仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order 作:リョウギ
第1話「B.C.2600:謎のウォッチと世界の異変」
「王の話をしよう、」
「………と言いたいところだが、諸事情で今は王の話は廃業中なんだ。ごめんね」
「代わりと言ってはなんだが、今回は魔王の話をしよう」
「過去と未来をしろしめし、時空を統べる最高最善の魔王の話を」
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時計店 クジゴジ堂
「ねぇ、ウォズ。このウォッチってウォズが持ってきたの?」
窓際の椅子に腰掛けてハードカバーの本を広げていた青年に二階から降りてきた少年が声をかける
少年の手には白い懐中時計のような機構が握られている
「………私には心辺りがないね。我が魔王」
青年は差し出された白いウォッチを注意深く眺めながら答える
この青年ーウォズは未来からやってきた存在である
荒唐無稽な話だが、今まさにウォッチを差し出してきた少年を、『魔王』へと導くために
「それはどこで手に入れたんだい?」
「それが、俺にもわからないんだよね……なんかズボンのポケットにいつのまにか入ってた」
「それはまた唐突だね……」
少年から白いウォッチを受け取ったウォズは更に注意深くウォッチを眺めている
「ジオウ、おじさんから頼まれたんだが買い物に……何かあったのか?」
店の奥から新しく一人の少年が顔を見せる
「あ、ゲイツ。いや〜ちょっと変なウォッチ拾っちゃってたみたいで……」
「変なウォッチだと……?」
ソウゴと呼ばれた少年が簡単に経緯を説明する。奥から出てきた少年ーゲイツはウォズと同様に不思議そうな顔を見せる
ゲイツはソウゴの友人。同時に、ウォズと同様に未来からきた存在である
その目的は、『魔王』となるソウゴの抹殺ー否、ソウゴを『魔王』へと歩ませないことである
「ウォズ、お前何かしたのか?」
「いいや、残念ながら私にもわからないんだよゲイツくん」
三人で不思議そうに首をひねっていると、店の奥から壮年の眼鏡をかけた優しそうな男性が顔を出す
「あ、ソウゴくん?ゲイツくんにも頼んだんだけど、ちょっと晩御飯の買い出しに行ってくれない?」
この店の店主ー常盤 順一郎。ソウゴの叔父であり、保護者にあたる人だ
「わかった」
順一郎に頷きを返すと、ゲイツの肩を叩いてソウゴが買い物のメモを受け取る
「あ、そうそう言い忘ー」
ガチンッ
突然、ソウゴたち三人に悪寒が走る
と、ソウゴが順一郎に視線を移すとそこには
「おじさん⁉︎」
灰色に色褪せ、不自然に静止した順一郎の姿があった
よく見ると、店内も所々色褪せ、ノイズが走ったように空間が歪んでいる
「これは……タイムジャッカーか⁉︎」
明らかな異変にゲイツが警戒を始める
「いや、彼らの時間操作なら私たちにも影響が出るはずだ」
「とりあえず外に行ってみよう‼︎」
ソウゴの提案に頷き、三人は外に出る
「これは……」
そこには、店内と同じ光景が広がっていた
人々は色褪せ、静止し、風景はノイズが走っている
「ソウゴ‼︎ゲイツ‼︎」
呆気にとられていた三人に続いて、店内から白い服を纏った少女が現れる
ゲイツと共に未来から来たツクヨミだ
「ツクヨミ‼︎ 無事だったんだね…」
「ソウゴたちも……一体何が起きてるの?」
「分からん……」
と、ウォズがその手に握っているものに気づく
「……我が魔王、これを」
「え?これって……」
それは先程ソウゴが手渡した白いウォッチ
渡したときは確かに無地だったそれの盤面にいつの間にか黒い文字が印字されていた
B.C.2600
「いつの間に……というか、B.C.2600……って?」
「紀元前2600年、そこに何かあるということか?」
「分からないな。罠の可能性もなきにしもあらず、だ」
ゲイツとウォズが警戒した表情を浮かべる中、ソウゴはそのウォッチを取る
「確かに罠かもしれない。でも今はこれしかないなら、とりあえずこれに従ってみようよ」
あっけらかんと、そう告げる
「……そうだな。今はそれしか選択肢は無さそうだ」
逡巡しながらもゲイツが頷き、取り出した携帯端末に何やら入力する
《ターイム、マジーン‼︎》
と、どこからかバイクのような大型のマシンが二台現れ、4人の前に停車する
ゲイツとツクヨミが未来からやって来る際に使用していたタイムマシン、タイムマジーンである
ゲイツとツクヨミは赤い車体の方に、ソウゴとウォズは白い車体の方に乗り込む
「B.C.2600……っと、」
内部のコンソールに年代を入力し、操縦桿を握る
「………行こう‼︎」
操縦桿を前に倒すと同時に、タイムマジーン二台が浮上、虚空に現れたワームホールへと侵入していった
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B.C.2600 どこかの森林の上空
虚空にワームホールが開き、二台のタイムマジーンが現れる
「着いた‼︎ ……どこだろここ……」
操縦席のソウゴが首を捻る
「……今のところは森林しか見えないが……」
『とりあえずは近場に着陸するぞ』
「そうだね、どこかに……ッ⁉︎」
ドガンッ!!
