新たな星が誕生するまでのお話

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この小説には以下の要素が含まれています!
・星のカービィ スターアライズのネタバレ
・ニル=カービィ説

ほんとうに見ますか?






















どうしても見たいのですね?




















こうかいしませんね?





















STAR ARISE

憎い、憎い、憎い。

なぜ我らを裏切ったのか。なぜ我らがこんな仕打ちを受けねばならないのか。

この嘆き、この絶望、この怒り、この怨嗟、教えてやらねば気がすまぬ。

奴らを許すな。我らを貶めておきながらのうのうと生きながらえている者たちを地獄に叩きつけろ。

我らを欺き、なかったものとした業。

誰も裁かぬというならば、我が裁こう。

貴様らがしでかした過ちを、身に降りかかる怨嗟をもって知るがいい。

 

彼の名はエンデ・ニル。

呼び覚ました者に染まり、慈悲を与える神と呼ばれる彼は今、どこからともなく捧げられる邪悪な心により、終焉をもたらす破神として目覚めようとしていた。

 

破神の前に立ちふさがるのは、4人の勇者たち。

巨大な怪物を倒したのもつかの間、

ずり落ちたハート形の仮面から覗かせた空洞に吸い込まれてしまった勇者たちがその中で見たものは、

闇のエネルギーで作られた、ドクドクと脈打つ赤い球体と、生贄として捧げられたかつての敵たちだった。

 

この禍々しくグロテスクな、心臓を思わせる物質こそが、

エンデ・ニルの正体である。

終わりなき悲しみと絶望は血の涙となり、

憎悪と執念は黒い呪詛となり、

絶えず赤い球体から撒き散らされている。

絶望と恐怖が、そのまま形を得て飛び出したかのような光景である。

 

こんなものが自分たちの住む星にたどり着けば、大惨事になることは想像に難くない。

このおぞましい負の感情の塊を止めなければならないと、勇者たちが決意したその時、ひとりでに呪詛を呟くばかりだった赤い球体が突然うごめき出した。

破神は、目の前に現れた勇者たちに何を感じたのか。

外殻を倒し、中に入ってきた侵入者に警戒しているのか、

敵意を感じ、全てを破壊する者が、逆に破壊されるなどあってはならないと考えたのか、

ただ死にたくないと思っただけなのか。

もしかしたら本人にもわかっていないのかもしれない。

ただ一つ確かな事は、彼は自分の中で生まれつつある心ではじめて思ったのだ。

目の前のてきを、めっせねばと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい戦いの末、破神は、倒された。

この銀河のすべてを救いたいという人々の思いが生み出した、無限大の力に敗れたのだ。

友もなく、闇の物質として生まれた破神には、あの眩しくもあたたかい光は、猛毒でしかなかったのである。

 

しかし、破神は完全に消滅したわけではなかった。

そして、破神を復活させようとする者もまた、諦めてはいなかった。

 

何度叩きのめされても、暗黒面に落ちようとも、

一心不乱に祈りを捧げる者の手によって、破神は再び蘇ることになる。

 

しかし…

 

以前、破神を復活させた際に器とした、

「ジャマハート」と呼ばれる邪悪な心を集めて形にしたものは、破神の爆発と共に宇宙の塵と化してしまった。

 

もはや、神の復活に材料を選んでいる余裕などなかったのだ。狂信者は希望も絶望も見境なく、あらゆる心を捧げた。

 

かくして破神は、夢も、闇も、魂も、心も、

全てがぐちゃぐちゃに混ざりあった、

まさに「魂沌」と呼ぶべき存在として蘇った。

 

そしてニルは、他でもない再び自らと相対している勇者たちによって、その有り様を変化させつつある。

長い長い時間銀河をさまよい続けた彼の中から今、

何かが生まれようとしている…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが以前を上回る、究極を超えた戦いの末、

