・フォロワーさんがやっていた「押し倒してみた」診断のジャックとアリスの結果から考えたワンシーン。
・本当はそれぞれ別のツイートでしたが一纏めにしました。
・すでに恋人設定
・本当はジャック×アリスはもうひとつお話がありましたが1000字以下だったのでそれは入れませんでした。
「ジャック。ジャック、起きて? もう朝よ?」
「う……うーん……」
安らかな寝顔を浮かべて幸せそうに眠る愛しい恋人の名を呼びながら、アリスは優しくその身体を揺り動かす。
朝食の時間になっても起きてこなかったので確認に来たところ、ジャックは絶賛寝坊中で熟睡しきっていた。先ほどから何度も名を呼び身体を揺すっているが、一向に目を覚ます気配は無い。もっと強く身体を揺すれば起きてくれるかもしれないが、さすがに乱暴な真似をしてまで起す気は無かった。
「もうっ、全然起きてくれないわ。ジャックったらとんだお寝坊さんね?」
困ったアリスは思わずそんな言葉を零してしまうが、声音には自分でもはっきり分かるほどの嬉しさが滲んでいた。おまけに頬が緩むのをどうしても抑えられない。まあ目の前にあるのは愛する人の幸せそうな寝顔なのだから当然のことだろう。
自分には起せないことに気が付いたアリスは、いつしかベッドに腰掛けてその愛しい寝顔をじっと眺めていた。男の子にしてはかなり女の子に近い柔らかな面差しは、熟睡しているせいか余計に女の子っぽく見えてしまう。
「ふふっ。あなたはあんまり嬉しくないかもしれないけれど、凄く可愛い寝顔をしているわ。ずっと眺めていたいくらいよ、ジャック?」
そんなジャックのことも大好きなアリスは、ジャック本人にとってはあまり嬉しくないことをついつい口に出してしまう。女の子っぽく見えることを本人が気にしていても、そう見えてしまうのは紛うことなき事実である。
「っ……」
「あら? ジャック……?」
するとアリスの言葉に一瞬ジャックの眉がぴくりと動く。
よくよく見れば先ほどまでの幸せそうな寝顔は、何だかちょっと苦々しい感じの不服そうな寝顔へと変わっていた。これは眠っていても女の子っぽく見られたこと無意識的に嫌がっているのか、あるいは――
「……本当に、眠っているのよね?」
――寝ているふりをしているのか。
「ジャック……?」
「っ……」
何だか疑わしくなって若干低めの声で問いかけると、やはりその眉がぴくりと動く。
理由は分からないがどうやらジャックは狸寝入りをしているらしい。そんな子供染みた真似をするジャックのことがまた愛しくて頬を緩めてしまうアリスだが、目蓋を閉じているジャックにはアリスがどんな反応を示しているかなど見当も付かないだろう。そこが面白くてアリスもついついイタズラ心が沸き立つのを抑えられなかった。
「……ジャック、起きて。もう朝よ?」
「――っ!」
眠るジャックの身体に跨るようにしてベッドへと上がり、その耳元で吐息を吹きかけるように囁く。
視界を閉ざしている状態だからこそ他の感覚は余計に敏感なのだろう。ジャックは半ば身悶えしながらも零れ出そうになる声を懸命に押し殺していた。どうもかなりこそばゆいらしく、必死に堪えてはいるものの今や寝顔は笑顔に近い。ジャックの笑顔が好きなアリスとしては、イタズラ心も相まってもっと笑顔にさせたくなってきてしまう。
「――っ、あ……!?」
故に耳元で囁き吐息を吹きかけるだけでは満足できず、柔らかそうな耳朶に軽く口付けてみる。さすがにこれは耐えられなかったのかジャックは驚きとくすぐったさが入り混じった声を上げていたが、まだまだこの程度ではアリスの愛情を表現できていない。
「ん……ちゅ……っ……」
「あん、や……!」
口付けから甘噛みへと移行し、時折舌先を用いてジャックの耳を舐め上げる。
最早堪えきれないほどにくすぐったいのか、寝顔は最早満面の笑みで目蓋の端には涙すら浮かんでいる。しかも舐められる度に女の子のような可愛らしい声まで上げて。耳元を舐められている事実が恥ずかしいのか、それとも女の子のような声を上げているのが恥ずかしいのか、どちらかは分からないが頬も朱色に染まり切っていた。
さすがにここまでやればアリスも満足である。というかちょっと大胆に過ぎた行動の気もしたので、落ち着くために一つ咳払いしてから身体を起した。
「もういいでしょう、ジャック? ほら、起きて。早く起きないと今度はもう片方の耳にも同じ事をするわよ?」
言外にもう狸寝入りなのは分かっていると告げる。
さすがにまた耳元を攻められるのは辛いのだろう。やがてジャックは観念したような表情で身体を起した。
