「紹介するわ、今日からこの地霊殿に住むことになった春夏秋冬 三月樹(ひととせ みづき)よ」
俺の賛否とか関係なく話が勝手に進んでいた。でも彼女は本当にいいのだろうか。いきなり一人居候が増えるとか、迷惑きわまりないと思うのだが.....
「紹介するわね三月樹。彼女たちは私の家族である、お燐、お空、そしてこいしよ」
やっぱり断ろうかと俺が真剣に悩んでいるにもかかわらず、さとりは淡々と自分の家族を紹介した。
「あたいはお燐、趣味は死体運びです。よろしくっ」
「わたしは霊鳥路 うにゅっ!?
.....あぁーひたはんひゃっはよーうひやいよーう」
「はじめまして!古明地さとりの妹のこいしです!趣味はぶらぶらと散歩することかな?あとお姉ちゃんは私のものなんだから、手を出したら許さないからね?」
よし、とりあえずここに住まわせてもらうかどうかは後にして、まず彼女らについて少しツッコませてもらおうか。
頭にある猫のような耳が特徴の女の子。名前はお燐というらしい。
お前のその耳は本物か付け耳なのか、どっちなんだ。そして趣味は死体運びって怖すぎだよ。ゾンビかお前は。
服装は白のブラウスに緑のスカート、そしてなにより胸にある赤い球体のようなものが特徴の女の子。名前はお空という。
.....まあ、可愛かったからよし!
最後、さとりと同じような第三の眼を持った女の子。名前はこいし。
確かにお空どうよう可愛かった、可愛かったんだけど......最後に一瞬みせたあの表情からは恐怖しか感じねぇよ。思わず身震いしたわ.....
「もうこいしったら、大げさね。三月樹はそんなことしないわよ。でも私を悪いやつから守ってくれるなんて、お姉ちゃんとってもうれしいわ」
「ほめてほめてーあたまなでてー」
こいしは先ほどとほど遠い、天使のような微笑みでさとりに言った。
「よしよし・・・本当、こいしは頭を撫ででもらうのが好きね」
「えへへー」
こいし.....なんて恐ろしい子。
全員の自己紹介を終えて気づいたことがある。
どうやら、この地霊殿には普通の奴がいないようだ。趣味死体運びの奴とか、すげえお姉ちゃんっ子とか.....
そして俺はふと思ったのだ。
―――彼女らと一緒に暮らしていけるかなあ。
と、そんなことを考えながら俺は古明地姉妹に声をかけた。
「あの.....俺これからどうすれば?」
「そうね.....とりあえずここがどんなところかを知ってもらうわ。お燐!三月樹を案内しなひゃ!?」
まさかお前もあいつ同様舌を噛んだのかと思い、俺はさとりに目を向ける。
「おねえちゃん首筋が弱いんだねー.....うふふ、私がもっともっと苛めてあげる。」
「あ、そこ、だめっ.....」
目の前には桜色の光景が広がっていた。あ、やばい鼻血でそう。
俺は横にいるお燐に助けを求めようと咄嗟に目を向ける。どうやら、お燐も俺と同じ気持ちだったようだ。
「は、早く行きましょう三月樹さん!あたいが地霊殿を含め、この旧都を案内するから!」
「そ、そうか。よし、頼む!」
こうして、地霊殿での生活がスタートした。なんだかんだいいながらも地霊殿の人達は俺を受け入れてくれた。俺はそのことについて感謝しなければならないと思う。
だが.....
俺はある言葉が気にいらなくて仕方がなかった。「家族」という言葉である。家族とは共に過ごすことでひとつのまとまりを形成する集団のことで、信頼関係や絆で固く結ばれている。さとりは俺を家族として迎え入れると言った。それはとても喜ばしいことなはずだ。
しかし、俺はそのことに何も感じなかった。それどころか、「家族」という言葉を聞くたびに虫唾が走るのである。まるで自分の体自体がこの言葉を毛嫌いしているような、そんな感じだった。
記憶が無くなる前、何かこの言葉を嫌いになる出来事があったはず。このことは記憶を取り戻す手がかりになるだろう。
俺はここに長居するつもりはない。準備が整えばここを去ろうと思う。これ以上彼女らに迷惑を掛けたくないし、そしてなにより―――
―――これ以上家族ごっこを続けるのは嫌だから。
やっぱこいしはおねえちゃんのことが大好きですね。
あとちなみにお空があのとき言った言葉は「あぁー舌噛んじゃったよーう痛いよーう」です。