赤嶺さん家の友奈さんが学校へ行くそうです 作:バロックス(駄犬
公平で、尚且つ単純なルールのもとに成り立つ、決の取り方とはなんだろう。
答えはジャンケンである。
人数が増えても単純にあいこになる確率は3分の1。二人で行おうものなら、さながら西部劇のガンマンの一騎打ちのようなスリルある真剣勝負が楽しめるだろう。
なぜそんな話をしたのか。
今まさに讃州中学の体育館でその真剣勝負が行われているからである。
ちなみに気になる対戦カードは。
「じゃんッ!」
「けんッ!」
神舞白奈と高嶋友奈だった。
ぽん。
ほぼ同時にお互いが差し出した手を見合って、神舞白奈に化けた、赤嶺友奈の口元が歪む。
赤嶺チョキ、高嶋グー。
何故勇者パンチを出さなかったんだと赤嶺は密かに後悔した。
「勝者~高嶋ァ~」
「ッエーイ!」
まるで相撲の行司のノリで試合を仕切り、勝者の名を告げるのは結城友奈だ。
友奈による仕切りのもと、友奈と友奈が見合って行うガチのジャンケン対決。
事情を知らない二人だが、赤嶺からすれば同じ顔の人間が集まって同じ遊びをする…違和感がないというのが違和感か、それに頭痛を感じてしまっている。
「ま、負けた……」
元々は唐突に仕掛けられたジャンケン対決。
ことの始まりは体育館で一人昼弁当を食していた赤嶺の元へ目を輝かせながら現れた高嶋が告げたのが始まり。
『じゃんけんしょーぶっ! 負けた相手は勝った人の言う事を”何でも”聞く!』
と突如吹いた神風の如くバトルスタート。
出会って3秒と満たない。ポケモントレーナーですら出会ってから戦闘が始まるのに10秒近くかかるというのに。
そして先ほど始まって、結果はご覧の通り、
文字通り『敗北者』となった赤嶺が両の手と足を地につけて項垂れている。
どこかでマグマを操る海軍大将の声が聞こえた気がした。
「ふっふっふ……それじゃあ白奈ちゃん、約束…覚えてるよね?」
勝手に一瞬で始まり、一瞬で終わった謎の勝負。
敗北の余韻に浸る間もなく、高嶋が不敵な笑みを浮かべて近づく。
「”負けたら勝った人の言う事を何でも聞く”……さぁ、私と結城ちゃんの言うことを『なんでも』聞いてもらうよ」
何故に『なんでも』を強調する。そこに意味はあるのだろうか。
しかし、造反神側の勇者、赤嶺友奈はここで反論の意志を見せ、抵抗を試みる。
「い、いや、でも勝手にそっちから仕掛けてきたんでしょ!? 私やるって言ってないもん!」
「目と目が会ったときが、バトル合図だよ!私と白奈ちゃん、偶然にも目が合ったわけだし」
ああ、無慈悲。
そもそも目と目が合う瞬間、即バトルってなんだ。ポケモン厨か、お前らは。
「結城ちゃんも見たよね」
「え? あ、うん……ええと」
笑顔で同意を求める相手、もう一人の友奈、結城友奈は高嶋の言葉に若干戸惑いを見せている。
お前は敵だが、頑張れ結城友奈。今ここにいる
「見たよね?」
「え、ええと……」
「見たでしょ?」
「……うん見た、ごめんなさい」
満面の笑みで確かに圧を掛ける高嶋に、
このド畜生が。
そう思わずにはいられない赤嶺だった。
