仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order 作:リョウギ
「フッ‼︎」
白亜の仮面ライダー、仮面ライダーイクサの拳が電気酷吏に撃ち込まれる
よろめいたその体に容赦なくラッシュが叩き込まれ、フィニッシュで蹴り飛ばされる
「どうした、アンテナの化け物? その程度か?」
肩をすくめながらイクサが挑発する
負けじと両腕から電撃を放ち、イクサをよろめかせるが、イクサはそれをものともせずに近づき、チョップの要領で繰り出された電撃を纏った一撃を受け止め、電気酷吏をホールドする
「さぁて、おしりペンペンだ」
《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル》
《ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》
ベルトを操作、エネルギーをスパークさせながらイクサナックルを取り外すと、それを電気酷吏の鳩尾へと叩き込み、ゼロ距離でエネルギーを炸裂させる
「ッ⁉︎ッッ‼︎」
全身に流し込まれた膨大なエネルギーの奔流にもがき、力尽きた電気酷吏が爆発、霧散する
残ったブック酷吏は分身を作り出し、ジャックたちを取り囲む
「う〜やっぱり、斬りづらい……‼︎」
斬っても斬っても斬撃が本体に届かず、ジャックが眉をひそめる
「そこの嬢ちゃん」
「?わたしたち?」
ジャックを呼び止めたイクサが頭を指差す
「頭の上に注目だ」
「?」
イクサの言う通り、ジャックがブック酷吏の頭の上を見る
すると、大多数のブック酷吏は頭に何も乗っていないのに、一体のブック酷吏だけは頭に鳥が乗っている
「‼︎ 見つけた‼︎」
ジャックが鳥が乗っているブック酷吏にナイフを投げつける
ナイフが胸に突き刺さり、そのダメージ故にか分身たちが纏めて消滅し、本体が残る
「上出来だ」
よろめくブック酷吏にイクサナックルからの光弾が直撃、霧散していく
酷吏たちを倒し、不調のマシュをツクヨミが支えながら近くの空き家へと移動する
「マシュ、大丈夫?」
「コホッ、はい、だいぶ落ち着きました」
サーヴァント故か、肺にダメージが入っていたはずのマシュは既に快復、ジャックもけろっとしている
「ところで、えっと……」
マシュたちの無事を確認したツクヨミは、入り口付近に寄りかかり、つまらなそうに周りを見ている男ー紅 音也を見つめる
「あなたは……何?」
「俺が何か?言っただろう、伝説の男だと」
ツクヨミの問いに音也が答える。苦い顔をしながら、ツクヨミは確信してしまう
(この人、ウルクで会ったあの神と同系統だわ……)
脳裏にあの自称神の耳に残る哄笑が響く
「聞きたいのは俺の方だ。せっかくゆりとのデートが待っていたってのに、気づいたらこんなとこだ。全く……流石の俺でも何がなんだかわからん」
音也がどこか途方に暮れたように肩を竦める
「えっと、おそらく音也さんの話を総合すると、以前の歴史の歪みで出会った仮面ライダーの皆さんのように、この歴史の修正に必要な人として呼ばれたのではないでしょうか? はぐれサーヴァントだったジャックさんのように」
「歴史の歪み?なんだそれは聞いてないぞ……いや、そこのガキンチョのアレはそういうことか…?」
何か得心がいったように音也が見つめたのは、彼が連れてきていた現地人らしい少女。今はジャックのことを眺めたりしている
「そういえば、あの子はなんなの?」
「あいつは、俺がどうしたもんかとこの街をうろついてたら、さっきの化け物どもみたいなヤツらが寄って集って引っ張っていってたんだよ。面倒ごとは避けたかったんだが、つい拾っちまった訳さ」
音也がジャックと少女の前にしゃがみこむ
「オマエ、名前は?」
「わたしたち?わたしたちはジャック・ザ・リッパーだよ?」
「いや、オマエではなくて……って何か物騒な名前だな、」
「……ラン」
「そうか、ランか。いい名前だ。さて、なんであんなおっかないのに捕まってたんだ?」
