【悲報】氷属性はかませが多いらしい。 作:ブルーな気持ちのハシビロコウ
なんかそんなノリで書きました(粉ミカン)
ちなみに今回の話の主な材料はとある有名RPG。
本はエッセイが多いらしい
初めまして、
特に私の事に関しては深く載せる必要もないでしょうが、軽く自己紹介だけはしましょう。
私は話題になったり、私個人が気になったことを自らの足を運び取材、その感想を素直に文面に書き、書物として皆様にお届けする、とまぁ言うなれば
ライバルも多いですがたまに私の書いた本がどこかの本棚に置かれているので、是非一読を。
―――さて、最近私が気になっていることと言えば、全王の後釜として氷の魔王が魔物を統治したこと。
そして、全王を倒した後に勇者様方が国との意向と合わず勇者を辞めた事の二つでしょうかね。
残念ながら勇者様方は国からの返事も待たずに遠方に行ってしまったとしか話が出ていない為、所在がわからないから取材できないのです。
全ての町や村を見て回るにはかなりの労力も必要ですしね。いつかこれについても記録したいとは思っているものの、気長に考えてます。
―――そんな訳で私、現在『氷の魔城』の外に来ております。
まぁ、消去法というやつですね。
防寒の対策は必須です、既に鼻が痛いですから。
持ってきた荷物の殆どは見事に凍りましたよ、いやぁ困ったものです。
………え?魔物の国の最奥にどうやって行ったかですって?
ハッハッハ、それは企業秘密ですよ読者様。
万が一バレて真似でもされようならば私が職を失いますのでね。お約束ということにしてください。
閑話休題。
さてなんとですが今回、偶然にも氷の魔城で出会い『快く』私のインタビューに答えてくれる親切な方を紹介します。
彼はこの土地にかなり詳しく、あまり知られていない氷の魔王をまるで血を分けた兄弟の様に理解しているという凄い人物です。
流石に本名を聞くのは憚れたので、仮名なんですがご了承ください。
「―――紹介に預かった、通りすがりだ」
はい、という訳で『通りすがり』さんです。
しかし顔立ちが整っておりますね?普段何をされている方なんですか?
「何を、か………基本は自分の住処の奥で誰か来るのを待っているな」
―――成る程、無職ですか。
「果てしなく誤解なんだが」
冗談ですよ、確かに無職ならばこのような場所―――しかも城の
きっと勇者とは別に魔城に挑む方なのでしょう?
最近ではとある
それに素人の私でもわかるほど、雰囲気も只者ではないのですから。
「誉めてくれるのは良いんだが。とりあえず穴の外からどけてくれるか?」
―――それは私のインタビューが終わり次第ですね。
ちなみに彼はその穴から顔を少し出しており、それを私がメモ帳片手に立って塞いでいる状況だったりします。
いやぁ、快く取材に応じてくれて嬉しいですよ。
「……これ、ある意味脅迫より質が悪くないか?」
彼はすごく複雑そうな顔をしました。
しかしこちらも貴重な人材を逃すわけにはいかないのですよ。
直ぐに終わるよう努力しますので何卒。
「………手短に頼むぞ。本当に」
了解しました。
――ところでその横穴は貴方が掘られたのですか?
「あぁ、その通りだ」
丁度大人一人が入れそうなサイズをバレずに、見事ですね?
「そうだろう?長い手間と食事を経てようやく完成した横穴だ。まぁ既に八つ目なんだが」
―――食事とは?
それにしても、八つですか?確かに歩いているときにも似たような穴を数個見かけましたが……まさか全て貴方が?
「あぁ。
なんと、では正門からではなく魔城への出入りはこちらで済ませているのですね。
「基本的に出るときだけだが、まぁそうだな」
素晴らしい!通りすがりさんは国から派遣された勇者とは別に、独自の方法で魔王の討伐のために外堀を埋めているのですね?
