仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order   作:リョウギ

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第9話 「0690: 奪われた《魔王》」

「ゲイツ⁉︎なんで……ッ⁉︎」

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

 

ジオウへと変身しながら、ゲイツの強襲を受け止める

だが、ジオウ自身動揺が隠しきれていない

 

「お前が、お前が魔王にならない未来のためだ‼︎」

 

ジオウを弾き飛ばし、ジカンザックスの連撃を叩き込んでいくゲイツ

友達になるまでゲイツと共にいたからこそわかる

今のゲイツが本気だと言うことが…

 

《ジオウII ‼︎》

《仮面ライダー‼︎ライダー‼︎ジオウ‼︎ジオウ‼︎ジオウII ‼︎》

 

ジオウIIに変身してゲイツの猛攻に対抗、ゲイツを吹き飛ばす

 

「どういうつもりかは知らない。ゲイツが、本気で俺の為に何かしようとしていることもわかる……」

 

躊躇いながらも決意を固めたのか、ジオウIIはその拳を握り、サイキョーギレードを構え直す

 

「ーでも、俺は王になる夢を、最高最善の魔王になる夢を諦めない。そう決めたんだ‼︎」

 

「……お前なら、そう言うだろうと思っていた」

 

ゲイツが半ば諦めたようにそう呟く

 

《ゲイツリバイブ‼︎剛烈‼︎》

 

その手にゲイツリバイブウォッチを起動しながら

 

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

 

「ーだからこそ俺も、お前を本気で倒す……‼︎」

 

ゲイツリバイブ剛烈へと変身したゲイツがジカンジャックローを装備、突撃。ジカンジャックローとサイキョーギレードが打ち合い、火花を散らす

が、パワー特化の剛烈が徐々にジオウIIを押し上げていく

 

「くそッ‼︎ だったら‼︎」

 

ジオウIIのマスクの時計針が回転、その目に未来のビジョンをー

 

「無駄だ」

 

《スピードタイム‼︎》

《リバイリバイリバイ‼︎リバイリバイリバイ‼︎》

《リバイブ疾風‼︎》

 

リバイブウォッチを回転、パワー特化の剛烈から神速の疾風へとチェンジ

 

「フッ‼︎」

《スピードクロー‼︎》

 

ジカンジャックローをクローモードに変化させて突撃、未来視を終える前のジオウIIを吹き飛ばす

 

「ぐぁっ!!」

 

よろめいたジオウIIに休む暇もなく、次々とゲイツリバイブ疾風の連撃が突き刺さる

 

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

《のこ切斬‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

よろめくジオウIIの背後を取ったゲイツリバイブが剛烈へと変身、のこモードに変化したジカンジャックローののこ歯を叩きつけ、ジオウIIを吹き飛ばす

 

ゲイツの強化形態、ゲイツリバイブは元々『魔王を倒す救世主』の力として存在する

ジオウIIの未来視能力を、そのタイムラグすら追い抜く疾風

強化された攻撃能力を、その強化装甲で防ぎ圧倒する剛烈

格段に高い能力を持つジオウIIにとっても、天敵と言える力を持っているのだ

 

「終わりだ…」

《フィニッシュタイム‼︎》

 

ゲイツリバイブがドライバーを回転させる

 

「……いや、終わらない‼︎」

《フィニッシュタイム‼︎》

 

合わせてジオウIIもドライバーを回転

共に必殺キックの構えを取る

 

《一撃タイムバースト‼︎》

 

《トワイズタイムブレーク‼︎》

 

「ハッ‼︎」

「ハァァァァッ‼︎」

 

ジオウIIとゲイツリバイブ、両者の必殺の一撃が衝突

その衝撃波に世界が揺らぎ、地面がヒビ割れていく

最高最善の魔王を目指すソウゴも、魔王を倒さんとするゲイツも、共に本気なのだ

 

「ぐぁぁっ⁉︎」

 

本気の激突、押し負けたのはージオウIIだった

必殺の一撃故の大ダメージに変身解除されながら、ソウゴが地面を転がる

その目前に転がったジクウドライバーと、ジオウライドウォッチをゲイツリバイブが手にする

 

「……ッ‼︎ ゲイツ……‼︎」

 

