【悲報】氷属性はかませが多いらしい。   作:ブルーな気持ちのハシビロコウ

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誤字や矛盾点があったらすいません。

日間ランキング一位という、ランキングに載ることすら身に余る光栄なのにこの現状。

人生のすべてのガチャ運を使いきったか、
多分この物語が完結した辺りで死にますね私。


すいません、今回はちょっと下ネタ注意です。


4話

 俺の名前はアイス。世界を束ねる六魔王の一人で『結構甘いもの好きらしいけど意外に女子力が高いんじゃないこの魔王様?』と恐れられる男で、氷魔術における最高位の使い手だと自負している。

 

 そんな俺は、玉座で腕を組ながら目を瞑っていた。

 それは俺の近くにいるはずのフローズの言葉を、一言一句違わずに聞くのに集中するためだ。

 

「だからフローズ、もう一度言ってくれ」

「………もう、五回目なのですが?」

「それでも、頼む」

 

 

 フローズは嘆息を漏らしながら、一言。

 

 

「―――――勇者一行が、氷結の迷宮に現れました」

 

 

 

「………フ。フハハ、ハッハッハッハ!!!」

 フローズの言葉に、思わず高笑いをしてしまう。

 しかし仕方がないというものだろう。

 

 やっと来たのだ、勇者が。

 待った、それはもう待った。

 

 聞き間違いかと思って四回聞き直したぞ?

 しかし間違いではなかった、勇者が来たのだ。

 

 ようやく、俺達の努力が報われるときが来たのだ!!

 

「あ、負傷したため一度帰ったそうです」

「!? 」

 

―――えっ?

 

「かなり善戦した様ですが、迷宮の中間に構えている『雪将軍』を打破できなかったようです………傷は戦闘後にしては比較的浅いですが、帰りの道中の戦闘も考えた上での行動でしょう」

「なん、だとっ―――そんな………バカな!」

 

 ダァン!と力強く床を踏む。

「ふざけるなっ!勇者だろう!最後まで闘え!」

「アイス様、その発言は魔王様としてアウトですよ?」

 もはや慣れた冷たい視線を向けられながら、俺は愕然とした。

 

 雪将軍はある意味、自動の門番の様な存在だ。

 白い甲冑に身を包み、その巨体で特殊な片刃の剣を振るう。

 自我や感情はなく敵と見なしたものを攻撃する。

 ぶっちゃけてしまえば壁である。

 

 普通に手塩にかけた部下なら応援するさ。

 それに戦いたくても死にたくない奴には、負けそうになったら勇者達に金を握らせるように言ってあるからな。

 

 フローズから賄賂と勘違いされて変な目で見られたがしっかり考えている。むしろ寸止めで金が貰えるなら儲けものだろう。

 殺して奪うなんて勇者のすることじゃない。

 

―――少し前に民家の壺を割っていたとか報告があったが嘘だろう。もはや略奪者だそれは。

 というか壷の中なら覗けば良い話だろ。まさか無理やり売り付けられたのか?

 

 それはさておき。

 実際、勇者一行は大分儲けているはずだ。

 かなりの数の部下が負けたと報告が来た、しかし死者はいない。がめついが、素晴らしいじゃないか。

 

―――まぁ、全て俺のポケットマネーなのだが?

 

 部下の量が量だから、色々ととんでもないことになった、氷の魔王だからといって財布まで寒くなるのは如何なものかと思う。

 

 ちなみに部下には勇者達を全員倒したら奴等からの全財産をせしめる事を許可している。

 

 半分くらいは残してあげるのがマナーだ。

 流石に装備も心もボロボロになった挙げ句に全財産を持っていかれるとか可哀想だろう?

 

 

 しかし、悔しくも戦略的撤退をしたらしい勇者達に、思わず拳に力が入る。

 早く目の前に現れることを願う、まだ顔も見たことないのに何だこの恋慕みたいな感情。

 

――――――だから早く来い、勇者よ!!

