嘘は人を殺し人を助ける   作:出雲愚者

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第一話 終わりを告げる日常(上)

 

 ――――少女は暗闇の中にいた。

 

 姿は黒くて肩に掛かる髪をサイドポニーで結んでいる。姿は中学生辺りだろうか? 顔が幼いので見た目よりも若い印象を受ける可愛い顔立ち。モデル顔負けの顔した少女は暗い部屋の一室の端っこにあるベットで上向けで横になりながら蓄光ランプの目覚まし時計を持っている。

 

 今にも眠そうなその子はランプの灯りを見ながら今か今かとある時を待ち侘びていた。針はもうそろそろで十二時を指そうとしてる。

 

 「……終わるよ」

 

 少女の呟きは闇に飲まれ霧散していくように消えてしまったが、少女はどうでもいいと言いたげな顔をしていた。それよりも少女は一心に眠気を堪えてランプの針を見ていた。

 

 「最後なんだから、しっかりやってくれよ。目覚まし君……」

 

 何度も繰り返す朝を、思えばコイツに起こされていたな、と少女は感慨に耽っていた。起きることではなく、眠りに着くために目覚ましを使おうとしているのだ。眠るといってもただの眠りではないことはその子の目を見ればわかるだろう。

 

 「こんな事思いつくなんて、世界広しと言えど私しかいないよね」

 

 ふふ――――。

 

 少女は暗闇の中でほくそ笑む。目覚ましから灯る緑色の光が、少女の目を怪しく躍らせていた。その色はとてつもなく不気味で死神かと間違えるほど紅い目だった。

 

 (――――もちろん、ヒントはあったのだけれど)

 

 そう思いベットの横の机に目を向けるとあるはずのものが無くなっていることに気づいた。

 

 「あれ……おかしいな……?」

 

 そうさっきまであったヒントが忽然と姿を消していた。だが、少女は

 

 (まぁ……もうどうだっていい、そんなの)

 

 少女にとって、ヒントはもう、使い捨ての道具以外の何物でもでもないのだ。この先、少女が使うことは一度としてないのだから。

 

 「どうせ私は……もうすぐ死ぬのだから」

 

 

 ―――回想―――

 

 

 

 少女は自殺する気だった。だから、最初は睡眠薬を探して死ねるかどうかを検証した。

 

 そして、診療内科をはしごしてこっそり貯めたそれは少女に重い頭痛しかプレゼントしなかった。睡眠薬に人を殺すだけの効力がないことに気付いたのはその時だった。

 

 一昔前に比べて薬はしっかりと、自殺志願者達を嘲笑うかのように安全になっていたのだった。因みに昔の薬が処分されていたのは言うまでもないだろう。

 

 その後、少女は死ぬことについて少し、真剣に考え始めた。図書館に通い詰めて数日後、分かったことは、死ぬには3万錠も必要という途方もない結果だった。

 

 全部を飲みきる前に少女の胃袋は無事では済まない。

 

 (―――その前に、胃袋が破裂しちゃうわね―――)

 

 その結果に少女は肩をがっくり落とし、薬物辞典に目を向けた。薬物辞典ではいくつかの薬なら、10錠やそこらで十分役目を果たせると書いてあったが、学生の伝で手に入ることは難しそうだった。

 

 眠るように、綺麗に消え去りたい。それが唯一つの少女の望み。それはつまり、綺麗に死にたいということを明暗に示しているのだろう。

 

 

 

 

 

 ―――回想終わり―――

 

 ベッドの横にあるコンセントは少し細工がされて、そこからニクロム線が目覚まし時計と彼女の方に延びていた。

 

 糊の利いた制服を、少し捲ってみる。何重にも巻きつけられたそれは黄色く輝き、咲き誇たヒマワリの丘を想起させた。

 

 「これで……準備…完……了」

 

 少女はそう呟くと眠たい頭を振り絞って確認した。身体は洗ったし、制服にも着替えた。遺書は……用意してない。心のどこかではまだ死にたくないと思っているのだろう。しかし、もう遅い……。過剰摂取した睡眠薬の所為で頭は鉛が詰まっているかのように重かった。

 

 (この…状態じゃ、遺書なんて……書けないわよね? けど、大丈夫。時間が来れば、全てが終わる……眠ったままで、全てが終わるんだ……)

 

 意識はとても薄かった。壊れた人形のように重い体を横たえ、少女はゆっくりと―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――瞼を閉じた。




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