ダメージに苦しみながら、ゲイツを見上げるソウゴを振り返り、逡巡しながらもゲイツリバイブは安堵する

 

「……これで、ソウゴは魔王にはならない……」

 

『ご苦労であったなぁ、ゲイツ♪』

 

倒れ伏したソウゴの背後から、武則天が姿を現わす

 

「武則天……‼︎」

 

よろよろと立ち上がりながら、ソウゴが女帝を睨む

 

「……ジクウドライバーはここだ。約束は果たしたぞ」

 

ゲイツリバイブが手にしたジクウドライバーを掲げながら女帝に告げる

 

「約束……?ゲイツ、約束って何?」

「お前のジクウドライバーを奪えば……あの女帝が新たな魔王になり、オーマジオウが生まれる未来を上書きする。そういう約束だった」

「それで……それでゲイツは……」

 

『うむうむ、だがなゲイツ。それはいらぬのだ』

 

「……何?」

 

武則天は何か印のようなものを刻み、油断しきったソウゴの背に手を押し当てる

 

「ぐっ⁉︎あっ……⁉︎」

 

苦悶したソウゴの胸から、灰色の《天命》がこぼれ落ち、武則天の手に収まる

 

「ソウゴ‼︎」

『くっふふふ〜♪ ようやく手に入れたぞ、魔王の《天命》』

 

ソウゴから奪った《天命》を満足げに眺めながら、武則天が微笑む

 

「貴様……‼︎ ジオウに何をした‼︎」

 

ソウゴを助け起こしながら、ゲイツリバイブが武則天を糾弾する

 

『簡単なことよ。常磐 ソウゴの、「生まれながら魔王になる」という《天命》を奪ってやったのじゃ。妾が最初から欲していたのは、こちら故にな』

「何……⁉︎」

 

『そも簡単な話じゃろう? 妾が王としてこの中華、否世界に君臨するならば、それ以外の王など邪魔じゃ』

 

『ましてや、ソウゴとやらは魔王となることが最早運命づけられておるであろう? ジクウドライバーとやらを奪ったところで、そやつは王へと進む』

 

『それならば《天命》を奪ってしまいさえすれば、妾の覇道は安泰であろう?』

 

武則天の言葉に、ソウゴが問いを投げかける

 

「《天命》を奪う……じゃあ、俺は……」

『ふむ、貴様はもう……』

 

『ー絶対に、王にはなれぬ、ということじゃな♪』

 

微笑む武則天の目前で火花が散る

ゲイツリバイブのジカンジャックローの刃と、武則天が取り出した剣がぶつかり合っているのだ

 

「ふざけるな……ふざけるな‼︎ ソウゴを魔王にしないために、なぜそこまでする必要がある‼︎」

『バカか貴様は?こやつは何をしようと魔王、オーマジオウになる。ならばこやつが王になる運命そのものを無くさねば、それは果たせまい?』

「違う、違う‼︎ そいつが、ソウゴが目指す王は、最低最悪の魔王なんかじゃない‼︎」

 

『ならば、なぜ貴様はそれを信じきれなかった?』

 

女帝の言葉に動きを止めたゲイツリバイブを武則天が吹き飛ばす

 

『ソウゴが、最低最悪の魔王にならぬ、なろうとしていないと知りながら、何故妾の甘言を貴様は信じた?』

 

『ーそれは他ならぬ貴様自身が、覆しようの無い運命に気づいておったから、であろう?』

 

「………黙れ……黙れ‼︎」

 

咆哮するゲイツリバイブを眺めながら、武則天は先程奪ったソウゴの《天命》を取り出す

 

『せっかくじゃ、《試着》といこうかの?』

 

《天命》を起動、武則天の手にジオウIIライドウォッチが、その腰にジクウドライバーが出現する

 

「ッ⁉︎」

「バカな……⁉︎」

 

《ジオウII‼︎ジオウ‼︎》

 

驚愕する二人の目の前で、ジオウIIライドウォッチを起動、ドライバーへと装填する

 

『へーんしん、じゃ♪』

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ライダー‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII ‼︎》

 

武則天のその姿が、ジオウIIへと変化する

 

『うむ、悪くないのぉ……なんじゃったか、えーと……』

 

と、何か思案し、思い出したように手を叩き、右手の人差し指を天に向ける

 