通信越しにゲイツと話していた中、タイムマジーンに大きな衝撃が走り、機体が大きく揺れる。けたたましくアラートが響く
「おわわッ⁉︎ 何、!?」
『くっ、まさか攻撃されてるのか⁉︎』
どうやらゲイツの方も攻撃されているようで、通信越しに苦悶の声やツクヨミの悲鳴が聞こえてくる
ガンッ‼︎ ドガンッ‼︎
更なる衝撃が加わり、完全にバランスを崩した機体は真っ逆さまに落下を始める
「うわぁあああああああ⁉︎⁉︎」
ソウゴとウォズを乗せたタイムマジーンは森林に、ゲイツとツクヨミを乗せたタイムマジーンは森林から離れてそれぞれ煙を上げながら墜落していった
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「王よ、しばしお耳に入れたいことが」
どこかの王城か、豪奢な内装の部屋
その部屋の中央奥に鎮座する玉座の前に奇妙な容姿の男が恭しく礼をしながら立っている
部屋の内装に似合わない、というより時代が合わないような近代的な様式が目立つ服を纏い、ソフト帽のようなハットを被っている
その横には無気力そうな少女がボーっと立っていた
男と同じく、場違いなゴスロリのような服を纏い、棒付きキャンディーを咥えている
『なんだ?タイムジャッカーとやら。手短に済ませよ』
玉座から、風格溢れるーしかしどこか不気味な声が響いてくる
「恐れながらも王よ、想定外の事態が起こりました。件の魔王が、この時代に現れました」
タイムジャッカーと呼ばれたハットの男は慇懃に告げる
「王の統治は絶対、ということは重々承知しております。ですが、この想定外の事態がどこに響くかは我々も想定できません。早急な対策をー」
『とうに知っておる』
王がつまらなそうに返す
『貴様、よもや
「はっ、無論にございます」
『
ふぅ、と王が嘆息を漏らす
『だが、その干渉からか、幾ばくかの《英霊》も呼び出されたようだな』
「なんと……⁉︎」
『狼狽えるな、タイムジャッカー。
くっくっ、と王が愉快そうに笑う
『それに、
「さすがは王……ぬかりありませんな……」
「英雄王、ギルガメッシュ様」
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ソウゴ、ウォズの墜落地点 どこかの森林
ぷすぷすと煙を上げるタイムマジーンからよろよろとソウゴとウォズが現れる
「いてて……いきなり攻撃なんて……」
「大丈夫かい、我が魔王」
ソウゴよりは負傷が少ないウォズがソウゴの手を取る
「ありがとう、ウォズ。にしても、ここどこ……?」
周りを見回しながら、ソウゴが途方にくれた声を上げる
背の高い木々がそこら中に生い茂った深い森だ
意外にもそこまで暗くはなく、視界も良好ではあるが、いかんせんここはB.C.2600である
「地図もデータもほぼ無い、流石にね」
「だよね……」
タイムマジーンの中になら、何かデータが見つかるかもだが、墜落でほぼ機能がダウンしてしまっている
「参ったな……」
ヒュヒュヒュヒュンッ!!