俯いていた少女がおずおずと答える
「……わたし、《天命》をいただいたの。音楽が好きだから、音楽家さんの。でも、《天命》を使ってるのに全然幸せにならなくて……」
ランはどこからか灰色の《天命》を取り出す
「だから、《天命》を捨てようとしたら、あの人たちが……」
「…………」
《天命》を知るツクヨミとマシュがランの独白に苦い表情を見せる
女帝は、《天命》を享受させていたのではない、強制していたのだ
確かに才能そのものを得られる《天命》は人々を幸せにするのかもしれない。現にこの街の人々は皆幸せそうだった
だが、才能が与えられ道が定められてしまうなら、その個人の夢や願望はどうなるのか
その答えがこの少女に起こったことなんだろう
「そうか……ちょっと待ってな」
ランの話を聞いていた音也は立ち上がり、自身が持っていたケースを開く
中から現れたものはーバイオリンだった
「おじさん、それなに?」
「おじさんじゃない、音也お兄さんだ。まぁ見てな」
とジャックに言い聞かせ、バイオリンを構える
その表情が軽薄そうなものから鋭利なものに変わる
優美な音色が、その場を包み込んだ
音也の奏でるそのバイオリンは荘厳で、静かでいて大胆で
ーそして何よりも自由な音色だった
あっという間に一曲弾き終わり、音也の顔が普段の顔に戻る
「……すごい…」
「……おじさんカッコいい…‼︎」
呆然としていたその場に二人の少女の小さな拍手が響く。呆気に取られていたツクヨミとマシュも二人に続いて拍手を送る
「まぁ当然だがな。あとおじさんじゃないぞ、ジャック」
満足そうにバイオリンをケースにしまい直しながら、もう一度ランを見据える
「さて、ラン。どう思った?」
「……すごかった。わたしも、おじさんみたいにやってみたい…‼︎」
「…まぁいい。すごいのは当然だ。なんて言ってもこの俺だからな」
と訂正は諦めて音也が笑う
「だけどな、ラン。俺みたいになる必要はないんだ」
「え?」
「無論、俺のような世界が嫉妬する天才になること自体難しいわけだが、そうじゃない。オマエはオマエの音楽を奏でるんだ」
「……わたしの、音楽?」
「そうだ。人の心は音楽だからな。その心に正直に、自由になるんだ。こんなハリボテなんかに頼らなくても、それが見えたなら前に進めるのさ」
ランから《天命》を取り上げながら、音也が微笑む
音也の言葉がまだピンときていないのか、ランは難しい顔をして首を傾げている
『素晴らしい‼︎ なんと、なんと素晴らしい音色か‼︎』
と、突如騒がしい声が空き家の中に響く
「あン?誰かいるのか?」
『キミが手に持っているだろう?』
と音也がその手の《天命》を見る。すると閉じているようだった瞳部分が開き、声を発する
『眠らされていたが、おかげで目が覚めたぞ‼︎』
「おぉわッ!?な、なんだオマエ!?」
さすがの音也も驚いて《天命》だったものを放り投げる
それはさも当然のごとく空中に浮遊して留まると、その言葉に答える
『私はベートーベン。この器に魂を入れられたものだ』
「べ、ベートーベン!?あのベートーベンか!?」
『いかにも』
今度は音也が呆けた顔になり、ふよふよと浮かぶベートーベンを見つめる
『理不尽な運命に怒り、心のままに音色を奏でる。それこそ真に心を響かせる音楽となる‼︎』
どこか興奮した様子でベートーベンがその身を震わせる
『こうしてはおれん‼︎ あの女帝‼︎ 我々を利用に利用したあの女への怒りを叩きつけねば……‼︎』
と、今度は呆然と話を聞いていたツクヨミの方に飛んでいき、その肩に乗る
「え、ちょっと⁉︎」
『諸君らはかの女帝に用があるのだろう?ならば私も同行させてもらうぞ』
「いや、そんな急に…」
肩に乗るベートーベンに渋い表情を見せながらも、確かに、とツクヨミが頷く
「……でも、ソウゴたちも間違いなくあの宮殿に向かうはずだから、あそこには行かなきゃいけないのね……」
「確かに……今はそれが最良の手段だと思います」
とツクヨミに同意し、マシュも立ち上がる