『ーなんだか、いける気がする、じゃったかの?』

 

「貴様ァ!!」

 

激昂したゲイツリバイブがジオウIIへと殴りかかる。剛烈のパワー溢れる拳や、蹴りを涼しい顔で受け流していく

 

「返せ……‼︎ その力を返せッ‼︎」

《のこ切斬‼︎》

 

ジカンジャックローのアッパーがジオウIIに迫る

ジオウIIはそれをー避けきれずに吹き飛ばされる

 

『ぬおっ⁉︎』

 

涼しい様だった武則天のジオウIIが少し狼狽した様子を見せる

 

『あたた……なんじゃ、ジオウIIとやらはこんなものなのか?』

 

不思議そうにその手を見るジオウIIを見てゲイツリバイブは思案する

 

(あの攻撃、ソウゴのジオウIIならば避けれたはず。それどころか、先読みを含めて反撃も……)

 

ゲイツリバイブは確信する

 

(ー武則天は、ジオウIIを扱いきれていない‼︎)

 

「ならば‼︎」

《スピードタイム‼︎》

《リバイブ‼︎疾風‼︎》

 

ゲイツリバイブ疾風に変身し、そのスピードでジオウIIへと連撃を仕掛けていく。ジオウIIはジカンギレードとサイキョーギレードを取り出すが、ゲイツリバイブの読み通りその動きをさばききれていない

 

『待て待て、そんなもの反則じゃろう⁉︎』

「速攻で終わらせる‼︎」

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《百烈タイムバースト‼︎》

 

ゲイツリバイブ疾風の連続蹴りがジオウIIを怯ませる、そしてその勢いで飛び上がったゲイツリバイブが必殺の一撃を超スピードでジオウIIへとー

 

『ーかかったのう♪』

 

「何⁉︎」

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《キング‼︎ギリギリスラッシュ‼︎》

 

素早く合体、必殺待機されたサイキョージカンギレードの光刃が高速で迫るゲイツリバイブに、カウンターの要領で叩き込まれる

 

「がっ、ああああああああああああッ!!!!」

 

あまりのダメージに、ジオウIIの遥か後方まで吹き飛ばされ、ゲイツリバイブの変身が解除される

 

「ゲイツ‼︎」

 

負傷したゲイツにソウゴが駆け寄る

 

『そなた、まっすぐじゃのう。それともアレか?友の夢を奪われた怒りで我を忘れておったか?』

 

二人を見下ろし、ジオウIIが嗤う

 

『そなたの未来なぞ、しっかり見えておったとも。故に、それを見越して芝居をし、そなたが確実に倒れ伏す一撃を作った、それだけのことじゃ』

 

サイキョージカンギレードを弄びながらジオウIIが続ける

 

『ソウゴのジオウIIで倒せなかったそなたを、妾のジオウIIは倒した。どうじゃ?これで、名実共にジオウは妾のものじゃ♪』

 

変身解除しながら嗤う武則天を睨みつけ、地面を殴りつけるゲイツ

 

『ふむ、まぁこれでそなたらは用済み。妾の国に不要となった』

 

武則天が指を鳴らし、酷吏を三人呼び寄せる

 

『そやつらを始末しておけ』

「ハッ」

 

武則天が姿を消すと共に、酷吏たちはその手に《天命》を構えて起動

 

《カンウ‼︎》

《アル・カポネ‼︎》

《ヤーノシーク‼︎》

 

《天命》が変化したパーカーをその身に纏い、それぞれの手に青龍刀、マシンガン、斧といった武器を構え、ソウゴたちににじり寄ってくる

 

「おりゃあ!!」

 

先陣を切った青龍刀酷吏にソウゴが突撃し、押さえる

 

「ジオウ…‼︎」

「ゲイツ‼︎逃げろ‼︎」

 

よろよろと立ち上がるゲイツを庇いながら、ソウゴが叫ぶ

だが、そんな抵抗効くはずもなく、青龍刀酷吏はソウゴを押し退ける

 

「ぐっ⁉︎」

 

倒れたソウゴにマシンガン酷吏の銃口が向けられる

 

「ソウゴッ!!」

 

「てぇーい!!」

 

叫ぶゲイツの背後から、何ものかが飛び出し、手にした棒でマシンガン酷吏を吹き飛ばす

 