「埋めるというより空けているんだが……というか疑問なんだが、勇者達が来たとして何故正面の門からしか来ない?無駄に律儀じゃないか。その姿勢は評価するがロープなりを使って最上階まで一気にいく事を考えないのか?」
どうやら彼は合理的に魔王の城を攻略しない勇者一行に、大分お怒りの様子です。
「いや早く来いよ、本当に………命が惜しくて慎重になるのはわかるが、待ち続ける魔王の身にもなってやれ」
魔王の立場も考えるとは、中々に変わったお方だ。
まぁ単独でこんなところにいらしているので今更な気もしますがね!
―――しかし、今の勇者の進度はかなり早い方ですがね?
死んでも生き返りますから。
「―――は?」
凄い顔をされてしまいました。
あれ、ご存知ないのですか?
「何の話だ?」
では、説明しましょう。
―――最近、教会が大きな施策を打ち出しました。
多額の寄付金と祈りを捧げることで、一般人だろうと勇者だろうと、加護を得られるというものです。
「加護………それが生き返りか?」
はい。寿命を除き、例え灰になっても生き返るのです。
最初に納める額が額なのですが、一度払えれば気負うことなく魔王退治に臨めますよ。
死ねば死ぬほど支払いが発生して財布は寂しくなりますが。まぁ命には代えられないというやつですね。
「死んでる時点で既に金に代えられてるんだが?」
もしパーティーが全滅した場合は、一人だけ生き返らせられるらしいですよ。
「いや、せめてそこは全員生き返らせろよ。というか洞窟の奥とかで死んだらわからなくないか?」
あ、いえ。その時は最後に祈った教会に強制的にワープさせられます。
「何だそれ怖。というかさっきから魔物側不利すぎないか?」
確かに。
教会も基本町や村には一つありますからね。
本来であれば呪いを解いたりするのですが、教会も大分思いきった事をしたと思いますよ。
むしろ何故今まで行われなかったんだと言われるほどの盛況です。
「………」
既に今の勇者一行を含めて多数の者達が祈りを捧げていますよ?魔王討伐を目指すあなたも如何ですか?
「―――それは、ダメだ」
俯いた沈黙から顔を上げ、かなり真剣な面持ちで彼はそう言いました。
―――穴から顔を出しているので、正直全く凄みは無いのですが雰囲気的に言いませんよ私は。
理由を訪ねると、彼は答えました。
「……いいか?俺は別に命が大切だとか、かけがえのない何かだとか説教するつもりはない。ソイツの命だからな、勝手にすればいいさ」
はい。
「―――だが。命は無限にあってはいけないと俺は思っている。それは己の命の価値を下げるからだ」
?………といいますと。
「人生は、一度しかないから輝く。生と死の存在が近くにいる、だから死を恐れて生を大切にするんだ。死を蔑ろにすることは、生への執着を失うのと同じなんじゃないか」
……………なる、ほど。
「次がある事は素晴らしいか?一見すると素晴らしいだろうな。やり直せるのだから、次に生かせるのだから―――だがそれが当たり前となれば、大変なことになるぞ」
大変、とは?どういうことですか。
「言葉の通りだ。次があるからと、自分や他人の命を軽く見てしまう……そんな奴等がもし魔王を倒して、人類が世界を支配をして、それで平和になるのか?」
―――っ。
彼の言葉に、私は目を丸くしました。
違うのです、考え方の根本が。
魔王を倒す倒さない。それよりももっと先を見て、大きな問題を人類は抱えてしまったのだと語るのです。
「きっと麻痺をする。いつか命の価値を見失うぞ」
彼は、彼の目は。
もっと別な方を見ていると私は感じました。
「無限の命は、死んだも同然なんじゃないか?」
――どこまでも先を見ている。
そんな、器の持ち主だと。
自覚か無自覚かは定かではないですが、きっと彼はとんでもないカリスマを秘めている。
私は思わぬ大物との出会いに、思わず己の職務を忘れて聞いてしまいました。
―――貴方は、何者ですか?と。
すると彼はフッと笑い、言いました。
「行ったろう?『通りすがり』さ………そろそろ本格的に避けてくれないか?見つかるかもしれないからな」
―――そういえば急いでいると仰っていましたね。
見つかる、つまり誰かから隠れているのですか?