「おねえさんたち、行く場所決まったの?ならわたしたちも行く‼︎」
「わ、わたしも……」
ジャックとランも二人に続いて立ち上がる
「オイオイ、なんだか知らんが何で殴り込むような雰囲気になってるんだ?」
ただ一人、音也は乗り気ではないようだが
「紅 音也、あなたはついてこないの?」
「勘違いするな。成り行き上さっきは助けただけだ。俺はこれ以上お守りをする気はない……」
と、言いつつもまだ悩んでいるような様子のランを見て、仕方がないと言わんばかりにため息をつく
「……だが気が変わった。宮殿とやらまでなら俺もついて行ってやる。俺もその女帝とやらには一言言ってやりたいことがあるからな」
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目が覚めたゲイツが見たのは、高い山脈に囲まれた荒地
「ここは………?」
『ここは修練場。道を見失った貴方への試練の場』
抑揚の無い声がゲイツの疑念に応える
振り返るとそこに立っていたのは奇妙な人物
黒い人間だかなんだかよくわからないものに、白いパーカーが被さっている
幽霊、と呼称した方がしっくりくるような人物だ
「修練場、だと……?」
『ここでは貴方が倒すべき敵が姿を見せる。それを見事倒したならば、貴方の信念は証明されよう』
幽霊の静かな言葉に、ゲイツが顔をしかめる
「倒すべき敵、だと?」
『然り。既にそこに現れている』
幽霊はゲイツの後方を指差す
そこには、荘厳なる玉座と、そこに腰掛けた最低最悪の魔王の姿があった
「オーマジオウ⁉︎ 成る程な……‼︎」
《ゲイツリバイブ、剛烈‼︎》
《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》
その姿を確認したゲイツはゲイツリバイブウォッチを起動、ゲイツリバイブ剛烈へと変身する
「確かに、相手にとって不足無しだ‼︎」
ジカンジャックローを構え、立ち上がったオーマジオウに向けゲイツリバイブが突撃する
「ハァッ‼︎」
《のこ切斬‼︎》
ジカンジャックローの刃がオーマジオウに命中するー
「ーッ⁉︎」
瞬間、ゲイツリバイブがその体を硬ばらせる
そこにいたのは、オーマジオウではなくジオウIIだったのだから
ギャリィィィィン!!
「ぐわっ!?」
硬直したゲイツリバイブにサイキョーギレードが無慈悲に叩きつけられる
「ぐっ、バカな……⁉︎ どういうことだ⁉︎」
『言ったはずです。貴方の倒すべき敵が現れると』
「何故ソウゴが現れる!? オーマジオウでは無いのか!?」
『ーいえ、オーマジオウですよ。常磐 ソウゴという名前の』
幽霊の言葉にゲイツリバイブが怒りを表す
「ふざけるな!! ソウゴが、オーマジオウのはずがない!!」
『では何故貴方はそのソウゴに刃を向けたのですか?』
「それは、あいつを魔王にしないために……‼︎」
『それは貴方がソウゴが魔王になるという未来を否定できていないからではないのか?』
「ーッ!!」
幽霊の言葉にゲイツリバイブが再び身を硬ばらせる
『私からの修練は変わりません。これを突破できねば貴方はここから帰ることは叶いません』
ジオウIIが静かにゲイツリバイブにその刃を向ける
『オーマジオウ、常磐 ソウゴを倒しなさい。そして、貴方の信念を証明なさい』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《ダイテンガン ネクロム》
《オメガウルオウド》
「ハァァァァッ!!」
ネクロムの放ったキックが甲冑酷吏と槍酷吏を貫き、霧散させる
同時に取り巻きにいた女官たちも三蔵が最後の一群を吹き飛ばす
「大事はないか?ソウゴ」
「うん。任せっきりにしてごめん…」
「心配するな。力を貸すと決めたのは私たちだ。今はただ女帝の打開策をー」
「ちょっと待って、」
三蔵が目を瞑り、何かに集中する
「こっちで、助けを求める声が聞こえる気がする‼︎」
と言うが早いか、三蔵がどこかへと駆けていく。しばし呆気に取られていた二人もそれを追う