「ふぅ、危機一髪ってところね。間に合ってよかったわ」

 

現れたのは、白い法衣を纏った若い女性。マシンガン酷吏を吹き飛ばした棒を構え直しながら、酷吏たちを睨む

 

「何かは知らないけど、戦えない子たちを寄って集って攻撃だなんて見過ごせないわ。覚悟しなさい‼︎」

 

他の酷吏たちと乱闘を始める法師に呆気にとられていたゲイツの前に、手が差し伸べられる

 

「大丈夫か?」

 

そこにいたのは緑のセーターを着た青年

そのままゲイツを助け起こし、ソウゴにも肩を貸す

 

「アランくんはその子たちを連れて下がってて‼︎少しキツイかもだけど、ここは私がー」

「いや、手を貸そう。私も戦える」

 

ゲイツたちを下がらせたアランと呼ばれた青年はその手に、《天命》とよく似た緑のデバイスを握り、起動する

 

《ステンバーイ》

 

起動したデバイスを、左腕に装着された別のデバイスに装填、それを立ち上げる

 

《イエッサー》

《ローディング…》

「変身」

 

デバイスのスイッチを起動する

 

《テンガン ネクロム》

《メガウルオウド》

 

デバイスのガイド音声と共にアランの全身が白と緑のスーツに覆われ、デバイスから黒と緑のメカニカルなパーカーが出現、酷吏たちを吹き飛ばしながら、スーツへと装着される

 

《クラッシュインベイダー‼︎》

 

変身完了と共にマスクの単眼と、パーカーを走るパイプが緑に発光する

 

「仮面ライダーだと……⁉︎」

 

驚愕するゲイツに一瞥もくれず、パーカーを下ろしたアランの変身した仮面ライダー、仮面ライダーネクロムは酷吏たちに突撃する

 

「フッ‼︎」

 

法師の背に斧を振り上げていた斧酷吏の斧を受け止め、がら空きの腹にキック、斧酷吏を吹き飛ばす

 

「大丈夫か?三蔵法師」

「うん!なんだかわからないけど、助かったわ‼︎」

 

三蔵と呼ばれた法師が笑顔で答えながら、再び出現させた棒で青龍刀酷吏の得物を弾き、突き飛ばす

その別々の酷吏を相手取る二人に、マシンガン酷吏が銃口を向ける

 

「ーグリム、力を貸してくれ」

 

それを視認したネクロムはその手に緑色の《天命》ー否、眼魂(アイコン)を取り出し、起動。左腕のデバイスーメガウルオウダーに装填、起動する

 

《テンガン グリム》

《メガウルオウド》

 

今まで着用していたパーカーが離脱、新たにメガウルオウダーから出現した深い緑のパーカーがマシンガン酷吏の乱射を防ぎ、斧酷吏を吹き飛ばしながらネクロムへと着用される

 

《ファイティングペン‼︎》

 

「フッ‼︎」

 

襟を正したネクロムの両肩、パーカー部分に装着されていたペン先型ビットがケーブルを伸ばし離脱、立ち上がり再び乱射を始めたマシンガン酷吏の弾丸を弾く

ネクロム本体はそのまま斧酷吏に相対、巧みにその斧を反らしながら攻撃を加え、ダメージを与えていく

 

「ハッ‼︎」

 

マシンガン酷吏をケーブルで拘束し、斧酷吏を蹴り飛ばした方に投げ飛ばす

 

「よっ、と‼︎」

 

三蔵がそれに合わせて斧酷吏たちの方に青龍刀酷吏を突き飛ばす

 

「アランくん、お願い‼︎」

「任せろ」

 

《デストロイ》

《ダイテンガン グリム》

《オメガウルオウド》

 

肩から離脱したビットが酷吏たちの目前に目のような紋様を書き上げ、それに合わせてネクロムが跳躍

 

「ハァッ!!」

 

その紋様ごと、酷吏の三人を必殺のキックが貫く

よろめいた酷吏たちは緑に輝くエネルギーをスパークさせ、黒い液体に弾けて霧散した

 

「すごい……」

 

それを見ていたソウゴが感嘆の声を上げる

変身を解除したアランと三蔵がこちらに向き直る

 

「……ッ」

 

