このすば!ぐらんぱ!   作:星子

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前回までのあらすじ

ウィズ「バレルとインプロージョンです」
めぐみん「早く教えて!」
ヴァン「ほっほっほ」

えくすぷろーじょんれい!ぎゅ~ん!!!

ベルディア「ぎゃーーー!!!そうだアクセルに行こう!」




第十一話 おじいちゃん、過去の仇敵と対峙する。

ーアクセルに続く林道ー

 

 

 

 アクセルまでの道を駆け抜けているヴァンは、並走するウィズからベルディアの小言を聞かされていた。

 

「…で、『手が滑ったー!』とか言って私の足元に頭を投げ込んできたんですよ!絶対わざとですよね?そう思いませんか?」

「…う、うむ…それは間違いないな…」

 

 めぐみんを抱えながら走るヴァンは、当然ながら荒い呼吸をしており、辛うじて相槌を打っている状態だ。

 そんな自分と比べ、息切れ一つ起こしていないウィズを見ると、魔力でその身を動かすアンデッドの王というのは伊達ではないな。と少々羨ましく思うヴァンであった。

 

「…ウィズ。その話は…改めてゆっくり聞こう。して、ベルディアの魔力に変わった事は?」

「あらやだ私ったら、人様に話せない話題なので夢中になってました…ベルディアさんはアクセルの正門前で止まったままですね。彼の近くに僅かにですが神聖な力を感じます。プリーストの方でしょうか?」

 

 プリーストと聞き、すぐにアクアを思い浮かべるヴァン。しかし制限されているとはいえ、アクアを以てして僅かという事はありえないと断定したヴァンは、顔を険しくさせる。

 

「ウィズ!ここからはお喋りなしだ!駆け出しの冒険者達で食い止めている可能性がある!急ぐぞ!」

 

 頷いた彼女と共に更に速度を上げ、舗装された雑木林を抜ける。目と鼻の先にある丘を越えたらアクセルの街はもう目の前だった。

 

 

 

 

ーアクセル正門前ー

 

 

 

 

「はあ、はあ。こ、ここは一歩も通さんぞ…ぐあひぃぃぃん!!!」

「ええい!さっきから何なのだお前は!いいからどかんか!!!」

 

 ダクネスが、ベルディアと名乗る魔王軍幹部からの重々しい斬撃で地面を跳ねた。

 最初は咄嗟に体が動きそうになったカズマだったが…みんなに見える角度では苦しげな表情を見せ、視線が切れると頬を緩めて堪能しているのを悟った彼は、熱くなりかけた心を急激に冷やしていった。

 

「はあ、はあ……チラッ」

「……」

 

 白けた顔のカズマとは対象的に、熱の籠もった視線でそんな彼を見つめるダクネス。カズマは顔をしかめながら人集りの奥に紛れ込む。

 

(うぇ…目が合っちまった。というかあいつ、また防御系にポイント振りやがったな。魔王軍幹部の攻撃だぞ、ハアハアで済むような攻撃なわけないだろ)

 

 そんなダクネスの鉄壁っぷりにげんなりしていると、巨大剣を地面に突き立てたベルディアが大声を張り上げる。

 

「お、ぉぉおい!ヒヨッコ冒険者共!俺は人探しに来ただけだと言っているだろうが!頼むからこの無駄に硬いクルセイダーを取り押さえていろ!」

 

(俺達が集合した時に高らかにそう発言してましたよね。…本当、うちのクルセイダーがすみません)

 

 姿を現してからかれこれ十数分、ダクネスの有無を言わさぬ猛烈な性欲に翻弄されているベルディアを、カズマは心底哀れんだ。

 

「はあ、はあ。…ぐっ、お前の考えなどお見通しだ。そう言って近付いてきた女性冒険者共々、服を切り刻んで公衆の面前に晒し、その自由に動く頭で上下左右隅から隅まで視姦するつもりだろう…なんて、なんて卑劣なのだ!」

 

 ダクネスは、妄想上のベルディアの行いに様々な感情を滾らせ、先程までの猛攻が無かったかのように力強く立ち上がる。

 

「うおー!そうはさせん!皆は私が守り通す!やるなら私だけにしろー!」

 

