地霊殿の日常    作:Mt.Fuji

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番外編がこの一話で終わりきれませんでした。あともう一話続きます。



番外編その4 紅魔館VS地霊殿 中

さとりside

 

あの吸血鬼の言葉は意外だった。まさか私と弾幕ごっこをしたいだなんて言うとは、思ってもいなかった。

 

「......本当にそれが、貴女の本心なようね」

 

「ええ、そう。たまには私も体を動かしたいのよ」

 

レミリアは腕を回しながら、羽をバッサバッサと羽ばたかせていた。その姿を見るだけで彼女がやる気満々なのが見て取れる。

 

しかし困ったわね.....私。運動は少し苦手なのだけど......

 

「すみれ。レミリアの相手任せるわ」

 

「えー。いやですよ」

 

横にいるすみれに話したら普通に拒否された。

 

.....どうしてそうなるのよ。あなたは私が運動が苦手なことを知っているでしょうに。

ここは姉の頼みを引き受けてあげるところじゃないの?

 

「あら、逃げるのかしらさとり妖怪。ま、最強の吸血鬼が相手だもの。怖気づくのも無理ないわよねえ」

 

この一言は強烈だった。こんなにも私をその気にさせる言葉、一体誰から聞いたのかしら?

 

昔からだけど、私は挑発に少し弱いのだ。すぐ乗ってしまうという意味で。

運動が苦手なことは自分でも理解しているつもりだ。でもこう言われた以上、私はもう逃げることはできなかった。

 

「私は怖気づいてる? バカ言わないで吸血鬼。いいわ、その勝負乗ってあげる」

 

「ふふ、そうこなくてはね」

 

すみれが「やっぱりやるんでしょ? 私には分かってましたよ」とでも言いたげな表情で此方を見つめていた。(ようするにドヤ顔)

なんかすっごい腹が立ったので、一発腹に右ストレートを決めてやった。

ひどいですよ、おねえちゃん.....とか嘆いてる気がするが、まあ私には聞こえません。

 

「スペルカードの制限枚数は無し、それでいいかしら?」

 

「.....私に隠し事はできないわよ吸血鬼。貴方、どうやら私を殺す気でかかって来るみたいじゃない」

 

「あらバレちゃったわ。心を読まれるのは不便なものね。ま、いいか。

とりあえず私が言いたいのは.....貴方と真剣勝負がしたいのよ、古明地さとり」

 

吸血鬼の目つきが変わった。その私を射抜くような視線に、思わず冷や汗が流れてしまう。さすが、最強の吸血鬼と言ったところか。

 

横を見るとこいしが不安そうに見つめていた。あの吸血鬼が相手なのだから、心配していないわけはないだろう。だから、私は彼女に優しく微笑んでみせた。

 

――――姉として、妹に心配はかけられないわね。

 

「.....その真剣勝負、受けてたつわ。レミリアスカーレット」

 

それを聞いた彼女は微笑した。彼女の妹を彷彿とさせる、凍りつくような不敵な笑みである。

こういうところはさすが姉妹といったところか。まあ褒め言葉じゃないけど。

 

「ふふっ.....こんなにも月が紅いから?」

 

あら、その台詞.....いま月は出ていないけれど、そこのところは目を瞑ってあげましょうか。

 

「「楽しい夜になりそうね」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に仕掛けたのは、吸血鬼の方だった。彼女は空中から私に目掛けて、羽を折りたたんで突進してきた。

自称とはいえさすがは幻想郷最速。かなりのスピードである。まあ、幻想郷最速は烏天狗なので何を言おうが自称となってしまうのだが。

 

だが、どれだけ速かろうが私には無駄。心を読み取る私には、相手が自分のどこを狙ってくるか分かる。たとえ運動が苦手でも、避けることは容易い。

レミリアの突進を、私は華麗に避けてみせた。間髪居れず、彼女は次々に突進してくるが私は余裕で全てを避けきった。

 

「ちっ、心を読まれるのは不便なものね」

 

「どうするのかしらね? 吸血鬼さん」

 

私は彼女に様子見程度の弾幕を放つ。私の弾幕の特徴は、ハートの形で初見では避けにくいのが特徴だ。初めて私の突破するときは何回もコンテニューした人がいるとか。

 

まあしかし、スペカでもないただの通常弾幕である。吸血鬼にはかすりもしなかった。それどころか、彼女は弾幕を避けながら再び此方に突進してきたのである。

 

まあ、そのカウンターは悪くない.....。でも、その戦略すら私にはお見通しなのよ。

 

「心花 カメラシャイローズ」

 

自分を瞬間移動させて、弾幕を放つことができるスペルカードである。

私は一瞬で吸血鬼の後方に移動した。吸血鬼が気配に気付き、慌てて此方の方に振り向くがもう遅い。

撒き散らしたピンク色のハートがレミリアに接触し、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったよりやるじゃない、さとり妖怪」

 

爆風の中、そう言いながら彼女の姿が浮かび上がる。少し服は破れたりしているがまだまだ余裕らしい。

さすがは6面ボス、そう易易とはいかないようだ。

 

「これからは本気を出す.....か。本気の貴方がどれだけ強いのか、楽しみだわ」

 

「そんなコミュニケーションのとり方をしているから、嫌われてしまうのよ」

 

「大きなお世話よ」 と言いたいところだったが、思わず私は言葉を失った。次の彼女の行動が、非常にまずいことだったのだ。

 

「接近戦か.....やばいわね」

 

「ふふっ、第二ラウンドと行こうかしら.....