 

 

 

 

「来ないな」

「そうですね」

 

―――勇者が来ない。

 

 来ないというより、着実に確実に進んでいってはいるようだが。ペースがとんでもなく遅い。

 

 具体的に言うと、勇者達が氷結の迷宮に挑んでから…………既に半月が経っていた。

 

 迷宮は七割ほど攻略されている。

 半月で七割だ、部下の強さも深部につれて上がっていくので、奥にいけば行くほどそのペースは遅くなる。

 

 つまり、最低でももう半月は待たなければならないのだ。

 

 本来であれば、喜ぶべきことなのであろう。

 前任のをアレンジした迷宮に苦しむ勇者達、手塩にかけた部下達の奮闘。

 魔王冥利に尽きるじゃないか。

 

 だが、俺は何をしている?

 

―――玉座で延々と待機だ。

 

 睡眠、食事と便所以外基本此処だぞ。

 部下達が少なくない血を流し、勇者が仲間と協力して闘っているというのに。

 

 その最中、俺は一人トイレに向かうのだ。

 しかもわざわざフローズに報告しなくてはならない。

 

 そんで、チマチマと進んでは戻りを繰り返す勇者を待つ。

 

―――なんだろう、もどかしい。

いっそもう、俺から行っちゃおうか?

 

「なぁ、フロー」

「ダメです。アイス様はそこに座っていてください」

「…………」

 少しだけ上げた腰を、無言で再び玉座へおさめる。

 

 俺、途中までしか言ってないのに。

 

 というか読心術まで会得したぞ俺の秘書。

 しかし何故だろう、素直に喜べないんだが。

 

 すると、フローズは凛とした顔で言った。

「アイス様は魔王なのですよ?勇者一行を倒すために部下が奮闘し、自分は何もしていない。それがもどかしいのはわかります。ですが、魔王としての責務として、ここで堂々と勇者を待つのが仕事です…………それが、魔王の仕事なのですから」

 

 俺は閉口してしまった。

 

―――畜生、ぐぅの音もでないじゃねぇか。

 

 自然と、拳に力が入る。

 

「クソ………!俺はここで何も出来ないのか………っ」

「いえ、まぁはい」

 

(それ、どちらかというと囚われている勇者サイドの発言では……?)

 

 読心術は使えないが、とりあえずフローズは俺に呆れていることだけはわかった。

 

「はぁ………便所に行く。警備は付けないでくれ」

「つい先程も行かれましたよね?」

 

 フローズは怪訝な顔をする。

 

――――――ほぅ?

 

「………俺が逃げるとでもいいたいのか?」

 

 玉座から立ちあがり、俺は真剣な顔をする。

「俺は魔王だぞ?部下を置いて逃げるなんてことはありえない―――それとも何だフローズ。俺はお前の信頼されるには足らない存在だったのか?」

 

「アイス様……………」

 フローズは感銘を受けたように目を丸くして口を開けた。

 

 

 

 

「――――――既に八回脱走を試みた者が信用されるとでもお思いですか?」

 そして、微笑む。

 

「全く………九回目の正直というだろ?」

「アイス様の場合ですと脱走の成功とも取れますが?というか多すぎです、聞いたことありませんよそんな言葉」

 

 フローズは深い嘆息を漏らす。

 それを見て俺は内心で舌打ちをした。

 

 ―――ダメだこれ。

 

 諦めて背もたれに体重を預けると、フローズは少し申し訳無さそうに言った。

「アイス様………アイス様の気持ちはわかります。ですがこれは魔王の体面を保つ為、私も辛いのです」

「…………フローズ」

 

 コイツ、そこまで俺の事を…………。

 

 

「―――なので心を鬼にして、次脱走しようとしたらその玉座から動けないようにします」

 

――――――――はっ?

 

「いや……動けないも何も、殆ど動いてないぞ俺」

「?動いているではありませんか?」

 何を言っているんだ?という顔をされるが、正直こちらがしたい。

 

 何を言っているんだこの秘書は。

 基本玉座で過ごしているんだぞ?動く時なんて、食事と便所と睡眠くらい――――――?

