この世界での時間は偽りか真か   作:憲彦

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『皆さんお久し振りです。今日はこのゲームのサービス開始から3年になって、3周年記念イベントが開催中ですので、よかったら久々にギルドメンバーで集まって攻略してみませんか?』

 

広い部屋の真ん中に座った男がチャットでメッセージを飛ばしてみた。ゲーム内のチャットシステムだが、これには既読が付けば確りと合図が出る。そしてこれは、この男が所属しているギルドメンバー全員に宛てたもの。本来なら数分で既読が付き、返信が来るところなのだが、いつまで経っても何も来なかった。

 

西暦2020年。ゲーム大国と言っても差し支えないこの国、日本では、あるゲームとカセットが発売された。誰もが夢見たことあるゲーム世界へのフルダイブ機能が付いた大規模RPGだ。

 

膨大なマップ、自由なキャラ設定、ゲーム内で用意されている魔法やスキルを掛け合わせて作るオリジナル技、ゲーム内通貨の現実通貨への換金システム。これだけの自由度の高さが用意されており、尚且つ既に様々な媒体で仮想現実やゲーム世界を題材とした作品が産み出されるこの世界では、人気が出るのにそう時間はかからなかった。

 

値段やゲーム機の大きさと言うネックがあるものの、収入源のある大人を中心に発売初日から飛ぶように売れ、その人気は海外まで届き、日本だけではなく全世界を繋ぐ巨大なネットワークとなった。

 

「来るわけ無いか。もう1年だもんな……」

 

この男もゲームプレイヤーの1人で、総数100人を越える大手ギルドに所属している。だがこの半年、ギルド内で自分以外のプレイヤーは見たことがない。動いている物と言えば、巨大な柱時計の振子とギルドの清掃をしているNPCくらいだろう。長らく誰とも関わっていないのだ。

 

(回り回ってきたギルドマスターの権限で消滅させるべきか……いや。でもここは皆で作り上げたギルド……きっとまたここに来てくれる!……筈…だ…けど)

 

総数100人を越える大手ギルドと言えども、ギルドメンバーでログインしている人は自分以外いない。初代ギルドマスター、つまり創設者を始め、ギルド創設当初のメンバーはほとんどが退会。最近では新規でゲームを始めた新人プレイヤーが入会したのだが、ギルドに顔を出すことはない。最近はログインすらしていないようだ。

 

そしてギルドマスターの権限は前ギルドマスターから譲渡されるか、権限所有者が退会したときにギルド所属時間順に回ってくる。それが巡り巡って、今はこの男が持っていると言うわけだ。

 

「オンバーロードに登場したアインズも、こんな気持ちだったのかな……本当、ふざけんなよ……!なんで簡単に、ここでの時間全部を…捨てられるんだよ……!!」

 

捻り出す様な声で嘆いた。分かっていたのだ。この空間が捨てられたことが、この世界での時間が捨てられたことが、全て理解していたのだ。だが、受け入れたくなかった。皆がこの世界での時間を忘れる筈が無いと、また戻ってきてくれると信じて待っていたのだ。しかし、その想いは全て無駄となった。

 

「そもそもアインズと俺じゃ立場が違うか。俺は回ってきただけで、あっちは受け継いだんだったか……ハハハ。自分で言って笑えてくるよ。比べるまでもない相手と比べて……」

 

『ギルドマスターの権限を使い、このギルドを消滅させます。勝手に決めてすいませんでした。せめてものお詫びとして、各々のプライベートボックスに200万クレジットを配布します。またゲームにログインすることがあったら、自由に使ってください。では、さようなら』

 

謝罪のメッセージと品、ギルドに置いている各々の私物を元ギルドメンバー全員に送る様に設定し、ギルド消滅の準備へと入った。因みにゲーム内通貨は1クレジット0.5円と、現実通貨の半分の価値がある。単純計算で1人に100万円送ったと言うことだ。それだけこの男がゲームを愛し、やり込め、メンバーの復帰を待っていたのだ。

 

ギルドを完全に消滅させますか?

→YES

NO

 

ここまでこれば迷うことはない。YESを押すだけだ。今までの自分の時間が消えるようで不快な思いがあるが、空になったギルドや汚れが溜まらないのに掃除をするNPCを見るのは耐えられない。腹を括り、YESのボタンを押す。するとギルドはステンドグラスの様な状態になって、砕け散った。何もない更地へと変り、かつては巨大なギルドが存在していたとは思わせない程に綺麗になってしまった。

 

西暦2023年9月13日。1つのギルドがゲームから消滅した。

 

特に珍しい事ではない。ギルドの消滅なんて日常茶飯事だ。プレイヤー同士の関係が悪くなったり、財政破綻したり、害悪プレイヤーに乗っ取られたり、消滅させる理由は様々あり、消滅させるタイミングも様々ある。

 

だが、ゲームで過ごしてきた時間が現実よりも密だったプレイヤーからしてみれば、思い出の場所とも言えるギルドの消滅を、日常茶飯事の一言では片付けられないのかもしれない。

 

「ハァ……クソが…!なんでだよ……!!何が現実と違うんだよ!なんで、現実じゃないからって、捨てられんだよ…!」

 

少なくともこの男に取っては、涙を流すことの出来事であったことに、間違いはない。




ゲームの題名と主人公の名前なににしようか……なんかあったら送ってください。
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