『何でも言う事を聞くという条件のもと美少女同士でイチャイチャする素敵な展開……、あっ、赤嶺ちゃん気にしないでね。そのまま続けていいよ』
赤嶺の脳内に造反神の一定のトーンによる声が響く。ド畜生はこちらの陣営にもいた。
小学生やら中学生などの若い少女を選別して強引に戦わせたりする神樹しかり、この造反神しかり、神様は変態が多いらしい。
「それで、私に何をさせるの?」
正直、どうにでもなれというのが赤嶺の率直な覚悟だ。安易な覚悟である。
高嶋はにっこりと笑いながら、
「そうだね、じゃあ結城ちゃん。 白奈ちゃんを羽交い絞めして」
「はい」
操られた人形かよ。
まるで散華したような虚ろな瞳で赤嶺を拘束する友奈に赤嶺が疑問を投げかける。
結城友奈よ、お前はそれでいいのか。
逃げようにも、結城友奈単体でのパワーは少女に似つかわしくなく、強力なホールドである。
さながらプロレス技のごとき締め付けに赤嶺は全く動くことが出来ない。
「まさかだけど、友奈ネタをやるわけじゃ……」
「うーん?」
苦笑いで答える赤嶺。
以前のサッカーの授業中に見せつけられたマイティ友奈ネタを見せつけられた赤嶺はいずれこのネタを自分にやらせるつもりなのだろうと直感的に理解した。
勿論、同じ顔と声でそんなことをやらされたりでもしたら卒倒ものである。
この光景が映像にもし残されるようであるならば、先祖代々の恥さらしと呼ばれる羞恥プレイに発展させられることも避けられない。
対して高嶋は何か思い出したかのように手を叩く。
「それもいいかなーって思ったんだけど、白奈ちゃんに別の事で頑張ってもらおうかな」
「が、頑張るってなにを……?」
「……」
何故無言になった。
その対応の意味を察することが出来ずに、赤嶺は恐怖する。
だから恐怖のあまり、声を上げた。
「や、やっぱむりッ!」
白奈の肉体で、本来の赤嶺友奈としてのパワーを発揮する。
白奈を拘束する程度に締め付けていた結城友奈の拘束を力任せに振り解き、全速で体育館出口へとダッシュする。
「うわ、すごい速い!」
「ご、ごめん! 次の機会に!都合があれば付き合うから!」
三分しか持たないこの全力ダッシュ。だが、この恐怖から逃れられるのであれば教室ではぶっ倒れてもいい。
その覚悟で必死に走る赤嶺だったが。
「駄目だよ白奈ちゃん」
10メートルは距離を空けただろうと確信した赤嶺の背筋を凍らせるような冷たい声。
高嶋友奈が眼前に仁王立ちしていた。
「ヒェッ……」
一瞬のうちに回り込まれたのも束の間、急ブレーキを掛けるも高嶋も赤嶺に向かうように駆け出している。
距離は瞬時に詰められ、
「次なんてない……」
両の肩を掴んだ高嶋がまるで研ぎ澄まされた日本刀で赤嶺を引き裂くように告げる。
「敗 者 に 相 応 し い
無慈悲を超えたハイパー無慈悲がそこにはあった。
赤嶺は思う。恐らく、結城友奈とか東郷美森よりこっちの高嶋友奈の方がやべーやつなんだと。
恐らく、自分はこの高嶋には絶対に逆らえないように出来てるんだと。
○
赤嶺友奈は窓の向こうの景色を見つめ、想う。
今日の空はヤケに青いな、と。
「あぁっ! たかしー、ゆーゆ!そのまま位置固定でッ たかしーはそこからしーなちゃんに近づいて顎クイッ!