「いや‼︎離して‼︎いやだ‼︎」
大衆が見つめる中、酷吏たちが一人の少年の両脇を抱えてどこかへと連行しようとしている
「ハァッ!!」
「てりゃぁっ!!」
そこにネクロムと三蔵が割り込み、酷吏たちを退ける
「大事はないか?」
「う、うん」
助けだした少年を一瞥したネクロムは三蔵とともに酷吏たちに相対する
「排除対象、確認…」
ゾンビのごとく起き上がる酷吏たちを三蔵が睨む
「あなたたち……敵と認識しているソウゴたちを狙うならまだわからなくもないけど、なんでこの国の子供にまで手を上げているの⁉︎」
「あんたら、誰かは知らんがやめてくれ‼︎」
糾弾する三蔵の言葉に返答したのは、周囲を囲っていた大衆の一人、初老の男性だった
「えっ……?」
それを機に堰を切ったように、大衆からの糾弾がネクロムと三蔵に降りかかる
「その子は《天命》が合わなかっただけだ」
「だから酷吏に連行されてたんだ」
「帝に新しい《天命》をもらって幸せになるはずだったのに」
「ワシらの幸せを、日常を壊さんでくれ‼︎」
大衆からの糾弾に、ネクロムたちがたじろぐ
「ちがう!!合わなかったんじゃない!!オレはオレのやりたいことをしたいんだ!! 幸せじゃなくても、それがしたいだけなんだ!!」
少年が半泣きで反論しながら立ち上がる
「なんて罰当たりな……‼︎」
「《天命》無しに生活なんてできるはずがないわ」
「考え直せ‼︎」
あろうことか、大衆たちは少年へと糾弾の的を変えた
少年は耳を塞いで縮こまる
「待て、この少年は何故そこまで糾弾されねばならない⁉︎」
「こんな、こんなのって…」
大衆の勢いに押され、ネクロムたちが少年から少し目を離す
その瞬間、少年の背後から新たに現れた酷吏がその手を伸ばす
「⁉︎しまっー」
反応が完全に遅れた。ネクロムも三蔵も間に合わないー
だが、少年へその手が触れることはなかった
「大丈夫?」
「ーえ?」
少年が恐る恐る顔を上げる
そこには、酷吏を蹴り飛ばしたソウゴの笑顔があった
「ちょっと静かに!!」
少年を庇い、背後にやったソウゴが叫ぶ。唐突なソウゴの剣幕に民衆も酷吏もたじろぐ
「ー俺さ、王様になるのが夢なんだ。王様になって、みんなを守ることが」
ソウゴは周囲を見渡しながら告げる
「今、訳あって俺は、王様になるっていう運命を、未来を奪われた。もう俺は、王様にはなれないらしい」
少し悲しそうに告げる。が、それでも魔王の抜け殻は微笑んで続ける
「でも、やっぱり俺は王様になりたい」
「運命だからとか、そういう未来だからじゃない」
「俺自身が、王様になりたいって、そう思って決めた道だから」
「運命を、未来を取られても関係ない。俺は、それでも最高最善の魔王を目指すって決めたから」
「この子みたいな子が、夢を見てそれに向かって歩けるような平和な世界にしたいんだ」
と、ソウゴが少年の頭を撫でる
「う、うるさい‼︎出ていけよ‼︎」
そんなソウゴの頭に、どこからか石が投げつけられる
「ソウゴ!!」
咄嗟に目を瞑る
が、衝撃や痛みはいつまでたっても襲ってこない
『ちくと寝すぎたかえ? けんど、いい目覚めゼヨ‼︎』
目を開けたソウゴの前に立っていたのは、青いパーカーを纏った黒い影のような人物。まるで幽霊のような、それでいてどこか只者ではないような人物がそこに立っていた
「……誰?」
『ワシか?ワシは坂本 龍馬ゼヨ‼︎』
「龍馬⁉︎ あの坂本龍馬なの⁉︎」
『そうじゃ、正真正銘本物ゼヨ‼︎』
青いパーカー、曰く坂本 龍馬はその手に掴み取っていた石を放り捨て、ソウゴを助け起こしその肩を叩く
『おんし、デッカい夢持っちょるなぁ〜さっきの演説、ワシの魂にまで響いたゼヨ‼︎ お陰でスッキリ目が覚めた‼︎』
「え、演説ってほど凄いことしてないんだけど……」
『いんや、おんしはデカイ男。ワシはそう確信しちょる‼︎ 何よりも、ワシはそのデッカい夢に惚れたゼヨ‼︎』
と、その龍馬の背後から酷吏が棍棒を振りかぶる
「龍馬さん、後ろ‼︎」
龍馬の頭に棍棒が命中ー
ガギィン!!
