赤嶺さん家の友奈さんが学校へ行くそうです   作:バロックス(駄犬

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こんな感じの花言葉探してみたけどなかった。ちなみにこの作品には戦闘回はない、というか入れるつもりはないのです。

誤字指摘をしてくださった方、ありがとううございます!


第三話〜あなたの事を教えてください〜

―――お昼休み。

 

 讃州中学は屋上がある学校だ。

 そこからは讃州市と海が一望できて、その景色は学生たちの間ではちょっとしたスポットである。

 

「……ん。 誰もいないね、っと」

 

 屋上の扉を少し開け、顔だけを覗かせた白髪の少女、神舞白奈こと赤嶺友奈が周囲に人の姿がないのを確認して、やがて全身を屋上へ姿を現した。

 

 

 生徒が座る時の為に用意されたであろうベンチに腰を掛けた赤嶺は、手にしていたバッグから長方形の箱を取り出した。

 意気揚々に、鼻歌を混じらせて蓋を開けるとそこには白米と、色彩に溢れた野菜たちが。

 

「お弁当たーいむ」

 

 昼休み、昼食を食べる為に赤嶺は屋上へとやって来たのであった。

 

 

 正直、ここの数日で白奈に対する注目度はある程度は熱を引いてきたようである。

 休み時間なども結城友奈などの計らいで質問の時間もちゃんと決められているので赤嶺自身にかかるストレスはなく、こうして昼休みも一人で自由に過ごす時間が出来たのだ。

 

「ふむ、我ながらなかなか……かな?」

 

 箸で掴んだミニハンバーグを口へと運ぶ。

 肉を咀嚼してその甘味を味わいながら喉へ通すと次には野菜であるブロッコリー、パセリ、次にハンバーグ、ブロッコリーと肉野菜野菜肉のサイクルで食べ進めていく。

 

 

『赤嶺ちゃんさァ……クラスの子と一緒にご飯とか食べなよ』

 

 突如として赤嶺の脳内に響く声がある。聞き覚えのある声とその内容に眉を顰めるのはその声の正体が主である造反神のものだからだ。

 

 

「別にいいじゃん。 私は一人で食べたいんだもん」

 

 そう言いながら白米を口へと運ぶ。

 赤嶺が一人で昼食をする理由は単純である。あまり人とガヤガヤするのが苦手なのだ。

 

「結城友奈とかと一緒にいると同じ友奈だから色々と調子狂うっていうか……あと、あの東郷美森とかの視線が最近すごく刺さる物があって……」

 

 サッカーで赤嶺が倒れた辺りからだろうか、友奈と少しでも話そうとすると美森の色調を暗転させた瞳がひたすら赤嶺に向けているのだ。

 それは若干ながら殺意を帯びている事に気付いた赤嶺は極力美森のまえで友奈と行動を共にすることは避けている。

 

 

『ぼっちかよ』

「ぼっちいうなし」

 

 胸に何か突き刺さるような感じに襲われた赤嶺の手が止まる。

 真正面から見える讃州市の海を眺めながら、赤嶺がため息をついた。

 

『楽しくないの?学校』

「うーん……なんていうか、まだ」

 

 事実、ここに来てからまだ一週間と時間は経っていない。だからまだ思ってしまうのだろうか、初めて送る学校生活と言うのは”つまらない”と。

 

 

 座学による授業、体育による運動、その他の女子との他愛のない会話。全てが赤嶺にとっては初体験であり、最初は戸惑いもしたが時間が経てば人は慣れるものである。

 環境そのものは新鮮なのだが、そこには赤嶺を揺らすような刺激的な体験は未だに起こっていなかった。

 

「そもそも、この学校に来たのって……棗お姉様と一緒にいられると思ったからだし。 でもお姉様は三年生、学年も違うし色んな人から人気があるわけだし、無理に近づけないよ」

『ふーん、じゃあその古波蔵棗がいれば学校生活が楽しくなるんだ』

 

 なるほど、と造反神が頷くように呟く。

 

『赤嶺ちゃん』

「なに」

『右向け右』

「ちょっと造反神様、なんのお遊び―――」

 