途方に暮れるソウゴの耳に妙な風切り音が響く
「‼︎我が魔王‼︎」
ウォズの叫びに咄嗟にソウゴが横へ飛ぶ
そのコンマ数秒後、凄まじい衝撃音と共に土煙が巻き上がる
「な、何⁉︎」
見ると先程までソウゴとウォズが立っていた場所にいくつもの小クレーターが形成されていた
反対側に回避したウォズは空を見つめている
その視線を追ったソウゴの目には、
空中に浮かぶ人影が写っていた
「……人間?」
浮かぶ人影は逆光でよく見えなかったが、段々と目が慣れてきた
その人影は女性のようだった。黒髪のツインテールが風に揺れている
服装はかなり軽装で、一見するとビキニ姿にも見えるが、ところどころに煌びやかな装飾がされている
陶器のように艶やかな白い肌には黒い刺青のような模様がいくつも走っている
そして何よりも、ゾッとするほど冷ややかな金色の視線がソウゴの目を引いた
「……私を、人間と……フッ、不遜極まりないわね。人間」
女性が冷ややかな笑みを浮かべる
「いや、違うわね。王の言葉を借りれば『魔王』だったかしら?」
「え?キミ、俺を知ってるの?」
予想だにしない女性の言葉にソウゴが思わず聞き返す
それに女性は嗜虐的な笑みを返す
「気安いわよ人間。それに、魔王ですって? 不敬極まりないわ。唯一にして絶対のギルガメッシュ王以外にそれを名乗るなんてね‼︎」
怒気が溢れる声とともに、女性の背後にその身の丈以上に巨大な弓が出現する
「我が魔王、どうやら向こうはやる気のようだよ」
「……だね、なんかやばい気がする」
ソウゴが引きつった笑みを浮かべる
「でも、やるしか無い‼︎」
とソウゴがどこからかバックルのようなものを取り出し、腰に当てる
《ジクウドライバー‼︎》
それを見たウォズがやれやれ、と愉快そうに笑う
「それでこそ我が魔王だ」
ウォズも腰にベルトを装着する
《ビヨンドライバー‼︎》
立ち上がった二人はそれぞれその手に懐中時計のようなものを握りしめ、その竜頭をノックする
《ジオウ‼︎》
《ウォズ‼︎》
音声を発したウォッチをソウゴがそのドライバーにはめ、ドライバー頂部のスイッチを押す
同時に、ドライバーからチク、タク、チク、タクと時計のような音が流れ、ソウゴの背後に巨大で複雑な時計が現れる
脚を広げ、独特な構えを取り、告げる
「変身‼︎」
ドライバーを、ぐるりと回す
《ライダータイム‼︎》
《仮面ライダー‼︎ ジオウ‼︎》
ドライバーの音声と共に、ソウゴの周囲にぐるぐるとエネルギーで構成されたベルトが回転、その内部でソウゴの姿が変化していき、強化服のような姿が完成すると、背後の時計盤から《ライダー》の文字が飛び出し、そのマスクへと収まる
仮面ライダージオウ
これが、ソウゴが魔王と呼ばれる由縁
いつか時を統べる魔王の正装である
「変身‼︎」
《アクション‼︎ 》
ウォズもそのウォッチをドライバーに装填、バックルに向けて畳み込む
テクノポップな音楽と共に、その周囲にホログラフじみたエフェクトが現れる
《トウエイ‼︎》
《スゴイ‼︎ ジダイ‼︎ ミライ‼︎》
《仮面ライダーウォズ‼︎ ウォズ‼︎》
ホログラフがウォズの体に収束、銀の強化スーツを描くと共にそのスーツが実体化し、その身に装着される
そのマスクには、青い《ライダー》の文字が描かれている
仮面ライダーウォズ
ある手段でウォズが手に入れたジオウと同じ仮面ライダーの力である
「準備は終わりかしら? なら死になさい」
冷ややかな宣言と共に女性の背後の弓から光の矢が何本も放たれる
ジオウとウォズはドライバーから実体化させた剣ージカンギレードと槍ージカンデスピアでそれを弾く
「どうやら、タイムマジーンを落としたのも彼女のようだね」
「どうにか撃ち落とさないと‼︎」
《ジュウ‼︎》
ジカンギレードを銃形態に変化させ、宙に浮かぶ女性に向けて放つ
が、その銃撃はその体に命中することなく、見えない壁に弾かれる
「なめないでほしいわね。その程度効くわけないでしょ?」
涼しい顔をしながら、更に大量の矢が放たれる
「だったら直接、落とす‼︎」
《フォーゼ‼︎》
それを見たジオウが新しいウォッチを取り出し、ドライバーの左側に装填する
その間、降り注ぐ矢をウォズがジカンデスピアで弾く
「我が魔王、今のうちに」
「ありがと‼︎」
ジオウが再びドライバーをぐるりと回す
《アーマータイム‼︎》
《スリー、ツー、ワン‼︎》
《フォーゼ‼︎》
音声と共にジオウの前に人型にまとまったアーマーが出現
何やら一旦縮こまり、大の字のようなバンザイポーズを決めると人型からロケットのような状態に変化し、宙に浮かぶ女性の前を撹乱するかのようにぐるりと飛行し、ジオウに装備される
最後にジオウのマスクに《フォーゼ》の文字が収まる
「宇宙に、行く‼︎」
姿を変えたジオウは何やらトンチンカンな宣言と共に、両腕のロケットユニットを点火、件の女性に向けて飛び出す
「え、ちょっ、はぁっ⁉︎」
流石に面食らったのか、うまく防御姿勢を取れずそのままジオウが腰にしがみつくのを許してしまう
「しまっ!?」
「おりゃああああああああ!!!」
気合い一喝、そのままロケット噴射の方向を無理やり変え、勢いよく地上に降下し、女性を地面に叩き落とし、離脱する
「よし、これでー」
「ーセット」
ズガァァァァン!!!!