警戒してライドウォッチを取り出しかけたゲイツだが、ダメージが残っていた故に苦悶の表情を示し、膝をつく

そんなゲイツを慌てて三蔵が抱き止める

 

「大丈夫、安心して。私たちはさっきの人?たちとは違うわ。仲間かどうかは、あなたたちの事情を聞かないとわからないのだけど…」

 

ゲイツに肩を貸した三蔵が笑顔でそう伝える

 

「改めて、私はアラン。そちらは三蔵法師、確かサーヴァント、と言っただろうか。訳あって今は共に行動している。ひとまず、私たちの拠点まで案内しよう」

 

そう言いながら手を差し伸べるアランの手を取り、ソウゴが微笑む

 

「俺は常磐 ソウゴ、あっちは明光院 ゲイツ。ひとまずよろしく、アラン、三蔵さん」

「ああ、よろしく頼む、ソウゴ」

 

そんなソウゴをゲイツは一瞥し、すぐに視線を逸らした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ッ‼︎」

 

ギィンッ‼︎

武周首都、その通りのど真ん中でナイフを携えた酷吏とマシュの激突が繰り広げられている

周囲にいた人々は、皆女官たちがどこかへと避難させ、通りには二人とツクヨミしか残っていない

マシュに切りつけるナイフ酷吏のパーカーにツクヨミのファイズフォンXのエネルギー弾が命中し、火花をあげる

 

「イヤァァァァッ!!」

 

その隙を突いてマシュが十字盾でナイフ酷吏を弾き飛ばす

 

「ツクヨミさん、ありがとうございます……」

 

肩で息をしながらマシュがツクヨミの方を向く

 

「気にしないで、むしろ私にはこれしかできないから」

 

油断なくナイフ酷吏にファイズフォンXを向けながらツクヨミが返答する

瞬間、ナイフ酷吏が動く

 

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

ナイフ酷吏の背から伸びる煙突状パーツから霧のような煙が噴出され、視界が一気に悪くなる

 

「ッグッ⁉︎ ゲホッ、ゴホッッ!!」

 

煙を吸い込んだマシュが口を押さえ、体をくの字に曲げて苦しそうに咳き込む

 

「ケホッ、こ、れは……ッ‼︎」

「マシュ‼︎」

「ツクヨミさ、ケホッ‼︎ 口を、塞いでくださいッ‼︎ゴホッ‼︎これを吸ってはいけないッゴホッゲホッ‼︎」

 

マシュの言葉に従い、ツクヨミも口と鼻を押さえる

マシュの言葉は正しく、口と鼻を押さえた今でも喉や鼻の奥がチリチリする

 

(ッ‼︎マシュ‼︎)

 

よろめき、膝をついたマシュの眼前、そこにナイフを振り上げたナイフ酷吏が現れる

ファイズフォンXを急いで構えるが、間に合わないー

 

「ーなんで、わたしたちの力を使えるの?おねえさん」

 

あどけない声が、霧で霞む夜闇に響く

ナイフ酷吏が周囲を見渡す、が姿は見えない

 

「ーおねえさん、悪いひと? いいひとかな?」

 

再び声が響く

流石の酷吏も恐怖を感じたのか、狼狽しながら周囲を見渡す

 

「ーまぁ、いいや。わたしたちの力使ってるから…」

 

「ー解体するね?」

 

ナイフ酷吏の背後、霧の奥から小さな影が霧を掻き分けてナイフ酷吏に飛来、その体をすり抜ける

ナイフ酷吏の眼前に着地したのは、身軽そうな服に身を包んだ白髪の幼い少女

 

「ッ、新たな標的確認。即時処分をッ⁉︎」

 

少女を視認して、そのナイフを振り上げかけた酷吏がぴたりと動きを止める

 

「ー此よりは地獄、わたしたちは、炎、雨、力……」

 

月夜、霧、そして女性

酷吏はあまりにも《犠牲者》として整いすぎていた

ー霧夜に潜む、ある狂気の犠牲者に

 

「ー殺戮を此処に……」

 

立ち上がった少女は、その手にギラりと輝く不釣り合いなモノを振り払い、その碧眼でナイフ酷吏を振り返りちらと見る

そして、告げるー

 

「《解体聖母(マリア・ザ・リッパー)》」

 