もっと顔近づけてたかしーッ もっとッ もっとォッ!!」
赤嶺は羽交い絞めされたまま、勇者部部室に連れてこられていた。
「こうかな?」
「そうだよッ いいねぇ、イイよォ!!」
歓喜の声をあげ、恐ろしい速度でメモ帳に文字を書き込んでいるのは乃木園子だ。
しかも中学生と小学生の二人である。
乃木家初代勇者、乃木若葉の紛う事なき子孫。
中学生の園子は神世紀において散華を繰り返し、瀬戸大橋の戦いを生き残り、その影響で21体の精霊を有する最強の勇者だ。
赤嶺がこの世界で一番警戒していた人物である。
「鉛筆一本分の感覚で顔を近づけるんだよたかしー! ヨシッ きわどいッ ここだァッッ」
高嶋が園子(中)の言われたままに顔を近づけ、赤嶺の顎を小さく持ち上げる。
動くことも叶わず、逃げる事も出来ない赤嶺は、彼女にされるがまま。
それでも赤嶺は既に放心し、心を窓の外へと投げ出して心ここにあらずと言った状態である。
神世紀、彼女たちの時代でいうなれば、”眼が散華”しているという状態は、こういう感じなのだろうか。
『ふむ。 なるほど、普段強気な赤嶺ちゃんも、高嶋ちゃんのようなパワーあふれる攻めには為す術無し、か。 赤嶺友奈総受け……これは土地神の皆も滾りますわ』
ちょっと何言ってるか分からない。
自身の主である造反神を真っ先に非難する赤嶺だった。
「はぁ、はぁ……もう一人の私、この世界に来て…私良かったよ、今死んでも悔いはないッ」
「ふぅ、ふぅ……園子先輩、今世界がクリアに見えます~。 これが進化ですね? そうなんですね?」
荒い息を吐く園子達。
もう神様だけじゃなくてこの勇者も変態だろ、勇者システム取り上げなよ神樹様、どこが純粋無垢な少女だ。
虚ろな視線の赤嶺の脳内では激しい突っ込みが繰り広げられていた。
「それじゃあ次、行ってみようかァ……流し目のたかしーと羽交い絞めしているゆーゆが―――」
「しーな先輩の耳に息を吹きかけて―――」
それぞれの園子が言葉を完成させる前に、その肩を掴む手があった。
「ねぇ、そのっち。 人が自殺するとき一番迷惑なのが首つりなんだけど、理由って聞いたことがある?」
「園子さん。 ハサミってさほど切れ味が良い訳じゃないの。だから皮膚を切られると中途半端に、鈍い痛みが残るの……たとえば耳とかね」
「ヒエッ」
「ヒエッ」
園子達の後ろで東郷美森と郡千景が瞳孔を開かせて二人を見つめている。
ギリッと園子達の肩に爪を食い込ませると同時に、まるで真後ろから銃を突き付けられて生殺与奪を余儀なくされた兵士のように血の気の引いた顔の園子達が両の手を挙げ、メモ帳を床へと落とした。
「えっと、その……ありがとう。 東郷さん、郡さん」
数分程経って、美森と千景の助けもあってか、すぐに赤嶺は解放された。
赤嶺の瞳に生気が宿り、助けてくれた二人に感謝をする。
「大丈夫よ。 こちらこそごめんなさい、そのっちはいつもこうなので」
バリバリ、と園子が先ほどまで書き連ねていたメモ帳をゴミ箱の上で破きながら笑顔で言う。
「未遂に終わったから良い物の、間違って実行されてでもしてたら貴女も諸共……なんでもないわ」
いつから持っていたのだろうか、と千景も園子が持っていたメモ帳をハサミで容赦なく切断していく。
ついでに言い掛けた言葉が気になった赤嶺だが深く問う事をやめた。
「あぁッ! わっしー! 酷いよ! 未遂だよッ!? しかも合意の上だよ!? 許してくだせぇッ!許してくんろッ!!」
「千景先輩ッ、御慈悲をッ どうか御慈悲を~~~~!!」
ちなみに合意した覚えは赤嶺には無い。
この世の終わりを見るように美森と千景に割断され、ゴミ箱へ吸い込まれていく宝のメモ帳を園子達は涙ながらに返してくれと懇願している様は見ていて実に憐れだ。
だがどんなに悔いて願っても、それは叶わぬことだ。
冷徹な視線が返って来るばかりである。
「そのっちはそろそろ加減とかを知った方がいいわよ。……大喜利やらせるわよ? いいの?バラエティに特化した勇者になっても?」
「そ、それだけは許して欲しいんよ~わっしー」
「自分のお金で買った私服のセンスをディスられても?」
「やめて! やめて千景先輩! デスクイーン師匠!」
いいぞ、もっとやれ。この際、コイツの200冊以上ある謎のメモを全部取り締まってしまえ、と思った赤嶺である。
だが如何せん、昼休みというのは限りがある。
そろそろここに連れてこられた理由を知りたい。
そう思った赤嶺が口を開く。事の発端となった園子へと照準を合わせ、
「ちなみになんで私は連れてこられたのかな?