「⁉︎」
したかに思えたそこには、すんでで棍棒を受け止める大槌が現れていた
『ー己の道を信じ、迷わず進むその心意気。我も目が覚めたぞ、少年‼︎』
その大槌を構えていたのは、秦良玉が纏ったものと同じ白いパーカーを纏った黒い影
受け止めた棍棒を弾き返し、酷吏に重い一撃を与えて吹き飛ばす
『ー武蔵坊弁慶、ここに参上つかまつった』
「え、今度は弁慶⁉︎」
文字通り仁王立ちにどっしりと構える弁慶に龍馬が並び立つ
『おまんらの国のあり方はこれが正解かもしれん。けんど、夢を手に入れた子供に、ここまでして押し付けたもんは、幸せとはワシは言えん‼︎』
『我らの運命は我ら自身の運命。その背に倣うはあれど、同じ道を他者が歩むには能わず。己の運命も、未来も、己を信じ勝ち取るものよ!!』
大槌を構え直しながら、弁慶が宣言する
『それにな、運命っちゅーもんは案外どうにでもなる。歩みを忘れた過去の亡霊のワシらですら、あの少年のータケルの導きで、新しい夜明けが見れたわけじゃしのお!!』
愉快そうに宣言する龍馬の言葉にネクロムが驚く
「タケルを知っている……まさか、貴方たちは⁉︎」
『久しぶりじゃのう、アラン‼︎ 元気そうで何よりゼヨ‼︎』
ネクロムに龍馬が手を上げて挨拶をする
「え、まさか……知り合い?」
ソウゴが不思議そうに両者を見つめていると、弁慶が頷く
『然り、かつて共に戦い、心と心を通わせた、かけがえのない友である』
龍馬が拳銃を取り出し、肩に構えて酷吏たちを睨む
『ワシらも、その帝様に言わんといけんことが山ほどある』
『故に、微力ながらも共に行かせてもらおう…』
『ー命、燃やすゼヨ(ぞ)!!』
二人の英雄が酷吏へと突撃していく
その背をどこか懐かしむようにネクロムが眺める
「凄い仲間がいるのね、アランくん」
並び立つ三蔵が笑う
「ーあぁ、自慢の仲間たちだ‼︎」
朗らかにネクロムがそう答え、両者も酷吏へと向かっていく
酷吏たちと戦いを繰り広げている4人を民衆たちが呆気に取られながらも眺めている
そんな中、群衆の中から小さな二人の子供が顔を出し、あらん限りの声で叫ぶ
「頑張れぇー!!緑の人ー!!」
「お坊さんも負けないでー!!」
それは、ソウゴたちを糾弾するものではない
ソウゴたちの背中を押してくれる声だ
「頑張れぇー!!」
「王様も負けるなー!!」
二人だけじゃない、ソウゴたちを囲んでいた民衆たち、その所々からソウゴたちを応援する声が響き、広がり、割れんばかりの歓声が響きる
「……みんな…」
『見てみぃ、ソウゴ‼︎ これが、おんしの夢が起こした奇跡ゼヨ‼︎』
動揺する酷吏を蹴り飛ばし、駄目押しの射撃を浴びせながら龍馬が笑う
『眠らされたワシらの魂に、そんで夢を忘れとったこん国の人らに火を点けた。それは紛れもなくおんしの力ゼヨ!!』
「俺の……力……」
大槌で酷吏を叩き潰しながら、弁慶も続ける
『王となる道、決して楽ではないその道を選び迷わず進むその姿、それはそなたに確固たる強さがあってこそ‼︎』
4人それぞれの一撃が酷吏を粉砕する
「行くぞ、ソウゴ‼︎」
「行きましょう‼︎ お釈迦様もついてるわ‼︎」
『いざ行かん‼︎』
『こん国の夜明けゼヨ!!』
4人の、出会ったばかりながらその心を通じ合わせた仲間たちがソウゴを呼ぶ
「ーうん、行こう‼︎」
その導きに、王を夢見る少年は力強く頷いた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ギャリィィィィン!!
