・本当はそれぞれ別のツイートでしたが一纏めのお話に
・おつうは受け
「だめっ、やめ……」
薄闇の満ちる部屋の中、どこか切ない拒絶の声が紡がれる。
声の主は人魚姫。そしてそんな声を上げさせている元凶は他ならぬおつう自身であった。何故ならおつうは人魚姫をベッドに押し倒し、その美しい瞳を覗きこみながら頬と真っ白な太股を優しく撫でているのだから。
「やめませんよ、姫。ほら、口では拒もうと貴女の身体はとても正直に喜んでいるのですから」
「やっ……! は、恥ずかしいよぉ……」
太股に這わせた手を更に上の方へと撫で擦りながら動かすと、人魚姫は身悶えしながら瞳に涙を溜めていく。
しかしそこに嫌悪や屈辱などは微塵も感じられない。あるのはただ未知の感覚に対する微かな怯えと恥じらいだけ。それがまた何とも狂おしいほどに愛らしい。
「ふふっ。頬を染めて涙目で見上げてくる姿はとてもいじらしいですよ、姫。あまりにも魅力的で――つい苛めたくなってしまいます」
「あっ……! そ、そこは……!」
ニヤリと笑い、おつうは太股を撫でていた指先を更に深い所へと滑り込ませた。
途端に焦りを見せて抵抗を試みてくる人魚姫だが、それも優しく包み込んで止めさせる。初めては王子様がリードしてあげるべきなのだから。
「ふふっ。今宵は僕が夢の世界へお連れしますよ、姫。さあ、安心して身を任せてください……」
「やっ、あぁっ! ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
弱々しい抵抗に余計に愛しさを煽られつつ、王子様はお姫様をしっかりとエスコートしてあげた。暗い部屋の中で二人きりで踊る、愛しあう者同士の夜の触れ合いという曲名のとても官能的なダンスを。
「――ちゃん。おつうちゃん!」
「ふふっ、姫は本当に可愛らしい……って、あれ……?」
ふと気が付いた時、おつうは自分がベッドに横になっていることに気が付いた。
何だかぼやけた視界が気になって目を擦りながら身体を起してみるも、身体のどこにも官能的なダンスの置き土産は残っていない。黎明の制服どころか寝るときのパジャマ姿である。
「おはよう、おつうちゃん。何だかとっても楽しそうな夢を見てたみたいだね?」
そして傍らに立つ黎明の制服姿の人魚姫は完全にいつも通りの調子。熱く激しいダンスを楽しませてあげた様子などカケラも見えない。つまりベッドの上で狂おしいほど求めあった夜は――
「ゆ、夢、だったのか……はあっ……」
どうやらただの夢だったらしい。そんな夢を見てしまったことが恥ずかしく、また現実でなかったことが非常に残念で、おつうはついつい肩を落して深い溜息を零してしまった。
「それで? おつうちゃんは一体どんな夢を見てたのかな?」
「えっ!? いや、それは、その……」
そこまで深く落ち込んだ様子を見せたことが仇になったのか、興味津々といった笑顔の人魚姫が瞳を覗きこんでくる。
当然素直に答えられるわけが無いので口ごもるおつうであった。まさか貴女をベッドに押し倒して切なく甘い声を上げさせた、などと言えるわけもない。
「寝言で色々言ってたからどんな夢かは何となく想像が付くけど、できればおつうちゃんの口からちゃんと聞かせて欲しいな?」
(なっ!? ぼ、僕は一体何を口走っていたんだ!?)
だがどうもおつうは夢の内容を寝言で零していたらしい。それがおつうに自白させるための嘘でないことは、人魚姫の若干恥じらいに染まった頬を見れば明らかだった。
「い、一体何のことかな、姫? 僕はただ姫と楽しいデートをしている夢を見ていただけだよ。あはははっ!」
とはいえバレていたって正直に話すことなどできるわけもない。
なのでおつうは笑って誤魔化したのだが、相手はお姫様でもおつうより大胆な人魚姫。
「わっ!? ひ、姫!? 一体何を!?」
「ほらほら。正直に話そ、おつうちゃん? おつうちゃんは私と夢の中で一体何をしていたのかな?」
気が付けば人魚姫はベッドに上がり、おつうの両脚に跨るようにして真正面から瞳を覗きこんできていた。どうしてもおつうに夢の内容を直接話してもらいたいらしく、意地悪な微笑みを浮かべて。
「い、いや、だから僕は姫とデートを……」
「ふーん……正直に話してくれないなら、私にも考えがあるんだよ? えいっ!」
「うあっ!? ひ、姫、何を――ひゃうっ!?」
可愛らしい一声と共に、おつうを押し倒す人魚姫。
困惑の声を上げるおつうだったが、その声は途中で喘ぎにも似たおかしな声と化してしまった。何故なら耳元に一つ吐息を吹きかけられ、込み上げる得もいえぬ感覚のまま上げた声だったから。
「……正直に話してくれないと、もっとイタズラしちゃうよ?」
「だ、駄目だ、姫……あっ! や、止めてくれ……っ、ぅ!」
「ふふっ。そんなこと言っても、おつうちゃんの身体はとっても正直だよ? まるでおつうちゃんが寝言で言ってた夢の中の私みたいだね?」
「あぁ、や……!」
吐息どころか舌先で耳元を弄られ、正に夢の中の人魚姫のように身悶えしてしまう。込み上げるおかしな感覚も原因だが、愛する姫に肌を舐められているという事実もまた原因の一つであった。
「おつうちゃんったら、こんなに可愛い声を出して……とっても苛めたくなっちゃうくらい、可愛いよ?」
「ふわぁっ……ひ、ひめぇ……!」
挙句耳朶をかぷかぷと甘く噛まれ、もう何が何だか分からない気分になってしまうおつう。どこか夢心地の気分で見上げた先にあったのは、愛しい姫の可憐かつ妖艶な微笑み。抵抗しなければならないと分かっていても抗えない魔性の魅力がそこにあった。
「さあ、全部最初から話そうね、おつうちゃん? 話してくれないならもっとイタズラしちゃうよ?」
「あっ……! うあっ、ああぁぁぁぁぁぁ!!」
当然勝てるわけもなく、結局おつうは夢の内容を洗いざらい白状させられてしまうのだった。
おつうが夢のように人魚姫をエスコートできる日は、まだまだ先の話らしい。