赤嶺さん家の友奈さんが学校へ行くそうです 作:バロックス(駄犬
一応ここで明記しておきますがグラップラー達は出ません。完全に別時空です。
※本編花結いの章、20話以降のネタバレ注意です。
―――これは、一人の少女の物語。
―――儚くて、いつか終わってしまうこの世界で、
―――魔法をかけられた少女が一生懸命頑張って、今まで知らなかった何かに気付く物語。
少女は願う、
”魔法よ、どうかまだ解けないで”、と。
○
―――徳島県・山奥のどこか。
人の気配を感じない山の中を、一人の少女が駆ける。
沖縄人特有の日に焼けた肌が身にまとった装束から露わにし、
時に地を発ち、宙へ舞えば美しい緋色の髪が揺れる。
勢いを落とさず、木々を伝って飛び移っていく姿はまるで猿か、忍者のように。
一際大きめの木の枝を見つけ、渾身の力で踏みつける。
尋常ではない『勇者の力』で枝はしなるように曲げられ、次の瞬間には枝をジャンプ台替わりに大跳躍をした少女が緑の結界を抜け、雲が見える空へと身を投げ出した。
浮力を感じ、次第に重力で落下する身体の軸を整える。
時速が80kmを超え、地面と衝突すれば大けがでは済まされない一大事に顔色一つ、むしろ笑みを浮かべた少女は体操選手の如く、羽のような身軽さで地面へと着地を決める。
「あのさぁ造反神様……もう一回言ってくれない?」
四国を守護している土地神、神樹が作り出したこの世界でその敵対勢力である造反神の勇者として召喚された赤嶺は鍛錬の最中であった。
勇者部が力をつけている現状、赤嶺自身も強くなることを求められている。その為に日々の向上、鍛錬は欠かせない物だった。
既に造反神が奪った四国の領土も勇者部に奪い返され、残すは徳島と高知だけとなった戦況で作戦の指揮官でもある赤嶺は勇者部との決戦に備え、一分一秒を無駄にできない。
そんな焦燥に駆られる赤嶺の一連の動作を止めさせるに至った主、造反神の言葉を赤嶺は再度口にする。
「私に『学校へ行け』……って、どういうこと?」
造反神の言葉は正確に耳に届くものではなく、脳内へ語りかけるものである。
それは造反神が姿形を持たない精霊的な、神秘的な存在だからか、はたまた顕現するのが面倒くさいだけなのか、赤嶺とのコミュニケーションは依然とこの形式を維持している。
その主、造反神が言っている。 『赤嶺、学校へ行きなさい』、と。
「学校って……勇者部がいる讃州中学?いやいや、造反神様……だいぶ前に部室に乗り込んで私がコテンパンにされたの覚えてるよね?
敵情視察しようにも向こうも警戒度上がってるし―――え?」
赤嶺の言葉を遮るように造反神の言葉が頭へと流れてくる。
「『生徒として学校生活を送りなさい』って……ムリムリムリ! 何言ってんの造反神様!!」
空に対して手と、顔を振る赤嶺は自身の主の提案に拒否の反応を見せる。
「今は大事な御役目の真っ最中でしょ? 徳島決戦、高知最終決戦までもう時間も少ないって思ってるのに……そんな状況で学校生活なんて……」
神世紀、旧世紀の時代に生きる勇者を集めて行われるこの戦いは、未来の人類存亡を左右するものだ。勇者達に試練を与え、特定の人物に揺さぶりをかけ、それを踏破した先に見える可能性への示唆。それを実現させるための戦い。
赤嶺にとっての御役目はそういうものである。
だからこそ、戦いも佳境を迎えているこの時期に勇者部が居る場所で学校生活を送るなど、その理由は全く持って理解できなかった。
「『お前が尊敬する勇者、古波蔵棗と一緒に学校生活を送りたくないのか』って……そりゃあ、棗お姉さまと一緒の空間にいられたら……う、うれしいけどっ!!」
それでも、敵陣の真っただ中に居座るという赤嶺の心中は、心労は計り知れない。 赤嶺にとって憧れの勇者が居ても、その隣には他の勇者が何十人もいるという状況である。
『だったら行けばいい』
今度は脳内ではなく、明確な言語として赤嶺の耳にその言葉が届いた。本気を出せばちゃんと耳に届くようになるんだ、と新たな発見をした赤嶺を余所に造反神の言葉は続く。
『この世界の記憶は持ち帰る事はできない。お前もそれは分かっている筈だろう?』
「そうだけど、さ」
神が作ったこの世界で行われる戦いはこちらの、造反神の領土を奪いきるまで続く。
勇者達は年齢を重ねること無く、
怪我はすれど病むことが無く、
四季だけが永遠と移り変わる。
限りなく永遠とはいえないこの世界だが、
現世で心に傷を負った勇者はその傷を癒し、
その時代で遭えなかった者、わだかまりを抱いていた者同士の願いを叶える。
そんな、理想と優しさで心の隙間を埋めていく世界。人々にとって都合のいい世界。
しかしそれは紛うことなく、偽りのものだ。
夢が醒め、現実へ戻るように、この世界もいずれ終わりを告げ、その記憶は持ち帰る事は出来ない。
『お前はそうやって、やらずに後悔するつもりか』
「わ、私……みんなとワイワイやるの、苦手だよ」
『そうか?その割にこの前のエイプリールイベント、やけにノリノリだったじゃないか』
