7年目 酉月朧日 無風
各地での戦いも大分有利に運べてきているがどうやら———が出張ってきたせいで幾つかの国が崩壊したという話しが騎空士のもっぱら噂になっている。噂じゃなくて事実なんだがな。
実際に俺はヤツラと何度か交戦しているがほぼ不死身の肉体と強靭な膂力、そして多大な魔力。厄介な要素があるが何よりも厄介なのがヤツラの眷属の判別がつきにくい事だ。まさか昨日までの味方が次の日敵の眷属になっているなんて誰が予想できるか。そのせいもあって銀の市場価値が噴火したかのように値上がりしているらしい。後は聖水も値段が上がって教会連中は大儲けしているらしい。まあ確かに、聖水を武器に塗れば楽に殺せるのもあるからな。
一応他の殺し方としては朝まで粘って拘束魔法で朝日の下で殺すか、夜でも何度か殺せばいずれ血が無くなり完全に殺すことは出来るが月の下で戦うのはかなりしんどい。正直言って時間がかかりすぎるので知り合いの武器屋に頼んでこの前仕留めたタナトスの刃を俺の剣に打ち直してもらえばいいか。
追記:剣の出来はかなり良かった。相変わらず手に馴染むものを打ってくれる。ヤツラも斬り捨てれば魂如斬られたためか簡単に殺すことが出来た。
まだ素材が残っていれば仲間の分も頼んでみるか。
7年目 戌月聖日 強風、落雷有り
———の国に乗り込んでみたが既に星晶獣によって殺され尽くされていたようだ。
どうやら星晶獣の能力はもう一人の自分自身と戦わせてその自分を傷つければ本人が傷つくというこれまた厄介な能力を持っていた。ああ、だから再生能力が高いアイツらが全滅したのか。まあトリックが分かれば問題ない。奴自身に戦闘能力は然程なかったため強行突破ですぐに仕留めた。俺が覚えているあの星晶獣の能力とはかなり違うが一体全体どうなっているんだ。まああの時から20年近く前の記憶だから大分忘れているだけかもしれないが悪く考えちゃいけない。先の事より今の事をなんとかしないといけないからな。
その後生き残りがいないか探してみたら一人だけ生きていた。まだ幼いため保護した。話しをしてみたところ自分は一族とは違う姿形で産まれたために幽閉されていたと言っていた。確かに今まで戦ってきた———とは違う特徴がいくつかあるが、俺の覚えているこの世界の———の姿だったがそこはいいか。行く当てがなさそうだったのもあってそのまま連れて行った。……反対されそうな気がするが適当に言いくるめればいいか。
後はこいつの種族を隠しといた方がいいな。あの種族はあまりにも敵を作りすぎた。もし種族がバレれば地獄すら生ぬるいような殺され方をされかねないしな。
追記:そういえば名前を聞いてなかったから名前を聞いたが、どうやら名前がないらしい。そしたら俺に名前を付けてほしいと言ってきたのでなんとなく出てきた名前を言ってみたらえらく気に入ったらしい。……都合の良い人物に付けられる名前の総称みたいなもんなんだが。……我ながらなんとも酷い名前を付けたものだ。
7年目 戌月冴日 微風
保護した旨を伝え種族は分からない、大方珍しい見た目だから連れて去られたのだろうと話した。が、———の爺様にはバレたようで別の場所で話した。ワケを話したら納得してくれて正直助かった。俺じゃあの爺様には勝てないからな。
その後、戻ったらどうやら境遇を可哀想と思ったのかかなり可愛がられているようだ。本人は少し、いや結構鬱陶しそうだが別に嫌がっているわけでもないしほっといていいや。
本人の希望により俺が市内を案内しているが、見るもの全てが初めてなためかあちこちフラフラとしてその度に俺にアレコレ聞いてくるから全然進まん。
昼飯を食おうと寄った酒場で知り合いの店主にお前子供でも誘拐したのかよと驚かれた。いや、流石に誘拐なんぞやらんぞ。星の民の子供でもそこで殺すぞ。
ニヤニヤしている奴らに生き残りだよと言ったらしんみりした顔になった。……まあ、そうなるか。どうやら菓子を貰ったらしく気に入ったようだ。
とりあえずなんとかその日中にある程度の案内は出来たから後の市内探索は本人次第だな。
7年目 亥月辛日 穏やかな風
戦いから帰ってくると私に戦いを教えてほしいと言ってきたがお前さん確か8歳くらいだろ……。もっと他におままごととか人形遊びとかやったらどうだと言って一回突っぱねたがどうやら他の奴らにも話したようで———が特に俺にうるさく教えてやれと突っかかってくる。じゃあお前が教えろよって言ったがあの女『その子を拾ったのはリーダーのアンタなんだからアンタが責任もって教えなさいよ』と珍しく正論言いやがった。俺は知っているぞ、アイツが懐いているのが俺だからかなり妬いていることを。そんな事を言ったら短剣振り回してこっちに襲い掛かりやがった!あっぶな、今かすりかけたぞ!それにヤバイ毒塗ってあんの知ってんだぞ!
