彼を笑顔にするために、私は何度も繰り返す。 
たとえ、それが間違いでも

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貴方の顔を笑顔に

人生というのものは何が起こるか分からないなんて良く言う。だって、誰も未来が分かる人なんて居ないんだから当然と言えば、当然。けど、その時その時が幸せだったら良いんじゃないかな?って私は思ってる。

 

けど、実際その時その時をずっと幸せに感じれる人って言うのは少ないんじゃないかな?私は今、幸せだ。トラックにひかれたけど彼が私を胸に抱いてくれている。多分、もう死ぬけど最後に私を想っている彼を見れただけでも幸せなのだ。 

 

けど、彼は幸せなんだろうか。彼は泣いている。さっきまでデートで見せてくれていた笑顔はどこにもなく、私がこうなってしまった現実をただ悲しんでいるだけだ。

 

ああ、せめてあの顔がいつもの笑顔だったなら……私は何も残すことなく幸せに死ねたんだろうに……。

 

彼のあの顔を笑顔にしたい。彼を幸せにしたい。けど、もう意識も薄れて、体も動かせない私は彼に何も出来ない。一日だけ……あと一日だけやり直せれば……彼の顔を笑顔にして、私は幸せに死ねるのに……。

 

神でも、悪魔でも、科学者でもいい……誰か私の願いを聞いてください……。

 

そして、私は意識を失った。

 


 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音が聞こえ目が覚める。もしかして私は生き残ったのだろうか……そう思いながら機械音のしたスマホを見る。

 

「あれっ、この日付ってデートの日じゃあ……?」

 

日付は私がトラックに引かれた日の日になっており、違和感を覚える。いや、そもそもトラックに引かれたというのに、目覚めたのは病院ではなく自分の家。これもおかしい。

 

後遺症などを気にして、布団から立ち上がり少し運動してみるがまるで何もなかったのかのように体は普通に動く。頭を触っても、針で縫ってるように感じるところはない。

 

ピロンッ!

 

スマホが突然鳴る。少し驚いていたけど、メールの音だったから彼氏が心配してくれているかもしれないと思い、スマホを手に取り、通知の所をタップする……メールの送り主は彼だ。

 

ああ、私の予想通りかな……そう思いメールの内容を見ると、思考が一旦停止した。彼から来たメール、それは「今日のデート楽しみだな」というメール……私は知っている。このメールの内容を知っている。

 

だって、昨日のデートの日の朝に送られたメールだからだ……もしかして。一つの考えに至った私はすぐにスマホのニュースの欄を見る。

 

「やっぱり……!」

 

そこにあったのは昨日のニュースが、今日初めて報じられたかのように載っていた。それで私は確信した……昨日に時間が戻っていると。神か、悪魔か、科学者かどうかは知らないがどうやら、私の願いを叶えてくれたらしい。

 

その叶えてくれたナニかには感謝しかない……直接会ってありがとうと言えないのは残念だけど、せっかく得られたチャンス、しっかりと利用させてもらうことにしよう。昨日は、あの道を歩いていたからトラックに引かれた……別の道に行くように誘導すれば解決ね。そう思うと、少しテンションが高くなった。

 

 

 

 

 

「面白かったね、あの映画」

「ああ、最後のオチは最高だったな」

 

デートする場所を、水族館から映画館に変えた。戻る前は海豹が見たくて、水族館に行ったけど、もう海豹は見たからデート変更したことに未練はない。むしろこれだけで、死を回避できるなら儲けものだ。

 

「……手、繋ぐか?」

「うん!」

 

ああ、なんて私は幸せなん──

 

「おい!あんたら危ない!」

 

えっ?……上を見ると、私の頭に看板が落ちてきていた。

 


 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音を聞きながら目を覚ます。スマホを見ると日付はデートの日だった……失敗だ。けど、またこうやって日が時が戻っているなら何度でもやり直せるということではないだろうか。

 

ならば、何度でもやり直すしかない。私が幸せを獲得するために。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音で目が覚める。スマホの音を止め、次のデートの道を考える。まだ、三度目だ。三度目の正直という言葉もある。この日が勝負とも言えるはずだ……きっと。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音で察する。だが、諦めない。幸せをどんな困難も乗り越えずに手に入れられるはずがない。私は、私の幸せを手に入れるために頑張るのみだ。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

既に聞き飽きた機械音で目を覚ます。今回もだめだった。けど、次がある。可能性はゼロではない……諦めない心こそ一番大事なのだ。

 

 

 

 

 


 

ピッピビ ピッピビ──

 

私は、一番最初に意識を失う前、何を思っていた?彼の顔が笑顔だったらと、時を巻き戻してほしいと願ったはずだ。それなのに、何故これまでの私は何度も生き残ろうとする?

 

何度も死ぬのは当たり前だ……それは願いの範疇には入っていないからだ。考えを改めろ私……死から逃げる方法ではなく、私が死ぬ瞬間に彼を笑顔にする方法を考えるべきだ。

 

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

彼との最初の出会いを思い出せない。それどころか、ところどころ記憶がかけているようにも、感じる。まるで、そこの部分だけをくりぬかれたみたいにまったく思い出せない。

 

まさか、時戻しの代償とでも言うのだろうか……更に彼との記憶を忘れなければならない?そんなの……そんなの……。

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

デートの場所は最初の水族館に戻そう。久しぶりに海豹を見たくなった。

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。

 

彼との思い出。彼の温もり。彼がくれた言葉。私が彼の物ということ。私と彼が二人で一人だったこと。

 

忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

今日はいつまで続く?私はいつまで繰り返す?彼はいつ笑ってくれる?私はどこまで記憶を無くす?私はどうしたらいいの?どうすれば笑ってくれるの?

 

答えてよ、答えがないのに丸つけなんかできないよ……問題を解けてないから、丸つけをする資格すらないんだけどね。あっはっはっ……。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

諦めよう。彼を笑顔にしなくたって、死ぬときに彼の顔を見なければ充分……さあ、今日で終わらそう、私のエゴを。

 

 

 

 

 

「海の生き物って不思議な生き物が多いんだな」

「そうだね、凄かったよ」

 

今日で最後のデートだ……もう、そうしなければならない。無理な物は無理だった。それだけに過ぎない。

 

「疲れてるように見えるけど大丈夫か?」

「ううん、へーき、へーき!」

「そうか……手を繋ぐか?」

「いや、このままがいいかな」

「……分かった」

 

ごめんね、手を繋いでたら巻き込むかもしれないから……腕時計をみる。そろそろトラックが……来た。いつも通り、私たちに突っ込んできている!

 

「危ないっ!」

 

横にいた彼を突飛ばし、安全な場所へと運ぶ。そして、私はそのままトラックに巻き込まれ吹き飛ばされる。

 

彼とはかなり離れた場所に着地してしまった……けど、これでいいんだ。これで……私は意識を失った。

 

 

 

 

 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音で目が覚める。そこはきっと病院だった。周りを見る、彼がいた。彼は起き上がった私を見ると、すぐさま抱きついてきた。

 

「よかった……本当によかった……」

 


 

ピッピビ ピッピビ──

 

機械音が聞こえ目が覚める。ベッドから立ち上がり、今日の準備をする。

 

 

何回目かなんてもう、分からない。

 

 

けど、彼は泣いていた。


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