まさか園子さんたちのネタ帳に書かれるために呼ばれたんだとしたら流石に怒るんだけど」
「あ、それはちょっとあるんだけど~」
あるのかよ。
と、中学生の園子の発言に憤りを感じた赤嶺。
すると小学生の園子が、
「ちゃんとお呼び立てした理由があるのです~。今少し時間を待ってもらえたら~」
「そう言えば、私達もそのっち達に呼び出されたのよね」
「ええ」
美森と千景もどうしてここに来たかと言えば、同じように園子に呼び出されたとのこと。
理由は聞かされていない辺り、自分と同じ状況なのだろうか。
「遅れてごめーん!」
「お疲れ様です」
すると部室の扉が開き、中に入ってきたのは金髪の少女。
犬吠崎風とその妹、樹だ。
「防人組、六名到着」
今度は後ろから続くように楠芽吹とその防人隊員が。
「ほいっと、待ったかにゃあ?」
秋原雪花が。
「神樹館組残り二名到着!」
「入ります!」
三ノ輪銀と鷲尾須美が。
ぞろぞろとなだれ込んでくる人物、それは全て勇者と巫女だということに赤嶺は焦りを感じる。
部室が超狭い…、というか。まさか、正体がバレた?
思わず息を呑む赤嶺。 これが赤嶺を捕まえる園子の作戦ならば、この状況で赤嶺が逃げる手段はない。
多勢に無勢。一人の赤嶺に対して十数名を超える勇者によって袋叩きにされる恐ろしい光景が目に浮かぶ。
もはやこれまでか、短い学園生活だった。
そう覚悟を決め、今から変身を解き赤嶺友奈として部室で暴れようとしたその矢先、
「フッフッフ……皆、集まったみたいだねぇ~」
「聞いてほしいことがあるんです~先輩方~」
「なによ園子ズ。 部員全員呼び出しすほどの……一体何を言うつもり?」
園子達の意味深な台詞に風が首を傾げた。
普段の行いが悪いからか、あまり園子達の奇行に全員の勇者達が身構えるほどである。
「勇者部の新戦力を連れてきたんよ~」
そう朗らかな口調で園子が腕を伸ばす。
何故かそれは白奈である赤嶺お腕を掴み、グイッと引き寄せるようにし、勇者全員の視界に入る場所へと誘われ、
「神舞白奈ちゃん~、私が新しい勇者部の部員としてスカウトしてきました~」
その言葉を聞いた瞬間、沈黙が駆け抜ける。
勇者と巫女、それぞれが沈黙を重ねる中、無情にも時計の秒針を刻む音だけが部室に響き渡っていた。
「……は?」
沈黙を破るように放った赤嶺の一言も虚しく消え、誰も答えず、ただただ静寂が流れ、
そこから驚愕と怒号が部室全体に響くまで約十秒かかったのだった。
荒れ狂う部室。
ただ赤嶺だけが、響き渡る喧騒の中に取り残されていた。
この休暇期間は結構短編出すことに精を出してました。その結果があの防人組の短編です。しかもミス多し。
あとネタ的にも短編で済ませれる作品が三つくらいあって、時間があればそっちの方を投稿できればと思っています。
高嶋ちゃんって友奈ズの頂点なんだよなぁ。だったら二人の友奈からお姉ちゃんって呼ばれてもいいよな。
勇者部の神舞白奈に対する評価
結城友奈
・色々と助けてあげれなくてごめんなさい。
高嶋友奈
・赤嶺ちゃんに似た雰囲気を持つ者は絶対に逃がさない。
私が姉で、二人は妹。お姉ちゃんナンバーワン、OK? OK!!(ズドン)
園子(中、小)
・ネタとは舞い込むのを待つのではなく、呼び込むものだ。
白奈ちゃんは誰とでも組ませても私の執筆意欲を駆り立てるんよ~
東郷美森
・私が助けたのはお前ではない。友奈ちゃんだ。
郡千景
・とにかく今すぐ離れろ。