「ちょっ! 造反神様見てたのっ!? 趣味ワルッ!!」
先日のエイプリールフールを利用して乃木園子に化けた赤嶺が勇者部を共倒れさせようと画策したことを引き合いに出され、赤嶺の顔が恥ずかしさから赤くなる。
結局寸でのところで乃木園子本人からの問い詰めで正体を隠しきれなかった為に計画は失敗に終わったが。
『あの時のお前は、そう……楽しんでいたんだろう?』
楽しかった。
同じく、もしくは近い年頃の少女と、同じ御役目を持った勇者とお祭りのようにハチャメチャに過ごす―――。
大赦の暗部組織の一員として生きていた赤嶺にとって、その喧騒さや同年代の少女とのやり取りは目を背けたくなるくらいに眩しく、憧れる物だった。
それを見抜かれたか分からないが、自身が一度襲おうとした可愛らしい巫女の少女に純真無垢な笑顔で”イベントに参加してください”と言われたのを思い出す。
『なら、時間がある内にやりたいことをやりなさい。 思い残すことがないように』
「け、けど……今まで色んな酷いことしてきたし、向こうも敵が居るって知ったら―――」
『その姿でなければ、問題あるまい』
突如として赤嶺の眼前、天から光が降り注ぐ。 地面に当てられた光が粒子を生み出し、一つ一つが結合し、ひときわ大きな形へと姿を変えていく。それはやがて、人の形になった。
背は赤嶺と同じ、だが容姿が全く異なる少女が赤嶺の前にいた。
自身とは真逆の白い髪に、陶磁器のような色白の肌、どこか神秘的な雰囲気を思わせる顔立ち。
『この姿を借り、讃州中学へ行けばよい。 いわば、お前の2Pカラーだ』
「いや、そんなルイージみたいな……ホント、よくできてるよね」
ぷに、と少女の頬を抓ってみるとそれは確かに人の肌の弾力で、髪の質も、少女特有の甘い香りも再現されている。
女性特有のこの二つの胸も、
「え、胸って私のより大きくない?」
『そんなことは無い、バスト、ウェスト、ヒップ……ともに赤嶺を元に作り上げたつもりだ。 見間違いだろう』
この変態神様め、勇者パンチを食らわせてやろうか、と密かな殺意を抱いた赤嶺である。
『ついでにこの少女は仕事の都合で転校してきた病弱少女という設定つきでな』
「造反神様って、やっぱりソッチの趣味あるの?」
よくよく思えば、自身の勇者服も他の勇者達とは違い、肌を露出する傾向が強い。これは全て造反神が与えてくれた勇者服なのだが、今回の事を機に、赤嶺は神とは一体なんなのか改めて考えさせられるだろう。
神様は実は変態集団の集まりなのでは?と。
『じゃあ明日から学校生活始まるからヨロシク』
「また急だよね」
『編入手続とか部屋配置とかはこっちでやっておくから、お前はもう寝なさい』
「そんなことできるの?」
『神様舐めんなよ?』
「造反神様……めっちゃ有能でフランクじゃん」
『こっちの方が色々と接しやすい。 向こうの神樹もこんな感じでやり取りすれば楽なのにな』
「それ、わっかる~」
何かしらため息のような音が聞こえた気がした。造反神のものだろうか、そんなことを考えていた赤嶺に造反神の言葉響く。
『一つだけ問題がある、それは―――――』
造反神が語る全てを聞いた赤嶺は少しだけ悲しげな表情の後で笑って、頷いた。
○
――――讃州中学、2年教室。
一人の少女が黒板を背に、教壇の上に立っている。
白銀の輝きを持つ白髪に、陶磁器のような白い肌をもつ少女の神秘的な雰囲気に教室内の生徒たちは小さいざわめきを隠せない。
「東郷さんすっごいキレイな子だよね!」
「……そうね、でも友奈ちゃんの方が
そのクラスの中には見知った顔がある。ひそひそと繰り広げられる話の内容は全体的に似たようなものだった。
これほどの人前に晒されることにあまり慣れていない少女だが、たん、と踵を返して黒板と向き合い、チョークを手に取っては分かりやすく文字を書いていく。
文字を書き終え、再びクラスの前に正面を向けた少女はにっこりと、天真爛漫の笑顔で言うのだ。
「
神舞白奈。
それは、赤嶺友奈の仮の姿ある。
こうして、赤嶺友奈の、神舞白奈としての讃州中学での学園生活が始まったのであった。
―――これは、一人の少女の物語。
神様に魔法をかけてもらった少女が、願いを叶える物語。
2月くらいから作り始めて形になったのが今日でございます。普段バトル系の描写が多いから学園モノとの雰囲気の差に戸惑いながら書いています。
これは赤嶺さんが色んな人たちと楽しくイチャイチャ?しながら、楽しく学園生活を送る予定。赤嶺さんにそのっちの魔の手が迫る。
オリ主タグは念のためにつけました。一応オリキャラですし。それらの説明は追々話の中で明かしていく予定。短めに、濃いめのスタンスで話を進めますがリクエストがあったらメッセージなどで受け付けるつもりです。
~勇者部の神舞白奈(赤嶺友奈)の評価~
結城友奈
・なんかすっごい可愛い子が来た。
でも雰囲気が自分と凄い似てる気がするね、なんでだろう~。
東郷美森
・敵が来た。国防仮面準備中。
造反神様
・多分色々と赤嶺がやらかすと思うからその度にオトン、時々オカンになろうと思っている。