Eltoria Trilogy Side A&K 作:宮永 悠也
作者の宮永悠也でございます♪
今回は、この章のもうひとりの主役、アミタのお話です♪
前回のキリエのお話とは、また別の方向から切り込んだような内容となっています♪
では、本編をどうぞ♪
【エルトリア西地区】
アミタ「大きな地盤の
見渡す限りの荒野…。
けれど、平地とは程遠く、地面が所々隆起しているのが見えます。
土壌調査用の小型計測器を地面へと置き、周辺の土壌状況を調べます。
アミタ「不純物濃度87%…。他の地区より高いですね…。地盤の弛みはあるものの、《彼等》の痕跡は見えません…。」
《彼等》…。
この荒廃したエルトリアに適応してしまったが故に、今では星の汚染を誘発・拡大させている現地生物達。
異常進化の末、攻撃性や凶暴性に特化したり、他の無害な生物を捕食し過ぎたり、共食い等を誘発したせいで、土壌汚染や星の生態系を崩すことに大きく関わっている。
彼等は地面に潜って移動する習性の者もいます。その為
、今ここでは痕跡が特には見受けられませんが、可能性がないわけではないでしょう。
アミタ「地面の隆起の状態を見るに、観測された時からそれほど時間が経ってないように見えます…。食べ物や水を探しているのですね…。」
彼等も、異常進化し、凶暴化していたとしても、元々はこの星の仲間です…。
駆除という形でその命を
それも最早綺麗事で、《星を救う為の仕方なき事》と、救済だなんて口が裂けても言えないのかもしれません…。
空腹に苦しみ食べ物を探したり、喉の渇きを潤すために水を求めたり…。
私達だって当たり前にするようなことを、《生きる》ということを、私は彼等から何度も奪ってきました…。
彼等にとって、私は大罪人のように映ってしまうでしょうね…。
アミタ「ごめんなさい……。」
だから私は…、ひとりで彼等に刃を向け続けて……。
その責任を、私だけが背負っていっても構わないとさえ思っていました…。
だから私は………。
アミタ「………いえ、違いますね…。これは、ただの私のワガママでしかありません…。」
責任ですとか、罪であるとか、そういう理由で遠ざけていた訳ではありません…。
危険な目に遭わせたくないから…、ただ命を奪うだけの姉の姿を見て欲しくなかったから…。
でも、キリエを…、妹を遠ざけていた本当の理由は………。
アミタ「ん……。」
[ピピピ……!ピピピ……!]
アミタ「え?あ……。」
考え込んでいた私を現実に呼び戻すかのように、通信の呼び出し音が耳に響きます。
顔を横にふるふると振って、眉間に寄っていたであろうシワを元に戻し、不自然に映らないよう、声も自然なトーンで通信に答えます。
[ピッ……!]
アミタ「はい!アミタです!」
着信に応答すると、映像には大きく母さんの顔が映りました。
母さんのニコニコとした顔を見るに、特に緊急の用という訳ではなさそうです。
エレノア「エレノアです♪調査の方は順調ですか?アミタ♪」
アミタ「あ、はい!地盤の緩みや土壌環境自体は確認出来たのですが、対象との接触はありませんでした…。」
エレノア「そう、ですか…。けど、母さんとしては、嬉しいお知らせですよ♪
アミタ「はい…♪ありがとう、母さん…♪」
優しい言葉に機械的に作っていた顔が、ほんとに
そんな顔を見て、さらに優しくニコッと微笑む母さん。
父さんの事で、あまり見せなくなっていた母さんの笑顔を、最近よく見られるようになったのは、とても大切で素晴らしいことだと感じます…♪
エレノア「ん♪細かい調査が必要ならそのまま続けてもいいんですが、特別無ければ1度研究所に戻って来ても大丈夫ですよ?夕飯前なので少しだけですが、おやつも用意してあります♪ユーリも先程、ディアーチェ達と食べる為に出掛けましたから♪」
アミタ「そうなんですね♪分かりました♪では1度戻って休憩したいと思います♪そういえば、急いで飛び出したので、携帯食も持ってきていませんでした!」
エレノア「ふふ♪」
アミタ「
エレノア「そうですね♪
あ…。キリエから何か連絡はありましたか?」
アミタ「え……?」
先程まで考えていたキリエのことについて母さんの方から話が振られ思わず動揺してしまい、訊き返してしまいました。
エレノア「先に調査に出ていたハズのキリエから、まだ連絡がないんです。ひょっとしたらと思って…。」