瞬間、ナイフ酷吏の体がバラバラと崩れ、黒い霧状に霧散していく

しゃがんで咳き込むマシュとその背をさするツクヨミの前に少女がしゃがみこむ。二人の目にこちらを見上げる少女の顔が映る

 

「鎧のおねえさん、大丈夫?」

「あ、あなたは……まさッか…」

 

「わたしたち?わたしたちは、サーヴァント・アサシン。うんとね、真名は……言ってもいいのかな?まぁいいや、おかあさんもいないし。真名はジャック・ザ・リッパー。もしかしておねえさんたちもサーヴァント?」

 

ジャック・ザ・リッパーを名乗った少女は首を傾げながらツクヨミたちを見つめる

 

(ジャック……もしかして切り裂きジャック?この女の子が……?)

 

その名を聞いたことの無いものの方が少なかろう

ジャック・ザ・リッパー、切り裂きジャック

かつてロンドンを恐怖に陥れた連続殺人鬼

霧深い夜に暗躍、何人もの女性を殺害、解体してきた形ある狂気

 

それと同じ名前を持つ少女は、今も心配そうにマシュを見つめている

 

「おねえさんたち、なんだか不思議。どうしてだかわからないけど、おねえさんたちは解体しちゃダメな気がする」

 

くるくるとナイフを指先で回しながらそう呟くと、そのナイフをホルスターに収める

 

「で、は……ジャックさ、んは……ゴホッ、私、たちの……」

「うん。解体しないよ。それよりも、鎧のおねえさんは今は喋らないほうがいいよ?多分、肺が壊れかけてるから」

 

マシュをまじまじと眺めたジャックはあどけない声でそう告げる

 

「わかるの?」

「なんとなく。わたしたちのスキルだと思う。それに、さっき解体したおねえさん、わたしたちの力を使ってたならきっと、さっきの霧はすごくものを溶かすから」

 

ジャックの言葉に従い、マシュを近くの壁にもたれさせる

それを近づいてきながら眺めていたジャック。突如その目を細めて通りの向こうに太もものホルスターから抜いた小さなナイフを投擲する

 

「ーおねえさんたち、また来たの?」

 

ジャックが睨む先、そこに現れたのは二人の新たな酷吏

 

「標的確認。命令遂行」

 

《ニコラ・テスラ‼︎》

《ルイス・キャロル‼︎》

 

各々に《天命》を取り出し起動。各々パラボラアンテナ状のモジュールが付いたパーカーと絵本のような装飾が目立つパーカーを装着する

 

「今度は二人……ふふっ、たくさん解体できるね」

 

電気酷吏とブック酷吏を見据えたジャックは、その名に違わない嗜虐的な笑みを浮かべる

 

「ー解体の時間だよ♪」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「うんまい‼︎ このたこ焼きすごいおいしい‼︎」

 

アランに案内された先、街の片隅にあった屋台の側のベンチでソウゴがたこ焼きに舌鼓を打つ

 

「でしょでしょ!アランくんのたこ焼きは最高なのよ♪」

「そこまで言われると、流石に照れる」

 

ソウゴと並んでたこ焼きを頬張る三蔵が笑顔で答え、その言葉にアランが赤面する

 

「ほら、ゲイツも食べてみてよ」

 

屋台の影で三人から離れて佇むゲイツにソウゴがたこ焼きを差し出す

それに一瞥もくれず、ゲイツはソウゴに背を向ける

 

「……さっきのこと、まだ考えてる?」

「当たり前だ。俺は、取り返しがつかないことをしたんだぞ……‼︎」

 

ダンっ‼︎と屋台の壁をゲイツが悔しげに殴りつける

血でも流れそうなほどに握りしめたその手からは、ゲイツのいいようの無い複雑な感情が読み取れてしまう

 

「ねぇ、ソウゴくん…だっけ? その、私たちが来る前に何があったの?」

 

三蔵がソウゴの背後から心配そうに声をかける

 

「私にも良ければ聞かせてくれないか?力になれるかもしれない」

 

アランも屋台から出てソウゴの方を向く

 

「わかった。えっとじゃあどこから話そうか……」

 

「ぎゃてぇ⁉︎ なんて酷いことに……その前の歴史の歪みとかも一大事だけど、それよりもソウゴくんの方が今は大変ね……」

 

