼女は俺の目をじっと見つめる。その真っ直ぐな瞳を見る限り、迷いはないように思えた。

 

 

「はぁ...わかったよ」

 

 

俺は思わず笑ってしまった。

 

こんなにボロボロになってる奴を信用しなきゃいけないなんて...

ほんと、バカだよなぁ...俺もこいつも。

まあでも、信じる以外選択肢は無かったし、降参するぐらいならやって見る価値はあるかな。

 

俺はお燐に肩を貸してやり、二人で一緒に立ち上がる。

 

 

「俺はお前を信じて撃つ。だからお燐も、俺を信じてくれ」

 

「分かりました。なら私も、三月樹さんを信じます」

 

 

煙がなくなり、視界が晴れる。前方数メートルのところに映姫たちの姿があり、彼女も小町に肩を貸していた。

 

これが最後の攻撃になる。覚悟を決め、俺はラストスペルの準備に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

一枚のスペルカードが光りだし、そこから魔法陣が生み出された。俺はその中心に、自身の能力を使って周囲の霊力、魔力、妖力を集めていく。

これらを集めて魔力に変換すれば、とてつもない量の魔力からなる巨大な球体ができるはずだ。その段階までいければ何とかなるのだが...

 

 

「あの光...一体なんでしょう?」

 

「何を企んでいるかは知りませんが...あれを黙って見過ごすことはできませんね」

 

 

まぁ、そうなるよなぁ。

映姫さんお願い!もう少しだけ待っt...

 

 

「審判 ラストジャッジメント!」

 

 

俺の願いが届くわけもなく、映姫はスペカを使用した。彼女から弾丸のような形をした弾幕が大量に展開され、真っ直ぐ此方に向かってくる。

さっきも言ったが、魔力を溜めてるときは移動することができない。よって、避けることはできないのだ。

 

 

「やっぱり...間に合わないか...」

 

 

すぐ目の前まで弾幕が迫っているが、魔力は全然溜まっていない。

信じろって言ったって、やっぱり無理なもんは無理なんだよ...と、そう諦めかけたときだった。

 

 

「死灰復燃!」

 

 

いきなり目の前に大量の怨霊が現れたと思えば、それらは全てゾンビフェアリーに変わり、弾幕から俺たちを守ったのだ。

これ...もしかしてお燐のスペカか!

 

 

「ゾンビフェアリーたちが時間を稼ぎます。今のうちに!」

 

 

お燐は俺の魔力が溜まりきるのを信じている。ならば、俺は何としても魔力を溜めきるしかない。

俺は自身の能力に全神経を集中させた。

 

 

「四季さま!何かがお燐たちを庇っているせいで当たってないです!」

 

「やらせるわけにはいきません!」

 

 

映姫たちはゾンビフェアリーの存在に気づいたらしく、弾幕の量をさらに増加させた。

 

くらったところからすぐ回復するゾンビフェアリーだが、さすがに回復速度が追いつかなくなってきた。そしてスペカを使用中のお燐も、体の怪我もあって辛そうだった。

 

このままじゃまずい。ゾンビフェアリーの壁が破られるか、お燐の体力の限界が来てしまう。

 

 

「はやく...はやく集まってくれっ!はやく!」

 

 

俺は早く魔力が溜まるのを、必死に願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての力を注いだ両者の総力戦。それはとうとう終わりを迎えようとしていた。

 

 

ふと、肩にあった重みが消える。横を見ると、お燐がバランスを崩して倒れようとしていた。

どうやら、体力の限界が来てしまったらしい。

 

俺は素早くお燐の背中に腕を回し、お姫様だっこをしてやった。

 

...無茶しやがって、まったく。

 

彼女が倒れてしまったことでゾンビフェアリーたちは消滅する。そのため、俺たちを守るものは何一つと無くなった。

 

映姫の弾幕は、容赦なく俺たちに直撃した。

 

 




この話でお燐編を完結させようと思ったんですが...無理でした。
あともう一話続きます。
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