アミタ「すいません。私の方にもキリエからの連絡は来ていませんね…。」
キリエへの心配もありましたが、それより何より、複雑な感情が表情に出ないことを気にしていた私は、単調に答えるしか出来ませんでした。
キリエへの自分の後ろめたい感情を問いただされているかのように、緊張感がじわじわと背中に伝わっていたからです。
エレノア「大丈夫でしょうか…?キリエにもこちらで連絡しておいた方が良いでしょうか?」
アミタ「あ、いえ!えっ…と、キリエも調査に思ったより熱が入っているのかもしれません…♪最近、土壌調査や水質調査で忙しくて部屋に籠っていたりしていましたから…♪」
エレノア「そう、ですね…♪それならメールを送るだけにしておきます♪メールなら調査の邪魔をしなくて済みますし♪」
アミタ「はい♪そうですね…♪それが良いと思います♪」
エレノア「アミタも、気をつけて帰ってきて下さいね♪」
アミタ「はい…♪母さん…♪」
エレノア「ん♪」
最後も、母さんは優しく微笑んで、通信が切れる。
母さんの優しい笑顔が目に霞んで残ったまま、キリエの事を想う…。
本当は…、キリエにも声を掛けてあげたかった…。
調査の邪魔になってはいけないとか、そういう理由だけで声を掛けなかったのではなく、《私が声を掛けるのが怖かったから》だと思います…。
母さんが連絡を取ってくれると言ってくれたことに、内心ホッとしました…。
けれど、そう思ってしまった事に罪悪感が拭えなくて、母さんの提案を無下にしてしまったんです…。
私から…、お姉ちゃんである私から声を掛けるべきなのに、そうするとも言えずに、どちらともいえない弱い私を強く自覚しています…。
キリエなら大丈夫…、そんな今では言い訳にしかならない言葉が頭に浮かんで、私を無理矢理納得させようとしている…。
これでは駄目だと分かってはいるのですが…、どうしても思うように整理がつかないでいるんです…。
声を掛けて、またキリエに離されるのが、今では怖くてたまらない…。
あの日のことが酷く鮮明に思い出されて、キリエのあの顔をまた見るのではないかと怯えている自分がいる…。
ここへ戻ってこれて、キリエも歩み寄ろうとしてくれているのがよく分かる…。
その必死さも、努力も、私は分かっているつもりなのかもしれません……。
そう思ってしまうほどに、私は鈍くて思い違いをしてしまうことが沢山あって…、今ではそれがあの日に繋がる事を恐れている…。
けれど…、それでも私の心は疼いてしまって、何も言わないで待つことが出来なくて…。
だからついつい歩み寄ってしまう。
これは、キリエが一番嫌っていた子供扱いそのものなのに…。
子供扱いよりひどい、最早見下しにすら見えてしまう私のこれは……。
どうすれば消えてなくなってくれるんでしょう…?
ご愛読ありがとうございます♪
今回は前回との対比を気にしながら書いた、キリエのお姉さん、アミタのお話でした♪
えーっとですね。
対比を気にしながら書いたと述べているのには理由がありまして…。
実は、今回のアミタのお話と前回のキリエのお話は、完全なる対比としては描いていないのです( ̄▽ ̄;)
どういうことだ?となると思いますのでご説明を!
今回のアミタの話は、前回のキリエの話とは、対比にならないように書いたということなんです。
想いが交錯するという描写ではなく、想いがそれぞれ別の方向に向いているという書き方がしたかったんです。
その意味は、最後の方の解説というかあとがきで書かせて頂くのですが、決まったコンセプトの元、敢えてそうさせて頂いているという感じですね( ̄▽ ̄;)
難しいことはやらない方がいいんですが、変なこだわりを持ってやってしまうのが悪い癖のようで( ̄▽ ̄;)
アミタはキリエの気持ち、キリエはアミタの気持ちを理解しているという共通描写にしつつ、想っているお互いの隔たりや確執は別物という風にしています。
ここで深く説明出来ないのにも関わらず、こんな話を切り出してしまった作者をお許しください( ;∀;)
実は、次の話のコンセプトに一番悩んでいて、納得のいく作品に仕上げるまで時間がかかってしまうかもしれませんが末長く応援して頂けると幸いです( ;∀;)
頑張って早めにコンセプトを決めて書けることを自分でも願います( ;∀;)
それではまた次話でお会いしましょう♪
ありがとうございました♪