「ぐぁあああああぁああぁああ!!!!」
ジオウIIの切り上げを食らい、ゲイツリバイブが大きく吹き飛ぶ
倒れ伏すゲイツリバイブをジオウIIは冷然と見下ろす
『どうしたのですか?貴方は魔王を倒すと決意したのでしょう?ソウゴが魔王となるならば、貴方が止めると約束したのでしょう?』
「わかっている!!」
威勢良く反論するゲイツリバイブだが、その心は大きく揺らいでいた
(ソウゴが魔王になるはずはない。アイツが、オーマジオウになるはずが……)
『そなた自身、ソウゴが魔王になる未来を否定しきれていないのではないか?』
女帝の言葉がチラつく
全くもってその通りだった
ゲイツは、ソウゴが魔王になるなんて思っていない。そうなる前に自分が止めるとも誓った
だが、オーマジオウが未だ健在であるならば、本当にそれが可能なのか?とも思っていた
惑うゲイツリバイブに、ジオウIIが迫る
「はっ、はっ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
半ばヤケになりながら、ゲイツリバイブが突撃する
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
皇帝宮 聖神皇帝玉座
ガシャァン!!
『なんじゃあれは!?』
杯を叩き割りながら女帝がヒステリックに叫ぶ
『《天命》が、自意識を取り戻した……?何故じゃ⁉︎何故そのようなことができる!?』
狼狽する女官には目もくれず、憤慨を露わにしている
『ー彼奴らはやはり妾の国に不要、いや妾の国の障害じゃ……秦良玉!! 李書文!!』
女帝の招集を聞きつけ、2人の戦士が玉座の間に姿を現わす
1人はソウゴたちも出会っている白衣の槍使い
もう1人は、丸いサングラスをした白髪の老人
「はっ、ここに」
「……」
秦良玉が跪き、老人ー李書文は軽く一礼する
『常磐 ソウゴの一行を始末せよ。彼奴らは妾のこの周の国敵、一人も生かすでない』
「承知しました」
「承知した」
頷いた両名は早速玉座を後にする
『ならぬ、運命は絶対……それが覆るなどあってはならぬ!!』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
皇帝宮 西門前
「随分と自己主張の激しい、悪趣味な宮殿だな」
宮殿を見上げながら、音也が呟く
「ですが、その目立つ見た目のおかげでここまで迷わずに来れました」
「すっごいピカピカしててわかりやすかったよね」
宮殿を興味深かそうに眺めているジャックを眺め、隣で難しい顔をしているランを横目で見やる
「ー常磐 ソウゴ、もしくはその仲間で相違ないか?」
突如響く老獪な声。それを耳にした音也が門を睨む
その前に、一人の老人がいつのまにか佇んでいた
「……常磐 ソウゴ?誰だソイツ」
「む、貴様は奴の仲間ではないのか?」
「知らない名前だな」
不思議そうな顔を浮かべる老人と問答しながら、音也がマシュの肩を抱き寄せる
「へ、ちょっ⁉︎」
突然の事態に困惑するマシュに音也が囁く
「ー俺以外を連れて先に行け」
「ーえ」
「いいから、走れ!!」
そう叫ぶと、マシュをツクヨミに押し渡し、イクサナックルを老人に向け、エネルギーを放つ
なんでもないことかのように、老人はそのエネルギーを諸手で弾いた
未だ困惑するマシュたちを見やり、音也が叫ぶ
「行け!!」
「は、はい!!」
困惑しながらも、マシュはツクヨミたちを先導し、門へと走る
それを見た老人はー構えを正しながらそれを見過ごした
「へぇ……まさか見逃すとはな……」
「女子供と死合うことは儂の本意ではない。真に障害になるなら、儂以外にも荒事に向いたものはいるからな」
「……あんたなりに仲間を信じてるってわけか」
老人と軽口を叩きながらも、音也は油断なくイクサナックルを構える
静かに笑みを浮かべる老人からは、ひりつくほどのプレッシャーが溢れていたからだ