神槍 スピア・ザ・グングニル」

 

 

 

 

彼女の右手に握られた赤い槍。幼女である彼女からは想像もつかないそれは、まさにレミリアを代表するスペルカードといってもいいだろう。

だから、私は内心焦っていた。あの槍をブンブン振り回されるのは困るのだが.....

 

.....まあ、基本嫌な予感は現実となるものである。

 

 

レミリアは此方に持ち前のスピードで接近すると、その槍を突いてきた。何処に突いてくるのは分かるので私はそれをかわす。

先ほどと同じように、彼女は間髪いれず槍を振り回してくる。それも私はかわすが、先のように華麗に避けることはできなかった。

 

何度もいったが、私は運動が苦手なのだ。何度も彼女が槍を振り下ろすと言うことは、その分私は避けなければいけない。それは激しく体力を消耗するし、運動が苦手な私にとってはかなり辛かった。

 

「はあ.....はあ.....」

 

思ったとおり、私はほんの少し動いただけでもう息が上がっていた。すでに服は槍が掠ったせいでボロボロで、体は傷だらけだった。まさに満身創痍であった。

 

「動きにキレがなくなっているわよ!」

 

ばてていたせいか、反応が少し遅れてしまった。彼女の拳をもろに腹部に貰ってしまう。

 

「がはっ.....」

 

「クイーンオブミッドナイト!」

 

ぐっ.....この隙にスペルカードまで.....。なんとか迎撃しないと!

 

「想起 テリブルスーヴニール!!」

 

此方もスペカを発動したが、彼女の弾幕を総裁しきることはできない。被弾して弾幕の炎に包まれた私は、空中から墜落していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う.....ん.....? 意識は......なんとかあるわね。

とりあえず、体を起こさなくちゃ.....。

 

 

 

「大丈夫!? おねえちゃん!」

 

ようやく意識がはっきりとしてきた。どうやら弾幕を被弾をした私は、気を失って地面に落ちてしまったらしい。寝転がっていた私がなんとか目線を上げると、そこには涙目で此方を見つめるこいしがいた。

 

「大丈夫、じゃないわね.....」

 

体はそこらじゅうが傷だらけ、火傷まみれだった。少し体を動かそうとするだけでズキッと痛む。さすがに嘘でも大丈夫とは言えなかった。

 

「でも.....まだ終わってないわ.....!」

 

私はなんとか立ち上がろうと力を込める。でも、私の脚は微動だにしない。

 

「無理だよお姉ちゃん! そんな傷じゃあ.....!」

 

「妹の言うとおりよ。それ以上は無理だわ。素直に負けを認めたほうがいいと思うのだけど?」

 

吸血鬼の言うことはごもっともだった。私が負っている体の傷は、今すぐ直さないと命にかかわるだろう。ましてや、その体で闘うなどもってのほかだった。

 

でも.....諦めるのは嫌だった。

 

「こいし.....あと少しだけでいいから、お姉ちゃんにやらせて」

 

なぜここで諦めないのか、自分は正気ではないと思った。でもそのとき、私の頭の中にはある一つの台詞が浮かんでいた。

 

 

――――ある一つの本を読み終えたとき、それにある印象に残った台詞がしばらく頭から離れないときがないだろうか? 私もある本を読んで、ずっと頭から離れなかった台詞があった。

 

『諦めたら、そこで試合終了だよ』

 

本当、たまたまこれが印象に残っていただけだ。でも、私が諦めない決意をするのには十分だった――――

 

 

「諦めたらそこで試合終了よ、こいし」

 

「何の本に感化されたかは知らないけど.....少しだけだからね、お姉ちゃん」

 

そう言ってこいしは私に手を差し出してくれた。さすが私の妹、こういうときには空気を読んでくれる。ちょっと感動したわ。

私はこいしの手を掴むと、体の痛みに堪えながら立ち上がった。

 

「あら、もう姉妹の熱い友情ごっこはお終い?」

 

レミリアはあざ笑うようにそう言った。凄く癪に障る言い方である。

 

「それは聞き捨てならないよ! 私たちの友情は本当だもん!」

 

「こいしの言うとおりよ。私姉妹の友情をバカにしたこと、後悔させてあげる!」

 

だが、彼女はまだまだ余裕の表情を見せる。まあ、そりゃあそうだろうね。

私はいつものように、彼女の心を読み取る。

 

「.....確かに貴方の思っている通り。私はこの傷のせいでまともに動くことすらできない。虫の息も同然よ」

 

「その通りではないのかしら?」

 

「でも、その場でスペルカードを使うぐらいならできるわ」

 

これには少しレミリアは驚いたようだったが、すぐに笑った。

 

「貴方のスペルカードなんて、もう私には通じないわよ。全て見切ったし」

 

「じゃあ.....私以外のスペルカードならどうかしら?」

 

残念だったわねレミリア.....博麗の巫女から私の闘い方を聞いていなかったことが、今回の敗因となるのだから。

 

「さっきのスペカ。テリブルスーヴニールには、心の奥に眠るトラウマを呼び起こす効果があるの。

それによって私は貴方のトラウマを再現して、弾幕として放つことができるわ」

 

「まさか.....私のトラウマを.....!」

 

私は言葉で返事をする代わりにニヤっと笑う。もちろん不敵な笑み。

そして私もレミリアと同じように、かつて博麗の巫女に言った台詞を口にした。

 

「さあ、これからが本番よ!

眠りを覚ます恐怖の記憶(トラウマ)で眠るがいい!」

 




すみれ「あれ.....? 私の出番は.....?」
作者「すまない.....俺のミスだあぁぁーー!!」

ごめんなさい。今回はいろいろとミスってます。
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