ニルは再び勇者によって倒された。

しかし、誰が勝ったかなど、重要なことではないのだ。

もとより勇者たちはニルを滅ぼすために戦っていたわけではなかった。

それは、破壊し、蹂躙し、孤独なまま、悲劇と嘆きをいたずらに撒き散らすことしかできない、ニルを救うための戦いだった。

彼らが見つけた、お伽話か、夢物語かもわからない、

ニルと古の勇者たちの伝説を描いた書には、

「集うエネルギー次第で、ニルは様々な存在になりうるかもしれない。」と記されていた。

勇者たちは、ニルが自分の姿を真似しようとしていたのを思い出し、自分たちの愛ときずなの心を注ぎ込めば、

邪悪な心を取り去れるかも知れないと考え、

その可能性に賭けたのだ。

 

狂信者により捧げられた闇の心、勇者たちによって伝えられた光の心。

戦いを終え、混沌と可能性の全てが集ったニルは、

淵源の祖となり、新たなる命へと生誕した。

彼は、破神としての役目を終え、

ゆっくりと次の時代へと進みはじめたのだ。

 

今まで感じたことのなかった、希望と夢が身体中に満ちていくのを感じながら、ニルは、はじめて勇者たちを見た時に、彼らに対して感じた「何か」の正体をようやく知った。

 

それは羨望だった。それは憧憬だった。

 

たくさんの仲間に囲まれて羨ましい。

自分も彼らと同じように友だちがほしい。

孤独の中で、自身を浸す絶望と狂気を這いずっていた彼は、眩く光るような心を持った勇者たちを見て、彼らを羨んだのだ。

そして破神だったニルは、勇者たちの中から一人、ずんぐりとした体型の、ピンクの若者の姿を真似て、友だちを作ろうとしたのだ。

しかし、闇の物質である彼が友だちを作るために行ったのは、洗脳して、意のままに操ることだった。

これでは上手くいくはずもない。

実際勇者たちは、操られた仲間の洗脳を解いたり、

ぶちのめしてから叩き起こしたりして、正気に戻していた。

体の自由を奪い、無理やり従わせることのどこが友だちか。

圧倒的な力を持っていながらも、

結局は生まれたばかりの赤子でしかなかったニルは、

そんな当たり前のことにすら気付けていなかったのだ。

 

 

 

でも、今度は大丈夫。

 

 

 

思いやりと、心と、きずなを知った今なら、

彼もちゃんと友だちを作ることができるだろう。

つぎは、じゆうにとぶことも、ゴハンをたべることも、

おひるねをすることだってできる。

ニルは輝かしい未来に思いを馳せ、笑顔を浮かべた。

そして、溢れ出る星と光に視界は次第に真っ白になっていき…

 

そして、何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が遠くなるほどの間、彼は長い長い夢を見続けていた。

友と食べ物に囲まれた、幸せな夢。

見たこともない地を進んでいく、心踊る夢。

ライバルたちとしのぎを削る熱い夢。

時には事件が起きたりもするけれど、

夢に出てくる人はみんな笑顔で、

憎悪や嫉妬と言った負の感情ばかりを吸収していた彼にとっては新鮮な光景ばかりであった。

見える。多くの人と出会い、別れ、築かれていく繋がりが、次元を、銀河を、宇宙を超えて、無限に広がっていく。

繋がりはやがて力になり、数々の奇跡が生まれていく。

ああ、その光景は、なんて素晴らしい………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたとき、彼は見知らぬ場所にいた。

ここはどこだろう?自分は何をしていたんだっけ?

周囲を見回しても、見覚えのない景色ばかり。

知らない場所でひとりぼっち。小さい子供なら、

不安で泣き出してしまいそうな状況である。

でも、彼は前向きだった。その事を悲しんだりしなかった。

…そういう悩むということを知らないだけなのかも知れないが。

目覚めた彼にはやりたいことがあった。

それは、ずっと見続けていた、あの夢に出てくる、

はるかぜのふく場所に行って、夢に出てきた友だちに会いにいくことだ。

彼は純粋で真っ直ぐだった。夢の中の出来事が現実では起きないなんて考えてもいなかったし、あの光景が夢まぼろしの類では無いと、彼は信じて疑わなかった。

 

みんなにもう一度あって、今度こそ友だちになるんだ。

 