ソウゴから今までの事情を聞いた三蔵は申し訳なさそうに俯く

 

「うん、まさかこんなことになるなんて思ってもなかったから、俺も少し混乱している」

「……その割には随分と落ち着いているように思うが…」

 

案外ケロっとした様子のソウゴにアランが不思議そうな顔を向ける

 

「うん、大変だけど、俺がやらなきゃいけないことはもう決まってるからね」

 

食べ終えたたこ焼きの紙パックに視線を落としながらソウゴが続ける

 

「ゲイツを、こんな風に騙したんだ。あの女帝には、一言ガツンと言ってやらないと。それでジクウドライバーも取り戻す」

 

ソウゴの力強い言葉に、沈んでいた三蔵も微笑みを返す

 

「強いのね、あなた。うん、決めた!私もあなたに力を貸すわ、ソウゴ‼︎ あなたの話を聞く限り、多分その女帝を倒すには私の力もいるのでしょう」

 

ソウゴの頭を三蔵が撫でる

 

「それに、ここであなたを見捨てたら、お釈迦様に怒られちゃうものね」

「三蔵法師……ありがとう」

 

屋台を片付け終えたアランもソウゴに告げる

 

「私も無論力を貸そう。ようやく、私が呼ばれた理由がわかった。ならばそれを為すだけだ」

「ありがとう、アラン」

 

二人は硬い握手を交わす

 

それをゲイツは、屋台の影から聞いていた

 

「……俺は、俺は……」

 

頭を抱え、一人呻く

そんなゲイツを三人が心配そうに見つめる

 

「ゲイツくん、相当参っているわね……」

「無理もない。友を思ってやったことが、その友を裏切る形になってしまったんだ……」

 

ネクロムゴースト眼魂(アイコン)を取り出し、握りしめながらアランが続ける

 

「ー私も、同じ誤ちを犯してしまうところだったことがある」

 

項垂れるゲイツの背中をソウゴは呆然と眺める

 

「……ゲイツ……」

 

と、その時、アランの懐から白い眼魂(アイコン)が飛び出し、ソウゴの胸へと入る

 

「なっ、サンゾウ⁉︎」

「へ⁉︎私⁉︎」

「いや、違う。私が持っていた、私の世界の三蔵法師の魂が……」

 

瞬間、ソウゴの姿が変化。その頭に三蔵が被っているものとよく似た帽子を被り、手には錫杖まで握られている。心なしか、雰囲気も変化しているように見える

 

『明光院 ゲイツ、貴方は迷っています』

 

念仏のような抑揚のない声でソウゴ(?)がゲイツに声をかける

 

「………わかっている」

『貴方は信念を見失った。つまり貴方は進むべき道を見失ったということです』

「………」

 

沈黙を続けるゲイツの肩を掴み、振り返らせ、その鳩尾に掌を当てる

 

「⁉︎ 何をー」

『見つめ直しなさい。貴方が進むべき道を』

 

と、ソウゴ(?)が告げるとゲイツの姿が消える

 

「え、えぇっ⁉︎ ゲイツくんどこに行ったの⁉︎」

『案ずることはありません。もう一人の、未だ旅の途上である私よ』

 

ソウゴ(?)が三蔵へと向き直り、微笑む

 

『貴女なら知っているはずです。旅に惑い、その先に辿り着ける強い信念、その力を』

 

ぽかんとその言葉を聞いていた三蔵に礼をし、今度はアランに視線を移す

 

『しばし、この場を離れます。彼を見届けねばなりません』

「……わかった。よろしく頼む」

 

アランの了承に礼をすると、ソウゴから白い眼魂(アイコン)が飛び出し、どこかへと飛び去る

 

「………」

 

呆気に取られた様子の三蔵にアランが向き直る

 

「彼女は、私の世界で出会った貴女とは違う三蔵法師、その魂だ」

「……そっか、アランくんはもう私に会ってたのね」

 

驚いていた三蔵だが、アランの言葉を聞き、どこか得心したように微笑む

 

「あなたと出会えたのは、お釈迦様のお導きかもしれないわね」

 

 

「う〜ん……あれ?ゲイツは⁉︎」

 

サンゾウゴースト眼魂(アイコン)が抜けて気を失っていたソウゴが起き上がり、辺りを見回す

 