「ー可可ッ、良い目だ。飄々としているようで、それでいて周りをよく見ている。安心するがいい、ここにいるのは儂だけだ」
老人が愉快そうに笑いながら答える
「ー構えよ、若造。儂は、そなたのような強い者と死合うことが生きがいなのでな」
「ハッ、爺さん……ヤケドするなよ」
《レ・デ・ィ》
「変身」
《フ・ィ・ス・ド・オ・ン》
音也がナックルをベルトに装填し、イクサへと変身、ボクシングのような構えを取る
「殺す前に、そちらの名を聞いておこう」
「いいだろう。俺様は紅 音也、伝説の男だ」
「オトヤ、良い名だ」
老人が脚を踏み出し、地を揺るがす
その気迫にイクサがたじろぐ
「我が名は、李書文。我が八極、とくと馳走してやろうぞ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
宮殿内 廊下
東門から突入してきたソウゴたちが駆ける
「玉座の位置はわかるのか?ソウゴ」
「結構目立つ入り口だったから、多分大丈夫なんだけど……」
「止まりなさい」
ソウゴたちの目前、白い影が割り込む
「秦良玉……‼︎」
それは、ソウゴたちをこの国に迎えてくれた女武人だった
あの時の穏やかな表情とはうって変わり、殺意すら感じる視線をソウゴたちに向ける
「……常磐 ソウゴ、貴方はわかっていただけていると思っていました」
秦良玉が悲しげに告げる
「我らが帝の、この国の平穏を。永世にも続くであろう、幸福を。だからこそ、貴方はあの時の玉座で一人だけ帝に敵意を向けなかった」
「……確かに、」
秦良玉の悲痛な糾弾にソウゴが口ごもる
が、すぐに顔を上げ秦良玉を見据える
「でも、今は違う。俺は、この国とあの女帝を否定するよ」
「なぜ……!?」
「俺は、子供が夢を見ることもできないこんな国は認められない。そんな国は、きっと、幸せでも幸せにはなれないから」
あっけらかんと答えたソウゴを睨み、秦良玉はその手の《天命》を起動する
《ベンケイ!!》
秦良玉に白いパーカーが装着され、その手に槌が現れる
「訳の分からないことを……どうあれ、貴方はもう我々の敵……」
秦良玉が槌を構える
「この秦良玉、全霊を以って貴方を排除する……‼︎」
構える秦良玉の前に、弁慶が立ちふさがる
『ー先に行け、ソウゴ』
「弁慶………」
『元より、殿は慣れておる。安心しろ、死ぬつもりなどない』
弁慶を見据えたソウゴはそれに頷きを返す
「行こう、アラン、三蔵法師、龍馬」
「わかった」
それに応えてソウゴと共にアランたちが秦良玉の立ち塞がる先に突撃する
「させません!!」
それを塞ぐように、突き出された槌を弁慶の槌が阻む
『そなたの相手は我がつかまつる!!』
「くっ⁉︎」
弁慶に攻撃を阻まれ、秦良玉がソウゴたちから離される
残る弁慶の背を心配そうに見つめたソウゴだが、踏みとどまり、玉座へと足を向けた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
聖神皇帝玉座
『来おったか、常磐 ソウゴ……』
玉座の間に突入してきたソウゴ一行を睨み、玉座から女帝が立ち上がる
「お前が女帝か」
『いかにも。妾こそがこの周を治める聖神皇帝、武則天である』
ネクロムの問いに悠然と女帝が答える
『秦良玉と李書文に任せたが、やはりまだ足りぬか』
ニヤリと、女帝が邪悪に微笑む
『だが、まぁ良い。妾の思惑には違わぬ』
『貴様には最大限の恥辱ある最期を与えようと思っていたからな』
《ジオウII ‼︎ ジオウ‼︎》
女帝がジオウIIライドウォッチを起動し、ドライバーに装填し回転させる
『変身♪』
《ライダータイム‼︎》
《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII ‼︎》
まるで自分のものかのような手慣れた仕草でジオウIIへと変身、サイキョージカンギレードを握り、ソウゴへ突きつける