「ななな何を言っとるんだお前はー!ほほほ誇り高き魔王軍幹部の俺がそんな事するか!と、というかお前、さっきからバラバラになるレベルで切り込んでいるのになんで立ち上がれるんだ!今までそんな奴見たことないぞ?!」

 

 ベルディアの話など一切聞かず、率先して痛めつけられていたダクネスだったが、無限の妄想パワーで蓄積していた疲労を吹き飛ばす。

 彼女が防御力偏重のへっぽこだと知らないベルディアは、これまでの攻撃を物ともしないダクネスの気迫と、若干心当たりのある誹謗中傷に動揺し、無理矢理話題を反らす事しか出来ない。

 そんな中、ダクネスに異変が起こる。ダクネスがベルディアの罵詈雑言に、顔を俯かせぐっと耐え始めたのだ。

 冒険者達は、未だ微動だにしないダクネスの動向を固唾を呑んで見守っている。しかしカズマはダクネスの機微に唯一勘付いた。

 

 歯を食いしばってはいるが、それは頬が緩むのを必死に堪えていたからだった。

 

(少し褒められたからって照れてんじゃねえよ!褒めてねえから!お前の馬鹿らしい防御力に言葉が見つからないだけだから!)

 

 自由気ままなダクネスに怒りを覚えるカズマだったが、彼女の雰囲気に飲まれまいと大きく頭を振る。

 

(じゃない!落ち着け俺!…魔王軍幹部の力っつってもこんなもんなのか?来た時からボロボロだったの加味しても、ダクネス一人にここまで足止めされるなんて…もしかしてダクネスだけで何とかなるんじゃ…)

 

 思ったが吉日、ダクネスの防御力だけは信頼しているカズマは、人集りの奥から大声を発した。

 

「ダクネス!一撃熊を思い出せ!」

「!!!」

「な、なんだ!?誰だ今叫んだ奴!い、一撃熊?俺は取り押さえろと言っているんだ!」

 

 突然聞こえてきた意味の分からない大声に、ベルディアは辺りを見回すように頭を掲げ、狼狽えたまま怒声を飛ばす。

 

(ふふふ。焦っているな魔王軍幹部ベルディアめ。うちのクルセイダーは相手の攻撃を誘発し、敢えてその攻撃を受け止めそのまま押し切りダメージを与える!………んで、相手のさらなる強烈な一撃を期待して、半永久的に動く事ができるのだ!)

 

 カズマはベルディアの狼狽えっぷりに、何の確証もない勝利を見出し思わず口角を上げる。

 

「そうだった!さっきまでの攻撃でも十分だったから忘れていたが、私はさらなる高みに登っていたではないか!」

 

 カズマのアドバイスで覚醒したダクネスは、構えていた大剣を放り投げ、一撃熊の如く高々と両腕を上げる。

 

(ケケケ、ベルディアよ!ダクネスの性欲に慄くがいい!現れた時から色々ボロボロだったのが運の尽きだったな!満身創痍じゃうちのドMには立ち向かえないぜ!)

 

 剣を放り投げたダクネスを、カズマは徹底的に無視した。そんな些細な事は今までに何度もあり乗り越えてきた。それにドMだからという便利な事実がすぐに掻き消してくれるからだ。

 

「ふひひ。さあ、どこからでも切り込んでくるがいい!お前の本気を見せてみろ!うおーーー!!!」

「くっ、一体なんなのだこいつは!ええいこっちに来るな!ふんぬあーーー!!!」

 

 ベルディアの巨大剣とダクネスの拳がぶつかり、辺りに鉄を叩くような軽快な音が響き渡る。その光景を見ていたカズマは、ダクネスの拳が鉄のように硬いのだと知り、彼女を女扱いするのを止めようと誓う。

 

(っしゃ!予想通り巨大剣は弾き返した!そのまま体当たりでもかましてやれ!)

 

 

 ―――しかし、ダクネスの体当たりがベルディアに直撃する事はなかった。

 

 

 剣を弾き返し、ベルディアとの距離ももう僅かという所で、急に足を縺れさせたダクネス。そのままベルディアの脇を猛スピードで通り過ぎ、顔面から地に倒れたのだ。

 

 正門前に集まった全員が、この場の空気がなんとも言えない微妙なものに変化したのを感じ取った。

 対峙したベルディアでさえも、一瞬の出来事に思わず呆けてしまっている。

 

(…こんのドジっ子ダクネス!ここに来てお前の不器用さなんて見せなくていいんだよ!)