「彼はサンゾウが、恐らく修練場に連れて行った」

「サンゾウ……?ここにいるけど……」

「いや、彼女ではない。私が力を借りている私の世界の三蔵法師、その魂だ」

「………なるほど……?」

 

首を傾げながら、半信半疑と言った様子でソウゴが頷く

と、そこに新たな人影が現れる

現れたのは、十字槍と長剣を装備した二人の酷吏

最初から《天命》を身に纏い、臨戦態勢だ

しかもその後方にはゾロゾロと面を隠した酷吏を引き連れている

 

「是が非でもソウゴを仕留めるつもり、ということか」

《ステンバーイ》

《イエッサー》

 

メガウルオウダーを立ち上げ、アランが臨戦態勢を取る

 

「ごめん、力になれないけど…」

「気にしないで、ソウゴ。ここは私たちに任せて‼︎」

 

錫杖を腰だめに構え、三蔵も構える

 

「変身」

《テンガン ネクロム》

《メガウルオウド》

《クラッシュインベイダー‼︎》

 

ネクロムへと変身したアランが三蔵と並び立ち、フードを下ろす

 

「心の叫びを、聞け‼︎」

「御仏の加護、見せてあげるわ‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

二人に増殖したブック酷吏がヒラリヒラリとジャックのナイフをかわしていく

 

「解体、しづらいなぁ、もう‼︎」

 

しびれを切らしたジャックがくるくると舞いながら、二人のブック酷吏をなますに斬り下ろす

だが、斬り刻まれたブック酷吏は両者とも紙のページに変化、その先に電気酷吏と共にエネルギーを貯めるブック酷吏の姿が映る

 

「えっ?」

 

電気酷吏たちが放つエネルギーボールがジャックに着弾、小さな体が大きく吹き飛ばされる

 

「ジャック‼︎」

 

吹き飛ばされたジャックは、すぐに立ち上がる

カラン、

が、その左手からナイフがこぼれ落ちる。その左手はだらんと力なく垂れている

 

「バチバチ、痛いの嫌い……‼︎」

 

右手でナイフを構えながら、ジャックが二人の酷吏を睨みつける

ジャックへと、二人の酷吏が再びエネルギーボールを作り出しながらにじり寄ってくる

 

そんなジャックを心配そうに見つめるツクヨミ、その側に人影が現れる

 

「ちょっといいか?お嬢さん」

「え?」

 

急にかけられた声にツクヨミが驚きながら振り返る

そこに立っていたのは、何やら細長いケースを持ち、現地の人らしい少女を抱きかかえた青年

 

「……あなたは?」

「すまないが、ちょっとばかしこのレディ預かっておいてくれ」

 

抱き上げていた少女をツクヨミに預けると、そのまま酷吏に足を向ける

 

「待って、何するつもり⁉︎」

「決まってるさ、」

 

「レディを守るのはナイトの務め、だろう?」

 

ジャックの背にジャケットが被せられる

 

「ほえ?」

「下がってな、レディ。そんなボロボロな姿じゃ、可愛らしい顔が台無しだぜ?」

 

ジャックを下がらせながら、青年が酷吏の前に立ちふさがり、電気酷吏に手にしたケースを叩きつけ、更に慌てたブック酷吏を蹴り飛ばす

 

「貴様……⁉︎ 何者だ⁉︎」

「何者か?OK、答えてやろう」

 

青年は懐からナックルダスター状のデバイスを取り出し、左手に押し当てる

 

《レ・デ・ィ》

 

「俺は、紅 音也。伝説の男だ」

 

そうキザったらしく名乗った青年は、そのナックルをベルトに装填し、接続する

 

「変身」

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

入力に反応し、ベルトから太陽のようなエンブレムが浮遊、それを中心にして白亜のスーツが構築され、青年ー紅 音也に装着される

金のマスクに覆われ、閉ざされたその面は、まさしく騎士のよう

 

「さぁて、レディを寄って集っていじめる悪い子へのオシオキの時間だ……」

 

酷吏たちを白亜の騎士が指差す

 

「ー覚悟しな」




武周編第2話、おまたせしました‼︎

各酷吏たちですが、多分表記から勘のいい人は元ネタがわかるかと思いますw

激動の武周編、次回もお楽しみにです‼︎
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