 言葉通りに顔を右へと向けた赤嶺の瞳に、一人の少女が写り込む。

 

「あ……」

 

 思わずそう言葉を漏らして、身体の動きが止まった。

それは脳内の思考もまったくもって纏まらなくなるほどの出来事であり、その乱れた思考の中で何とか目の前の少女を表すなら、

 

 

 この讃州中学とは違う制服を身に纏い、

 灰色の髪と一本だけ伸びたポニーテール、

 そして自身と同じ、沖縄人特有の健康的な小麦色の肌。

 

 

 

 目の前にいた少女とは、赤嶺が尊敬する勇者・古波蔵棗、その人であった。

 

 

「な、なななななっ!?」

 

 なんでここに棗がいるのか、と造反神に問おうとする赤嶺だが棗がこちらに視線を向けていることに気付く。

 黒の瞳が赤嶺を捉え、事もあろうかその足を動かし、徐々に距離を縮めてくる。

 

 

・・・・・造反神様聞いてる!? なんでここにお姉様がいるの……うわ、アイツ回線切りやがった。

 

 何度脳内で赤嶺が造反神に呼びかけても反応はない。

恐らく聞こえているかもしれないが敢えて聞こえないふりをしているのだろうか。後者だったらだいぶ最悪な手口である。

 

 

 その間にも棗は距離を徐々に消していき、

 

「……大丈夫か」

「ふぇ……」

 

 赤嶺の真横までやって来た棗の開口一番が、それだった。急にそう言われても、赤嶺としてはなんのことなのか理解できない。

 

「その……一人で何か喋っていたから」

 

 

・・・・聞かれてたァァァ!?

 

 気恥ずかしさから顔を覆い隠したくなるほどに赤嶺の身体が熱を持つ。先ほどまでの造反神との脳内での会話は赤嶺にしか聞こえない。

 故に、先ほどまでの会話劇は傍から見れば赤嶺がひたすら独り言を語っているようにしか見えないのだ。

 

「ち、ちなみにどこからどこまで」

「いや、内容は分からない……海を見ていたから」

 

 そう言われ、内心で胸を撫で下ろす。

 奇跡的にも海を眺めていた棗のお蔭で神舞白奈が造反神というワードを口にする危険な少女だと、そこから赤嶺友奈の正体がばれるような事にはならなかった。

 

「私も、隣いいか? 座るところが一つしか無くてな」

 

 棗が手に持っていたお弁当箱を見て、赤嶺は息を呑む。そして思うのだ。

 

 これは、すごくオイシイ展開なのでは?

 

 西暦時代、当時の赤嶺家を救った英雄である古波蔵棗とともにお昼ご飯ができる、そんな夢にまでも見なかった出来事に赤嶺の心が躍る。

 

「ど、どうぞ!」

 

 かしこまるように、棗を座るためにその場に置かれていた自分のバッグを移動させた。キレイさっぱりに人一人分の空間を確保させた赤嶺はその手で棗を招き入れる。

 

「すまないな……なぜ距離を取る」

「あ、その……気にしないで、ください」

「……? そうか」

 

 もともと深く考えることがない棗だからか、明らかに態度が可笑しくなっている赤嶺に対して無理に追及することなくその場所に腰を下ろした。

 その距離の理由は赤嶺が目を背けたくなるほどに恥ずかしくなっているからだとは露知らず。

 

「ここの海は……いいな」

 

 二人とも弁当を食べ終えて、早く数十分が経つ。

 話す話題も何も浮かばなかった赤嶺はただ棗と目を合わせることなく、黙々と食事を終わらせていたのであった。

 

 当然のことである。

 赤嶺にとって古波蔵という名は神世紀で英雄と伝えられている名である。

 

 赤嶺と古波蔵は同じく沖縄の名である。それはバーテックスが襲来する以前の沖縄県民であれば一般常識レベルのものだ。

 

 

 だがバーテックス襲来の際、四国へ脱出する際に身を張って、逃してくれた勇者が居たという。それが古波蔵棗だと、言い伝えられていた。

 

 