暫くそれで追いかけっこしたが爺様が止めてくれなかったら危なかったぜ。
あいつが一番年上なのに落ち着きがないってどういう事だよ。魔族ってやつは皆あんなのなのか。
しっかしエローエの奴め、爆笑しているだけで全然止めようとしなかった。ムカついたからアイツの秘蔵の酒全部————と一緒に飲み干してやったぜ。
追記:後で爺様に聞いた話だがつい最近まで酒場の店主に料理を習っていたり、爺様に裁縫や自衛が出来る程度の訓練を受けていたらしい。なるほど、何かを教わってそれを知るのが楽しくなったのか。分かるぞ、俺もそんな時期があった。
7年目 亥月風日 良風
結局根負けして俺が教える事になったが、何から始めたらいいか分からないからとりあえず爺様に頼ってみた。
何が得意か見極めてからそこを重点に教えてやればいい、か。
なるほど流石だ。あの馬鹿二人と違って年長者としてちゃんと知識と経験に基づく事を話してくれるから本当に助かる。
とりあえず試しに何からやってみたいと聞いたら剣と言ったのでとりあえず木剣を渡してみたがどうやら俺の剣をご所望のようらしい。とりあえず持たせたがまあダメだわな。本人は落ち込んでいるが、俺の剣は特別性でそこらの剣よりも数倍重いから無理だ無理。
7年目 亥月仏日 良風
色々試させたが魔法とは相性が良さそうだ。本人の魔力量はとても高いようで知り合いの魔女に聞いたところかなり筋がいいらしい。
とりあえず市内に来てる魔法連盟の移動型図書館で本を借りて色々と教えていたがダメだな。アイツの理解力と成長が早すぎて俺が教えては効率が悪い。とりあえずダメ元で隣に座っているオズに頼んだらあの女が何か吹き込んだのか断られた。隣で目をキラキラさせてこっちを見るアイツのためにまた教えたがこりゃ一週間で俺が教えられることはなさそうだな。
追記:久々に大図書館の方に顔を出してみたが、どうやら友達が出来ていたようだ。誰かと思ったがドロシーだった。……お前かよ。馬鹿な事は教えんなよとは言っといたがまあダメだろうな。
8年目 酉月変日 追い風
戦争も大方終結に近づいてきた。3年前にカグヤとヨミを殺した後に出て来た月の民や、各地の厄介な種族が滅びたか何か別の理由で出現しなくなったから順調だ。だがまだ油断してはいけないな。ここ一番って時に死んだとしたら笑えない。
そういえばこの前————が9歳になったらしい。誕生日は分からなかったから俺に拾われたあの日を誕生日にしたらしいそうだ。……1年経つのが早いな、俺も年か?
魔法の勉強は順調なようで魔法連盟のトップ直々に教えられているらしい。成長速度が早いのもそうだが潜在的な魔力量がとても高いから後継者として育てようとしているらしい。本人は望んでいないようなため諦めたらしい。ま、本人が望むように行きたい道を歩めばいいさ。俺の前—の父さんが俺にそう言ったように最後に決めるのは本人なんだしな。
8年目 酉月終日 快風
ようやく戦争が終わった。これからは今までの仲間達の国を周りながら復興の手伝いをするか。……俺も一度故郷に帰って皆の墓に花を添えるか。
そういえば————はどうするか。まだ幼いがかなりしっかりしているし俺が保護者として連れて行く必要はないな。この前も日記に書いていたようだがアイツが望む道を進めばいい。一人で冒険するのもいいし、魔法連盟に所属して魔法の深淵を解き明かすのもいい。さて、これを書いたらあいつらに国を周る旨を伝えるか。
8年目 酉月代日 祝風
どうやらサプライズがあるらしい。
まあ予想出来ていたが————が仲間として俺達の旅に加わるようだ。どうやら俺の反応が薄いのが気に入らないのかポカポカ殴ってきた。———も加わってきて流石に鬱陶しくなったしデコピンしたら二人そろって悶絶したのをザマァと煽ったら襲ってきたのですぐに全速力で逃げた。しばらく機嫌が悪かったので菓子を口の中に詰め込んだら一応機嫌は直してくれた。まだ子供だから単純だなぁ。
追記:魔法の腕はそこらの大人にも負けないくらいの腕はあるが、実戦経験が足りなさすぎる。例え経験があっても流石に戦闘はさせるわけにはいかないな。ま、最初は騎空艇の基礎的な事を教えて料理の手伝いでもさせればいいか。
1話の戦闘用ゴーレムの数を9体から8体に変更
日記形式思ってたよりも書きやすかったです