油断していたジオウの背後で凄まじい爆発が起き、盛大にジオウが吹き飛ばされる
「おわぁあああああぁああぁああ!?」
吹き飛ばされたジオウはウォズの目前に頭から地面に突き刺さる形で落下してくる
「大丈夫かい、我が魔王!?」
ウォズがジオウを助け起す、と共に、土煙が一気に晴れる
「ふ、ふふふ、やってくれたわね、魔王!!」
巨大なクレーター状に抉れた地面の中央、そこに墜落したはずの女性がにこやかに浮いていた
ーその身からドス黒いプレッシャーを吹き上がらせて
「油断したわ、ええ、油断してたわ!!まさかこの天の女主人、イシュタルにそんな汚い手で触るどころか、土を付けるヤツが来るなんて、夢にも思わないものね!!」
よく見るとそのイシュタルと名乗った女性のつま先にほんのすこしだけ土が付いていた
「え、えぇ⁉︎ それっぽっちの汚れで⁉︎」
「……我が魔王、多分そういうことじゃない」
的外れな方向に驚くジオウにウォズがやれやれとつっこむ
が、二人共に即座に警戒態勢をとり、武器を構え直す
イシュタルの放つプレッシャーが、更に強烈で冷ややかなものに変わる
「いいわ、いいわよ。身の程知らずな人間。この女神イシュタルを、本気で怒らせたこと、億万回でも後悔させてあげるわ!!」
「……なんだか、超ヤバイ気がする……」
ジオウがマスクの下に冷や汗を垂らした
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ゲイツ・ツクヨミ墜落地点 どこかの山岳地帯
「ツクヨミ!!」
赤いスーツの仮面ライダーの呼びかけに反応し、ツクヨミが飛び退る
同時にその地面から赤い槍のようなエネルギーが噴出、ツクヨミが今まで立っていたであろう場所を焼き払う
「人間にしてはしぶといですね。魔王、というものの仲間は特別ということかしら」
赤いライダーとツクヨミの前に悠然と歩み出てきたのは黒い装束を纏った金のツインテールを揺らめかせる女性
仰々しい装飾のある黒装束は露出が少ないが、所々から覗く白い肌には黒い刺青が走っている
その手には身の丈以上に巨大で重厚な槍が握られている
「大人しくなさい。異分子とはいえ、貴方方も人間。冥界では等しく安寧を、このエレシュキガルが約束します」
エレシュキガルと名乗った女性は金色の瞳で冷ややかに二人を睨み、告げる
「冥界……つまり死ねということか」
赤いライダー、ゲイツが変身した仮面ライダーゲイツが悪態をつきながら立ち上がる
「すまんがそれは、できん相談だ‼︎」
《ウィザード‼︎》
ウォッチをジオウと同じドライバーに装填、ぐるりと回転させる
《アーマータイム‼︎》
《プリーズ‼︎》
《ウィザード‼︎》
音声と共にゲイツの頭上に魔法陣が出現、変形し、ローブのようなアーマーとなってゲイツに装着される
《ジカンザックス‼︎ おーのー‼︎》
ドライバーから斧型武器ージカンザックスを取り出し、先程ドライバーにはめたウォッチを装填する
《フィニッシュタイム‼︎》
《ウィザード‼︎ ザックリカッティング‼︎》
ジカンザックスを振り回しながらそれを巨大化、そのまま勢いをつけてエレシュキガルに振り下ろす
ギャリィィィィン!!