 四国へと逃げ延び、命を繋いだ赤嶺家はその救ってくれた恩人である古波蔵という名を後世まで残すことにした。

 その名は赤嶺が居た神世紀序盤、四国の英雄の碑に刻まれいている。願わくば、今の勇者の代でもそうなっていることを願う。

 

 

 そんな個人的レベルに英雄視される実物の少女を前にして尊敬の意を持つ赤嶺が気軽に話しかけられる訳がないのである。

 

 

「そ、そうですね……」

 

 棗の不意の言葉に合わせるように赤嶺が口を開く。

 

「だが、やはり故郷の海が……いいな」

 

 この讃州市の海よりも、やはり故郷である沖縄の海が良いのだろうか。

 バーテックス襲来前の世界の資料は決して多くは無いが、赤嶺が居た時代にかろうじて残っていた沖縄の資料は確かにあった。

 

 

 常夏の地、沖縄。

 空は青く、海岸の砂浜は白く美しく、

 海は透き通るような翠色を思わせ、

 陸より隔絶された海の世界は太陽に照らされた珊瑚礁が光り輝く。

 

 

・・・・・私のご先祖の、本当の故郷。 

 

 

 教養として資料を目に通していた赤嶺も自身の先祖が暮らしていた故郷の姿に見惚れ、何度想いを胸に馳せたことか。

 

「綺麗な所なんですね……」

「ああ、皆んなに見せてあげたいくらいだ」

 

 それを見てきた棗ならば、この讃州市の海は例え一般的に綺麗であっても、物足りなく感じるのだろうか。

 

 

勇気を出して、赤嶺は口を開く。

 

「聞かせて貰えませんか……おね、棗さん」

 

 貴方が知る海を、

 故郷のこと、

 有名な食べ物のこと、

 潮風の香りも、

 そこで生きていた貴方のことを。

 

 少しでも、棗のいた世界に触れてみたいと、知りたいと赤嶺は思う。

 

「白奈は変わっているな」

 

 棗が苦笑交じりに口を開いた。

 

「私の話はそこまで面白くないぞ。 あまり話すのは苦手でな」

「大丈夫です―――って、なんで名前知ってるんですか」

 

 名を名乗った覚えはない筈なのに、と赤嶺は面を食らう。そんな棗は小さく笑って、

 

「体育でのサッカー、みんなが注目していた。 私もだ」

 

 あの日、三人の友奈と繰り広げたサッカー対決。

 異様にギャラリーが多かったのは気付いたがまさかその観衆に棗が入っていたとは思わなかった。

 

・・・・・お、お姉様が私を見ていてくれた!?

 

「その後、結城に抱きかかえられてたな」

 

・・・・・その後の事も見られていたとは。

 

 不覚だ、と赤嶺は赤面する。あの全力全開でスポーツを堪能し、あまつさえ体力の限界から倒れるという失態を見せていたことに。

 

 

「そうだな―――、じゃあ食べ物の話だな。 私の知っている食べ物でソーキ蕎麦というのがあってだな」

 

 棗は徐に語りだした自身の故郷の話を赤嶺は目を輝かせて聞くのであった。

 

赤嶺は気づいているだろうか。自身の胸がこれまでかつてないほどに高鳴っていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな二人を屋上の扉の隙間から覗く者がいる。

 

「まさか勇者部以外でこんな面白そうな事が起きようとしてるなんて思いもしなかったんよ〜」

 

メモ帳とペンを握っては仲睦まじく談笑する二人の少女を凝視し、神懸かりな速度でペンを走らせる少女の鼻息は荒く、その瞳は血走っていた。

 

 

「これは逸材だね〜、是非とも我が勇者部に……ッッ」

 

大物小説家、乃木園子がこれから起きるであろう嵐を予感して、不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 




実はゆゆ刃牙の勇次郎にぶっ飛ばされて気絶してきる間に赤嶺が見ている夢がこの世界説。

嘘です。前も書いてますが完全に別時空です。

神舞白奈さん誕生秘話。
グーグルさんで香川の地名を調べてたら駅の名前に『神前』というのがあり、そこからちょっと主人公っぽく文字を変えて『神前』から『神舞』、白い友奈だから白奈ちゃん。
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