 

 

 

――――――え?

 

 まさか、嘘だろ?

 

 俺は魔王になって初めて、怖気というものを感じた。

 

 

 フローズが、何故か木の桶を持ってきたから。

 

「フ、フローズ?その桶はなんだ?」

「桶というは家庭で水や湯を汲んだり『溜めたり』するための物です―――さて?何に使うと思いますか」

 彼女は淡々と話す、やけに溜める部分を強調しながら。

 

 動揺を隠そうとするが、自然と視線が泳ぐ。

―――――俺だって、バカじゃない。

 

 睡眠なら、ここでまだ出来る。

 食事だって十分に可能だ。

 

 だが、最後のひとつだけは―――!

 

「……ふ、ふ!お前はそれでいいのか?お前の主が目の前で用を済ませるのは―――」

「私は気にしませんよ?」

「いや俺がするんだがな?」

 

 表情一つ変えず言いやがったぞこの秘書……!!

 

 気にしろよ女の子だろ、知ってるんだぞ夜遅くは肌の大敵だから早めに見張り交代して寝てるの。

 何で自分の肌は気にするのに俺の出したソレは気にしないんだよ。

 

「勿論目の前でそんな事をされるのを私は望みません………ですが、致し方ない事もあるでしょう」

「何で既に俺がこの場でするみたいな流れになってるんだ?」

「しないんですね?」

「………あぁ」

 

 流石にしねぇよ?魔王の体面を保つ為に行うのに体面どころかプライドまでズタボロになるわ。

 

 あぁ。しない、しないとも。

 だがこんな状態が続くのは絶対に嫌だ。

 

 だから、頼むから。

 

「――――――早く来てくれ、勇者」

 

 

 

 

 

 

 「――――――もういっそあっちから来てくれないかなぁ、魔王」

 

 勇者は疲れていた。

 心身ともに。

 

 一度目の撤退は仕方なかった。

 迷宮の途中で今までと比べ物にならない程強い敵に襲われ、一人が負傷したのだ。

 

 その際装備も外れ、一気に体温を奪われた。

 咄嗟に勇者がとった行動により大事は免れた。

 

「勇者様!今度はブラックが寒さにやられました!」

「勇者寒い。温めて」

「―――いや、流石におかしくないかな?」

 

 それ以来、別の仲間からのアプローチが凄いのだ。

 

「おかしくない。闇魔法の失敗で装備を闇に送ってしまった…………不覚」

「ブラック今までそんなミスしたことないよね?」

 勇者はさっと視線を流す。

 

「君達も、風で飛んだり、燃えたり、消し飛ばしたり。なんかここぞとばかりにミス多くない?」

「そんなことありませんよ、ねぇ?」

「そーそー、それで次は誰の番だっけ?」

「もう十一人で一周したんじゃない?」

「………一周?もしかしてローテーション組んでる?組んでるよね?やめてよ一回一回戻るのも手間だし、装備も大分お金もかかってるんだよ!?」

 

「どーせお金貰えるのですからいいんじゃない?」

「いや、資源は大切にしよ―――――というか君達頷いてるけど元々魔王側だったよね!?」

 勇者は信じられないと嘆く。

 

 ちなみに、ブラックを優しく抱いて撫でている。

 ブラックはご満悦の様子だ。

 

「あったかい」

「………でもまぁ。今のところ皆が無事だからいいんだけどさ」

 

 そう、勇者は攻略よりも全員の無事を優先していた。

 敵達に対しても殺すことはなく金銭を貰い、背後を襲われるリスクを承知で背中を向ける。

 そして、ふざけようとふざけまいと仲間は決して見捨てない。

 

 それがきっと、勇者が勇者たる由縁なのだろう。

 

 だが、と。

 勇者は吐露する。

 

「…………先は遠いなぁ」

 

……氷の魔王の切実な願いは、届くことはなかった。




全王「………………(焦)」
果たして出番は来るのだろうか。
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