夢見た地(ドリームランド)を目指して、

彼は旅人となり、はるかぜとともにその一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異空を駆け、銀河を渡り、星々を巡る旅の途中で、

彼は様々なものを見て、感じて、体験した。

空気を吸い込んでぷかぷかと空を飛ぶ術を身につけたり、

はじめて食べた、Mと書かれたトマトの味に感動のあまりしばらく動けなくなったり、

毛虫という生きものを見た時に生まれて初めて嫌悪感というものを感じたりした。

やきいもを食べたら、しゃっくりが止まらなくなったり、

カレーライスを食べた時は、そのあまりの辛さに口から火を吹いてしまったこともあった。

腕力を競う大会に参加した時は、危うく星を真っ二つにしかけたこともあったし、

星に迫る隕石を、バット一本で跳ね返したこともあった。

時には喧嘩になったり、トラブルを起こしてしまったこともあったけれど、

彼は、自分に唯一残された、「染まる力」を使って、

みんなのために頑張ったり、時には悪いやつをぶっとばしたりした。

旅の途中で体験した出会いと別れは思い出となって、

彼の心にキラキラとした星のように輝いていき、

それはやがて夜空を埋め尽くして、煌めく星空へと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はもう、ニル(虚無)ではなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が遠くなるくらい長い長い旅の末、

もはや自分が何のために旅をしていたのかも忘れてしまっていた頃、彼はとある小さな星の、そのまた小さな国にたどり着きました。

普段はあきれかえるほど平和なはずのその国、「プププランド」では、どうやら今、大事件が起きているようです。

慌てふためく住人に話を聞くと、昨晩、丘の向こうのデデデ山(マウントデデデ)から、くいしんぼうで有名なデデデ大王とその手下がやってきて、国中のすべての食べ物をかっぱらってしまったそうなのです!

人一倍くいしんぼうな彼は、食べ物がなくてお腹がすくことがどれほど辛いことなのか、痛いほどよくわかります。

同じくいしんぼうとして、デデデ大王の悪事を見逃すわけにはいきません。

みんなの食べ物をぼくが取り戻し、みんなおなかいっぱいごはんを食べられるようにしてあげようと、彼はひとり立ち上がることを決意しました。

 

「ありがとう、親切な旅の人!ぼくワドルディ、君の名前はなんていうの?」

 

いつまでも旅の人呼ばわりでは失礼だろうと思って出た質問ですが、聞かれた彼はきょとんとしてしまいました。

名付け親がいなかったのもありますが、なんと彼は今まで一度も自分の名前を意識したことがなかったのです。

でも、彼がなんと名乗ろうか答えに詰まることはありませんでした。

 

…カービィ。ぼく、カービィ!

 

不思議と頭の中から出てきた名前を名乗り、

彼はデデデ山(マウントデデデ)を目指して旅に出ました。

 

はるかぜとともに現れたゆうかんな若者。

その名は「カービィ」。

プププランドのみんなのおなかを満たすため、

それいけカービィ、がんばれカービィ!!




星誕ニルのスペシャルメッセージにある、「ずっとむかしみた、あのゆめもみるのかもしれない。そう…ともとであう、あのゆめを!」という記述と、アルティメットチョイスの魂辛EXをクリアしたら初代顔のカービィが解放されるのを見て、
もしニルの正体が過去のカービィで、星のカービィ自体がループものでしたって設定だったら面白くね!?!?と頭の中にスパークが突き抜けたことが、この小説をかいたきっかけです。

どちらかというと設定としての正しさよりも、こうだったら面白いな!!というエモさを追求したものであることをご理解ください。
ループものだった場合、ニルの星誕を見届けたカービィはカービィで、その後も新たな冒険が待っているので、一回転する感じのループになるのかなぁとか、伝説に綴られている四人の勇者というのも、実はカービィ達であるってことにしたいけど、それだとニルを心の槍で封じたって設定と齟齬が出るなぁとか、色々妄想しています。

ちょっとでもわたしが感じたエモさを形にして、一人でも多くの人に共感していただけたなら嬉しいです。
ここまで見たあんたはエライ。


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