 

 肝心な時に全く締まらないダクネスに、カズマは頭を抱えてしまう。

 全員が未だ呆然としている中、ダクネスはさもベルディアの回避能力が高いかのように振る舞い始める。

 

「ごほ、ごほ。ふっ…中々の身のこなしだベルディア。さあ次だ!そんな剣など捨てて拳でかかってこい!」

「へ?………は?…はあ!?お、お前が勝手に転けたんだろうが!後、武器があるのに何で拳で戦わなくてはならんのだ!?馬鹿かお前!」

「ば、馬鹿だと!?失敬な!私はこれでも学術に関しては―――」

 

 

「そういう!事では!無いわーーー!!!」

「ぐっああーーーん!!!」

 

 

 これまでのダクネスとの会話で学習したベルディアは、彼女の見当違いの反論でイラつく前に頭を放り投げ、両手で巨大剣を振り抜いた。ダクネスも、突然の斬撃に対応が遅れたが、拙いながらも受け止めその痛みを堪能したようだった。

 

 冒険者達が宙を舞うダクネスを愕然と見守る中、彼女は大きな音を立てて地面に叩きつけられる。カズマは頭を掻き毟りながら怒りを顕にしていた。

 

(ほんっと使えねえなあいつは!…ああもう!現状この街で戦えるのあいつだけなのに、このままじゃ時間稼ぎにもならねえじゃねえか!くっそ!ヴァンとめぐみんはどこい―――!?)

 

 恐らく大丈夫であろうダクネスの事は戦力から外し、所在不明の二人の事を考えていたカズマの身体に、身の毛もよだつ悪寒が通り過ぎる。

 

(な、なんだ…今の…)

 

「………ああああもういい!お前らが俺をおちょくっているのはよおおく分かった!大人しく人探しを手伝えば見逃してやろうかと思ったが!もう遠慮せんぞ!知ってそうな奴以外は斬り捨てるからな!」

 

 ベルディアは指を指しながらそう言うと、正門前に集まった冒険者達を一睨みし巨大剣を肩に担ぐ。そして冒険者達の方へ徐に頭を放り投げた瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 カズマの目の前に屯していた冒険者達が、一斉に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「へ…」

 

 カズマは一瞬の出来事に思わず声を漏らす。そして目の前の巨体に難なくキャッチされた鋭い眼光を帯びた頭が、彼に死という恐怖を与え正常な思考を出来なくさせた。

 

「おい、お前から吐きたくなる様な神の力を感じる。この街の上位の者だな?言え、俺の愛馬と部下を消したやつは誰だ?………おい聞いているのか、喋らんと斬るぞ!」

 

「…えっと、え?…あの」

 

 カズマは目の前の死の視線から逃げるようにベルディアの背後を見る。…吹き飛ばされた冒険者達は男女関係なく既に事切れていた。

 その余りにもあっさりとした惨状に、カズマの頭の中は徐々に死の色に染まり、腰を抜かし目から涙を流し始める。

 

「し、しし死…死ん…」

「…ふん、知らんようだな。次だ」

 

 ベルディアは恐怖に侵されただけの彼に興味を無くすと、巨大剣を軽々と掲げ一切の躊躇いなく振り下ろす。

 カズマの体はベルディアの動作に反射的に身を守る体勢となり、眼をぐっと瞑り無意識に最後の時を待つことしか出来ない。

 

 

 

 そうして全てを諦めたその時、カズマの耳にけたたましい鉄の音が響いた。

 

 

 

「ぎっ!!!…べ、ベルディア。弱き者を斬るなど…っぐ!元騎士とは名ばかりか!」

「…っち。まだ邪魔立てする者がいるか」

 

 二人分の会話に恐る恐る目を開けたカズマは、目の前の光景に驚愕する。

 

「ぶ、無事かカズマ君?…すまない、色々と…ぐ!立て込んでおってな…」

 

 

「ヴァ…ン」

 

 

 

 そこには、女神エリスの加護を纏い重くのしかかる巨大剣を斧槍で支えながら、自分を見て僅かに微笑むヴァンの姿があった。

 

 

 

 




モチベーションとか色々ごにょごにょ…

すみませんでした!!!(土下座
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