派手な擦過音が響く
巨大化した一撃はエレシュキガルを、
否、その槍に阻まれていた
「何ッ……!?」
「緩いわ」
易々とエレシュキガルはゲイツの必殺の一撃を跳ね返す
「バカな……!?」
「なめないで。女神である私が、貴方ごとき人間に押し負けるとでも?」
エレシュキガルが槍を振り回し、稲光るエネルギーをそこに収束させていく
明らかに必殺の一撃だ
「くっ‼︎」
「ー地の底まで、落としてあげ……ひッ⁉︎」
と、解放寸前だったエネルギーがエレシュキガルのかわいらしい悲鳴と共に霧散する
見るとその脚や腰に何やらボロボロな服を着たオレンジ頭の怪人がまるでゾンビのように縋り付いている
「あれは……?」
「ちょっ、引っ張らないでッ⁉︎ 離れなさい‼︎」
一喝と共に地面から突き出した杭がゾンビ怪人を貫く
貫かれた怪人たちはぐったりと脱力するとオレンジに泡立ち、消える
「ー人が神を超えるのは不可能、たしかにその通りだ」
ゲイツの背後から落ち着いた声が響き、一人の男性がその前に歩み出る
「えっ……」
「お前は……?」
「何人増えても同じです。人間では、私には……」
「いつ私が人間だと言った?」
男が不敵に笑う
「……貴方、まさか……⁉︎」
余裕綽々と、男は両の手をクロスに構える
ーその手に、ゲームカートリッジのようなガジェットを二つ構えて
「私は神、唯一神……檀 黎斗神だァ‼︎」
静かな佇まいから一変、ねっとりとした声で叫びをあげる
「グレード、X−0。変身‼︎」
壇 黎斗神はその手のガジェットをドライバーに装填、そのバックルのレバーを開く
《ガシャット‼︎》
《レベルアーップ‼︎》
《マイティアクショーン、X‼︎》
《デンジャー‼︎ デンジャー‼︎(ジェノサイド‼︎)》
《デス ザ クライシス……》
《デンジャラスゾンビ‼︎ Woooo‼︎》
目前に出現したボードを突き破り、変貌したその姿が露わになる
黒いボディに、欠損した白い装甲。まるで骨が浮き出したゾンビのような不気味な体を、これまたゾンビのようにぐにゃりと動かし、壇 黎斗神ー仮面ライダーゲンムはその赤と青に輝く双眸にエレシュキガルを捉える
「ヴェハハハハハハハハハハハ!!!!神は、私一人で十分だァ‼︎」
けたたましく笑いながらゲンムがエレシュキガルに向けて駆ける
「し、知らない
明らかに狼狽した様子で、完全にテンパったエレシュキガルの悲鳴が山岳地帯に響き渡った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ズガァァァァン、ズガァァァァン‼︎
「わ、わぁああああああ!?!?」
苛烈極まる空爆がジオウとウォズを襲う
森林だった一帯はこの空爆で木々がなぎ倒され、ぽっかりとハゲ地ができあがってしまった
「死ね、死ねェ!! 私にあんな恥辱を与えた罰よこれはァ!!」
天空からイシュタルの怒声が響き渡る
「あぁ、あぁッ!!もう我慢ならないわ。王には禁止されてるけど、これだけは流石に別よ別ッ!!」
と、イシュタルの背後に金色に煌めく穴が出現、その中にイシュタルが消える
「……あれ?助かった?」
とジオウが胸を撫で下ろす
その上空
更に遥か上
更に、更に天空
「あんなゴミに、これを使うなんてホントは嫌だけど、アレを地上に残しておくのはもっと癪に障る……ッ‼︎」
金星の公転軌道上
ヒトが宇宙と呼ぶそこに、イシュタルは漂っていた
その左手を金星にかざすと、そこに小さな金星が出現、
金色のエネルギー球に変化し、背後に控える弓、マアンナにつがえられる
その照準は無論、地球ージオウたちがいるバビロニア
「砕け散れ、《
銀河すら揺れる強大なエネルギーを放ち、矢ーというにはあまりにも強大で、あまりにも暴力的な、正しく神の一撃がジオウたちに放たれた
地上にも、光を超えたその一矢は既に確認可能だった
「………我が魔王、アレは……」
「え?アレ?あー、金星かな……って、なんかこっち来てるゥ!?」
ジオウとウォズでも流石に気づいたが、あまりにも遅い
金星に等しい概念質量の《矢》はもうすぐそこにー
【ー
突然、音が響いた
優しく、包まれるような音が
「………あれ?」
光の矢に焼き払わられた、と思い硬く目を瞑っていたジオウが、いつまでも来ない衝撃に疑問を感じ、その目を開ける