『友に見限られ、夢も絶たれた』
『ーそして己の力を奪われ、その力で殺されればさぞかし恥辱であろうなぁ♪』
愉快そうに女帝が嗤う
だが、ソウゴはたじろぐことすらしなかった
「違うよ、それは」
『違う?何がだ?』
「まず、俺は殺される気は無い。変身できないから、今はみんなの力を借りるしかないけど……どうにかジオウの力が帰ってくるまで殺されてやるつもりはない」
ソウゴの堂々とした言葉に三蔵が笑顔で頷き、龍馬が鼻をかく
「それに、夢も絶たれたわけじゃない。魔王になる運命はなくなったのかもしれないけど、それでも俺は、最高最善の魔王になる。なってみせる。そして、世界を救う」
ソウゴの言葉にジオウIIが哄笑を返す
『何を世迷いごとを……運命を失った貴様は王になることは叶わない。運命とは絶対不変、夢ごときで変わりはせぬ』
「違うな」
女帝の言葉に反論の声をあげたのは、ネクロム
「確かに、運命は強大なんだろう。かく言う私も、かつては運命に逆らおうともしなかった。その運命を盲信し、道を失っていた」
ネクロムが三蔵を一瞥し、女帝を見据える
「だが、その運命に抗うことを、私のかけがえのない仲間や無二の友が教えてくれた。心の声を聞くことを、教えてくれた人がいた」
「それ故に私は前に進めた。仲間と共に絶望の運命を覆した‼︎」
ネクロムが襟を正す。それを見た龍馬はどこか懐かしそうに頷いた
「故に、私も否定する。貴女の運命を盲信し、民の目を塞ぐこの国のあり方を‼︎ 夢を見ることすら許さない、この国の幸せを‼︎」
『下らんな』
苛立たしげにサイキョージカンギレードを弄びながら女帝が吐き捨てる
『たかが夢物語で何が変わる? そのような無駄、民が生きる糧には必要ない。そのような不確かなもの、妾の国に、いやこの世界には不要だ』
玉座から降り、ネクロムたちに女帝が相対する
『御託が済んだならば、早急に終わらせようぞ。イレギュラーは処分せねば、な?』
「まだもう一つあるよ、御託」
不敵に笑うソウゴが続ける
「俺の友達は、俺を裏切ってなんかいないってこと」
瞬間、ジオウIIに空から衝撃が突き刺さる
『ぐっ⁉︎ぉおおおおおおおお!?』
咄嗟にサイキョージカンギレードで衝撃を防ぎ、ソウゴたちの方に弾き飛ばす
そこに現れていたのはー
「ー遅くなったな、ソウゴ」
「いいや、ベストタイミングだよ、ゲイツ」
ゲイツリバイブ剛烈ーソウゴの、無二の友の姿だった
『明光院 ゲイツ⁉︎ 貴様、なぜ……⁉︎』
「なぜ?愚問だな」
ジカンジャックローを構え、ゲイツリバイブがジオウIIを睨む
「ー俺の友達の夢を奪った魔王を倒すためだ」
並び立つネクロムの手には、ゲイツと共に消えたはずのサンゾウゴースト眼魂が収まっていた
それを見、ネクロムが改めて三蔵を見据える
「ー貴女とは違うかもしれない、だが私が教わり、私が歩んだ道を…今こそ貴女に見せる時が来たのだろう」
ネクロムの言葉に三蔵が少しきょとんとし、すぐに微笑む
「ーそっか、そういうことだったのね。素敵な縁があるものね…」
アランの手を取り、眼魂を見つめた三蔵が優しく微笑む
そして、二人がゲイツリバイブに並び立ち、ジオウIIを睨む
遅れて龍馬も並び立つ
「色々私からも貴女に言いたいことはあります。でもまずは、お説教から!! 御仏パワー全開で行くわよ!!」
三蔵が棒を取り出し構える中、ネクロムはサンゾウゴースト眼魂をメガウルオウダーに装填、起動する
《テンガン サンゾウ》
《メガウルオウド》
メガウルオウダーから白い法衣のようなパーカーが出現、ネクロムに装着され、その手に手のようなガジェットーガンガンハンドが現れる
《サイユウロード‼︎》
「ー運命に囚われた女帝よ、私たちの…心の叫びを聞け!!」
本当にお待たせしました……中々まとまりがつかなくて結構間が空いてしまいました……
武周編もいよいよクライマックス‼︎ 次回もお楽しみに、です‼︎