「……はあっ。やっぱりバレてたんだ。おはよう、アリス」
「おはよう、ジャック。一体どうして狸寝入りなんてしていたの? もう少し寝させて欲しいなら素直に言ってくれれば良かったのに」
確かにアリスはジャックを起しにきたのだが、別に絶対に朝食の時間に顔を出さなければならないというわけではない。朝食の時間になってもまだ寝ている子だっているし、第一ジャックがいつも身を削って皆の力になっているのは誰もが知っていることだ。たまに寝坊したって罰は当たらないだろう。
アリスはそんなことを考えていたのだが、どうもまだ眠かったわけではないらしく当のジャックは首を振る。
「そうじゃないよ。ただアリスが起してくれるのが何だか凄く嬉しくて、ついついまだ寝てるフリをしちゃったんだ。でもまさか耳を舐められるなんて思わなかったなぁ……」
「ご、ごめんなさい。あなたが悪乗りして起きないものだから、私もついイタズラがしたくなって……その、嫌だったかしら……?」
頬を赤くして恥ずかしそうに耳元を押さえるジャックの姿に、アリスも自然と頬が熱くなっていく。
耳元に吐息を吹きかけたらかなり反応していたので思わずやってしまったのだが、もしや嫌だったのだろうか。そんな不安を抱えながら尋ねた所、ジャックはやはり頬を赤らめながら答えてくれた。
「嫌じゃないけど、ちょっとずるい気もするな。僕ばっかりアリスにそんなことをされるのは……」
「ジャック……」
それもどことなく羨ましそうな表情で。
ジャックだって立派な男の子。きっと恋人の肌に触れたいという欲求はアリスよりも強いのだろう。無論ジャックに触れられることにアリスとしては恥じらいこそあれ、抵抗など無い。
「だから、その……お返し、しても良いかな?」
「お、お返し……! え、ええ、あなたがしたいのなら、私は一向に構わないわ……」
だからこそジャックが同じように触れたいと口にした時、アリスは迷い無く頷いた。まあ驚きと羞恥から多少言葉に詰まってしまったのだが。
「良かった。それじゃあ目を瞑ってくれるかな、アリス?」
「こ、こう、かしら……」
自然とベッドの上で正座して、きっちり目蓋を瞑るアリス。そうしていつ耳元に口付けられて甘噛みされ、舌で弄られてもおかしな声を上げないように心を強く持とうと努めたのだが――
「んっ――!?」
閉ざした視界の中、感覚は全く別の箇所にやってきた。耳ではなく唇に、柔らかな感触が押し当てられる。
不意打ちに驚いて目蓋を開いてみれば、目と鼻の先にはジャックの顔。考えるまでも無くジャックに唇を奪われていたのは明白であった。
「んっ……っ……は、ぁ……!」
そのままアリスは押し倒され、唇を貪られてしまう。
しかし自らの身体をベッドに押し倒す手も、唇を味わい食む動きもとても優しく愛を感じる。だからこそアリスは抵抗できず、そして抵抗する気も無く、されるがままに唇を奪いつくされた。
「っ、あぁ……ジャックぅ……」
それこそキスが終わってもしばらくジャックのことしか考えられず、ぼうっと眼前のジャックの唇を見つめてしまうくらいに。
とはいえそんな様子にジャックが苦笑するように笑いかけてきたことで、何とかアリスは至福の世界から帰って来ることができた。あまりにも恥ずかしい表情をしていたことは分かるので咄嗟に頬を引き締め、自らを押し倒しているジャックを視線で責める。
「ず、ずるいわ、ジャック……耳にすると見せかけて、いきなり唇にするだなんて……」
「ずるくないよ。だって僕は耳にお返しするなんて一言も言ってないからね?」
しかしそんな風に意地悪なことを、ジャックに爽やかな笑みで言われては怒る気になどなれるわけがない。いや、そもそもアリスは最初から怒ってなどいなかった。ただ突然でちょっと驚いたからその不満を口にしただけである。
「もうっ、ジャックの意地悪……んっ――」
キスされたことに関しては何も文句は無いどころか、むしろ足りないくらいだ。だからこそアリスは恋人の知らなかった一面に苦笑した後、今度は自ら唇を重ねた。
「――おはよう、ジャック。大好きよ」
「うん。おはよう、アリス。僕も大好きだよ」
そしてお互いにもう一度朝の挨拶を交してから、どちらからともなく再び口付けを行う。互いへの愛と、至福を胸に感じながら。
恋人同士となってからの決まり事であるおはようのキスは毎朝の事ながらなかなか終わらず、結局は二人して大幅に朝食に遅れ、皆に揶揄されることになった。尤もそれも毎朝のことなのでやはり今更だったが。