そこには、光り輝く鎖に縛り上げられた光の球体があった
徐々に締め付けを強めているようで、球体はどんどん縮小し、霧散した
「え、え??」
困惑するジオウとウォズの前に、その鎖がまるで生きているかのように降り、螺旋を描きながら姿を変えていく
体のところどころに苔の生えた、大雑把に人を象ったかのような土人形に
「うおっ!?」
【やぁ、大丈夫かい?】
声のような音を震わせ、土人形は恐らくジオウに向けて語りかける
「え、えっ⁉︎ キミ喋った……?」
【あぁ、すまないね。僕はこういう姿だが、キミたちと同じく知能や思考はあるんだ】
「驚いたな……こんな存在がいるのか……」
身振り手振りを合わせて話しかけてきた土人形に困惑しながらも、ジオウとウォズの二人は緊張を解いていく
「どういうつもりかしら?エルキドゥ」
と、上空から再びあの高圧的な声が響く
戻ってきたイシュタルが土人形ーエルキドゥを睨みつける
【どういうつもりも何も、こういうつもりだよ。イシュタル】
エルキドゥはそれに毅然と答える
【僕はサーヴァント・ランサー、エルキドゥ。ここにいる人間のー人理の味方さ】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ちょっ、もう‼︎ 寄らないで‼︎」
エレシュキガルの一喝と共に放たれた杭状の槍が紅の光を放ち、ゲンムを貫く
ゲンムの胸に表示されたライフゲージがあっけなくゼロになる
《GAME OVER……》
矢ガモの如き姿になったゲンムが脱力し、項垂れ、霧散する
「はぁっ、はぁっ……これなら、ひっ⁉︎」
一息ついたエレシュキガルの足元に紫の土管が軽快な音と共に出現、その土管から伸びた腕がエレシュキガルの脚を掴む
「ヴェハハハハハハハハハハハぁ……‼︎」
飛び退るエレシュキガルを尻目に、土管からゲンムが這い出てくる
胸のライフゲージは当然のごとく満タンになっている
「残りライフ、95……中々やってくれたなァ……‼︎」
実はゲンムは既に4回死んでいる
冥界の女神でもあるエレシュキガルも、きちりとその命が潰えたことを見ている。間違いなく死んでいた、4回とも
なのに、冥界に送れない。どころかよくわからない土管から這い出してくる
(わ、訳がわからない……‼︎ 神にしてもめちゃくちゃすぎるのだわ……‼︎)
内心ではめちゃくちゃパニックになっているがそれでも引き下がれない
この後ろには、我らが主神にして偉大なる《王》が統べる国があるからー
「ヴェハハハハハハハハハハハ、は?」
ゲンムのやかましい笑い声が疑問形に変わる
「なんだ、これは……?」
その後ろで戦いを見守っていたゲイツたちも困惑を露わにする
三人の周りに、桃色の花弁が舞い、霧が発生してきていたのだ
霧と花吹雪は段々とその勢いを増し、三人の姿を隠していく
しばらくするとその霧も、花吹雪も晴れて……
「い、いない⁉︎ 逃げられたのだわ⁉︎」
ゲイツたちの姿は、忽然と消えていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
山岳地帯 ある洞窟
「……ここは……?」
花吹雪と共に消えたゲイツたちは、いつの間にかこの洞窟にいた
側には同じく困惑しているツクヨミと、変身解除し落ち着いて辺りを見回している壇 黎斗神もいる
「やぁやぁ、急に連れてきてしまってすまない」
洞窟の奥から、もう一人分の声と、二人分の足音が聞こえてくる
現れたのは、白いフード付きローブを纏い、大きな杖を携えた青年と黒い鎧を身につけ、身の丈ほどある盾を携えたショートカットの少女
「貴様は……?」
ゲイツが再び変身しようとウォッチを構える
「そう警戒しないでくれ、明光院 ゲイツくん。僕はキミたちの味方……というよりか、依頼主と言った方がいいかな?」
「何……?」
青年の妙な言い回しでゲイツがあることを思い出す
「あの白いウォッチ、アレは貴様の仕業か?」
「ご明察。急に呼び立てて申し訳ないね…」
「改めて名乗ろう。僕はサーヴァント・キャスター。真名をマーリン」
「キミたちに、時代の修正を頼んだものだよ」
前々から構想してたのがようやく筆に乗りましたw
拙い出来ですが、楽しんでいただけたら幸いです(о´∀`о)