「秘密さ………だが魔王すら恐ろしがる存在だと言っておこう」
なんと……!?
私は驚愕しました。
どうやら、氷の魔王の背後には更に恐ろしい存在がいるようです。
まだ国が掌握していない、人類にとって最重要とも言える情報をこんな形で得られるとは思っても見ませんでした。
―――ひょっとして、その秘密を知ってしまったから『それ』に追われているのですか?
「いや、違わないわけでもないが違う」
違うんですね。
「とにかく早く避けてくれ。急用なんだ」
急用………?というか逃げようとしているわけではないのなら尚更何故?
地図のマッピングが済んだとか、手持ちの道具が尽きたからとかですか?
「いいや?」
眉を寄せた私が理由を聞いた時の彼の返答は、あまりにも意外なものでした。
「文通をしていてな―――昔の友人と、冷たくて甘いものを食べに行くのさ」
………彼の姿がいなくなった後も、私は彼が去った方を眺めていました。
正直、彼を理解する事は出来ませんでした。
まるで雲を掴むかのような感覚、しかし彼の質疑を応答する姿勢は長年取材をした私からすると誠実そのもの。
つまり全くの嘘は感じ取れませんでした。
逆にそのお陰でかなり困惑しているのですがね。
―――ですが、これだけはわかります。
彼の言葉はまるで矢のように私の胸を射ぬいた事です。
現在流れに乗っている教会の施策への危惧。
そして氷の魔王の背後に潜む影の存在。
思わぬ大量の収穫、これを僥倖というのでしょう。
私は今回の事を踏まえて、人の命の大切さについて説く事にしました。
これで出来る限りの多くの人が、命の価値を再確認する事を願います。
彼は決してその施策を否定をせずに、そっと投げ掛けてきた疑問を。
―――無限にある命を得ることは、同時に命を失う事よりも大切なモノを失うのではないか、と。
さて………今でも調査のために氷の魔城にはたまに寄るのですが、たまに悲鳴が聞こえます。
男の人の、低い叫び声です。
私はその叫び声を聞くたびに、彼の事を思い出します。
私は再び、彼と会えるのでしょうか。
―――というか誰の悲鳴なんでしょうかあれ。
逐一場所を確認しているので、今の勇者とは別な人だというのはわかるのですが。しかし結構な頻度で城から聴こえてくるので例の『生き返り』を利用している者なのは確かでしょう。
『彼』ではない事は確かです。
あんな言葉を言える器を持つ人物が、生き返りの術を利用するわけが無いでしょうからね。
だとしたら誰なのか……まぁ、きっと国のために氷の魔王に挑戦する、勇気ある人な事は変わり無いのでしょう。
そんな人にも是非、私の感じたあの時の感動を教えてあげたいですね。
―――しかし、私は彼が何者なのか知る機会は来るのでしょうか。
というより、再び会うことはあるのでしょうか。
とても、気になりますね。
年甲斐も無く、まるで恋い焦がれた少女の様な気持ちでこそばゆい気もします。
―――彼は今、何をしているのでしょう?
『著:レポート~氷の魔城の出会い~』から。
―――その、数週間後。
「ふむ。何度読んでもよく書けているだろう?まさかそんなに有名な著者だとはな。まぁ無傷で魔城の側に来れるのだから、戦闘は素人でも只者ではなかったのだろう」
「いや、うん………それで?」
「その後にお前と食事をして結局捕まってな?城に戻されて発信器を埋め込まれそうになったりして―――」
「あっ、うん。ごめんここにどうして来たか教えてくれる?」
「どうしただと?その書物が公布された今、もし奴等が手に取っていたらどうする?城に帰ったら何されるかわからないだろうが」
「既に手遅れな気もしなくはないけど………だから?」
「―――だから、暫く泊めてくれないか?」
「―――いや本当に何してるのこの魔王っ!?」
どこかの辺境で、そんな声が響いた。
フカクカンガエタラマケダヨッ!ァァァァァ!!(壊れた)
読みにくかったらすいません。
しかし、どうしてこうなった。